麻酔・集中治療

麻酔・集中治療 · B-12

麻酔・集中治療における超音波の役割

The role of ultrasound in anesthesiology and intensive care

前提:正常
パルスエコー原理超音波検査の画像表示モードドプラ効果とドプラ偏移
画像所見
ポイントオブケア超音波超音波エコー輝度

🧠 全体像:は、循環不全の患者を心臓、循環血液量・体腔、動脈・静脈に分けて反復評価するである。単一所見で診断を確定せず、病歴・診察・血行動態と統合して次の処置を決める。

POCUSの原則

  • 検査前に「心タンポナーデか」「左室収縮は低下しているか」のような臨床疑問を定める。
  • プローブのマーカー、画面方向、深度、、焦点を確認し、異なる断面で所見を再現する。
  • 所見は患者の状態とともに変化するため、輸液・・換気・ドレナージ後に再評価する。
  • は焦点を絞ったベッドサイド検査であり、必要な包括的心エコー、、血管検査を置き換えない。
  • 心停止中は胸骨圧迫の中断を延長しない。画像取得の準備を圧迫中に行い、リズム確認の短い中断内で評価する。

基本的なプローブ選択

プローブ 特徴 主な用途
小さな面、深部観察 心臓、胸水、腹腔内液体
広い視野、中〜深部 腹部、、腎・膀胱
、高、浅部 血管、胸膜、末梢神経、穿刺

ショックの統合評価(RUSH)

は、心臓・循環血液量と体腔・動脈と静脈を系統的に調べる枠組みである。初期鑑別を補助するが、単独でショック病型を確定・除外する検査ではない。1

flowchart TD
    A["低血圧・ショック"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pump'>心臓</span>"]
    A --> C["循環血液量・体腔(tank)"]
    A --> D["大動脈・静脈(pipes)"]
    B --> E["左室機能・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='right ventricular strain'>右室負荷</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pericardial fluid'>心嚢液</span>"]
    C --> F["IVC・肺・腹腔内<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free fluid (e.g. FAST exam finding)'>自由液</span>"]
    D --> G["大動脈病変・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep vein thrombosis'>DVT</span>"]
    E --> H["臨床像と統合して治療"]
    F --> H
    G --> H
    H --> I["介入後に反復<span class='jp-term jp-term-diagram' title='point-of-care ultrasound'>POCUS</span>"]

心臓

傍胸骨長軸・短軸、四腔、を組み合わせる。

所見 示唆する病態 注意点
小さくする左室 、ショック 敗血症初期などでも見られ、そのものではない
全体的な左室収縮低下 慢性心機能低下との区別が必要
+右房収縮期/期虚脱 心タンポナーデ 、肺高血圧、で所見が変化する
・中隔 急性右室、肺塞栓など 肺塞栓に特異的ではなく、単独で確定・除外しない

循環血液量・胸腹腔

  • 下大静脈の径とはの手掛かりになるが、人工呼吸、右心不全、、自発呼吸努力に強く影響される。IVC単独で輸液を決めない。
  • では右上腹部、、骨盤、心嚢、胸腔を観察し、の・・気胸を検索する。
  • 肺水腫では両側多発を認めやすい。ただし、局所は肺炎・などで、両側びまん性も・などで生じ得るため、だけでや輸液方針を決めない。2

大動脈・静脈

  • をから分岐部までし、瘤径、、周囲液体を評価する。の除外にはなどが必要である。
  • 総からまで圧迫し、血栓を検索する。で陰性でも臨床疑いが高ければ全下肢検査や再検を行う。

ショック型ごとの典型的組合せ

病態 心臓 循環血液量・体腔 血管・肺
小さくする心室 IVC虚脱を伴いうる、外傷なら腹腔内 は通常なし、肺はAライン優位
左室収縮低下、または重症弁膜症 IVC拡張 両側・胸水を伴い得る
心タンポナーデ 、右房・右室虚脱 IVC拡張 他の閉塞原因を検索
肺塞栓 ・ IVC拡張 下肢が診断を支持、肺所見は非特異的
早期は、後期は収縮低下もある IVC所見は可変 感染源に応じ肺・腹部所見

これは典型像であり、、人工呼吸、慢性心疾患では一致しない。所見の組合せと介入への反応で解釈する。

肺超音波

正常像と間質性病変

  • 肋骨陰影の間にのがあり、呼吸に同期したを認める。
  • Aラインはと等間隔に現れる水平反射で、肺を示す。
  • はから画面下端まで伸び、とともに動く垂直である。両側びまん性に増加すれば肺水分増加を支持する。

気胸

所見 意味
の消失 気胸を疑うが、無呼吸、胸膜癒着、挿管でも消失する
Mモードのバーコード/(barcode/stratosphere sign) 胸壁とが同じ水平線状となり、消失を示す
の存在 その観察点の気胸をほぼ否定する
の有無が切り替わる境界で、気胸に特異度が高い

が臨床的に明らかで血行動態が不安定なら、画像確認のため減圧を遅らせない。

CAUSEプロトコル

は、と心臓像を短時間で確認する考え方である。

flowchart TD
    A["胸骨圧迫中に画像取得を準備"] --> B["リズム確認時に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epigastric'>心窩部</span>または傍胸骨像"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pericardial fluid'>心嚢液</span>・心室運動・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='right ventricular strain'>右室負荷</span>を確認"]
    C --> D["圧迫を直ちに再開"]
    D --> E["可逆的原因の治療へ統合"]
  • と右心虚脱はタンポナーデを示唆する。
  • は肺塞栓を示唆し得るが、心停止そのものでも生じるため単独診断に用いない。
  • 心臓運動が見えない所見だけで蘇生中止を決めない。

手技ガイド

  • 穿刺では、穿刺前に静脈の、動脈との位置関係、血栓を確認し、針先を連続的に描出する。
  • では神経、筋膜、血管、胸膜を同定し、の広がりと注入抵抗を監視する。
  • 動脈ライン、胸腔・腹腔穿刺でもリアルタイムガイドは成功率を上げ、合併症を減らす。
  • 超音波を用いても、予防、術後合併症確認は省略しない。

参考ガイドライン

まとめ

  • は心臓・循環血液量と体腔・動脈と静脈を系統的に評価し、介入後に反復する。
  • IVC、、消失などの単一所見だけで病態を確定しない。
  • RUSHはショックの鑑別、CAUSEは蘇生中の可逆的原因検索を補助する。
  • のために胸骨圧迫や緊急処置を遅らせず、必要な正式画像検査へつなげる。

出典

  1. 1.The diagnostic accuracy of a point-of-care ultrasound protocol for shock etiology: A systematic review and meta-analysis(CJEM・2019)RUSHを含むPOCUSプロトコルはショック原因の初期鑑別を補助するが、単独で病型を確定・除外する検査ではない閲覧 2026-08-20
  2. 2.Nuts and bolts of lung ultrasound: utility, scanning techniques, protocols, and findings in common pathologies(Critical Care・2024)Bラインなどの肺超音波所見は多様な呼吸器病態で生じ、走査部位と臨床文脈を統合して解釈する閲覧 2026-08-20