Cardiology

Cardiology · A-13

僧帽弁狭窄症と僧帽弁閉鎖不全症の診断

Mitral valve stenosis. Diagnosis of mitral valve insufficiency

前提:病態
リウマチ熱・リウマチ性心筋炎化膿レンサ球菌(A群)
前提:正常
心臓・心膜心周期と心音
疾患
心臓弁膜症僧帽弁狭窄症僧帽弁閉鎖不全症
スコア
Wilkinsスコア

🧠 全体像(MS)は左房から左室への流入障害、(MR)は収縮期に左室から左房へ戻るである。

僧帽弁狭窄症

狭窄はに生じる。最重要原因は感染後ので、ほかに先天性変形、変性石灰化がある。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mitral valve area'>僧帽弁口面積</span>低下"] --> B["LA圧上昇・LA拡大"]
    B --> C["肺高血圧"]
    B --> D["AF・LA血栓"]
    D --> E["全身性/脳塞栓症"]
    C --> F["RV機能障害"]
    F --> G["低心拍出量"]

症状は呼吸困難、喀血、脳塞栓症。を認め得る。

検査 所見
を伴う拡張期中期雑音、内側で呼気時。肺高血圧によるPRでは
ECG AF、、RVH、、V1の高いR波
CXR 、石灰化弁、肺高血圧/肺水腫
心エコー 診断確定

軽症は食塩制限と経口利尿薬。AFにはβ遮断薬、ジゴキシンと抗凝固薬。臨床的に有意なMS(MVA ≤1.5 cm²)では、などで弁・の形態、MR、LA血栓を評価し、解剖学的に適していれば、不適なら手術を検討する。無症候の重症では、PASP >50 mmHgや新規AFが介入の後押しとなるが、後方視研究ではAFよりPASPの方が予後指標として一貫しており、最適閾値は45 mmHg超という報告もある1

僧帽弁逆流症

MR(organic MR)は解剖学的異常、機能性MR(functional MR)は主に変化に伴う機能的逆流として捉える。

障害部位 原因
IE、疾患、MVP、
、AMIでの
LV/LA/ 一次性/二次性DCM、AF
その他 ASなど血行動態的原因

急性MRは適応時間がなくへ進む。慢性MRでは前負荷増加からLV/拡大が生じ、低下でとなり、やがて肺高血圧、RV不全へ進む。

急性/慢性MRの違いは、だけでなく「受け皿となるLAの大きさ・コンプライアンス」から理解する。

急性MR 慢性MR
LA 拡張しておらずコンプライアンスが低い 拡張し、逆流容量を一時的に受け止める
LA圧・肺 LA圧がし、肺水腫 初期はLA圧を比較的保つが、代償破綻後に肺高血圧
LV まだ十分に拡張していない によりLV拡大・
臨床像 、低心拍出、 長い無症候期後に呼吸困難、AF、LV機能障害

したがって、急性重症MRではLA/LV拡大が乏しくても重症を否定できない。

診断ではの全収縮期雑音(、左腋窩へ放散)、ECGの/AF、CXRのLA/LV拡大・肺水腫をみる。でMRを定量しLVのサイズ・機能を、で逆流速度とPAPを評価する。MR重症度は単一指標では評価しづらく、late-systolic MR、多発ジェット、偏心性ジェット、複雑な病変をもつ高齢者などでは過小・過大評価が生じやすいため、複数指標を整合させる評価が必要である2

重症の一次性MR(primary MR)では、症候性ならLV機能にかかわらず介入を検討し、無症候でもLV(LVEF ≤60%またはLV径[LVESD]≥40 mm)があれば手術適応となる。新規AFや安静時肺高血圧(肺動脈 >50 mmHg)もを支持する。耐久性のある外科的形成術が可能なら置換術より形成術を優先し、が高い症例では解剖学的適合性を評価して経カテーテル・ツー形成術(TEER、MitraClipなど)を検討する。

二次性MR(機能性MR)はまずGDMTの最適化を優先し、それでも症候が残り中等度高度以上なら、解剖学的に適格な症例でTEERを検討する。TEERの効果はMR重症度とLVリモデリングの釣り合いに依存し、著明なLVリモデリングがある例では単独介入の効果が下がる——RESHAPE-HF2試験は、従来のEROA閾値(≥0.40 cm²)より軽度のMRでも、LV拡大が著明でなければTEERがHF入院・QOLを改善しうることを示した3。長期AFやに伴いが主体でLV形態・機能が保たれるatrial secondary MRは、従来のLV中心の分類では捉えきれない別の表現型として認識されつつあり、が左房逆リモデリングを介してMRを軽減しうる4

まとめ

  • MSではLA圧上昇から肺高血圧、AF、塞栓へ進む。
  • MRでは急性/慢性で代償の有無が臨床像を決める。
  • 雑音のと心エコー/ドプラ所見を左房・左室への負荷と結びつける。

出典

  1. 1.Prognostic Value of Pulmonary Artery Systolic Pressure in Severe Rheumatic Mitral Stenosis(Circulation: Cardiovascular Imaging(Choi Y, Choi J, Lee J, et al., 2024, DOI 10.1161/circimaging.123.016302)・2024)重症リウマチ性MS 287例の後方視研究で、新規AFは主要心血管イベントの有意な予後指標ではなかった一方、推定PASPは連続変数として有意な予測因子であり(補正HR 1.027/mmHg)、至適カットオフ45 mmHg超が独立予測因子であったこと(補正HR 2.127)閲覧 2026-08-08
  2. 2.Revisiting secondary mitral regurgitation threshold severity: insights and lessons from the RESHAPE-HF2 trial(European Heart Journal Open(Lancellotti P, Sugimoto T, Bäck M, 2024, DOI 10.1093/ehjopen/oeae084)・2024)RESHAPE-HF2試験が、従来のEROA閾値(≥0.40 cm²)より軽度(≥0.2 cm²)の二次性MRでも、著明なLVリモデリングがなければTEERがHF入院・QOLを改善しうることを示したこと、患者選択にはMR重症度とLVリモデリングの釣り合いを統合した評価が必要であること閲覧 2026-08-08
  3. 3.Atrial Secondary Mitral Regurgitation: Pathophysiology, Diagnosis, and Surgical Implications(Medicina(Venturiello D, Campolongo G, Navarra E, Speziale G, 2026, DOI 10.3390/medicina62030520)・2026)atrial secondary MR(A-SMR)が左房拡大・弁輪拡大を主体としLV形態・収縮機能が保たれる別個の表現型であり、長期AFやHFpEFに伴って生じ従来のLV中心の機能性MR分類では捉えきれないこと、リズムコントロールが左房逆リモデリングを介してMRを軽減しうること閲覧 2026-08-08
  4. 4.Quantification of primary mitral regurgitation by echocardiography: A practical appraisal(Frontiers in Cardiovascular Medicine(Altes A, Vermes E, Levy F, et al., 2023, DOI 10.3389/fcvm.2023.1107724)・2023)一次性MRの重症度評価は多指標統合が標準だが指標間に不一致が生じうること、late-systolic MR・多発ジェット・偏心性ジェット・複雑な病変をもつ高齢者などで過小・過大評価のリスクが高いこと閲覧 2026-08-08