組織学

組織学 · 9.2

消化管:口腔と舌

Digestive tract — Oral cavity & tongue

🧠 は「味を感じるかどうか」で分けると4種類がすっきり整理できる、と覚える。 だけはをもたず機械的な役割(ざらつき)に特化、残りの3種(茸状・葉状・有郭)はいずれもをもち味覚に関与する——「1種類だけ仲間外れ」という構図で覚えると迷わない。

口腔粘膜の基本構造

口腔(口唇・頬・歯肉・など)の粘膜は(02-1-classification)で覆われる。摩擦を受ける部位(・歯肉)では角化型、・・など摩擦の少ない部位では非角化型となる——皮膚の厚い皮膚・薄い皮膚の使い分け(08-1-epidermis)と同じ原則がここでも当てはまる。

舌乳頭の4型

舌背の粘膜は特殊な突起=をもち、の有無で機能が分かれる。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lingual papillae'>舌乳頭</span>"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='filiform papillae'>糸状乳頭</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='taste buds'>味蕾</span>なし、機械的摩擦に関与"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fungiform papillae'>茸状乳頭</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='taste buds'>味蕾</span>あり"]
  A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='foliate papillae'>葉状乳頭</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='taste buds'>味蕾</span>あり、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lateral border of the tongue'>舌側縁</span>"]
  A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='circumvallate papillae'>有郭乳頭</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='taste buds'>味蕾</span>あり、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulcus terminalis'>分界溝</span>の前方に一列"]
乳頭 の有無 分布・特徴
なし 舌背全体に最も多く分布、角化した先端で食物をこすり取る機械的な役割
あり 舌背に散在するキノコ状の乳頭
あり 後方、ヒトでは的
あり の直前に8〜12個が一列に並ぶ最大の乳頭、周囲を溝が取り囲む

⭐ だけがをもたないという一点はの分類で最頻出——残る3種(茸状・葉状・有郭)はいずれも上皮内にを含み、化学受容(味覚)に関与する。

💡 上の表の「8〜12個」は教科書の代表値で、生体の実測はもっとばらつく。 18〜26歳の79人を内視鏡で数えた研究では、1人あたりのは平均7.38±2.46個(女性8.48±2.37個、男性6.26±2.02個で女性が有意に多い)、最少はをまったく欠く例、最多は15個だった1。同じ研究が集めた過去の文献では記載が3個から20個まで割れており、その多くは実測ではなく教科書上の推定値である。⭐ 個数を丸暗記するより、の直前にV字状の一列で並ぶ最大の乳頭という位置と配列を押さえるほうが確実。

味蕾

はの上皮内に存在するの感覚器で、・支持細胞・(幹細胞)からなる。の頂端にはがあり、唾液に溶けたがのに接触することで味覚情報が生じる。

💡 「と支持細胞」という古典的な2分法は、現在はI型・II型・III型という機能的分類に整理し直されている。 1個のは50〜100個の細胞の集まりで、少なくとも3つの細胞型が区別される2。古い呼び名を捨てる必要はなく、どの型がどの旧称に当たるかを対応づけて覚えるとよい。

型 古典的な呼び名 機能
I型 支持細胞 グリア様の細胞。細胞外の伝達物質・イオン環境を処理する
II型(受容細胞) ・・うま味のGタンパク質共役型受容体を発現する
III型(細胞) 酸味(酸刺激)を受容し、線維とシナプスを作る
幹細胞として上記の細胞を供給する

⚠️ (NaCl)を感じる細胞がI〜III型のどれに当たるかは、まだ確定していない2。「味質と細胞型が5対5できれいに対応する」と単純化しすぎないこと。

⚠️ 「舌の先で、奥で」という舌の味覚地図は誤りである。 ・酸味・・・うま味の5には、それぞれ固有の受容体を発現する別々の細胞型が対応しており、が舌の領域ごとに味質を分担しているわけではない3。ヒトで舌の部位別に閾値上強度を測った研究でも、すべての味質が舌のどの部位でも感じられ、味覚地図は改めて否定された——ただしとうま味だけは舌の後方が前方より有意に強く、・・酸味には部位差がなかった4。「地図はないが、まったくの一様でもない」という点まで押さえる。

💡 の周囲にはという漿液性の腺(02-5-glandsの漿液性腺細胞に相当)が開口し、乳頭周囲の溝を常に洗い流す——これにより前の味の情報がリセットされ、が次の刺激を正確に感知できる、という機能的な意味がある。

舌の筋

舌の実質は骨格筋(04-1-skeletal-muscle)が3方向にして束を作る構造で、な形態変化(食物の移動・発音)を可能にする。

まとめ

  • 口腔粘膜はで、摩擦を受ける部位は角化型、そうでない部位は非角化型となる。
  • には糸状(なし)・茸状・葉状・有郭(いずれもあり)の4型がある。
  • は・支持細胞・からなり、頂端のでを受容する。現在の機能的分類ではI型(グリア様)・II型(・・うま味の受容細胞)・III型(酸味、細胞)・に分けられ、を担う細胞型は未確定である。
  • 「舌の先で、奥で」という舌の味覚地図は誤りで、すべての味質は舌全体で感じられる(・うま味だけ後方がやや強い)。
  • 周囲のは乳頭周囲を洗い流し、味覚情報のリセットを助ける。

出典

  1. 1.Sexual dimorphism of human vallate papillae: an in vivo study of normative morphology(Folia Morphologica・2015)18〜26歳の白人79人(女性40・男性39)を内視鏡で観察し有郭乳頭を計583個数えた。1人あたりの個数は平均7.38±2.46個で、女性8.48±2.37個・男性6.26±2.02個と女性が平均2.22個多く有意差があった(p=0.00003)。最少は有郭乳頭をまったく欠く男性、最多は15個の女性だった。乳頭径は1人あたり平均1.41 mmで男性のほうが太い。過去の文献での有郭乳頭数の記載は低いもので3個、高いもので20個までと大きく割れており、その多くは実測ではなく教科書上の推定値である閲覧 2026-08-24
  2. 2.Taste buds as peripheral chemosensory processors(Seminars in Cell & Developmental Biology・2013)1個の味蕾は50〜100個の細胞からなり、哺乳類では少なくとも3つの細胞型が区別される。I型はグリア様細胞、受容細胞(II型)は甘味・苦味・うま味のGタンパク質共役型受容体を発現し、シナプス前細胞(III型)は酸味(酸刺激)を受容する。塩味(NaCl)を感じる細胞がこの3型のどれに当たるかはまだ確定していない閲覧 2026-08-24
  3. 3.The receptors and cells for mammalian taste(Nature・2006)従来の考えに反し、甘味・酸味・苦味・塩味・うま味の5基本味それぞれに固有の受容体を発現する別々の細胞型が対応しており、受容細胞は決まった応答を引き起こす専用センサーとして働く閲覧 2026-08-24
  4. 4.Regional differences in suprathreshold intensity for bitter and umami stimuli(Chemosensory Perception・2014)ヒト(18〜45歳)で舌の部位別に味の閾値上強度を測ったところ、すべての味質が舌のどの部位でも感じられ、いわゆる舌の味覚地図は改めて否定された。苦味とうま味だけは舌後方が前方より有意に強く、甘味・塩味・酸味には部位差がなかった閲覧 2026-08-24