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PASI(乾癬面積・重症度指数)

PASI

別名
Psoriasis Area and Severity Index
臓器系
皮膚
科目
Clinical PharmacologyDermatology
トピック
臨床薬理学 02:乾癬の薬物療法皮膚科 3-20:乾癬の臨床型と治療
構成:症状
紅斑落屑
適用疾患
尋常性乾癬

🧠 全体像:PASI(乾癬面積・重症度指数)は、の局面の重症度をが診察して数値化する指標である。体を4部位に分け、で紅斑・浸潤(厚さ)・鱗屑の強さを0〜4点で足し、病変の面積点(0〜6点)と部位の重みを掛けて合計する。範囲は0〜72点。の評価項目として定着し、治療前からの改善率(PASI 75・PASI 90)が治療効果を語る共通の言葉になっている。⚠️ PASIは面積と強さの積を足したで、顔・爪・手足・外陰の病変が生活に与える重さは反映しない。数値だけで治療の適応を決めない。

目的と適用場面

内容
目的 乾癬の局面の面積と炎症の強さを、診察所見から数値化する
対象 成人の。この集団で広く検証され、再現性が高いとされる1
使う場面 の評価項目、の選択と効果判定、外来での経過追跡
位置づけ ではない。診断後の重症度と治療反応の尺度である

PASIは1978年に、の試験の評価項目として導入された。欠点を伴いながらも、状の重症度を測る最も確立した指標である2。

構成要素と配点

体を頭頸部・上肢・体幹・下肢の4部位に分け、部位ごとに3つの徴候と面積を採点する3。

flowchart TD
    A["体を4部位に分ける<br>頭頸部・上肢・体幹・下肢"] --> B["部位ごとに紅斑・浸潤・鱗屑を<br>0〜4点で採点して足す(0〜12点)"]
    B --> C["部位の面積点(0〜6点)を決める"]
    C --> D["部位の点 = 係数 × 徴候の合計 × 面積点"]
    D --> E["4部位の点を足す<br>PASI(0〜72点)"]

3つの徴候(0〜4点、3徴候共通の程度)

徴候 見るもの
紅斑 局面の赤み
浸潤(厚さ) 局面の盛り上がり・厚み
(鱗屑) 局面を覆う鱗屑
点数 程度
0 なし
1 軽度
2 中等度
3 重度
4 きわめて重度

3徴候は、その部位の中の平均的な程度で採点する34。徴候の合計は部位ごとに0〜12点になる。

面積点(0〜6点)

面積点 部位の面積に占める病変の割合
0 なし
1 10%未満
2 10〜29%
3 30〜49%
4 50〜69%
5 70〜89%
6 90〜100%

面積は、その部位を100%としたときの割合で見積もる4。全身のに占める割合ではない。目安として、手のひらを指も含めて広げた面積がの約1%、親指が約0.1%である3。

部位の係数

部位 係数
頭頸部 0.1
上肢 0.2
体幹 0.3
下肢 0.4

係数は部位の表面積に基づく重みづけで、合計は1.0になる4。したがって最大は、が徴候12点・面積点6点の72点である。

計算の例(模式例)

部位 紅斑 浸潤 鱗屑 徴候の合計 面積点 係数 部位の点
頭頸部 2 1 1 4 1 0.1 0.4
上肢 2 2 2 6 2 0.2 2.4
体幹 3 2 2 7 3 0.3 6.3
下肢 2 2 3 7 2 0.4 5.6

合計は0.4 + 2.4 + 6.3 + 5.6 = 14.7点である。数値は説明用に作った例で、実際の患者のものではない。

解釈とカットオフ

⚠️ PASIの点数帯は、PASIそのものの定義ではなく、ガイドラインごとに決めた運用の線である。

区分 EuroGuiDerm準拠のガイドライン(2026)2 ラテンアメリカのコンセンサス(2025)1
軽症 BSA 10以下かつPASI 10以下かつDLQI 10以下 PASI 5未満かつDLQI 5未満(または外用で管理できる)
中等症 中等症と重症を分けない PASI 5以上10未満、またはDLQI 5以上10未満(または外用で効果不十分)
中等症〜重症・重症 (BSA 10超またはPASI 10超)かつDLQI 10超 PASI 10以上、またはDLQI 10以上
特に重症 PASI 20以上、DLQI 15以上、急速な悪化、手足・頭皮・顔・爪・外陰の高度な病変 区分を置かない

点数が低くても重症側に入る所見がある。EuroGuiDerm準拠の指針は、露出部・頭皮・外陰・手掌足底の病変、2本以上の爪のや、を伴うそう痒、難治性の局面があれば、軽症を中等症〜重症へ格上げする2。ラテンアメリカのコンセンサスは、顔・手掌・足底・外陰・頭皮・爪の特殊部位、・膿疱型、関節炎の合併、生物学的製剤の必要性を、そのまま重症に入れる1。世界的に検証された重症度区分は確立していないので、どの表を使ったかを書く。

治療効果は治療前からの改善率で見る

PASI xは、治療前のPASIから少なくともx%改善したことを表す。では、達成した患者の割合で示す。

  • PASI 75:の終わりに達成すべき最低の目標である2。
  • PASI 90、が2未満、またはDLQIが1以下:望ましい目標である2。
  • 上の例(14.7点)では、PASI 75は3.675以下、PASI 90は1.47以下になる。治療前が20点未満なら、PASI 90は「 2未満」より厳しい基準になる(20点を超えると逆転する)。
  • PASI 75はのの基準とされる。PASI 50でも生活の質は改善するとして、PASI 50を意義のある評価項目とする提案もある5。

ガイドラインが根拠とするコクランのでは、PASI 90の達成率でIL-17阻害薬(・など)が他のすべての介入を上回り、生物学的製剤のがを上回った。評価は後8〜24週時点である2。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ PASIは重症度に対して線形ではない。 紅斑・浸潤・鱗屑が変わらず面積だけが95%減っても、PASIは66%しか減らない。逆に、3徴候が平均3から1へ下がっても、PASIは75%減に届かない5。面積点と徴候点の積の足し算だからである。

⚠️ 面積が10%未満の部位では、改善を拾えない。 面積点が一律に1になるため、治療で部位の面積が10%未満まで縮むと、それ以上縮んでもPASIは動かない。外用薬で診る軽症〜中等症の評価に弱く、1〜9%を0.1〜0.9とするPASI-HDが提案されている3。

⚠️ 頭皮など特殊部位の病変は、点数に重く出ない。 部位の表面積で重みづけするので、頭頸部の係数は0.1しかない。頭皮の乾癬では、重症度を過小評価しうる1。爪、手掌足底、外陰は点数が低くても格上げの対象で、爪には別の指標(NAPSI)を使う2。

⚠️ 全体のPASIは、部位ごとの反応の違いを隠す。 の試験のでは、16週時に部位別PASIが90%以上改善した患者の割合が、体幹65%・頭66%に対し、上肢45%・下肢40%だった4。

⚠️ 計算が複雑で、軽症では変化への感度が低い1。追跡では、採点の手順をそろえる。

⚠️ 患者の苦痛と生活への影響を測らない。 ガイドラインは、PASIやDLQIなどの点数が、乾癬を生きる人の経験する深刻さを捉えきれないという患者代表の批判を引いている2。DLQIなどの生活の質の指標、特殊部位の所見と合わせて判断する。

⚠️ 皮膚の局面以外には使えない。 状は評価しない(は別に評価する)。の試験ではPPPASIという別の指標が使われる。・膿疱型は、PASIの点数にかかわらず重症側の区分に入る1。

⚠️ 成人ので検証された指標である。 生活の質の評価では、成人にDLQI、小児・青年にCDLQIを使うことが推奨されている1。

まとめ

  • PASIは、頭頸部・上肢・体幹・下肢の4部位で紅斑・浸潤・鱗屑を0〜4点、面積を0〜6点で採点し、係数(0.1・0.2・0.3・0.4)を掛けて足す、0〜72点の評価尺度である。
  • 重症度の線はガイドラインごとに異なる。EuroGuiDerm準拠の指針は、BSA・PASI・DLQIを組み合わせ、特殊部位やを伴うそう痒があれば点数が低くても格上げする。
  • 治療効果は改善率で見る。の終わりにPASI 75が最低の目標で、PASI 90か 2未満が望ましい目標である。
  • 線形でなく、面積10%未満では改善が拾えず、頭皮など特殊部位の重さは点数に出にくい。患者の苦痛も反映しないので、DLQIと特殊部位の所見を併せて判断する。

出典

  1. 1.Latin American consensus on psoriasis severity classification(Anais Brasileiros de Dermatologia・2025)Europe PMCの全文(PMC12234208、CC BY)で確認した。世界的に検証された乾癬の重症度区分は確立しておらず、定義の統一が欠けること、PASIが4部位(頭頸部・上肢・体幹・下肢)の紅斑・鱗屑・浸潤と面積から0〜72点を与え、成人の局面型乾癬で広く検証され再現性が高い一方、複雑で軽症では変化への感度が低いこと、頭皮の乾癬ではPASIが体表面積で重みづけされるため重症度を過小評価しうること(修正版のPSSI)、同コンセンサスの区分はPASI 5未満かつDLQI 5未満を軽症、PASI 5以上10未満またはDLQI 5以上10未満を中等症、PASI 10以上またはDLQI 10以上・紅皮症・膿疱型・特殊部位・関節炎の合併・生物学的製剤の必要性を重症とすること、特殊部位や紅皮症・膿疱型が重症の区分に入ること、生活の質の評価に成人はDLQI・小児と若年者はCDLQIを推奨していることを確認した。閲覧 2026-10-26
  2. 2.S3 Guideline for the treatment of psoriasis vulgaris, adapted from EuroGuiDerm – part 1: Treatment recommendations and monitoring(Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft(ドイツ皮膚科学会ほか、EuroGuiDerm準拠)・2026)PMC全文(PMC12800871、CC BY)の「Disease severity and treatment goals」で確認した。PASIが欠点を伴いつつ皮膚症状の最も確立した指標で、1978年にレチノイドの試験の評価項目として導入されたこと、軽症をBSA・PASI・DLQIがいずれも10以下、中等症〜重症を(BSA 10超またはPASI 10超)かつDLQI 10超とし、露出部・頭皮・陰部・手掌足底・2本以上の爪の病変、掻破を伴うそう痒、難治性局面で軽症を格上げし、特に重症にはPASI 20以上・DLQI 15以上などを含めること、導入期の終わりにPASI 75を最低目標とし、PASI 90・絶対PASI 2未満・DLQI 1以下を望ましい目標とすること、どの指標も乾癬の複雑さを捉えきれず患者代表が「技術的・官僚的に定義された」重症度に批判的であること、コクランのネットワークメタ解析でIL-17阻害薬がPASI 90達成率で他のすべての介入を上回り(評価は無作為化後8〜24週)、生物学的製剤の各クラスが非生物学的全身薬を上回ったことを確認した。閲覧 2026-10-26
  3. 3.The Proposed PASI-HD Provides More Precise Assessment of Plaque Psoriasis Severity in Anatomical Regions with a Low Area Score(Dermatology and Therapy・2021)Europe PMCの全文(PMC8322185、CC BY-NC)で確認した。PASIが頭頸部・上肢・体幹・下肢の4部位で、紅斑・浸潤・鱗屑を部位内の平均として0〜4で採点して足し、部位の面積点を掛けること、部位の面積が10%未満では面積点が一律に1になるため精度が落ち、治療で面積が10%未満へ縮小してもPASIは改善を拾えないこと、PASI-HD(1〜9%を0.1〜0.9とする修正)が提案されていること、手のひら(指を含む)が体表面積の約1%で、親指が約0.1%、親指の爪が約0.02%、小指の爪が約0.01%であることを確認した。閲覧 2026-10-26
  4. 4.Body Region Involvement and Quality of Life in Psoriasis: Analysis of a Randomized Controlled Trial of Adalimumab(American Journal of Clinical Dermatology・2016)Europe PMCの全文(PMC5110581、CC BY-NC)のMethodsで確認した。部位別PASIを頭・体幹・上肢・下肢ごとに紅斑・浸潤・鱗屑の程度(0なし、1軽度、2中等度、3重度、4きわめて重度)の合計に推定面積点(0なし、1<10%、2=10〜29%、3=30〜49%、4=50〜69%、5=70〜89%、6=90〜100%)を掛けて求め、全体のPASIは部位の表面積に基づく重みづけ(頭0.1・上肢0.2・体幹0.3・下肢0.4)の和であること、PASI 75・90・100を治療前からの改善率として求めたことを確認した。アダリムマブ16週時のPASI 90達成率は体幹65.0%・頭66.1%に対し上肢45.1%・下肢40.0%であった。閲覧 2026-10-26
  5. 5.A 50% reduction in the Psoriasis Area and Severity Index (PASI 50) is a clinically significant endpoint in the assessment of psoriasis(Journal of the American Academy of Dermatology・2004)Europe PMCの抄録(PMID 15153885)で確認した(全文は取得できていない)。PASI 75が臨床試験の主要評価項目の基準であること、PASIが乾癬の重症度を線形に反映せず、紅斑・鱗屑・浸潤が変わらず面積だけが95%減ってもPASIは66%しか減らず、逆に紅斑・鱗屑・浸潤が平均3から1に下がっても75%減にはならないこと、メトトレキサートではPASI 50達成が63%・PASI 75達成が26%であること、PASI 50でも生活の質が改善することから著者らがPASI 50を臨床的に意義のある評価項目としたことを確認した。閲覧 2026-10-26