小児科学

小児科学 · 2-31

糖尿病性ケトアシドーシスの管理

Management of Diabetic Ketoacidosis

前提:病態
1型糖尿病の発症機序
前提:正常
インスリン分泌とその調節脂肪酸の酸化とケトン体
疾患
糖尿病性ケトアシドーシス・高血糖高浸透圧症候群

🧠 は、輸液を開始してから持続静注インスリンを用い、K⁺とを厳密に監視する。インスリン急速静注とルーチンのは行わない。12脳損傷を疑ったら画像検査を待たず治療する。

診断と重症度

は通常、、、代謝性アシドーシスを組み合わせて診断する。

  • 血糖 >11 mmol/L(約200 mg/dL)
  • 静脈血pH <7.3 または HCO₃⁻ <18 mmol/L
  • 血中 ≥3 mmol/L、または中等度以上の12
重症度 静脈血pH HCO₃⁻
軽症 <7.3 <18 mmol/L
中等症 <7.2 <10 mmol/L
重症 <7.1 <5 mmol/L2

多尿、口渇、体重減少、脱水、嘔吐・腹痛、、、意識変容を認める。誘因は初発1型糖尿病、インスリン中断、ポンプ障害、感染、心理社会的問題などである。

治療の流れ

flowchart TD
    A["ABCDE・体重・意識・検査・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IV access'>静脈路</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isotonic crystalloid'>等張晶質液</span>を開始"]
    B --> C["約1時間後に持続静注インスリン0.05〜0.1 U/kg/時"]
    C --> D["血糖低下時も<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ketosis'>ケトーシス</span>が消えるまでインスリン継続"]
    D --> E["輸液にブドウ糖を追加"]
    E --> F["pH/HCO₃⁻改善、ケトン消失、経口可能"]
    F --> G["皮下インスリンと重ねて静注を終了"]

1. 初期評価と輸液

  • 体重、バイタル、灌流、脱水、意識を記録し、血糖、血液ガス、Na⁺、K⁺、Cl⁻、尿素、クレアチニン、血中ケトンを測る。感染検査は臨床的に疑う場合に行う。
  • を開始する。ショックでは10〜20 mL/kgを投与して直ちに再評価する。ショックがなければ推定とを計算し、通常24〜48時間かけて補う。💡 輸液速度と組成。 (PECARN FLUID試験)では、輸液のナトリウム濃度・を変えても低下や記憶・IQへの影響に有意差はなかったが、これは輸液の内容が何でもよいことを意味しない。の悪化・重症例では慎重な速度設定と頻回のが引き続き必要である。3
  • 血糖低下に伴う⁺の推移を追い、浸透圧変化とを評価する。

2. インスリンとブドウ糖

  • 輸液開始約1時間後に0.05〜0.1 U/kg/時を持続静注する。急速静注はしない。2
  • 血糖が約14〜17 mmol/L(250〜300 mg/dL)まで低下したら輸液にブドウ糖を加える。血糖を保ちながら、停止・アシドーシス改善までインスリンを継続する。
  • 血糖低下速度、血中ケトン、pH、HCO₃⁻を追い、血糖だけで治療終了を判断しない。

3. K⁺とその他の電解質

初期K⁺ 対応
低値 K⁺補充を先行し、上昇するまでインスリンを待つ。心電図監視2
正常〜軽度高値 尿排泄と腎機能を確認し、輸液にK⁺を加える
・ K⁺補充を保留し、頻回測定・心電図監視

血清K⁺が正常または高くてもは欠乏している。リン酸は重度、筋力低下、呼吸不全などで補充を検討する。はせず、生命を脅かす高K血症または極端なで循環が破綻している例などに限定してと用いる。2

脳損傷/脳浮腫

頭痛、、、意識低下、徐脈、、低下、脳神経異常を警戒する。💡 頻度と転帰。 臨床的に明らかな脳損傷の頻度は小児の最大1%とされ、発症した場合の21〜25%・死亡率21〜24%と予後は重い。初診時の低い動脈血分圧・高い窒素、およびが危険因子として報告されている。24

  • 疑った時点で0.5〜1 g/kg、または3%2.5〜5 mL/kgを投与する。2 💡 薬剤選択。 どちらを選ぶかを直接比較した質の高い試験はなく、なでは単独薬としてのの使用が単独よりも死亡と関連したとの報告があるが、行政データの限界から著者はを保留している。5
  • 画像検査のため治療を遅らせない。頭部を挙上し、を要請する。
  • 挿管が必要なら低換気を避け、治療前のを急に失わせない。

移行と再発予防

とアシドーシスが改善し、児が覚醒して経口摂取できたら皮下インスリンへ移行する。皮下注射後も作用発現まで静注インスリンを重ねる。退院前にインスリン中断の理由、ポンプ障害、病日管理、を確認する。

まとめ

  • を先に開始し、約1時間後に持続静注インスリンを始める。
  • 血糖だけでなくケトンとアシドーシス消失をにする。
  • 欠乏を前提に頻回測定し、初期K⁺と腎機能に応じて補充する。
  • 悪化では画像を待たず高張療法を開始する。

出典

  1. 1.ISPAD clinical practice consensus guidelines 2022: Diabetic ketoacidosis and hyperglycemic hyperosmolar state(2022)小児DKAの診断基準(血糖>11 mmol/L[約200 mg/dL]、静脈血pH<7.3またはHCO3⁻<18 mmol/L、血中β-ヒドロキシ酪酸≥3 mmol/Lまたは中等度以上の尿ケトン)、等張晶質液による輸液、輸液開始後の持続静注インスリン、電解質補正、重炭酸投与の原則回避、脳障害の監視と治療に関する国際小児思春期糖尿病学会(ISPAD)2022年版の推奨を確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Current recommendations for management of paediatric diabetic ketoacidosis(2023)小児DKAの重症度分類(軽症は静脈血pH 7.2〜7.29かつHCO3⁻ 10 mmol/L以上18 mmol/L未満、中等症はpH 7.1〜7.19かつHCO3⁻ 5〜9 mmol/L、重症はpH<7.1かつHCO3⁻<5 mmol/L)、インスリンは輸液開始1時間後かつ血清カリウム>3.0 mmol/Lになってから0.05〜0.1 U/kg/時で持続静注しボーラスは行わないこと、カリウムは血清値5 mmol/L未満かつ直近の尿排泄を確認した後に少なくとも40 mmol/Lを輸液へ添加すること、重炭酸ナトリウムは心肺蘇生中または症候性高カリウム血症を除き投与しないこと(脳損傷リスクを高めるため)、臨床的に重要な脳損傷の頻度は小児DKAで最大1%に達し発症すれば罹患率21〜25%・死亡率21〜24%に上ること、脳損傷を疑えば画像を待たずマンニトール0.5〜1 g/kg(最大100 g)を15〜20分かけて、または3%高張食塩水5 mL/kg(最大250 mL)を10〜15分かけて投与することを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Clinical Trial of Fluid Infusion Rates for Pediatric Diabetic Ketoacidosis(2018)13施設共同・小児1255例(DKA 1389エピソード)を対象に輸液のナトリウム濃度(0.9%または0.45%)と投与速度(急速または緩徐)を2×2要因配置で無作為割り付けした試験(PECARN FLUID試験)で、治療中のGlasgow Coma Scale低下(14未満に2回連続、48エピソード3.5%)、臨床的に明らかな脳損傷(12エピソード0.9%)、短期記憶、回復後2〜6か月の記憶・IQのいずれについても4群間に有意差がなかったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Risk factors for cerebral edema in children with diabetic ketoacidosis. The Pediatric Emergency Medicine Collaborative Research Committee of the American Academy of Pediatrics(The New England Journal of Medicine・2001)15年間に多施設で登録した小児DKA症例のうち脳浮腫を発症した61例と、無作為抽出した対照181例および年齢・発症様式・初診時血糖・pHで一致させた対照174例を比較したロジスティック回帰分析で、脳浮腫は初診時の動脈血二酸化炭素分圧が低いこと(1標準偏差=7.8 mmHgの低下ごとに相対危険度3.4)と血清尿素窒素が高いこと(1標準偏差=9 mg/dLの上昇ごとに相対危険度1.7)に有意に関連し、治療関連因子では重炭酸投与のみが他の共変量で調整後も脳浮腫と有意に関連した(相対危険度4.2、95%信頼区間1.5〜12.1)ことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Increasing use of hypertonic saline over mannitol in the treatment of symptomatic cerebral edema in pediatric diabetic ketoacidosis: an 11-year retrospective analysis of mortality(Pediatric Critical Care Medicine・2013)1999〜2009年に米国41小児病院から抽出したDKA児43,107例の後方視的コホート研究で、マンニトールまたは3%高張食塩水で治療された脳浮腫は3.8%に生じ、単独治療薬としての高張食塩水の使用がマンニトール単独と比べ死亡と関連した(補正オッズ比2.71、95%信頼区間1.01〜7.26)が、著者らは行政データの限界を踏まえどちらの薬剤を選ぶかについて確定的な比較試験が行われるまでは治療方針を決めつけるべきではないと結論したことを確認した。閲覧 2026-08-27