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Disease Atlas · 神経 · 腫瘍

胚芽異形成性神経上皮腫瘍

Dysembryoplastic neuroepithelial tumor

別名
DNET
臓器系
神経腫瘍小児
科目
NeurologyPathology
トピック
神経内科 G3-06:脳腫瘍の病理学的分類病理学 C-111:中枢・末梢神経系腫瘍
上位概念
中枢神経系腫瘍(成人・小児)
鑑別疾患
神経節膠腫毛様細胞性星細胞腫
症状
焦点発作痙攣発作

🧠 全体像:(DNET)は、小児・若年者のの代表的な原因となる、 grade 1の良性である。では皮質内に限局し、多結節性で泡状の外観を呈し、や周囲浮腫・をほとんど伴わないという「おとなしい」画像所見が、良性腫瘍らしさをそのまま反映している。⭐ 完全切除は腫瘍そのものだけでなく、てんかんの寛解も同時にもたらす——この一点が、切除範囲を決めるときの拠り所になる。

疫学・好発部位

好発年齢は10〜14歳をピークとする小児・若年者で、男性にやや多い1。⭐ で外科的に切除された腫瘍の20%をDNETが占めるほど、のにおいて重要な位置を占める1。最も一般的な発作型は部分発作()である1。

好発部位は(特に内側)で、後ろ向き検討ではが全体の60%を占め、・がこれに次ぐ12。

画像所見:皮質内・多結節性・泡状外観

⭐ DNETの画像診断は「皮質に限局する、多結節性で泡状の病変」という一言に集約される。 では・を呈する皮質基盤の嚢胞性〜多嚢胞性病変として描出される1。では均一な高信号を示す例もあるが、多くは混合した信号強度により泡状外観を呈する——後ろ向き検討では65%がこの混合信号パターンだった2。

  • rim sign:病変周囲を縁取る境界明瞭な薄い高信号で、約40%に認められる2
  • 三角形パターン:約20%に認められる特徴的な形態2
  • 石灰化・嚢胞変化:頻繁に伴う1

⭐ 「おとなしい」画像所見が良性腫瘍らしさを裏づける。 を示すのはわずか5%程度にとどまり大多数は造影されず、周囲へのは全例で認められなかった2。慢性・緩徐な経過を反映し、皮質基部から隣接白質へ拡大する形をとる2。

⚠️ 同じ皮質病変でも、とは画像の作法が異なる。 は嚢胞とを作り強くびまん性に造影されるのに対し、DNETは多結節性・泡状で造影されないのが典型であり、このの有無が両者を分ける手がかりになる。

病理

⭐ 診断の核心は特有のglioneuronal elementである。 軸索の束に沿って配列するoligodendrocyte様細胞と、の基質の中に浮かぶ特徴的な“floating neuron”(神経細胞)を認める。壊死やは欠く1。免疫染色ではS100・OLIG2が陽性となり、増殖指数は低値にとどまる(良性を裏づける所見)1。

💡 分子背景としてFGFR1変異が関与する。 生殖細胞系列の変異(p.R661Pなど)が報告されている1。ではKIAA1549-BRAF融合が代表的な分子異常であるのに対し、DNETではFGFR1が中心的な役割を果たす点が対照的である。

治療:手術がてんかんも寛解させる

⭐ 標準治療はであり、(放射線・化学療法)は不要である。 完全切除により80〜100%という高いてんかん寛解率が得られる1。良性・低悪性度( grade 1)であることに加え、腫瘍そのものがを持つため、切除がそのまま発作コントロールに直結する。

鑑別診断

の皮質病変・てんかんの原因として、次の腫瘍が鑑別に挙がる1。

  • :ともにBRAF V600E変異が高頻度にみられる腫瘍群として並べて語られることがあるが、DNETの主たる分子異常はFGFR1であり、画像所見(の有無・多結節性/泡状外観の有無)でも区別される

まとめ

  • DNETは小児・若年者のの代表的原因となる grade 1の良性で、の外科切除検体の20%を占める。
  • では皮質内に限局し、多結節性で泡状な外観を呈し、(約5%のみ)・浮腫・に乏しいという「おとなしい」所見が特徴である。
  • 病理は特有のglioneuronal element(floating neuronを伴う)で定義され、FGFR1変異が分子背景として関与する。
  • 治療はのみで、なしに80〜100%のてんかん寛解率が得られる——腫瘍切除がそのまま発作治療になる。
  • 鑑別は・・・で、後者とはBRAF V600E変異の高頻度という共通点がある一方、DNETの中心的分子異常はFGFR1であり画像所見でも区別できる。

出典

  1. 1.Dysembryoplastic Neuroepithelial Tumor: A Case Report of A Benign Intracranial Lesion Masquerading as Seizure Disorder(Cureus・2024)DNETがWHO 2021分類でCNS grade 1に分類される良性混合性神経膠神経細胞腫瘍であること、好発年齢は10〜14歳がピークで男性にやや多く、側頭葉(特に内側)・前頭葉・頭頂後頭葉に好発すること、薬剤抵抗性てんかんで外科切除された腫瘍の20%を占め部分発作が最も一般的な発作型であること、MRIでT1低信号・T2高信号・FLAIRで不均一な高信号を示す皮質基盤の嚢胞性〜多嚢胞性病変として描出され石灰化・嚢胞変化を伴いやすいこと、病理では軸索の束に沿って配列するoligodendrocyte様細胞と粘液性基質に浮かぶ特徴的な"floating neuron"を認め壊死・核分裂像を欠くこと、FGFR1の変異(生殖細胞系列変異p.R661Pの報告を含む)が関与すること、S100・OLIG2陽性かつKi-67低値であること、外科的完全切除が標準治療で補助療法なしに80〜100%のてんかん寛解率が得られること、鑑別として多形黄色星細胞腫・神経節膠腫・乏突起膠腫・毛様細胞性星細胞腫が挙げられることを確認した閲覧 2026-09-06
  2. 2.Differentiation of multinodular and vacuolating neuronal tumor and dysembryoplastic neuroepithelial tumor based on MRI(Turkish Journal of Medical Sciences・2024)DNET症例20例の後ろ向き検討で、側頭葉が最頻部位(60%)で皮質基部から隣接白質へ拡大する傾向を示すこと、全例がT2強調像で高信号を呈しFLAIRでは7例(35%)が均一高信号、残り13例(65%)が混合信号強度による"bubbly"外観を呈したこと、DNET周囲の境界明瞭な薄いリム状FLAIR高信号(rim sign)が8例(40%)に、三角形パターンが4例(20%)に認められたこと、造影効果を示したのは1例(5%)のみで大多数は造影されないこと、周囲への圧排効果(mass effect)は全例で認めなかったことを確認した閲覧 2026-09-06