内科学

内科学 · S-65

低体温症の内科的管理

General Medical Aspects of Hypothermia

前提:正常
温度受容器。体温調節。皮膚循環の調節。心臓における興奮の発生と伝導。ペースメーカー電位の機序。
疾患
凍傷

🧠 全体像:は35℃未満で、意識・・循環が悪化するほど重症である。濡れと冷却を止め、患者を愛護的に扱い、重症例では体幹から能動的し、循環不安定・心停止ならを優先する。

原因と重症度

環境曝露・冷水に加え、敗血症、内分泌異常、低血糖、脳卒中、外傷、、アルコール・鎮静薬がを障害する。

の目安 臨床像 主な対応
軽症 32〜35℃ 、、判断力低下 受動的+能動的外部
中等症 28〜32℃ 意識低下、減弱、徐脈、J wave 能動的外部・内部、連続モニタリング
重症 <28℃ 昏睡、著明な徐脈・低血圧、・心停止 ECLSを含む高度を検討

温度区分は目安で、体温測定不能時は意識、、循環で病期を推定する。通常の体温計は低温域を測れないため、低温対応の直腸・膀胱・などを状況に応じて用いる。

⚠️ 改訂スイス分類はでもでも病期を決めない。 現場での推定が不正確であることを踏まえ、ICAR MedComの改訂スイス(2021年)は病期の決定基準をから心停止のリスクへ移し、評価をスケールに基づく反応性で単純化した。同時に震え(shivering)は病期を規定する徴候から外された。上表の温度区分は依然として臨床像の目安として有用だが、「が32℃だから中等症」という決め方はしない。1

切迫心停止の危険因子は、若く健康な患者では30℃未満、高齢者や複数のをもつ患者では32℃未満、、90 mmHg未満である。これらの患者と、すでに心停止している患者はECLSが可能な施設へ直接搬送する。2

初期対応と復温

flowchart TD
    A["冷却から隔離・濡れた衣類を除去"] --> B["愛護的に水平搬送+ABCDE"]
    B --> C{"循環と意識"}
    C -->|"安定・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='shivering'>シバリング</span>あり"| D["乾燥・保温+体幹の能動的外部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rewarming'>復温</span>"]
    C -->|"不安定/重症"| E["加温酸素・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='warmed intravenous fluid'>加温輸液</span>+内部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rewarming'>復温</span>"]
    C -->|"心停止"| F["CPR継続+ECLS可能施設へ"]
    E --> G["原因・合併症を治療"]
  • 脈拍と呼吸は極めて遅いことがあるため、心停止判定を急がない
  • 粗暴な移動はを誘発し得る。四肢だけの急速加温や意識低下例の熱い風呂を避ける
  • 加温ブランケット・、酸素、加温静注液を用いる
  • 循環不安定または心停止ではなど体外生命維持(ECLS)によるを優先的に検討する2

💡 rescue collapseとafterdropは別の現象である。 救出・搬送中のは、突然の体動などの機械的刺激、、中心静脈カテーテル挿入といった介入による不整脈で起こる。一方、を始めてもなおが下がる(afterdrop)の主因は、冷えた体部位が中に再灌流することである。四肢だけを急速に温めない理由がここにある。2

重症低体温では死亡徴候が当てにならず、明らかな致死的外傷などがなければしながら蘇生を継続する。やアドレナリンの間隔はにより通常蘇生と異なるため、低体温心停止アルゴリズムに従う。

⚠️ 「暖まるまでは死んでいない」には例外がある。 この原則が成り立つのは、低体温そのものが心停止の原因である場合に限る。雪崩埋没では死因の最多が窒息(65〜100%)、次いで外傷(5〜29%)で、低体温が原因の死亡は0〜4%にすぎない。ICAR MedComの2023年勧告は、埋没60分以下で生命徴候が無ければ気道開通の有無によらず窒息を想定して直ちに人工呼吸を行い、埋没60分超・生命徴候なし・気道閉塞ありでが測定できない場合は窒息による心停止と推定してを開始しなくてよいとする。逆にが測定でき、生命徴候が無く気道が開通し30℃未満であれば、埋没時間によらず蘇生を試みる。3

💡 ECLSをするかどうかはで決める。 単一のではなく多変量のツールを使う。HOPE(Hypothermia Outcome Prediction after ECLS)スコアは現時点で最良のツールとされ2、予測10%以上をECLSの推奨基準とする運用が一般化している。ECLSを導入した低体温心停止46例の検討では、この10%基準を用いれば無益となった17例(37%)へのECLSを回避でき、かつは全例が適応と判定された。4

合併症・原因検索

血糖、血液ガス、電解質、腎肝機能、、凝固、ECGを確認し、敗血症・内分泌疾患・中毒・外傷を治療する。中は、低血圧、電解質変動、肺水腫、不整脈を監視し、はリスクがなくなってから別施設プロトコルで治療する。

まとめ

  • 低体温患者は愛護的に扱い、低温域を測れる計で評価する。
  • 軽症は外部、循環不安定・心停止はECLSを含む内部を選ぶ。
  • 重症例の見かけ上のだけで蘇生を打ち切らず、と原因治療を並行する。

出典

  1. 1.Clinical staging of accidental hypothermia: The Revised Swiss System: Recommendation of the International Commission for Mountain Emergency Medicine (ICAR MedCom)(Resuscitation(国際山岳救急医学会 ICAR MedCom)・2021)現場での深部体温推定が不正確であることを踏まえ、改訂スイス病期分類では病期の決定に深部体温ではなく心停止のリスクを用いること、評価をAVPUスケールに基づく反応性で単純化し、震え(shivering)を病期を規定する徴候から外したことを確認した閲覧 2026-08-25
  2. 2.Accidental Hypothermia: 2021 Update(International Journal of Environmental Research and Public Health・2022)偶発性低体温症が深部体温35℃未満への意図しない低下であること、切迫心停止の危険因子を若く健康な患者では深部体温30℃未満・高齢者や複数の併存疾患をもつ患者では32℃未満、心室性不整脈、収縮期血圧90 mmHg未満とし、これらの患者と既に心停止している患者は体外循環式生命維持(ECLS)が可能な施設へ直接搬送すべきこと、低体温患者の心停止では正常体温例より生存と良好な神経学的転帰の可能性が高いこと、救出・搬送中の循環虚脱(rescue collapse)が主として突然の体動などの機械的刺激・循環血液量減少・中心静脈カテーテル挿入などの介入による不整脈で起こること、復温開始後もなお深部体温が下がる復温後降下(afterdrop)の主因が復温中の冷えた体部位の再灌流であること、HOPE(Hypothermia Outcome Prediction after ECLS)スコアが現時点で最良の予後予測ツールであり、低体温心停止患者がECLS復温から利益を得るかの評価に用いるべきことを確認した閲覧 2026-08-25
  3. 3.On-site treatment of avalanche victims: Scoping review and 2023 recommendations of the international commission for mountain emergency medicine (ICAR MedCom)(Resuscitation(国際山岳救急医学会 ICAR MedCom)・2023)雪崩埋没による死因の最多が窒息(全研究の範囲で65〜100%)、次いで外傷(5〜29%)で、低体温が原因の死亡はごくわずか(0〜4%)であること、埋没時間60分以下で生命徴候が無ければ気道開通の有無によらず窒息を想定して直ちに人工呼吸を行うこと、埋没時間60分超で生命徴候が無いが気道が開通している(または開通が不明な)場合は一次性の低体温心停止を想定して心肺蘇生を開始すること(体温を測って低体温心停止を除外できる場合を除く)、埋没60分超・生命徴候なし・気道閉塞ありで深部体温が測定できない場合は窒息による心停止と推定して心肺蘇生を開始しなくてよいこと、深部体温が測定でき生命徴候が無く気道が開通し深部体温30℃未満であれば埋没時間によらず蘇生を試みることを確認した閲覧 2026-08-25
  4. 4.Use of the HOPE score to assess survival outcome of hypothermic cardiac arrest selected by ECLS rewarming(Scandinavian Journal of Trauma, Resuscitation and Emergency Medicine・2025)現在ECLS復温はHOPEスコアが10%以上のときに推奨されていること、2000〜2022年に大学病院と地域病院でECLSを導入した低体温心停止46例の検討で、HOPEスコア10%未満を基準にすればECLS復温が無益であった非生存者17例(37%)を回避でき、かつ生存者全例(100%)ではECLSが適応と判定されたこと、観察された生存率24%に対しHOPEスコアの予測生存率は35%で両施設ともECLS復温の成績が予測を下回っていたことを確認した閲覧 2026-08-25