病態生理学

病態生理学 · P-1-19

各測定法による高血圧の診断基準;家庭血圧測定

Diagnostic criteria of hypertension by measurement method

前提:病態
高血圧の定義・分類、二次性高血圧、合併症
応用トピック
高血圧I―病因と診断
疾患
仮面高血圧白衣高血圧

🧠 全体像: 血圧はで低くなることが多いため、診察室、家庭、ABPMでは異なる診断閾値を用いる。は日常環境での反復測定により、との識別に役立つ。

高血圧の診断基準

診察室高血圧は、患者を安静にして診察室で3回測定し、その最後の2回の平均値が140/90 mmHg以上であることを、複数の受診機会で確認して診断する。講義資料は「約1週間間隔で3回以上の受診機会」としているが、JSH2025とACC/AHA 2025が求めるのは2回以上の機会である。

指針 による診断の要件
JSH2025 1〜2分間隔で2回以上測り、安定した2回(差5 mmHg未満)の平均を用いる。診断は少なくとも2回の異なる機会の値に基づく1
ACC/AHA 2025 2回以上の機会に得た、2回以上の丁寧な測定の平均で区分する2
2024 だけの診断は特異度が低く、資源が許せば避ける。スクリーニングで140〜159/90〜99 mmHgならで確認する。160/100 mmHg超では1か月以内に速やかに再評価する3

測定法によりが異なる。の測定値は一般により低いため、およびABPMではより低い閾値を用いる。

測定法別の閾値

測定法 2024・JSH2025・ISH 2020(高血圧) ACC/AHA 2025(病期1=診察室130/80に対応する値)
診察室 ≥140/90 ≥130/80
家庭 ≥135/85 ≥130/80
ABPM・昼間 ≥135/85 ≥130/80
ABPM・夜間 ≥120/70 110/65(対応値。判定に使うかは保留)
ABPM・24時間平均 ≥130/80 ≥125/75

単位はいずれも mmHg。左列は 20243、JSH20251、ISH 20204 で一致する値である。右列は ACC/AHA 2025 の対応表の値で、同じ表は診察室140/90 mmHg に対応する値として家庭135/85、昼間135/85、夜間120/70、24時間130/80 mmHg も示す——つまり米国も対応関係そのものは欧州・日本と同じで、「高血圧」と呼び始める段が1段低い。米国はこの対応値を、主に欧州・豪州・アジアの観察研究に基づくため慎重に解釈すべきとしている2。

⚠️ どの指針の値かを必ず添えて覚える。 診察室 140/90・家庭 135/85 は ISH、欧州()、日本高血圧学会で共通だが、は診察室 130/80 mmHg 以上を病期1の高血圧とする。さらに「高血圧と呼ぶ閾値」と「治療で目指す値」は別物であり、後者も指針ごとに違う。

診断閾値と降圧目標は別

日本高血圧学会の JSH2025(2019年版からの6年ぶりの改訂)でも、そのものは据え置きである——診察室 140/90 mmHg以上、家庭 135/85 mmHg以上5。

一方で目標は変わった。 JSH2019にあった75歳以上への緩和目標を廃し、原則として全年齢で診察室 130/80 mmHg未満・家庭 125/75 mmHg未満に統一された5。

💡 したがって「 130/78 mmHg」の人は、JSH2025の(135/85)では高血圧ではないが、目標(125/75)には届いていない。JSH2025のの分類では「高値血圧」(125〜134/75〜84 mmHg)にあたる1。一方、ACC/AHA 2025では130/80 mmHgが病期1の診察室130/80 mmHgに対応するので、収縮期130 mmHgの同じ値が高血圧側に入る2。この2つ(診断と目標)を混同すると、治療中の患者を「もう正常だから薬は要らない」と誤って読むことになる。

家庭血圧測定

適応

  • :診察室では血圧が上昇するが、家庭では低値となる。
  • 特に妊婦、高齢者、糖尿病患者、が疑われる患者で推奨される。

利点

  • 家庭環境に対応した、より低いである135/85 mmHgを用いる。
  • 医療環境外の実生活における測定値を複数得られる。
  • との識別を助け、診断精度および治療判断を改善する。

💡 とが一致しないこと自体が重要な情報である。どちらか一方だけで判断せず、測定環境と反復値を組み合わせて評価する。

まとめ

項目 要点
診察室での診断 最後の2回の平均で判定し、複数の受診機会で確認する(JSH2025・ACC/AHA 2025は2回以上の機会)。 2024はでの確認を望ましいとする
欧州・日本・ISHの閾値 診察室140/90、家庭135/85、ABPM昼間135/85・夜間120/70・24時間130/80 mmHg以上
米国の閾値 診察室130/80 mmHg以上を病期1とし、対応する家庭・昼間130/80、24時間125/75 mmHg
診断と目標は別 JSH2025はを据え置き、目標を全年齢で診察室130/80・家庭125/75 mmHg未満に統一
の適応 の疑い。妊婦、高齢者、糖尿病患者でとくに推奨される
の利点 実生活での反復測定で、とを識別し、診断と治療判断の精度を上げる

出典

  1. 1.The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025)(Hypertension Research(日本高血圧学会)・2026)英語版全文(出版社サイト)で確認した。POINT 5aは診察室血圧を1〜2分間隔で2回以上測り、安定した2回(差5 mmHg未満)の平均を用い、高血圧の診断は少なくとも2回の異なる機会の診察室血圧に基づくとする。Table 5-6は高血圧基準を診察室140/90、家庭135/85、ABPM 24時間130/80、昼間135/85、夜間120/70 mmHg以上とする。Table 5-5は家庭血圧を正常115/75未満、正常高値115〜124/75未満、高値125〜134/75〜84、I度高血圧135〜144/85〜89 mmHgなどに分類する閲覧 2026-09-24
  2. 2.2025 AHA/ACC Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation, and Management of High Blood Pressure in Adults(American College of Cardiology / American Heart Association・2025)Circulation掲載版の本文(Wayback Machine の id_ 付き出版社ページ、20260730224646)で確認した。血圧区分は正常120/80未満、上昇120〜129/80未満、病期1が130〜139または80〜89、病期2が140以上または90以上 mmHgで、2回以上の機会に得た2回以上の丁寧な測定の平均に基づく。Table 7は診察室130/80 mmHgに対応する値を家庭130/80、ABPM昼間130/80、夜間110/65、24時間125/75 mmHg、診察室140/90に対応する値を家庭135/85、昼間135/85、夜間120/70、24時間130/80 mmHgとし、これらの値は主に欧州・豪州・アジアの観察研究に基づくため慎重に解釈すべきとする。Table 9の脚注は診察室外血圧高値を覚醒時130/80以上または24時間125/75 mmHg以上と定義する閲覧 2026-09-24
  3. 3.2024 ESC Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension(European Society of Cardiology (ESC)・2024)本文全文(Wayback Machine の id_ 付き出版社ページ、20241029003534)で確認した。Table 5は高血圧を診察室140/90、家庭135/85、ABPM昼間135/85、24時間130/80、夜間120/70 mmHg以上とし、それぞれ診察室・家庭120/70、24時間115/65、夜間110/60 mmHgから高血圧閾値未満までを血圧上昇(elevated BP)とする。5.3.2節は、診察室血圧は単独ではABPMより特異度が低く、資源が許す限り診察室血圧だけで診断するのは望ましくないとし、スクリーニングで140〜159/90〜99 mmHgなら診察室外血圧で確認すべきとする。7.2節は診察室外測定を確認の望ましい方法とし、160/100 mmHg超では数日〜数週(1か月以内)の速やかな再評価を勧める閲覧 2026-09-24
  4. 4.2020 International Society of Hypertension Global Hypertension Practice Guidelines(International Society of Hypertension (ISH)・2020)測定法別の高血圧診断閾値——診察室 140/90、家庭 135/85、ABPM 24時間平均 130/80、昼間 135/85、夜間 120/70 mmHg 以上閲覧 2026-08-14
  5. 5.高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025、2025年8月29日発刊)——改訂ポイント(阿部雅紀、日大医学雑誌 84(6):257-261)(日本高血圧学会(改訂点の解説は日本大学医学会)・2025)高血圧の診断基準(診察室140/90、家庭135/85 mmHg以上)はJSH2019から据え置き。一方、降圧目標はJSH2019にあった75歳以上への緩和目標を廃し、原則として全年齢で診察室130/80 mmHg未満・家庭125/75 mmHg未満に統一された閲覧 2026-08-14