検査値ノート一覧へ

Lab values · Published

トランスフェリン

Transferrin

臓器系
血液肝胆膵
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 H-02:鉄欠乏性貧血内科学 H-04:慢性疾患に伴う貧血
関連疾患
髄液漏鉄欠乏性貧血慢性疾患に伴う貧血

🧠 全体像は肝で作られ、血中の鉄を骨髄などへ運ぶ蛋白である。値は鉄欠乏でに上がる一方、炎症、で下がるため、鉄の量だけでなく肝合成・炎症・を同時に映す。単独で鉄欠乏を診断せず、血清鉄、と組み合わせる。

何を測っているか

1分子はFe³⁺を2個結合できる。腸管から吸収された鉄と、を処理したマクロファージから再利用される鉄を、骨髄・肝などへ運ぶ。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal absorption'>腸管吸収</span>鉄・マクロファージ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recycled iron'>再利用鉄</span>"] --> B["血中で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transferrin'>トランスフェリン</span>に結合"]
    B --> C["骨髄の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transferrin receptor (TfR)'>トランスフェリン受容体</span>へ運搬"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemoglobin synthesis'>ヘモグロビン合成</span>"]
    E["鉄欠乏"] --> F["肝の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transferrin'>トランスフェリン</span>産生が増える"]
    F --> G["TIBC上昇・TSAT低下"]
    H["炎症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reduced hepatic synthesis'>肝合成低下</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='protein loss'>蛋白喪失</span>"] --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transferrin'>トランスフェリン</span>低下"]
    I --> J["TIBC低下・TSATの分母低下"]

血清濃度は蛋白量を直接測る。は血清が結合できる鉄量で、主に量を反映するが、直接測定と濃度からの換算では方法差がある。

項目 表すもの 主な用途
の濃度 合成・喪失・鉄欠乏の手掛かり
TIBC 利用可能な の分母
血清鉄 その時点の結合鉄 ・鉄投与の影響が大きい
TSAT 血清鉄 ÷ TIBC × 100(同じ鉄濃度単位で計算) 機能的に利用可能な鉄の割合
の近似 炎症で上昇する

基準値と単位

成人血清の一例は200〜360 mg/dLだが、測定法、年齢、妊娠、エストロゲン、施設で異なる。は診断ではなく、自施設の報告値を用いる。

TIBCを濃度から概算するときは、1 mg/dL当たり約1.25 µg/dLとして換算する方法がある。ただし直接法と換算法は一致しないことがあり、同一患者の経時比較では方法をそろえる。

高値の意味

原因群 機序 併せてみる所見
を増やす代償 低下、血清鉄低下、TSAT低下
妊娠・エストロゲン 肝合成増加 妊娠週数、経口避妊薬、ホルモン治療
回復過程 栄養・肝合成の回復 アルブミン、CRP、体重変化

鉄欠乏ではとTIBCが上がるが、重い炎症、肝疾患、が併存すると上昇が打ち消される。値が基準内でも鉄欠乏を除外しない。

低値の意味

原因群 機序 追加評価
炎症 として合成低下 CRP、背景感染・炎症
肝硬変、重い肝障害 アルブミン、PT、肝機能
・吸収不良 蛋白・エネルギー不足 体重、食事、消化管疾患
尿蛋白、
鉄過剰・ TIBCが正常〜低値となり、併存肝障害でも合成が低下 TSAT、、輸血歴、肝機能

⚠️ 低ではTIBCも低くなり、分母が小さいためTSATが高く見えることがある。高TSATを直ちに鉄過剰と決めず、肝疾患、炎症、、直前の鉄投与を確認する。

鉄パネルの組合せ

病態 血清鉄 ・TIBC TSAT
低下 上昇 低下 低下
低下 低下〜正常 正常〜上昇 低下
両者の併存 低下 可変 炎症で正常化し得る 低下
鉄過剰 上昇 正常〜低下 上昇 上昇
可変 低下 肝障害で上昇し得る 見かけ上上昇し得る

💡 は血清鉄・TSATがともに低くなり得るが、は前者で上昇、後者で低下〜正常という逆方向に動く。炎症下でが疑わしければ、も補助になる。

測定上の注意

  • 自体のは血清鉄より小さいが、として採るなら採血条件と時刻をそろえる。
  • 妊娠、経口避妊薬、エストロゲン治療は高値を作るため病歴を確認する。
  • 、手術、外傷では短期間に低下し、を過小評価し得る。
  • 肝疾患やネフローゼでは、鉄欠乏とは別の機序で低値になる。
  • 異なる施設でTIBCの直接法と換算法が混在すると、TSATの経時比較がずれる。

β2トランスフェリンとの違い

の確認に使うβ2は、髄液・にみられるの異なる分画である。血清濃度やを測る本検査とは目的も検体も異なる。

⭐ 透明なで「を測る」という記載は、通常このβ2分画を指す。血清を測ってもは診断できない。

経時変化とモニタリング

鉄補充ではHb、、TSATの改善を中心に追い、は原因病態の改善とともに解釈する。炎症が軽快するとは上昇し、は低下し得るため、鉄量が急に変わったとしない。

低値が持続する場合は、肝合成能、CRP、尿蛋白、栄養・吸収を評価する。だけをまたは鉄指標としてにしない。

まとめ

  • は肝由来ので、TIBCの主なである。
  • 鉄欠乏では上昇し、炎症・では低下する。
  • 単独値でなく、血清鉄、TSAT、、CRPと組み合わせる。
  • ではTSATが見かけ上高くなるため、鉄過剰を即断しない。
  • 検査のβ2は別検査であり、とは区別する。