小児科学

小児科学 · 2-28

代謝性・呼吸性アシドーシス

Metabolic and Respiratory Acidosis

前提:病態
代謝性酸塩基平衡障害呼吸性酸塩基平衡障害
前提:正常
酸塩基平衡:肺と腎の役割
検査値
アニオンギャップ

🧠 は血液pHが低い状態、アシドーシスはpHを低下させる病態過程である。まずpH、PaCO₂、HCO₃⁻から一次性障害を決め、代償が適切かを確認する。代謝性では、呼吸性では換気不全の原因を評価する。

酸塩基評価の順序

flowchart TD
    A["pH:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acidemia'>アシデミア</span>か"] --> B["PaCO₂とHCO₃⁻を確認"]
    B --> C["HCO₃⁻低下:代謝性アシドーシス"]
    B --> D["PaCO₂上昇:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory acidosis'>呼吸性アシドーシス</span>"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anion gap'>アニオンギャップ</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory compensation'>呼吸性代償</span>を評価"]
    D --> F["急性/慢性と代謝性代償を評価"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mixed'>混合性</span>障害と原因を検索"]
    F --> G
影響
循環 低下、血管拡張、反応低下、低血圧、不整脈
呼吸 、重症では
代謝 高K血症を伴い得る。ただしは欠乏していることもある
神経 、意識障害、昏睡

代謝性アシドーシス

一次性HCO₃⁻低下によりpHが下がる。💡 本ノートはHenderson-Hasselbalch式に基づく従来のアプローチで記述するが、強イオン差(SID)を独立とするStewartの物理化学的アプローチという別の枠組みもあり、両者は理論的に等価とされる一方でどちらが臨床的に優れるかは実証研究間でが一致していない1。一般的な(anion gap:AG)は次式で求める。

AG = Na⁺ − (Cl⁻ + HCO₃⁻)

正常範囲は検査室で異なり、では見かけ上低くなる(目安:アルブミン1 g/dL低下ごとに約2.5 mmol/Lを実測AGに加算して補正する)23。K⁺を含める式を使う施設ではも変わる。

分類 代表的原因 機序・手掛かり
高AG性 ショック、低酸素、痙攣、など
高AG性 、・代謝病の ケトン体蓄積
高AG性 腎不全 硫酸・リン酸などの排泄低下
高AG性 、、、鉄など 、、腎障害、障害など毒物別所見
正常AG性 下痢、 消化管からHCO₃⁻喪失
正常AG性 HCO₃⁻再吸収障害またはH⁺排泄障害
正常AG性 大量のCl⁻負荷、、副腎不全 高Cl血症を伴う

代謝性アシドーシスではによりPaCO₂が低下する(Winterの式の目安:予想PaCO₂≈1.5×HCO₃⁻+8±2 mmHg)。予想PaCO₂から大きく外れる場合は、呼吸性障害が併存する45。

治療

  • ABCDE、血糖、灌流、電解質を評価し、ショック、、下痢、腎不全、毒物など原因を治療する。
  • は原因治療の代替ではない。小児のでは通常投与しない6。重篤な高K血症、HCO₃⁻喪失性病態、一部の中毒、極めて重いなどに適応を限定し、Na負荷、低K血症、CO₂産生、細胞内・中枢神経系アシドーシスに注意する。
  • をしている児の鎮静・挿管では、が急減するとpHが急落する。熟練者が準備し、挿管前後の換気を慎重に維持する。

呼吸性アシドーシス

によりCO₂が蓄積する。急性ではHCO₃⁻上昇が小さく、慢性では腎性代償が進む。

原因群 例
気道閉塞 重症喘息、異物、
肺・胸郭疾患 肺炎、肺水腫、重症、胸郭外傷
中枢抑制 オピオイド・鎮静薬、脳幹障害、痙攣後
神経筋障害 筋疾患、、脊髄障害、
医原性 人工呼吸の分時換気不足、回路異常

高CO₂血症では頭痛、傾眠、興奮、意識低下、頻呼吸または、、不整脈を呈し得る。治療は気道確保と有効換気、原因治療であり、酸素投与だけでは換気不全を治せない。慢性高CO₂血症が疑われる場合も、低酸素を放置せず酸素を投与しながら血液ガスと換気を管理する。

まとめ

  • pH、PaCO₂、HCO₃⁻を順に読み、代償から障害を探す。
  • 代謝性アシドーシスはAGで高AG性と正常AG性に分ける。
  • は限定的で、原因治療と循環・換気の支持が中心である。
  • は換気不全であり、酸素化だけでなく肺胞換気を回復させる。

出典

  1. 1.Traditional approach versus Stewart approach for acid-base disorders: Inconsistent evidence(SAGE Open Medicine・2018)Henderson-Hasselbalchに基づく従来法とStewartの物理化学的アプローチを比較した17件の文献レビューで、両者は理論的に等価とされる一方、実証研究では診断能・予後予測能の優劣について一貫した結論が出ていないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Anion Gap(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2025)低アルブミン血症時のアニオンギャップ補正式(アルブミン1 g/dL低下ごとに約2.5 mmol/L上乗せ)を確認した——低アルブミン血症があるとAGが見かけ上小さくなり、開大性アシドーシスを見逃しうる。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Acid-Base Disorders in the Critically Ill Patient(2023)アニオンギャップの低アルブミン補正、混合性障害の評価方法を確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Respiratory Compensation in Metabolic Disorders(Life in the Fast Lane (LITFL)・2020)代謝性アシドーシスに対する呼吸性代償の予測式(Winterの式、期待PaCO2 ≈ 1.5×HCO3+8±2 mmHg)と、実測PaCO2がこの範囲を外れる場合は呼吸性の異常の併存を疑うという解釈法を確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Fundamentals of Arterial Blood Gas Interpretation(2022)血液ガスを体系的に読み、予測代償から単純性・混合性酸塩基異常を区別する方法を確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.ISPAD clinical practice consensus guidelines 2022: Diabetic ketoacidosis and hyperglycemic hyperosmolar state(2022)小児DKAでは輸液・インスリン・電解質管理を中心とし、重炭酸投与を生命を脅かす高K血症または極めて重い酸血症に限定する指針を確認した。閲覧 2026-08-27