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Lab values · Published

クレアチンキナーゼMB分画

CK-MB

別名
CKMBCK-MB分画Creatine kinase MB
臓器系
循環器運動器
科目
BiochemistryPathologyCardiology
トピック
生化学 2/7:診断ツールとしての酵素;クレアチンキナーゼ活性の測定病理学 A/08:急性心筋梗塞病理学 B/28:心筋梗塞/突然心臓死循環器内科 A-21:非ST上昇型急性冠症候群I:病因・症候・診断循環器 A-23:ST上昇型急性冠症候群I:病因・病態機序・診断
関連疾患
急性冠症候群

🧠 全体像:CK-MBは心筋梗塞診断における「歴史あるマーカー」で、上昇・消失が速いという特性は今も語られる。しかし骨格筋にも一定量存在するため心筋特異性はに及ばず、現行ガイドラインでは追加測定の意義を認められていない。「CK-MB=の第一選択」という記述も、すでに一次資料の実態と合わない。

何を測っているか

CK(creatine kinase)はM(muscle)サブユニットとB(brain)サブユニットが対になった二量体で、組み合わせによりCK-MM・CK-MB・CK-BBの3つのに分かれる。骨格筋はほぼCK-MMで占められるがCK-MBも数パーセント含み、心筋はCK-MBの占める割合が骨格筋より高い。ただし「心筋に優位」なだけで「心筋だけに存在する」わけではない点が、CK-MBの特異性の限界そのものである。

膜が虚血・機械的損傷で破綻すると、細胞質のCK-MBが間質・リンパ系を経て血中へ逸脱する。骨格筋が同程度に傷害されれば、同じ機序でCK-MBが上昇する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='creatine kinase (CK)'>クレアチンキナーゼ</span>(CK)"] --> B["MサブユニットとBサブユニットの二量体"]
    B --> C["CK-MM(M₂)<br>骨格筋に優位"]
    B --> D["CK-MB(MB)<br>心筋に相対的に多いが骨格筋にも存在"]
    B --> E["CK-BB(B₂)<br>脳・平滑筋に優位"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiomyocyte (cardiac myocyte)'>心筋細胞</span>膜の傷害<br>(虚血・機械的損傷)"]
    F --> G["細胞質のCK-MBが血中へ逸脱"]

基準値と単位

CK-MBの測定には質量法(mass assay、ng/mL)と活性法(activity assay、IU/L)があり、数値は互換ではない。

  • 質量法:CK-MBタンパクそのものを2種の抗体で挟み込む(immunoassay)。現在の主流。
  • 活性法:抗M抗体でMサブユニットの酵素活性を阻害し、残るB由来の活性を2倍してCK-MB相当量として算出する。(macro-CK)やCK-BBが混在すると過大評価されやすい。

は測定法・メーカー・施設で異なり、の99基準のような統一指標は普及していない。各施設で検証済みのを用い、別施設の値をそのまま比較しない。

骨格筋由来と心筋由来を見分ける補助指標として、(relative index、CK-MB質量 ÷ 総CK活性 × 100)が使われてきた。総CKに対するCK-MBの割合が高ければ心筋由来を、割合が低くても総CKが著明に高いために絶対値のCK-MBが上がっている場合は骨格筋由来を疑う、という考え方だが、には施設差・文献差があり単独では確定診断に使えない。

高値の意味

高値の機序は、・骨格筋由来・その他に整理すると読みやすい。

代表的状況 手掛かり
1型・心筋炎、PCI・などの心臓手技後 虚血症状、心電図変化、の同時上昇
骨格筋由来 激しい運動、外傷・ 総CKのが低い
その他 によるクリアランス低下 臨床像と不釣り合いな持続高値

⭐ CK-MBは心筋に「特異的」なのではなく「優位」なだけである。の大きい患者(若年男性、慢性の筋疾患)では、骨格筋傷害だけで心筋梗塞域に匹敵する絶対値まで上昇しうる。

測定上の注意

⚠️ CK-MBは偽陽性・偽陰性がともに多く、単独の絶対値ではの有無を判定できない。

  • :CK-BBが免疫グロブリンと結合した1型(高齢者・健常者にもみられ、多くは臨床的意義に乏しい)と、ミトコンドリアCKが重合した2型(重症患者・悪性腫瘍で予後不良と関連する)がある。活性法では残存活性を過大評価しやすく、持続的なの原因になる。
  • 骨格筋疾患・激しい運動・:総CKが著明に上昇すると、CK-MBの絶対値だけを見れば心筋梗塞域に達しうる。相対指数と臨床像を合わせて判断する。
  • 溶血:検体の溶血は測定法により結果を歪める。を確認し、疑わしければ再採血する。
  • 検査法の違い:質量法と活性法、メーカー間の値は互換でない。前医と自施設で測定法が異なる場合、をそのまま比較しない。
  • 腎機能低下:クリアランス低下により基礎値が高く出ることがあり、急性変化かどうかの判断を難しくする。

経時変化と現在の位置づけ

CK-MBは発症後約3〜6時間で上昇を始め、12〜24時間でピークに達し、約2〜3日で正常化する。上昇・消失が比較的速いという特性は、との対比で今も語られる。

項目 CK-MB
上昇開始 約3〜6時間 発症後早期から検出されうる
ピーク 12〜24時間 測定法により異なる
正常化 約2〜3日 数日間持続することが多い
心筋特異性 骨格筋と重複する 心筋に特異的

⭐ 第4版 心筋梗塞のは、cTnI・cTnTを評価の優先と明記し、CK-MBを「感度・特異度ともに劣る」と位置づける。2021年のAHA/ACC/ASE/CHEST/SAEM/SCCT/SCMR胸痛評価ガイドラインも、にCK-MB・を追加測定することは診断上有益ではないとしている。

の評価でも、CK-MBはもはや一次資料の第一選択ではない。 第4版の定義が挙げる(発症・再発から28日以内に起こる急性MI)のは、値が安定・低下傾向にある時点で症状がした場合に、2回目の検体でが20%を超えて上昇したかどうかで判定するもので、CK-MBへの言及はない。CK-MBのが短いという特性は理論上はを検出しやすいという理屈につながるが、それを支持する比較文献自体が乏しく、実際にはに基づくアルゴリズムに置き換わっている。

CK-MBが今も測定されることがあるのは、測定系を持たない施設での代替と、心臓外科手術後のを評価する一部の現場にほぼ限られる。ただし関連MI(type 5 MI)のもcTnの変化量を正本としており、CK-MBはあくまで補助的な参考値にとどまる。

まとめ

  • CK-MBはCKのM/Bサブユニット二量体のうち心筋に相対的に多いで、骨格筋にも存在するため心筋特異的ではない。
  • 質量法(ng/mL)と活性法(IU/L)は互換でなく、は測定法・施設ごとに異なる。は心筋・骨格筋由来の切り分けを補助する。
  • 高値は・骨格筋由来・その他(症など)に機序で整理して読む。
  • 、溶血、測定法の違いが偽陽性・偽陰性の主因になる。
  • 現行の一次資料はを優先とし、CK-MBの追加測定に診断的付加価値を認めていない。評価も「CK-MBが今も第一選択」という教科書的記述は見直しが必要。
  • CK-MBが今も使われるのは、が測定できない施設やの一部評価など、限られた場面に留まる。