脳神経内科学

脳神経内科学 · G3-03

プリオン病

G3-03: Prion diseases

前提:病態
神経変性疾患・プリオン病
前提:正常
タンパク質の階層構造:三次・四次構造;タンパク質フォールディング
疾患
プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病)致死性家族性不眠症
検査値
RT-QuIC法髄液14-3-3蛋白・総タウ
画像所見
拡散強調画像高信号

🧠 全体像:は、正常が異常構造へ変換され、その異常蛋白がさらに正常蛋白を連鎖的に変換するである。認知症に、、視覚症状が加わると疑い、と髄液RT-QuICを中心に診断する。

病態

(PrP(^C))がPrP(^Sc)へを変え、分解されにくい凝集体として蓄積する。PrP(^Sc)は鋳型のようにPrP(^C)を異常化させ、神経細胞死、、を生じる。

flowchart TD
  A["正常型PrP(PrP-C)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='p53abn'>異常型</span>PrP(PrP-Sc)との接触またはPRNP変異"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conformational'>立体構造</span>の変換"]
  C --> D["分解抵抗性凝集体の蓄積"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spongiform change'>海綿状変化</span>・神経細胞死"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rapidly progressive dementia'>急速進行性認知症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ataxia'>運動失調</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myoclonus'>ミオクローヌス</span>"]

分類

代表疾患 特徴
最多。通常は中高年発症で、週〜月単位に進行
遺伝性 、Gerstmann-Sträussler-Scheinker病、 PRNP病的変異。、不眠・など表現型が異なる
獲得性 CJD、医原性CJD、 食品、汚染された生体組織・器材、歴史的な儀礼による曝露

CJDは牛との関連があり1、より若年で精神症状が先行しやすい。はパプアニューギニアのFore族で行われた歴史的な葬送儀礼に関連した。

💡 CJDの内訳はが圧倒的多数を占める。 が全CJD症例の85〜90%を占め(世界的に年間100万人あたり1〜1.5人の発生)、家族性・遺伝性CJD(・GSS・を含む)が約10〜15%、獲得性(CJD・医原性CJD・)が1〜5%にとどまる21。医原性CJDは主に汚染された製剤(世界で226例、平均潜伏期17年・範囲5〜42年)と硬膜移植(228例、平均潜伏期12年・範囲1.3〜30年)に由来し、いずれも1980年代半ば以前に製造・流通した製品由来の症例が中心で、潜伏期が最長42年に達した症例も報告されている3。

症候

  • の、行動・
  • 、錐体路・
  • 、
  • 、けいれん
  • 進行すると、嚥下障害、へ至る
  • では難治性不眠とが目立つ

診断

検査 ・位置づけ
/で大脳皮質の高信号、・高信号1
髄液RT-QuIC 異常のを検出する、診断上最重要の高特異度検査45
EEG 。全例ではなく、でもない1
髄液14-3-3・総tau 急速な神経細胞障害を支持するが、他疾患でも上昇する5
PRNP解析 遺伝性を疑う場合に遺伝カウンセリングとともに行う
神経病理 と異常を確認し、確定診断となる

⚠️ RT-QuICは髄液14-3-3・総tauより特異度に優れ、現在のに組み込まれているが、遺伝性では感度が変異ごとに大きく異なる。 第2世代髄液RT-QuICは感度93.8〜95.8%・特異度100%を示し、髄液14-3-3蛋白(感度85〜95%・特異度40〜100%)や総(感度67〜91%・特異度67〜95%、1,300 pg/mL超)より特異度に優れ、のに組み込まれている4。ただし遺伝性ではRT-QuICの感度が原因変異により大きく異なり、GSS(P102L変異)で43%、()で28%と、より明らかに低い6。はPRNP多型とPrPSc型の組み合わせで6つの分子亜型に分かれ(VV1亜型はRT-QuIC陰性になりやすい)、はこれらのいずれとも異なる明確に区別可能なPrPSc型を持つ7。の1998年は・EEG・髄液所見に基づいていたが、やの普及により現在は実務上時代遅れとなっており、米国の全米理センターは2015年4月から第2世代RT-QuICを新たなとして導入した1。

は侵襲性と感染管理上の問題があり、治療可能な別疾患を除外できず結果が管理を変える場合に限って検討する。では、感染性脳炎、悪性腫瘍、代謝性・を並行して除外する。

治療と感染対策

は確立していない。けいれん、、精神症状、疼痛、嚥下・栄養、を個別に管理し、早期からと意思決定支援を行う。

⚠️ は通常の消毒・に抵抗する。の神経外科器材、眼科器材、病理検体は通常感染対策だけで扱わず、施設の専用手順と当局の指針に従う。

まとめ

  • は異常蛋白の自己増幅で生じる、かつのである。
  • ではの皮質・線条体所見と髄液RT-QuICを中心に評価する。
  • 治療可能な鑑別を除外し、支持療法、、特殊な感染対策を行う。

出典

  1. 1.Creutzfeldt-Jakob Disease(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2026)CJDは孤発性(約85%、平均発症年齢62歳)・遺伝性(約10〜15%、家族性CJD・致死性家族性不眠症・GSSを含む)・感染性(1%未満、クールー・医原性CJD・変異型CJDを含む)に分類されること、変異型CJDはウシ海綿状脳症の発症機序と類似した機序で感染牛肉の摂取により生じること、WHOが1998年に発表した臨床・EEG・髄液所見に基づく診断基準はMRIや遺伝子検査の普及により実務上時代遅れとなっていること、米国の全米プリオン病理サーベイランスセンターが2015年4月に第2世代RT-QuICを新たな診断検査として導入したこと、MRI(DWI/FLAIR)の感度98%・特異度93%が14-3-3蛋白(診断精度70.4%)・総タウ(79.6%)・NSE(71.4%)より優れること、EEGの周期性鋭波複合が孤発性CJDの67〜95%に見られる一方、GSS・変異型CJD・クールー・致死性家族性不眠症では認められないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Epidemiological characteristics of human prion diseases(Infectious Diseases of Poverty・2016)CJD症例のうち孤発性が約85〜90%(世界的に年間100万人あたり1〜1.5人)を占め、家族性・遺伝性CJDが世界的に約10%、獲得性(変異型CJD・医原性CJD)が2〜5%にとどまることを確認した(Background節)。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Iatrogenic Creutzfeldt-Jakob disease, final assessment(Emerging Infectious Diseases・2012)医原性CJDの主な原因が汚染されたヒト由来成長ホルモン製剤(世界226例、潜伏期5〜42年・平均17年)と硬膜移植(228例、潜伏期1.3〜30年・平均12年)であること、いずれも1980年代半ば以前に製造・流通した製品由来の症例が中心であり、潜伏期が最長42年に達した症例もあることを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Sporadic Creutzfeldt-Jakob disease: Real-Time Quaking-Induced Conversion (RT-QuIC) assay represents a major diagnostic advance(European Journal of Histochemistry(Cazzaniga FA, Bistaffa E, De Luca CMG, Bufano G, Indaco A, Giaccone G, Moda F)・2021)第2世代髄液RT-QuIC(55℃・recSHa(90-231)基質)が感度93.8〜95.8%・特異度100%を示し、髄液14-3-3蛋白(感度85〜95%・特異度40〜100%)・総タウ(感度67〜91%・特異度67〜95%、カットオフ1300 pg/mL超)より特異度に優れること、RT-QuICがWHOの孤発性CJD診断基準に組み込まれたこと、孤発性CJDの分子亜型別に感度差があり(VV1亜型で0〜100%、MM2亜型で44〜78%)、亜型によって偽陰性になりやすいことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Diagnostic performance of CSF biomarkers in a well-characterized Australian cohort of sporadic Creutzfeldt-Jakob disease(Frontiers in Neurology(Senesi M, Lewis V, Varghese S, et al.)・2023)神経病理学的に確定した孤発性CJD 50検体と非CJD対照48例を比較したコホートで、14-3-3のELISA法が感度81.3%・特異度84.4%、総タウがElecsys法カットポイント536 ng/Lで感度88.0%・特異度87.5%、RT-QuICが感度92.7%・特異度100%であったこと、14-3-3陽性がWHOの臨床基準に取り込まれた一方で総タウは現行のWHO承認の国際的診断基準には含まれていないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Diagnostic accuracy of cerebrospinal fluid biomarkers in genetic prion diseases(Brain(Schmitz M, Villar-Piqué A, Zerr I, Llorens F, et al.)・2022)遺伝性プリオン病における髄液RT-QuICの感度が原因変異によって大きく異なること(遺伝性CJD-E200K 93%、遺伝性CJD-V210I 87%、GSS-P102L 43%、致死性家族性不眠症〔D178N〕28%)、致死性家族性不眠症・GSSでのRT-QuIC感度が孤発性CJDと比べ著しく低いことを確認した。閲覧 2026-08-27
  7. 7.Molecular pathology of human prion diseases(International Journal of Molecular Sciences・2009)孤発性CJD(sCJD)が`PRNP`遺伝子コドン129多型とプロテアーゼ抵抗性PrP(PrPSc)の型(1型・2型)の組み合わせによりParchi・Gambettiの分類で6つの分子亜型に分けられること(VV1亜型はRT-QuIC陰性になりやすい)、vCJDはsCJDのいずれの亜型とも異なる明確に区別可能なPrPSc型を持つことを確認した。閲覧 2026-08-27