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Microbe Atlas · 細菌

Staphylococcus lugdunensis

分類
G+ 球菌 / Gram+ cocciStaphylococcus
性状
Gram陽性 (G+)球菌 Cocci
科目
Medical Microbiology
トピック
2/2: Coagulase-negative staphylococci
原因となる疾患
感染性心内膜炎

🧠 全体像:Staphylococcus lugdunensisは検査室の分類上はと同じ「()」の一員だが、臨床像はまるで別物——CoNSでありながら黄色ブドウ球菌のように正常な自然弁を急速に破壊する心内膜炎を起こす。「だから弱毒・だろう」という検査室での反射的な判断が、本菌に限っては最も危険な誤りになる。

微生物学的な特徴

、ブドウの。で、など他のと同様に分泌型は産生しないために分類される1。

⚠️ ここに大きな落とし穴がある。 の最大65%はの酵素(クランピング因子)を持ち、これが法の試験を偽陽性にする。法だけで判定すると黄色ブドウ球菌と誤同定されうるため、確定同定には遊離を検出する法や、種特異的な生化学的性状・での確認が要る12。💡 の普及がこの菌の「見え方」を変えた——導入後2年間で本菌の同定数は18倍に増えており、以前は他のに紛れて過小評価されていたと考えられる2。

病原性の仕組み

⭐ 陰性という検査室の分類と、病原性の強さは一致しない。 多くのが「異物にへばりつくだけ」で毒素をほとんど持たないのに対し、本菌はクランピング因子(フィブリノゲン結合)や結合タンパク質による組織への強い接着能を持ち、正常な組織にも積極的に取り付く1。

flowchart TD
    A["皮膚常在の<br>Staphylococcus lugdunensis<br>(主に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='groin'>鼠径部</span>)"] --> B["経皮的損傷・カテーテル挿入・<br>菌血症で血流へ侵入"]
    B --> C["クランピング因子・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibronectin'>フィブロネクチン</span>結合<br>タンパク質による強い組織接着"]
    C --> D["正常な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='native valve'>自己弁</span>にも定着"]
    D --> E["急性・高度破壊的な<br>自然弁心内膜炎"]
    C --> F["異物(人工関節・カテーテル)への<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='biofilm formation'>バイオフィルム形成</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prosthetic joint infection'>人工関節感染</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='catheter-related bloodstream infection, CRBSI'>カテーテル関連血流感染</span>"]

💡 「だから自然弁は安全」という前提が本菌には通じない。 他のによる心内膜炎が主にに生じるのに対し、本菌は既存のがない自然弁にも急性かつ高度に破壊的な心内膜炎を起こし、抗菌薬治療に加えてを要することが多い1。

感染経路と疫学

  • 健常者の30〜50%に定着するで、・会陰部(いわゆる「ベルトラインより下」)が主な定着部位2
  • として、定着部位から経皮的に、あるいは菌血症を介して血行性に他部位へ広がる
  • 皮膚軟部組織感染のは年間10万人あたり53例、菌血症は入院10万人あたり5.6例(臨床的に意味のあるものは1.3例)と報告される2
  • 他のよりの割合が高い点も臨床像の特徴

起こす疾患

疾患 特徴
自然弁にも急性・高度破壊的に生じうる。による心内膜炎の中ではに次いで頻度が高く、手術を要する割合は約70%(黄色ブドウ球菌心内膜炎の37%より高い)2
蜂窩織炎・皮膚軟部組織感染 最も頻度の高い臨床像の一つ
・骨髄炎 表面へのによる
定着部位からの経皮的侵入による

診断

⭐ 血液・臨床検体からS. lugdunensisが検出されたら、他のと同列に「疑い」として扱わない。 臨床的な背景(発熱、、の存在)があれば、黄色ブドウ球菌に準じた精査(複数セットの血液培養、心エコー)を進める。

  • 法の試験だけに頼ると、クランピング因子のためにS. aureusと偽陽性の誤同定をしうる1
  • 確定同定には法での遊離陰性の確認、または種特異的な生化学的性状・を用いる2

治療と予防

  • 多くの株は感受性だが、米国でののペニシリン耐性(βラクタマーゼ産生)率は約45%と報告されており、をの第一選択にはしない2
  • 第一選択はなどβラクタマーゼ非感受性のβ-ラクタム系。感受性判定のは黄色ブドウ球菌と共有される12
  • 心内膜炎では黄色ブドウ球菌性心内膜炎と同様に、・心不全・に対する外科的介入の閾値を低く保つ(手術を要する割合が約70%と高いことを踏まえる)2
  • (人工関節・カテーテル)関連感染では、のため多くの場合異物のが治療の本体になる

まとめ

  • ()の一員だが、クランピング因子のため法でS. aureusと誤同定されうる。
  • 病原性はほかのより高く、クランピング因子・結合タンパク質による強い組織接着能を持つ。
  • 自然弁にも急性・高度破壊的な心内膜炎を起こす点が最大の特徴で、心内膜炎の中ではS. epidermidisに次いで多く、手術を要する割合も約70%(S. aureus心内膜炎の37%)と高い。
  • ・会陰部に常在し、皮膚軟部組織感染・・の原因にもなる。
  • 治療は多くがなどβ-ラクタム系で足りるが、約45%はペニシリン耐性であり、心内膜炎では外科的介入も積極的に検討する。

出典

  1. 1.From clinical microbiology to infection pathogenesis: how daring to be different works for Staphylococcus lugdunensis(Clinical Microbiology Reviews・2008)Staphylococcus lugdunensisは分泌型コアグラーゼを産生しないためコアグラーゼ陰性に分類されるが、一部の株が持つ膜結合型の酵素(クランピング因子)のためにS. aureusと誤同定されうる。皮膚常在菌でありながら臨床像は他のCoNSよりS. aureusに近く、急性かつ高度に破壊的な自然弁心内膜炎を起こして抗菌薬に加え外科治療を要することが多い。一般に抗菌薬感受性は良好で、CLSIの感受性ブレイクポイントはS. aureusと共有される閲覧 2026-09-08
  2. 2.Staphylococcus lugdunensis: Review of Epidemiology, Complications, and Treatment(Cureus・2020)膜結合型のクランピング因子は最大65%の分離株に存在し、スライド法のコアグラーゼ試験を偽陽性にしてS. aureusとの誤同定を招く。本菌は健常者の30〜50%(主に鼠径部)に定着し、皮膚軟部組織感染の発生率は年間10万人あたり53例、菌血症は入院10万人あたり5.6例(臨床的に意味のあるものは1.3例)。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌による心内膜炎の中ではS. epidermidisに次いで頻度が高く、手術を要する割合は約70%でS. aureus心内膜炎の37%より高い。米国での分離株のペニシリン耐性率は約45%で、第一選択薬はオキサシリンなどβラクタマーゼ非感受性のβ-ラクタム薬とされ、MICのブレイクポイントはS. aureusと共有される。MALDI-TOF MSの導入後2年間で本菌の同定数は18倍に増加した。閲覧 2026-09-08