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Microbe Atlas · ウイルス

Influenza B virus

B型インフルエンザウイルス

分類
オルソミクソウイルス / Orthomyxoviruses
性状
エンベロープあり Enveloped(−)ssRNA
科目
Medical Microbiology
トピック
3/26: Orthomyxoviruses
自然耐性薬
アマンタジン
原因となる疾患
インフルエンザライ症候群
作用する薬剤
オセルタミビルザナミビルバロキサビルペラミビル

🧠 全体像:B型をA型から分かつ最大の違いは「を持たない」という一点に尽きる。ヒトにほぼ限定されているため、A型の特徴である()が起こらず、()を起こさない——これがA型・B型・C型のうちB型だけを覚える際の一番のポイントである。でとの2系統に分かれ、学童期の良性急性小児筋炎の原因としてはA型より目立つ。

構造とゲノム

項目 内容
科・ゲノム Orthomyxoviridae科。(−)を8分節に分けて持つ。核内で複製する
エンベロープあり、。表面にHA()とNA()を持つ
A型のM2に相当する独自の膜蛋白(BM2)を持つが構造が異なり、の標的にならない
系統 によりとの2系統に分岐している

⚠️ は近年の流行から事実上姿を消した。 2020年3月以降、自然界で発生したの確定検出例が世界ので報告されていない。これを受けてのワクチン組成は2023年9月以降「4価ワクチンに抗原を組み入れる正当性は無い」と判断し、は各国へできるだけ早く除外するよう勧告している1——が3価(A型2株+B/1株)へ移行している背景である。

病原性の仕組み

増殖過程はA型と同じくHAがに結合→エンドサイトーシス→→核→NAによる遊離という流れをたどる(詳細はInfluenza A virusを参照)。B型・C型がを起こさない理由は、この増殖機序ではなく変異の様式にある。

項目 (B型で起こる) (B型では起こらない)
機序 HA・NA遺伝子の点変異の蓄積 2株のによる分節ごとの
成立に必要な条件 変異が蓄積する時間だけ 別の亜型を保有する動物宿主との
B型での成立 成立する(季節性流行の原因) 成立しない——ヒトにほぼ限定され、混ぜる相手となるが存在しない

⭐ 「B型・C型がを起こさない」=「混ぜる相手がいない」から。 には別の亜型を保有する動物宿主とのが要る。A型は・ブタという巨大な動物プールを持つが、B型はヒトにほぼ限定されるため、そもそもの材料となる多様な亜型プールが存在しない。

感染経路と疫学

  • 飛沫感染が主体
  • ヒトがほぼ唯一の宿主(アザラシでの的な検出例が報告されているが疫学的な意味は乏しい)
  • A型と同じ季節(冬季)に流行し、毎シーズンA型と共に、あるいは単独で流行する
  • 学童・小児でのが相対的に高い傾向がある

起こす疾患

病型 特徴
季節性インフルエンザ 臨床像はA型と区別できない(発熱・咳嗽・・筋痛・倦怠感)。詳細はインフルエンザを参照
良性急性小児筋炎 学童期に下腿(ふくらはぎ)の筋痛で歩けなくなる病型。インフルエンザ関連筋炎316例の解析では原因ウイルスの76%がB型(A型は24%)で、インフルエンザの発症から中央値3日(範囲0〜18日)で筋炎が現れ、下腿の筋だけが障害されたものが69%、CPKは例外なく上昇し、臨床的回復までの中央値も3日(範囲1〜30日)だった2
同じ316例では10例(3%)にとどまるが、そのうち86%はA型に関連していた(B型ではなくA型寄り)。8例(80%)が腎不全に至っており、筋炎そのものより重い2
罹患中の(アスピリン)投与で誘発されうる——小児へのアスピリンは禁忌

診断

  • ・でA型と鑑別しながら同定する(詳細はInfluenza A virusを参照)

治療と予防

薬剤 有効性
(NA阻害薬) A型・B型ともに有効——NA阻害薬はA型・B型の両方に活性を持つ3
() A型・B型ともに有効
(M2阻害薬) 無効——アダマンタン系はA型のM2イオンチャネル蛋白を標的とするため、B型には作用しない3

⚠️ がB型に効かないのは「種としての」であり、治療中に獲得される耐性ではない。 B型はA型のM2に相当する膜蛋白としてBM2を持つが構造が異なり、薬の標的にならない。なおアダマンタン系は、循環するA型ウイルスに広範な耐性があるためA型に対しても米国では現在推奨されていない3——「B型だけに効かない薬」ではなく「実質使われない薬」として押さえる。

  • 予防は年次ワクチン接種が柱。3価はA型2株+B/1株、4価はA型2株+B型2系統(ビクトリア・山形)という構成で、でもでもB型株が組み込まれる。抗原を外した3価への切り替えが各国で進み、2025年5月時点で少なくとも40か国が3価を使用中または移行中である1

まとめ

  • B型はA型と同じOrthomyxoviridae科・8分節ゲノムだが、ヒトにほぼ限定されを持たない。
  • ・の2系統があり、は2020年3月以降株の確定検出例がない。は2023年9月以降その抗原を外すよう勧告し、3価ワクチンへの移行が進んでいる。
  • は起こすがは起こさない——混ぜる相手となる動物宿主がいないため、A型と違いを起こさない。
  • 臨床像はA型と区別できないが、学童期の良性急性小児筋炎はB型が約4分の3を占める。一方ではA型寄りなので、この2つを混ぜない。
  • 治療は・が有効だが、は無効(の構造がA型のM2と異なるため標的にならない)。アダマンタン系はA型にも耐性が広がっており実質使われない。

出典

  1. 1.Frequently Asked Questions: Transitioning to Trivalent Seasonal Influenza Vaccines(World Health Organization・2025)同PDFの本文を取得して確認した。2020年3月以降「自然に発生したB/Yamagata系統ウイルスの確定検出が引き続き無い」ことを根拠に、WHOのワクチン組成諮問委員会が2023年9月以降は4価ワクチンへ山形系統抗原を組み入れる正当性は無いと判断し、WHOが各国へできるだけ早い除外を勧告していること。3価がA型2亜型(H1N1・H3N2)+B型1系統(ビクトリア)、4価がA型2株+B型2系統(ビクトリア・山形)という構成であること。2025年5月時点で少なくとも40か国が3価を使用中または移行中であり、移行の判断は各国・地域の当局が行うとされていること。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Influenza-associated myositis in children(Infection(Agyeman P, et al.)・2004)Europe PMC の抄録(PMID 15293074)で確認した。スイスの2大学病院の5例に文献報告(個別症例報告39例と、計272例をまとめた5編)を加えた計316例の解析で、インフルエンザ関連筋炎が学童期に多く男児が女児の約2倍であること、原因ウイルスはB型76%・A型24%であること、インフルエンザ発症から筋炎発症までの中央値が3日(範囲0〜18日)、下腿の筋のみの障害が69%、CPK が例外なく上昇し臨床的回復までの中央値が3日(範囲1〜30日)であること。横紋筋融解症は316例中10例(3%)にとどまり、女児に多く(80%)、むしろA型との関連が多く(86%)、うち8例(80%)が腎不全に至ったこと。全文は未取得で、確認した範囲は抄録にとどまる。閲覧 2026-09-27
  3. 3.About Influenza Antiviral Medications(Centers for Disease Control and Prevention・2026)2026年3月10日更新の本文で、アダマンタン系がA型のM2イオンチャネル蛋白を標的とするため「A型ウイルスには活性があるがB型ウイルスには無い」と明記されていること、循環するA型ウイルスの広範な耐性のため米国では現在推奨されないこと、ノイラミニダーゼ阻害薬はA型・B型の両方に活性を持つことを確認した。閲覧 2026-09-27