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Lab values · Published

5-ヒドロキシインドール酢酸

5-Hydroxyindoleacetic acid

別名
5-HIAA尿中5-HIAA
臓器系
内分泌・代謝腫瘍
科目
Internal MedicinePathology
トピック
内科学 S-16:カルチノイド症候群内科学 E-07:神経内分泌腫瘍病理学 C/89:多発性内分泌腫瘍症(MEN)/カルチノイド症候群
関連疾患
カルチノイド症候群・神経内分泌腫瘍(ゾリンジャー・エリソン症候群、インスリノーマを含む)

🧠 全体像:5-HIAAは、直接測るのが難しいセロトニンの代わりに、その最終を測ってセロトニン産生量を間接的に推定する検査である。分かるのは機能性による産生の有無と、治療に伴うその増減。分からないのは腫瘍の存在部位そのものであり、前腸由来の腫瘍のように代謝経路が違うタイプでは、症状があっても正常値にとどまり得る。

何を測っているか

はまず(5-HTP)に、次いでセロトニン(5-HT)に変換される。セロトニンはによって代謝され、最終産物である5-HIAAとして尿中に排泄される。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tryptophan'>トリプトファン</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='5-hydroxytryptophan'>5-ヒドロキシトリプトファン</span>(5-HTP)"]
    B --> C["セロトニン(5-HT)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoamine oxidase'>モノアミン酸化酵素</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aldehyde dehydrogenase (ALDH)'>アルデヒド脱水素酵素</span>で代謝"]
    D --> E["5-HIAA"]
    E --> F["尿中へ排泄"]

セロトニンそのものを測らないのは、血中の遊離型セロトニンの大半が血小板へ取り込まれてしまい残存量が少ないうえ、半減期が短く、採血手技(や溶血)や採血のタイミングだけで容易に変動してしまうためである。最終である5-HIAAは尿中に安定して蓄積するため、24時間という長い時間軸でセロトニン産生量を平均化して評価できる。

基準値と単位

古典的な標準検体はで、の一例として3〜15 mg/24時間が報告される1が、測定法・施設によって数値は大きく異なるため、依頼先のを確認する。

の負担(採取もれ、保存条件の遵守の難しさ)を避けられる代替検体として、血漿(血清)5-HIAAが使えるようになってきている。ある検証研究では血清5-HIAAの約139 nmol/Lで感度96.3%・特異度87.6%、24時間尿中5-HIAAとの相関係数r=0.892と報告される2。これは単一研究で示されたであり、採用するアッセイのに従う。

高値の意味

乾性のに分泌性の下痢・喘鳴を伴う病歴からを疑ったときに測定することが多い。

病態 機序
由来かつあり、または肝を介さずへ直接放出する部位) 腸管由来のセロトニンは通常、門脈を経て肝臓でを受け不活化される。があるとこのを回避してセロトニンがへ到達し、である5-HIAAも上昇する。気管支・卵巣原発など体循環へ直接排流する部位では、がなくても上昇し得る
(セリアック病、、嚢胞性線維症など) 食事由来の処理過程が変化し、5-HIAA産生に影響する
腸閉塞 腸管うっ滞に伴うセロトニン代謝の変化

高値そのものは確定診断ではない。造影CT・MRIやなど)でを検索する。は特異度が低く、この段階のスクリーニングには用いない。

低値の意味

低値そのものが問題になる場面は乏しく、この検査の主題ではない。低下は治療反応の指標として意味を持つが、単独の低値を疾患の除外根拠として扱わない。

測定上の注意

この検査の解釈は、偽陽性・偽陰性の管理そのものと言ってよい。

⚠️ 食事:セロトニンを多く含む食品(バナナ、パイナップル、キウイ、プラム、トマト、アボカド、ナス、クルミ・ペカンなどのナッツ類)を採取前から制限する1。守られないとの原因になる。

⚠️ 薬剤のいずれも起こり得るが、干渉する薬剤とその方向は測定法(蛍光法・など)によって異なる。関連薬、などが干渉薬剤として挙げられることがあるが、一律のリストとして断定せず、依頼先の検査室が指定する・食事制限の指示に従う。

⚠️ 検体の取り扱いは酸性下で保存する。保存条件が守られないと5-HIAAが分解し、につながる。

⚠️ 偽陰性の構造的な理由(前:気管支・胃など前腸由来のが乏しく、セロトニンではなく前駆体である5-HTPを分泌する。5-HTPの一部は5-HIAAへ変換されるものの変換効率が低いため、が臨床的に強く疑われても5-HIAAが正常〜軽度上昇にとどまることがある3。これは食事・薬剤の管理では防げない偽陰性であり、5-HIAAが正常でも前を疑うときは画像診断や他のを追加する。

経時変化とモニタリング

5-HIAAは単回値による診断だけでなく、治療反応・再発の経過観察に使う。同じ検体(尿または血漿)・同じ測定法でに比較する。

補助的なであるとの使い分けが問題になる。、腎機能低下、でも上昇し特異度が低いため、5-HIAAより「優れた検査」ではない3。5-HIAAはセロトニン産生量そのものを反映するため機能性症候群のモニタリングに向き、腫瘍を含めたの補助的な指標として役割を分ける。

高値の5-HIAA(セロトニン)に持続的にさらされると、の線維性肥厚を来すへ進み得る3。5-HIAAの持続高値や心症状があれば、心エコーによる評価を組み合わせる。

治療中に値が上昇へ転じた場合は、症状の顕在化に先立つ再発・進行の徴候として扱う。ただし単回値の変動だけで治療強化を判断せず、画像検査や症状の経過と合わせて評価する。

まとめ

  • 5-HIAAはセロトニンの最終であり、半減期が短く採血手技で変動しやすいセロトニン自体の代わりに測定する。
  • が古典的標準だが、血漿5-HIAAが負担の少ない代替検体として使えるようになってきている。
  • 高値は由来+、または肝を介さない部位)、、腸閉塞で起こる。
  • 食事・薬剤による、保存条件不良によるに加え、前ではの乏しさによる構造的な偽陰性がある。
  • 治療反応・再発のモニタリングに使い、と役割を分けて解釈する。持続高値はのリスクとして心エコー評価につなげる。

出典

  1. 1.Biochemistry, 5-Hydroxyindoleacetic Acid(StatPearls (Lenchner JR, Santos C)・2023)5-HIAAの代謝経路、尿中基準値の一例、前腸型カルチノイドが芳香族アミノ酸脱炭酸酵素を欠き5-HTPを分泌する機序、偽高値となる食品を確認した閲覧 2026-08-03
  2. 2.Carcinoid Syndrome: A Review(Cureus (Gade AK, Olariu E, Douthit NT)・2020)24時間尿中5-HIAAの感度・特異度、クロモグラニンAとの位置づけの違い、前腸型カルチノイドの機序、セロトニンによる心弁膜線維化の機序を確認した閲覧 2026-08-03
  3. 3.Serum 5-Hydroxyindoleacetic Acid Measurements for the Diagnosis and Follow-up of Carcinoid Syndrome(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism (Kerolles M, et al.)・2025)血清5-HIAAが24時間尿中5-HIAAと強く相関し代替検体として使えること、ソマトスタチンアナログ治療後に低下しモニタリングに使えることを確認した閲覧 2026-08-03