内科学

内科学 · L-76

大腸の悪性腫瘍

Malignancies of the large intestine

前提:病態
小腸・大腸の腫瘍RB・p53・APC遺伝子(腫瘍抑制遺伝子)
検査値
CEAマイクロサテライト不安定性

🧠 全体像:大腸癌の大半は腺癌で、腺腫–癌系列、(mismatch repair、MMR)異常、などを経て発生する。診断は+生検、治療はとで局所治療の考え方が異なる。

発癌とリスク

経路 分子異常・特徴
APC→KRAS→TP53などが蓄積し腺腫から癌へ。(familial adenomatous polyposis、FAP)もAPC異常
異常 MLH1、MSH2、MSH6、PMS2など。MSI-high。または散発性
BRAF変異、(CpG island)メチル化など

年齢、腺腫/CRC既往、家族歴、FAP/Lynch、長期、肥満、喫煙、加工肉などがリスクである。平均的リスクの成人のスクリーニングは多くの現行指針で45歳から開始する。

⚠️ 開始年齢は50歳から45歳へ下がった。理由は「若年発症が増えたから」である。 は2021年の改訂で50〜75歳をA推奨のまま残しつつ、45〜49歳をB推奨として追加し、76〜85歳は既受診者への選択的提供(C推奨)とした。根拠として、新規大腸癌の10.5%が50歳未満で発生していること、40〜49歳の腺癌罹患が2000〜2002年から2014〜2016年に約15%増えたことを挙げている1。ただしこれは米国の勧告であり、欧州の集団検診プログラムは50歳開始のままの国が多い。試験では「どこの勧告か」を添えて答える。Streptococcus gallolyticus菌血症/心内膜炎ではを検索するが、「心内膜炎一般」がCRCのリスク因子という意味ではない。

臨床像と診断

癌は潜在出血と、左側は便通変化・狭窄・疝痛、は血便・を来しやすい。閉塞、穿孔、体重減少、で発見されることもある。

💡 右側と左側は、症状だけでなく予後も違う。 66研究・約144万例のでは、癌は右側に比べ死亡リスクが有意に低かった(0.82、95%CI 0.79〜0.84)。この差は病期、人種、、研究の質から独立していた2。背景には発生経路の違い(右側にMSI-high・BRAF変異・が多い)があり、転移例での効きが左右で違うこととも地続きである。

flowchart TD
    A["血便・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iron-deficiency anemia, IDA'>鉄欠乏性貧血</span>・便通変化"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='full colonoscopy'>全大腸内視鏡</span>+生検"]
    B --> C["造影CT胸腹骨盤で病期評価"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rectal cancer'>直腸癌</span>か"}
    D -->|"はい"| E["骨盤<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='digital rectal examination, DRE'>直腸診</span>/EUSを追加"]
    D -->|"いいえ"| F["部位に応じた結腸切除+リンパ節郭清"]
    E --> G["局所病期に応じTNT・TME・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='local excision'>局所切除</span>"]

CEAは治療前ベースラインと術後再発監視に用いるが、感度・特異度が不十分でスクリーニングには用いない。全新規CRCでMMR蛋白免疫染色またはMSI検査を行いのスクリーニングとに役立てる。転移例ではRAS、BRAF、なども評価する。

💡 MMR/MSIを全例で調べる理由は2つある。 ひとつはの普遍的スクリーニング(家族歴だけに頼ると取りこぼす)、もうひとつはである。未治療のMSI-high/dMMR307例のKEYNOTE-177試験では、が化学療法より無増悪生存で優り(中央値16.5か月対8.2か月、0.60)、しかもグレード3以上のは22%対66%と少なかった3。「効いて、かつ楽」という組み合わせは化学療法では起きにくく、だから病理から先に決まる。

治療

結腸癌

腫瘍の血管支配とに沿って切除する。

部位 主な手術
盲腸・
肝・近位 拡大など
左半結腸切除
S状結腸
多発癌・広範大腸炎背景 亜全/全結腸切除を検討

Iは手術、IIIは手術後/CAPOXなどのが基本で、IIはT4、閉塞・穿孔、リンパ節検索不足などの高リスク因子とMMR/MSIを踏まえ個別化する。

💡 IIIのは「3か月か6か月か」をリスクで分ける。 6試験12,834例を統合したIDEA解析では、3か月の6か月に対するは全体では確認されなかった(1.07、95%CI 1.00〜1.15)。しかしレジメンとリスクで結果が割れる:CAPOXではが示され(0.95)、では示されなかった(1.16)。T1-3かつN1の低リスク群では3か月が(3年無病生存83.1%対83.3%)、T4またはN2の高リスク群では6か月が優れていた(64.4%対62.7%、P=0.01)4。短縮の狙いはの神経毒性を減らすことにある。な肝・肺転移は全身治療と/を組み合わせ、治癒を目指せる。

直腸癌

小さな低リスクT1病変ではを選べる。その他は(total mesorectal excision、TME)を基本とし、可能なら、困難ならを行う。局所進行例ではと化学放射線/短期放射線を術前に組み込む(total neoadjuvant therapy、TNT)が中心で、臨床的例のは経験ある施設で厳密監視下に行う。

まとめ

  • や血便ではで病変を確認する。
  • はスクリーニングではなくベースライン・経過観察用である。
  • 結腸は部位別切除、直腸は病期とTNT/TME、全例MMR/MSI評価が重要である。

出典

  1. 1.Screening for Colorectal Cancer: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement(JAMA(US Preventive Services Task Force)・2021)2016年版を改訂し、平均リスクの無症状成人について50〜75歳のスクリーニングをA推奨、**45〜49歳をB推奨**(中等度の確実性で中等度の純利益)、76〜85歳は既受診者に選択的に提供するC推奨とした。背景として、新規大腸癌の10.5%が50歳未満で発生し、40〜49歳の腺癌罹患が2000〜2002年から2014〜2016年にかけて約15%増えたことを挙げている。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Prognostic Survival Associated With Left-Sided vs Right-Sided Colon Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis(JAMA Oncology・2017)66研究・1,437,846例(追跡中央値65か月)の系統的レビューとメタアナリシス。左側結腸癌は右側結腸癌に比べ死亡リスクが有意に低く(ハザード比0.82、95%CI 0.79〜0.84、P<0.001)、この関連は病期、人種、補助化学療法、発表年、研究の質から独立していた。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Pembrolizumab in Microsatellite-Instability-High Advanced Colorectal Cancer(The New England Journal of Medicine・2020)未治療のMSI-high/dMMR転移性大腸癌307例を対象とした第3相非盲検試験(KEYNOTE-177)。ペムブロリズマブは化学療法より無増悪生存が優れ(中央値16.5か月対8.2か月、ハザード比0.60、95%CI 0.45〜0.80、P=0.0002)、奏効率43.8%対33.1%、奏効例の24か月時点での奏効持続は83%対35%であった。グレード3以上の治療関連有害事象は22%対66%と、免疫療法のほうが少なかった。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Duration of Adjuvant Chemotherapy for Stage III Colon Cancer(The New England Journal of Medicine・2018)6件の第3相試験12,834例を統合したIDEA解析。3か月治療の6か月に対する非劣性は全体集団では確認されなかった(ハザード比1.07、95%CI 1.00〜1.15)。ただしCAPOXでは非劣性が示され(ハザード比0.95、95%CI 0.85〜1.06)、FOLFOXでは示されなかった(1.16、95%CI 1.06〜1.26)。T1-3かつN1の低リスク群では3か月が6か月に非劣性で3年無病生存率83.1%対83.3%、T4またはN2の高リスク群では6か月が優れていた(64.4%対62.7%、ハザード比1.12、P=0.01)。短縮の動機はオキサリプラチンの蓄積性神経毒性の回避である。閲覧 2026-08-25