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異常不随意運動評価尺度

Abnormal Involuntary Movement Scale

別名
AIMS
臓器系
神経精神
科目
PsychiatryNeurology
トピック
精神医学 A-09:統合失調症の急性期・長期治療とリハビリテーション精神医学 A-03:精神薬理学I:抗精神病薬と抗不安薬の作用機序・適応・効果・副作用神経内科 G2-18:大脳基底核系の障害
構成:症状
ジスキネジア
適用疾患
遅発性ジスキネジア

🧠 全体像は「抗精神病薬による異常な不を、身体を部位ごとに分解して0〜4点で採点する」ための診察手技である。血液検査や画像のように機械的に値が出る指標ではなく、診察者が患者を椅子に座らせ、口を開けさせ、歩かせて観察した所見を数値化する点が本質になる。単発の点数そのものよりも、同じ患者に同じ手順で繰り返し施行しての変化を追うことに主眼がある。

目的と適用場面

内容
目的 抗精神病薬など薬によるをはじめとする異常不の重症度を、身体部位別に定量化する
対象 薬(抗精神病薬・など)を服用中、または服用歴のある患者全般
使う場面 治療開始前のベースライン評価、定期モニタリング、症状変化の追跡、での測定
モニタリング頻度の目安 は6か月ごと、は12か月ごとが基本。危険因子(高齢・女性・量が多いなど)があれば第一世代は3か月ごと、第二世代は6か月ごとに短縮する1。2020年改定のAPAガイドラインでは高危険群は6か月ごと、それ以外は12か月ごとという単純化した目安も示されている2
評価しないもの な内的そのもの(これらは別の評価尺度が対象とする)

もとは1976年にNIMH(米国国立精神衛生研究所)のGuyによるECDEU Assessment Manual for Psychopharmacologyで発表された。抗精神病薬治療を受ける患者に共通して起こりうる不を、診察者間でばらつきなく数値化する目的で作られ、現在もの臨床評価・の主要尺度として広く使われている。

⭐ 実臨床ではの記載率自体が低いことが課題として報告されており、ある外来精神科クリニックでは介入前の記載率がわずか3%(30例中1例)にとどまっていた。障壁として、正式なトレーニング不足・実施を促すリマインダーの欠如・推奨頻度の分かりにくさが挙げられている2。「評価尺度が存在すること」と「実際に使われること」は別問題であり、定期評価を仕組み化する意識が求められる。

構成要素と配点

項目1:顔面(前額・・眼周囲・頬・鼻・口を含む)

0点 1点 2点 3点 4点
なし 目立たない程度(正常範囲の可能性あり) 軽度 中等度 重度

項目2:口唇・口周囲

0点 1点 2点 3点 4点
なし 目立たない程度 軽度 中等度 重度

項目3:下顎(咬合・食いしばり・様運動・開口・側方偏位を含む)

0点 1点 2点 3点 4点
なし 目立たない程度 軽度 中等度 重度

項目4:舌(口腔内外での動きの亢進のみを採点し、動きを保持できないことは採点しない)

0点 1点 2点 3点 4点
なし 目立たない程度 軽度 中等度 重度

項目5:上肢(腕・・手・指。様〈速く不規則で無目的〉・様〈遅く複雑で性〉・様〈瞬間的な〉のいずれも含む)

0点 1点 2点 3点 4点
なし 目立たない程度 軽度 中等度 重度

項目6:下肢(脚・膝・足首・。側方への膝の動き・足の打叩・踵落とし・足の身もだえ・を含む)

0点 1点 2点 3点 4点
なし 目立たない程度 軽度 中等度 重度

項目7:体幹(頸部・肩・腰。・捻転・身もだえ・骨盤の回旋様運動を含む)

0点 1点 2点 3点 4点
なし 目立たない程度 軽度 中等度 重度

項目8:異常運動の全体的重症度(臨床医の総合判断)

0点 1点 2点 3点 4点
なし 最小限 軽度 中等度 重度

項目9:異常運動による機能障害の程度

0点 1点 2点 3点 4点
なし 最小限 軽度 中等度 重度

項目10:患者自身の異常運動への

0点 1点 2点 3点 4点
なし あり、苦痛なし あり、軽い苦痛 あり、中等度の苦痛 あり、強い苦痛

項目11:現在、歯や義歯の問題があるか

0点 1点
なし あり

項目12:ふだん義歯を使用しているか

0点 1点
いいえ はい

慣例として、は項目1〜7の合計で算出し、0〜28点の範囲をとる。項目8〜10(全体重症度・機能障害・患者の)と項目11〜12(歯科状態)は合計点には含めず、それぞれ個別の所見として記録する3

⚠️ 合計点は線形尺度ではない。合計7点でも「7項目すべてが1点」と「1項目が3点・別の1項目が4点・残りが0点」では臨床的な重みがまったく異なる。合計点だけを追わず、必ず個々の項目の内訳も残す3

採点にあたっては、活動時(口を開く・舌を出す・指タップ・上肢の屈伸・立位・歩行など)に誘発された運動と、安静時に自発的に観察された運動を区別して評価し、義歯は外さず装着したまま観察する。

解釈とカットオフ

状況 目安
Probable TD(の可能性が高い) 2領域以上で2点(軽度)以上、または1領域以上で3〜4点(中等度〜重度)1
Schooler-Kane基準(研究用 上記の重症度基準に加え、抗精神病薬へのが3か月以上(連続・断続を問わない)、かつ他に異常運動を説明しうる病態が除外されていること1
臨床的に意味のある変化( においてには未確立。作業部会はデータから合計点の2〜3点の変化を目安として提案している3

💡 「Probable TD」止まりであることを忘れない。 の点数はあくまで異常運動の重症度を定量化するものであり、単独ではの確定診断にはならない。曝露歴・・他疾患の除外を合わせて初めて臨床診断が成立する1

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 項目8〜10(全体重症度・機能障害・患者の)は採点基準の標準化が不十分で、特に項目9・10は身体部位別の重症度評価と相関しないことがある。患者自身にが乏しい場合、項目10は実態を反映しない3

⚠️ 経験の浅い評価者では評価者間のばらつきが大きくなりやすい。詳細な記述子・訓練なしに数値だけを機械的に付けない3

⚠️ 歯科状態の項目(11・12)は義歯の有無や適合不良そのものが口周囲の異常運動と紛らわしい所見を作りうるため、判定にあたって混同を避ける必要がある。

⚠️ を念頭に設計された尺度であり、な内的や、といった他のを評価するものではない。これらは別の評価尺度・診察所見で捉える。の重症度はBarnes評価尺度のような専用の尺度で評価する。

⚠️ 単独の一時点の点数で(原因薬の中止・変更)を決めない。の変化と、曝露歴・を合わせた臨床判断が必要になる1

まとめ

  • は抗精神病薬など薬による異常不を、口腔顔面・上肢・下肢・体幹の7身体部位で0〜4点採点する診察手技であり、合計点(項目1〜7の和、0〜28点)はな変化を追うことに主眼がある。
  • 項目8〜10(全体重症度・機能障害・患者の)と項目11〜12(歯科状態)は合計点に含めず、別個の所見として記録する。
  • Probable TDの判定は2領域以上で2点以上、または1領域以上で3〜4点。Schooler-Kane基準ではこれに3か月以上・他疾患の除外が加わる。
  • 合計点は線形尺度ではなく、内訳の分布次第で同じ点数でも意味が異なる。においてには未確立で、2〜3点が目安とされる。
  • 評価者間のばらつき、項目8〜10の標準化不足、歯科状態との混同に注意し、単独の点数だけでを決めない。

出典

  1. 1.Epidemiology, Prevention, and Assessment of Tardive Dyskinesia and Advances in Treatment(The Journal of Clinical Psychiatry・2017)AIMSの7身体部位の項目が0〜4点で採点されること、probable TDの判定に用いられる基準(2領域以上で2点以上、または1領域以上で3〜4点)、Schooler-Kane基準の3要件(抗精神病薬への累積曝露3か月以上・AIMSなどの尺度で1領域以上の中等度またはは2領域以上の軽度の異常運動・他の原因の除外)、APA推奨のモニタリング頻度(第一世代抗精神病薬は6か月ごと、第二世代抗精神病薬は12か月ごと、危険因子があれば第一世代は3か月ごと・第二世代は6か月ごとに短縮)を確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Revisiting the Abnormal Involuntary Movement Scale: Proceedings From the Tardive Dyskinesia Assessment Workshop(The Journal of Clinical Psychiatry・2018)AIMSが12項目(項目1〜4は口腔顔面領域〈顔面表情筋・口唇周囲・下顎・舌〉、項目5は上肢、項目6は下肢、項目7は体幹、項目8は臨床医による全体重症度、項目9は異常運動による機能障害、項目10は患者自身の自覚と苦痛、項目11〜12は歯科状態)で構成され、項目1〜9は0(なし)〜4(重度)の5段階、項目10は0(自覚なし)〜4(自覚し強い苦痛)の5段階、項目11〜12は0/1の二値であること、慣例として合計点は項目1〜7の合計(0〜28点)で算出されるがこれは線形尺度ではなく同じ合計点でも内訳の分布次第で臨床的意味が異なりうること、項目8〜10の判定基準が標準化されておらず項目9・10は身体部位の重症度評価と相関しないことがあること、AIMSの臨床的に意味のある最小変化量(MCID)は遅発性ジスキネジアにおいて確立されていないが、作業部会はバルベナジンの臨床試験データ(ベースラインからの平均変化が−2.2および−3.4点)から2〜3点を目安として提案したことを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Increasing Abnormal Involuntary Movement Scale (AIMS) Screening for Tardive Dyskinesia in an Outpatient Psychiatry Clinic: A Resident-Led Outpatient Lean Six Sigma Initiative(Cureus・2023)2020年改定のAPAガイドラインでは遅発性ジスキネジアの高危険群は6か月ごと、それ以外は12か月ごとにAIMSで評価することが推奨されていること、実臨床では介入前のAIMS記載率がわずか3%(30例中1例)にとどまり、正式なトレーニング不足・実施を促すリマインダーの欠如・推奨頻度の分かりにくさが記載率低下の要因として挙げられたことを確認した閲覧 2026-08-10