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Disease Atlas · 循環器 · 先天性疾患

三尖弁閉鎖

Tricuspid atresia

別名
TA
臓器系
循環器小児
科目
PathologyPediatrics
トピック
病理学 B/27:先天性心疾患小児科 3-55:チアノーゼ性先天性心疾患
鑑別疾患
肺動脈閉鎖
関連疾患
左心低形成症候群先天性心疾患大血管転位
治療薬
アルプロスタジル
症状
チアノーゼ

🧠 全体像:は「右房と右室をつなぐ弁そのものが形成されない」で、右室は発生できず低形成にとどまる。生存できるかどうかは()で体循環へ血液を逃がせるかと、をどう確保するかの2点にかかる——後者は合併するの有無で正反対の臨床像を作る(狭窄があればでチアノーゼが早期に出る、無ければチアノーゼは目立たずで心不全に至る)。治療は「単心室循環をどうと体循環に振り分けるか」という一本の道筋——BTシャントまたは肺動脈絞扼術→両方向性グレン手術→タン手術——をたどる。

疫学と胎生学

は全体(出生1万あたり81件)のうち出生1万あたり約1.2件を占め、としては症・に次いで第3位の頻度である。男女同等に発生し、家族内再発率は低い1。

胎生学的には、から正常なが形成される過程が破綻することで生じる。多くは口が筋性の陥凹として現れるが、一部(Ebstein型)では離層化しきらなかったが融合して膜状構造を作る1。

Edwards-Burchell分類

大血管の位置関係と、・の有無で3型に分ける1。

型 大血管の位置 頻度
Type I 正常位置 70〜80% Ia:なし・/Ib:小さい・か低形成/Ic:大きい・なし
Type II (D型) 12〜25% IIa:/IIb:/IIc:なし
Type III ・・右室二重出口など 3〜6% 個々の合併奇形により多彩
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tricuspid atresia'>三尖弁閉鎖</span><br>(右房・右室間の交通なし)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atrial septal defect, ASD'>心房中隔欠損</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='right-to-left shunt'>右左シャント</span><br>(体循環への必須の逃げ道)"]
    A --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary stenosis'>肺動脈狭窄</span>はあるか"}
    C -->|"あり(多くのtype Ia/Ib、IIa/IIb)"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary blood flow'>肺血流</span>が動脈管に依存"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ductus arteriosus closure'>動脈管閉鎖</span>でチアノーゼが顕在化"]
    E --> F["出生後早期にプロスタグランジン開始"]
    C -->|"なし(type Ic、IIc)"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary blood flow'>肺血流</span>は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventricular septal defect (VSD)'>心室中隔欠損</span>経由で確保"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neonatal period'>新生児期</span>はチアノーゼが目立たず見逃されやすい"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary vascular resistance'>肺血管抵抗</span>低下とともに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased pulmonary blood flow'>肺血流過多</span><br>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='congestive heart failure (CHF)'>うっ血性心不全</span>"]

合併する心奇形

  • :路として必須。これが無ければ体循環へ血液が到達できず生存できない。
  • :type Ia以外の全型で合併する。肺動脈への血流経路になる。
  • :を伴う例ではがこれに依存する。
  • :type IIで合併し、全体の12〜25%を占める1。

生理は肺動脈狭窄の有無で二分される

を伴う例では、右房の血液がを経て左房・左室・大動脈へ流れる一方、は動脈管に依存する。動脈管が生理的に閉鎖すると早期(特に閉鎖後)にチアノーゼが顕在化するため、出生後早期にプロスタグランジン(アルプロスタジル)を開始してを維持する1。

を欠く例では、左室が事実上単一の機能心室となって全身と肺の両方を灌流する。はチアノーゼを欠くため見逃されやすく、生理的にが低下する時期(生後数週)にが進んで頻呼吸・などのの徴候が顕在化する1。

診断

  • 心電図:左上方偏位(-30°〜-90°)が特徴的で、右室起電力の低下とを反映する1。
  • 心エコー:口に血流が無く、左室が右室より不釣り合いに大きいことを確認する。診断の中心的検査である1。
  • 胎児診断:平均診断在胎週数は約22週で、早期には11週で指摘される例もある1。
  • :診断そのものには必須でないが、心房間交通が狭小な場合は(Rashkind法)を行う。

治療は3段階の緩和手術で単心室循環へ導く

⚠️ 無治療では生後1年以内の死亡リスクが高い。 は無治療では致死的で、早期発見と時機を逃さない外科的介入が管理上の要になる2。単心室循環を前提に、複数段階の姑息手術でと体循環を分離していく1。

段階 時期 内容
の初期対応 出生直後 例ではプロスタグランジンでを維持
第1段階 例:修正Blalock-Taussigシャント/を欠く例:肺動脈絞扼術または経過観察
第2段階 生後6か月頃 両方向性グレン手術(-肺動脈吻合)またはhemi-Fontan
第3段階 2〜3歳頃 タン手術(下大静脈-肺動脈の非弁付き導管接続、しばしば有窓化)

💡 タン循環は「単心室でと体循環をにつなぐ」生理そのものが脆弱である。 肺へのを右室のポンプ作用に頼らず静脈圧だけに依存するため、の上昇や不整脈が容易に循環全体を破綻させる。

予後

タン手術後のは、Sittiwangkulらの報告で1年・5年・20年時点でそれぞれ82%・72%・61%であった。より最近のMeryらの報告では、15年時点の移植なしが92%、タン失敗回避率が87%に達し、タン手術自体のは一貫して2%未満である1。

⭐ 長期合併症はタン循環に特有のものが中心になる。 を主体とする不整脈、血栓塞栓症(約11%)、(タン術後5〜12%)、気管支炎(約4%)、・肝硬変、が代表である1。これらは「単心室循環を生涯背負う」というの治療の本質的な帰結であり、タン手術は根治ではなく生理のにすぎないことを示している。

鑑別

  • :と対照的に左室系が低形成となる単心室疾患。でにプロスタグランジンを要する点は共通するが、体循環そのものが動脈管に依存する点が異なる。
  • :を伴うと同様に減少型のを呈するが、自体は交通している。
  • Ebstein奇形:の位置異常であり閉鎖ではない。のうち一部の胎生学的機序(離層化不全による膜状構造)と関連する。

まとめ

  • は出生1万あたり約1.2件、の第3位の頻度で、口の欠如により右室が低形成にとどまる。
  • Edwards-Burchell分類で大血管位置正常のtype I(70〜80%)、を伴うtype II(12〜25%)、その他のtype III(3〜6%)に分け、各型はさらに・の有無で細分される。
  • によるが生存の必須条件。の有無で生理が二分し、狭窄があればでチアノーゼが早期に出現、無ければ見逃されやすくからに至る。
  • 診断は心エコーが中心。心電図の左上方偏位が特徴的。
  • 治療はのプロスタグランジンに始まり、BTシャントまたは肺動脈絞扼術→両方向性グレン手術→タン手術という3段階の緩和術で単心室循環を構築する。
  • タン手術後の長期は改善傾向にあるが、不整脈・血栓塞栓症・などタン循環特有の長期合併症が残る。

出典

  1. 1.Tricuspid Atresia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)三尖弁閉鎖が先天性心疾患全体(出生1万あたり81件)のうち出生1万あたり約1.2件を占めチアノーゼ性先天性心疾患としては第3位の頻度であり、男女同等に発生し家族内再発率は低いこと、胎生学的には心内膜床由来の房室弁形成が破綻し三尖弁口が筋性の陥凹として現れるかEbstein型では離層化した小葉が融合して膜状構造になること、Edwards-Burchell分類で大血管の位置が正常なtype I(70〜80%、心室中隔欠損と肺動脈狭窄の有無でIa/Ib/Icに細分)、大血管転位を伴うtype II(12〜25%、同様にIIa/IIb/IIcに細分)、総動脈幹・房室中隔欠損・右室二重出口などを伴うtype III(3〜6%)に分けられること、心房中隔欠損(右左シャント路として必須)・心室中隔欠損(Ia以外)・動脈管開存(肺動脈狭窄例で肺血流を依存)を合併しうること、肺動脈狭窄例では動脈管が閉鎖すると新生児期にチアノーゼが顕在化し出生後早期にプロスタグランジンを開始して動脈管開存を維持すること、肺動脈狭窄を伴わない例では新生児期にチアノーゼを欠き見逃されやすく肺血管抵抗低下とともに肺血流過多からうっ血性心不全を呈すること、心電図で左上方QRS軸偏位(-30°〜-90°)を特徴とすること、心エコーで三尖弁の欠如と左室優位の心室不均衡を確認すること、胎児診断の平均在胎週数が約22週であること、治療が新生児期のプロスタグランジン投与に始まり肺動脈狭窄例では修正Blalock-Taussigシャント・肺動脈狭窄を欠く例では肺動脈絞扼術または経過観察を第1段階とし、生後6か月頃に両方向性グレン手術(上大静脈-肺動脈吻合)を第2段階、2〜3歳頃にフォンタン手術(下大静脈-肺動脈の非弁付き導管接続、しばしば有窓化)を第3段階とする3段階緩和術で進められること、未治療では生後1年以内の死亡リスクが高い一方、フォンタン手術後の生存率が1年・5年・20年で82%・72%・61%(Sittiwangkulら)、直近の報告では15年時点の移植なし生存率92%・フォンタン失敗回避率87%(Meryら)、フォンタン手術の周術期死亡率が一貫して2%未満であること、長期合併症として心房頻拍を主体とする不整脈、血栓塞栓症(約11%)、蛋白漏出性腸症(フォンタン術後5〜12%)、プラスチック気管支炎(約4%)、肝線維化・肝硬変、腎機能障害があることを確認した。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Tricuspid atresia: Where are we now?(Journal of Cardiac Surgery・2020)三尖弁閉鎖が新生児期にチアノーゼで発症する複雑先天性心疾患であり無治療では致死的で複数段階の緩和手術を要すること、早期発見と時機を逃さない外科的介入が管理上の要であること、病因の解明・薬物療法の役割の明確化・外科的管理の最適化にはなお課題が残ることを確認した。閲覧 2026-09-05