脳神経内科学

脳神経内科学 · G1-27

記憶障害の分類

G1-27: Classification of memory disorders

前提:正常
脳波(EEG);睡眠現象。学習と記憶。大脳辺縁系(核と伝導路)

🧠 全体像:記憶障害は「何を覚えられないか(陳述・非陳述・)」「いつの記憶か(前向・逆向)」「なぜ起きたか」で分類すると、海馬・、、基底核、などの局在と病因を結びつけられる。

記憶の型で分ける

記憶系 内容・例 主な神経基盤と障害
意識的にする事実・出来事 内側・海馬。は旅行・会話などの個人的出来事、意味記憶は語義や首都などの一般知識。、外傷、海馬病変、意味性認知症で障害。
意識せず使う技能、習慣、 基底核・小脳・運動関連皮質。自転車、演奏などの、先行刺激で反応が変わる・。基底核疾患や小脳・皮質/皮質下病変では学習効率が障害されうる。
短時間保持し操作する情報 。電話番号をダイヤルまで保持できない。、障害、で低下。

💡 意識的の有無で記憶を二分し、さらに海馬・・線条体・小脳という別々の脳内システムがそれぞれを支えるという整理は、記憶研究の歴史を通じて確立してきた分類である1。

時間軸で分ける

型 定義・例 局在・注意点
発症後の新しい記憶を固定できず、古い記憶は比較的保たれる 海馬・内側。Korsakoff症候群、両側海馬病変。
発症以前の記憶を失う 海馬、、。、など。
急なを中心にし、通常24時間以内に消失2 典型例では他の局在徴候を欠く。持続・局在徴候・意識障害なら脳卒中、発作、脳炎などを再評価する。
後の混乱・を伴う記憶障害 は外傷重症度の指標の一つ。

病因・症候群で分ける

区分 内容
変性性 はから、は意味記憶・、Parkinson病は・が障害されうる。
血管性 脳卒中、とくに視床・を含む虚血により記憶とが低下する。
健忘症候群 海馬、視床、の病変。Korsakoff症候群はによる著しいとを来し、・・の病変が記憶障害との関連で重視される3。は内側障害による重い健忘を来す。
・解離性 強い心理的外傷・ストレスを背景にが選択的に失われる。では自宅・職場から移動し過去をできないことがある。疾患を除外して扱う。
年齢・から期待されるより低下するが、日常生活の自立性はおおむね保たれる。認知症への必然的前段階ではなく、改善・安定・進行のいずれもありうるため病因評価と追跡が必要。
健忘 前向性・逆向性の両方が広く障害され、重い外傷、脳炎、びまん性脳病変で起こりうる。
flowchart TD
    A["記憶を訴える患者"] --> B["急性発症・意識変動・局在徴候を確認"]
    B --> C["前向性/逆向性、陳述/非陳述、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='working memory'>作業記憶</span>を領域別に評価"]
    C --> D["海馬・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='temporal lobe'>側頭葉</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='frontal lobe'>前頭葉</span>、基底核、小脳、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diencephalon'>間脳</span>の局在を推定"]
    D --> E["変性、血管、外傷、感染、栄養、薬物・精神疾患を検索"]

まとめ

  • は海馬・内側、は基底核・小脳、はと結びつける。
  • 一過性健忘でも非典型経過や局在徴候は緊急性のある原因を示しうる。
  • はな虚偽ではなく、記憶の空白を本人がに補う現象である。

出典

  1. 1.Memory systems of the brain: a brief history and current perspective(Neurobiology of Learning and Memory・2004)意識的に想起できる記憶とできない記憶という基本的な区分から出発し、その後、記憶は海馬とその関連構造、扁桃体、新線条体、小脳といった複数の別々の脳内システムに支えられているという生物学に基づく見方へ発展したという記憶研究の歴史を抄録で確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.Transient global amnesia: current perspectives(Neuropsychiatric Disease and Treatment・2017)一過性全健忘(TGA)が前向性健忘と逆向性健忘のいずれも生じる24時間以内の急性発症エピソードと定義されること、前向性記憶の低下が逆向性記憶の低下より高度であること、Hodges and Warlow(1990)の基準がTGA診断の基盤として用いられてきたことをIntroduction節(全文)で確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.The Korsakoff syndrome: clinical aspects, psychology and treatment(Alcohol and Alcoholism・2009)Korsakoff症候群でエピソード記憶が高度に障害される一方、プライミングなど「暗黙的」側面の記憶は保たれること、乳頭体・乳頭体視床路・視床前核の病変が視床内側背側核の病変よりも記憶障害に重要であるとする知見が近年重視されていることを抄録で確認した閲覧 2026-08-27