Medical Microbiology

Medical Microbiology · 5/16

嫌気性菌による感染の記載と診断

Description and diagnosis of infections caused by anaerobic bacteria

微生物
Peptostreptococcus

🧠 嫌気性菌感染の大半は「が場所を間違えただけ」のである。 口腔・消化管・女性生殖器などに常在する嫌気性菌は、外傷・手術・虚血などで組織が損傷しの低い環境ができると、その隙間から深部組織へ侵入する。したがって起因菌のリストは形態(桿菌/球菌)とグラム染色で整理でき、診断の最大の課題は「検体採取から培養まで一貫して酸素に触れさせない」という一点に尽きる。

flowchart TD
  A["粘膜・皮膚の常在嫌気性フローラ"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue injury'>組織損傷</span>・低酸素環境の形成<br>(外科的処置・咬傷・虚血など)"]
  B --> C["常在部位から深部組織へ侵入"]
  C --> D["嫌気性菌感染<br>(しばしば複数菌種の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mixed infection (polymicrobial infection)'>混合感染</span>)"]

基本形態別の分類と病原性

基本形態 病原性
桿菌・グラム陽性・ Clostridium C. perfringens——/下痢。C. tetani——破傷風C. botulinum——
桿菌・グラム陽性・非 ActinomycesisraeliiEubacterium 、女性生殖器感染
桿菌・グラム陰性・非 Bacteroides(例:fragilis ・女性生殖器感染
桿菌・グラム陰性・非 FusobacteriumPrevotella Bacteroidesと同様だがより低頻度
球菌・グラム陽性 Peptostreptococcus(嫌気性レンサ球菌) ・女性生殖器感染。しばしばBacteroidesと合併する
球菌・グラム陰性 Veillonella 混合嫌気性感染で検出されるが、臨床的意義は不明

💡 嫌気性菌感染は単独犯より共犯が多い。 PeptostreptococcusBacteroidesとしばしば合併して検出されるように、嫌気性菌感染の多くは複数菌種が絡み合うである——単一の起因菌を追い求めるより、「がまるごと迷い込んだ」という前提で読むほうが実態に近い。嫌気性グラム陰性桿菌の詳細は2/6の概説は2/3も参照。

診断

嫌気性菌培養に共通する原理は、検体採取から培養まで酸素との接触を断つことである。

手法 内容
触媒でO₂を除去し、無酸素〜低酸素環境を作る培養容器
密閉容器内でガス発生剤がH₂・CO₂を発生させ、触媒がO₂と反応して除去する簡易
高さのある寒天培地の深部(が低い層)で発育させる培養法
内部を無酸素環境に保ったグローブボックスで、検体の処理・培養を一貫して行う

⚠️ 検体は「採取した瞬間から酸素にさらさない」のが鉄則。 上記4手法はいずれも「酸素を遮断する」という同じ目的のための異なる実装であり、逆に言えば検体採取後に大気中に長時間放置するとは死滅し偽陰性となる——嫌気性培養が疑われる検体(膿瘍穿刺液など)は速やかに専用の嫌気輸送容器へ入れることが診断成功の前提になる。

まとめ

  • 嫌気性菌感染の多くは、・低酸素環境をきっかけに深部組織へ侵入するである。
  • グラム陽性桿菌の代表はClostridium属(C. perfringens・下痢、C. tetani=破傷風、C. botulinum)。
  • グラム陽性非桿菌はActinomyces)・Eubacterium、グラム陰性非桿菌はBacteroides(腹腔内・女性生殖器感染の中心)・FusobacteriumPrevotella(同様だが低頻度)。
  • 球菌ではグラム陽性のPeptostreptococcusBacteroidesとのが多い)とグラム陰性のVeillonella(意義不明の菌)がある。
  • 診断の核心は検体採取から培養まで酸素との接触を断つことで、がその実装手段となる。