組織病理学

組織病理学 · H2-112A

基底細胞癌の鑑別診断(類似病変との区別)

Basocellular carcinoma

描出疾患
基底細胞癌
疾患
毛包上皮腫

🧠 全体像:(basal cell carcinoma:BCC)の危険因子・標本所見は(臨床像・危険因子・標本所見)、発生機序・生物学的挙動・扁平上皮癌との比較は(HE染色)、臨床病型と治療はに整理済みである。本項目では、形態が紛らわしい類似病変との鑑別に焦点を当てる。

形態的に紛らわしい病変

様の胞巣・は、BCC以外の毛包系病変や別の悪性腫瘍でもみられることがあり、HE染色だけでは判断に迷う場合がある。

鑑別病変 紛らわしい点 区別の手がかり
毛包上皮腫(trichoepithelioma) 様胞巣、を共有する良性毛包系腫瘍 様間質、が整然と分布し、と間質の裂隙形成に乏しい
BCC を含み、母斑・悪性黒色腫に似た色調を呈する と胞巣・間質間の裂隙という様構築を確認する
様領域と扁平上皮癌様領域が混在 扁平上皮への分化像(角化、)の有無を確認し、より高リスクとして扱う。の扁平上皮分化はと併せて病理報告に明記する項目とされる1
ともに慢性紫外線曝露が背景 ・個細胞角化・の有無、の有無で区別する

免疫組織化学による鑑別

形態だけで判断が難しい症例では、免疫染色を補助的に用いる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal cells'>基底細胞</span>様増殖を認める病変"] --> B{"BerEP4"}
    B -->|"陽性"| C["BCCを支持"]
    B -->|"陰性〜弱陽性"| D["毛包系良性腫瘍など他病変を検討"]
    C --> E{"CK20陽性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Merkel cell'>Merkel細胞</span>様細胞散在"}
    E -->|"あり"| F["毛包上皮腫を支持(BCCでは通常みられない)"]
    E -->|"なし"| G["BCCの診断を維持"]
マーカー BCC 毛包上皮腫・毛包系良性腫瘍
BerEP4 びまん性陽性 ⚠️ 一般化できない——でも21例中16例が陽性で、BCCとの区別には使えない2
CK20(様細胞) 通常陰性(/BCCでは31例中1例=3%のみ陽性)3 胞巣内に散在性陽性細胞を認めることが多い(15例中15例=100%)3
CD10 に陽性のことが多い 間質優位に陽性のことが多い

⚠️ 単一マーカーだけで確定診断とはしない。形態所見(、胞巣・間質間の裂隙、の分布パターン)と免疫染色パネルを組み合わせて判断する。

⚠️ とくにBerEP4は「陽性ならBCC」と読めない。 とBCCを比べた検討では、BerEP4はBCC全17例で陽性だった一方、でも21例中16例が陽性になり、両者を分けられなかった2。BerEP4が役に立つのはBCCと(BerEP4陰性)の区別であって、毛包系良性腫瘍との区別ではない。

💡 CK20陽性も完全ではなく、より切れ味の良い指標がある。 毛包上皮腫19例・BCC 11例の比較で、PHLDA1(TDAG51)は毛包上皮腫19例すべてで陽性・BCC 11例すべてで陰性という完全な分離を示したのに対し、CK20陽性はBCC 11例中2例で認められ、毛包上皮腫3例では欠けていた4。散在する陽性細胞を探し回るCK20と違い、PHLDA1はで判定できるため、生検検体が小さいときほど差が出る4。/BCCが相手なら、CK20にを組み合わせると「陰性かつCK20陽性」で毛包上皮腫に感度87%・特異度100%になる3。

まとめ

  • 様胞巣・はBCC以外の毛包系良性腫瘍でも生じ、形態だけでは判断に迷うことがある。
  • 毛包上皮腫はCK20陽性の様細胞散在や整然とした様間質で示唆される(では100%、BCCでは3%)3。
  • 基底は扁平上皮分化を伴う混合型として、より高リスクに扱う。
  • BerEP4・CK20・CD10などの免疫染色パネルは形態評価を補助するが、単独では確定しない。BerEP4は毛包上皮腫でも高率に陽性となるため毛包系良性腫瘍との区別には使えず2、CK20よりPHLDA1のほうが毛包上皮腫とBCCを完全に分離する4。
  • 危険因子・標本所見・治療のは(臨床像・危険因子・標本所見)と(HE染色)を参照する。

出典

  1. 1.Basal cell carcinoma: a dermatopathological and molecular biological update(British Journal of Dermatology・2003)基底細胞癌について臨床挙動と対応する決定版の分類はまだ確立していないが、現行で最も支持されるのは組織学的増殖パターンに基づく分類で、低リスク/高リスク亜型という概念を支える。高リスク亜型は臨床的に見えない範囲への進展・切除断端陽性・局所侵襲的挙動・局所再発の確率が高いことで特徴づけられる。報告すべき増殖パターンは結節型・表在型・浸潤型/硬化型・微小結節型で、高度異型の扁平上皮分化(基底扁平上皮癌)も併記する閲覧 2026-08-24
  2. 2.The immunohistochemical differential diagnosis of microcystic adnexal carcinoma, desmoplastic trichoepithelioma and morpheaform basal cell carcinoma using BerEP4 and stem cell markers(Journal of Cutaneous Pathology・2013)線維形成性毛包上皮腫21例・硬化型基底細胞癌17例・微小嚢胞性付属器癌10例の検討で、BerEP4は硬化型基底細胞癌の全例で陽性だったが線維形成性毛包上皮腫21例中16例でも陽性となり、両者を区別できなかった。これに対しPHLDA1は線維形成性毛包上皮腫21例すべてで陽性・硬化型基底細胞癌17例すべてで陰性であった。CK15は線維形成性毛包上皮腫21例中20例で陽性、微小嚢胞性付属器癌と硬化型基底細胞癌の多くは陰性であった閲覧 2026-08-24
  3. 3.Does the panel of cytokeratin 20 and androgen receptor antibodies differentiate desmoplastic trichoepithelioma from morpheaform/infiltrative basal cell carcinoma?(Journal of Cutaneous Pathology・2008)線維形成性毛包上皮腫15例と硬化型/浸潤型基底細胞癌31例の免疫染色で、CK20陽性Merkel細胞は毛包上皮腫15例中15例(100%)に対し基底細胞癌31例中1例(3%)にとどまった(P<0.001)。アンドロゲン受容体は毛包上皮腫の13%(2/15)・基底細胞癌の65%(20/31)で陽性だった。アンドロゲン受容体陰性かつCK20陽性という組み合わせは毛包上皮腫に対し感度87%・特異度100%、アンドロゲン受容体陽性かつCK20陰性は基底細胞癌に対し特異度100%・感度61%であった閲覧 2026-08-24
  4. 4.Follicular stem cell marker PHLDA1 (TDAG51) is superior to cytokeratin-20 in differentiating between trichoepithelioma and basal cell carcinoma in small biopsy specimens(Journal of Cutaneous Pathology・2011)毛包上皮腫19例と基底細胞癌11例の比較で、毛包幹細胞マーカーPHLDA1(TDAG51)は毛包上皮腫19例すべてで陽性、基底細胞癌11例すべてで陰性だった。一方CK20陽性Merkel細胞は基底細胞癌11例中2例に存在し、毛包上皮腫3例では欠如していたため、CK20は完全な指標ではない。CK20陽性Merkel細胞は毛包上皮腫を示唆する代用マーカーとして使われるが、小さな生検検体ではPHLDA1のほうが弱拡大で判定でき優れる閲覧 2026-08-24