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Disease Atlas · 神経 · 腫瘍

類表皮嚢胞(頭蓋内)

Intracranial epidermoid cyst

別名
類上皮腫頭蓋内類上皮腫epidermoid cyst(頭蓋内)真珠腫
臓器系
神経腫瘍
科目
Neurology
トピック
神経内科 G1-02:顔面神経障害の症候
上位概念
中枢神経系腫瘍(成人・小児)
鑑別疾患
前庭神経鞘腫
症状
難聴耳鳴めまい顔面痛
画像所見
拡散強調画像高信号

🧠 全体像:(頭蓋内)は真の腫瘍ではなく、胎生3〜5週の神経管閉鎖時にした外胚葉が、そのままゆっくりと角質を産生し続けてできる先天性のである1。増大が緩徐なため発症は成人になってから、周囲の脳神経を圧迫して初めて症状を出す。学習上の核心は2つ——画像で「に似ているが実は違う」ことを()で見抜くことと、被膜が脳神経・脳幹・血管に強く癒着するため全摘出が難しく、遺残があると再発し、内容物が漏出するとを起こしうることである。皮膚にできる()とは発生部位も臨床的意味もまったく別の病態である。

位置づけ:真の腫瘍ではなく先天性の遺残病変

は、神経管が閉鎖する際に本来表皮になるはずだった外胚葉性細胞の一部がして残存し、そこから角化による嚢胞壁が形成される先天性病変である1。嚢胞壁は絶えず角質・コレステロールを産生し続けるため、内容物が層状に蓄積してゆっくりと増大する。細胞増殖そのものが暴走しているわけではなく、「増殖」ではなく「分泌の蓄積」で大きくなるという点で、他のとは増大の仕組みが異なる。全に占める割合は0.2〜1.8%とまれである1。

好発部位

⭐ ののうち40〜50%はに生じ、この部位で最も頻度の高い占拠部位になる1。全体で見てもは7〜8%を占め、(75〜85%)・(10〜15%)に次ぐ第3の占拠病変である2。次いで、内にも生じうる。

flowchart TD
    A["神経管閉鎖時に外胚葉細胞が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='migrate/displace into'>迷入</span>・遺残"] --> B["角化<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stratified squamous epithelium'>重層扁平上皮</span>の嚢胞壁を形成"]
    B --> C["嚢胞壁が角質・コレステロールを産生し続ける"]
    C --> D["緩徐に増大し周囲構造を圧迫"]
    D --> E{"占拠部位"}
    E -->|"最多"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellopontine angle'>小脳橋角部</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior fossa'>後頭蓋窩</span>例の40〜50%)"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parasellar'>傍鞍部</span>"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fourth ventricle'>第四脳室</span>"]
    F --> I["第Ⅷ・Ⅴ脳神経の圧迫症状"]

臨床像

  • 増大が緩徐なため、多くは成人になってから、周囲の脳神経が圧迫されて初めて症状が出る。
  • に生じた場合、第Ⅷ脳神経(前庭・)の圧迫による難聴・めまい・や、第Ⅴ脳神経(三叉神経)に触れることによる様の顔面痛・で発症しうる1。
  • ⚠️ での症状はと重なるため、画像を見るまでは臨床像だけで両者を区別できない。 様の顔面痛で発症する例では、より頻度の高い血管圧迫による典型的なとされやすい点にも注意する。

画像所見:くも膜嚢胞との鑑別が最大の要点

⭐ では脳脊髄液に近い低吸収を示し、でもで低信号・で高信号と、一見とよく似た信号を示す。 しかし嚢胞内容物が・コレステロールを含む点で純粋な脳脊髄液とは異なり、では完全には抑制されず、むらのある「汚い高信号」を呈する1。

💡 確定的な鑑別点は()である。 はが密に詰まった固形の内容物であるため拡散が強く制限され、で明瞭な高信号を呈する。一方、は真の脳脊髄液そのものであるため、ではを示さない1。・T1・T2だけでは判別できない両者を、この一手技が切り分ける。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellopontine angle'>小脳橋角部</span>などの脳脊髄液様の嚢胞性病変"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>・T1・T2では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arachnoid cyst'>くも膜嚢胞</span>と類似"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluid-attenuated inversion recovery (FLAIR)'>FLAIR</span>でむらのある高信号<br>(汚い高信号)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion-weighted imaging (DWI)'>拡散強調画像</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion-weighted imaging'>DWI</span>)で判定"]
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion restriction'>拡散制限</span>あり(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion-weighted imaging'>DWI</span>高信号)"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidermoid cyst'>類表皮嚢胞</span>"]
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion restriction'>拡散制限</span>なし(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion-weighted imaging'>DWI</span>も低信号)"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arachnoid cyst'>くも膜嚢胞</span>"]
所見
・T1/T2信号 脳脊髄液に近似 脳脊髄液に一致
むらのある高信号(汚い高信号) 脳脊髄液と同様に抑制される
() 高信号(あり) 低信号(なし)

治療

治療は外科的摘出が原則だが、⚠️ 嚢胞壁が脳神経・脳幹・周囲血管に強く癒着しやすく、全摘出が技術的に難しい。 被膜を完全に摘出できれば再発率は低く抑えられるが、癒着のため被膜の一部を残さざるを得なかった例では再発が報告されており、報告例では最大で約20%に達する1。

⭐ 術中に嚢胞内容物(角質・コレステロール)が漏出すると、という頻度は低いが確立された合併症を起こしうる。 これは細菌感染ではなく、角質成分に対する無菌性の炎症反応であり、洗浄を十分に行うことでリスクを下げる1。この点は、破裂した内容物が無菌性のを起こす皮膚のと機序の面で類似している。

まとめ

  • (頭蓋内)は真の腫瘍ではなく、神経管閉鎖時にした外胚葉性細胞が角質を産生し続けてできる先天性のである。
  • 好発部位は(例の40〜50%)で、この部位では・に次いで多い占拠病変であり、第Ⅷ・Ⅴ脳神経の圧迫症状(難聴・めまい・・様顔面痛)で発症する。
  • ・T1・T2はに類似するが、のむらのある高信号と、()でのの有無が両者を確定的に鑑別する。
  • 被膜が脳神経・血管に癒着しやすく全摘出が難しい。被膜遺残例では再発しうるほか、術中の内容物漏出はを起こしうる。
  • 皮膚の()とは発生部位も臨床的意味も異なる別の病態である。

出典

  1. 1.Cerebellopontine angle epidermoid cyst masquerading as trigeminal neuralgia: A rare presentation and surgical outcome(Radiology Case Reports・2025)頭蓋内類表皮嚢胞が胎生3〜5週の神経管閉鎖時に迷入した外胚葉由来の角化重層扁平上皮に裏打ちされる先天性病変であること、小脳橋角部が後頭蓋窩の類表皮嚢胞の40〜50%を占め全頭蓋内腫瘍の0.2〜1.8%にとどまること、小脳橋角部病変では第Ⅷ脳神経圧迫による難聴・めまい・耳鳴や三叉神経痛様の顔面痛・知覚異常で発症しうること、MRIでT1低信号・T2高信号を示しFLAIRではケラチン・コレステロール含有によりむらのある高信号(汚い高信号)を呈すること、拡散強調画像(DWI)での拡散制限がくも膜嚢胞など他の嚢胞性病変との鑑別に重要な所見であること、被膜が脳神経・血管などの重要構造に癒着し全摘出が難しく被膜遺残例では再発が報告され(報告例で最大約20%)、術中の内容物漏出により化学性髄膜炎を来しうることを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Cerebellopontine Angle Cancer(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)小脳橋角部腫瘍の75〜85%が前庭神経鞘腫、10〜15%が髄膜腫、7〜8%が類上皮腫であること、造影MRIが診断のゴールドスタンダードであること、治療選択肢が経過観察・放射線治療・顕微鏡下手術の3つであり経過観察は高齢・全身状態不良な患者や増大傾向に乏しい腫瘍に適すること、大きな腫瘍では他の脳神経障害・脳幹圧迫症状・水頭症を来しうることを確認した閲覧 2026-08-12