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Drug Atlas · B22 Antitussives & mucolytics / 鎮咳去痰薬 · 必修

カルボシステイン

carbocisteine

分類
Antitussives & mucolytics / 鎮咳去痰薬
商品名(日本)
ムコダイン
科目
Pulmonology and Thoracic Surgery
トピック
Cough
副作用
食欲不振下痢発疹黄疸

🧠 全体像:カルボシステインはシステイン系の経口で、痰そのものを化学的に破壊するとは違い、痰粘液を作る・粘膜側の性状を正常化することで結果的に痰を出しやすくする薬である。気道だけでなく副鼻腔・中耳の粘膜にも同じ機序が働くため、の排膿や(小児に限り)のにも効能を持つ、の中では珍しく多臓器にまたがる適応を持つ薬剤である。

薬効群の中での位置づけ

・は「痰の何を変えるか」で機序が分かれる(の項も参照)。

薬剤 標的 機序 特徴
カルボシステイン 痰粘液の構成成分そのもの(/フコースの比) の抑制と粘液構成成分の正常化により、結果として痰を出しやすくする 気道だけでなく副鼻腔・中耳の粘膜にも同じ機序で作用し、適応が呼吸器以外にも及ぶ
の がS-S結合を還元・切断し粘液のゲル構造を直接壊す 化学的破壊が主体。呼吸器適応の頻度はカルボシステインより低い
・ 痰の線維 線維をし粘度を下げる。分泌も促進 修復作用はカルボシステインと重なる

💡 「痰を壊す」薬と「痰の質そのものを作り直す」薬は別物。 が既存の痰の分子構造を化学的に切断するのに対し、カルボシステインはの過形成そのものを抑え、これから作られる粘液の構成成分(/フコース比)を正常化する。が「できあがった痰」ではなく「痰を作る粘膜側」にあるため、副鼻腔炎や中耳炎のように気道以外の分泌粘膜にも適応が広がっている。

機序

flowchart TD
    A["カルボシステインを内服"] --> B["気道・鼻腔・副鼻腔・中耳の上皮粘膜に作用"]
    B --> C["痰粘液の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sialic acid'>シアル酸</span>/フコース構成比を正常化"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='goblet cell'>杯細胞</span>の過形成を抑制"]
    B --> E["障害された<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucosal epithelium'>粘膜上皮</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciliated cell'>線毛細胞</span>修復を促進"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucociliary transport capacity'>粘液線毛輸送能</span>が改善"]
    D --> F
    E --> F
    F --> G["喀痰・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasal discharge'>鼻汁</span>の粘稠度が下がり排出しやすくなる"]
    F --> H["副鼻腔の排膿が促進される"]
    F --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='middle-ear effusion'>中耳貯留液</span>の排泄が促進される(小児)"]

💡 気道炎症の抑制作用も併せ持つ。 好中球の産生や活性を抑える抗炎症作用が・in vitro実験で示されており、粘液調整だけでなく気道炎症そのものを和らげる方向にも働くと考えられている。ただし臨床効果の主体は粘液調整・粘膜正常化作用として承認されている。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収・代謝 後、大部分が未変化体として尿中に排泄される(主代謝物は2,2’-チオジ)
排泄 が主体。で投与24時間後のは約97%
で胎盤を通過し胎児・羊水中に移行することが確認されている
母乳移行 で乳汁中に移行することが確認されている

適応

領域 使いどころ
呼吸器 (咽頭炎・)、、、、、肺結核に伴う1
の排膿促進1
小児科 の促進(小児のみに認められた適応。成人のには承認がない)1

⭐ では、鎮咳ではなく支援の一環として使う。 成人1500mg/日(1回500mgを1日3回)という国内承認用量は、BTSの臨床ステートメントが(気道感染・に伴うもの)に挙げる750mg 1日3回という用量とおおむね一致する2。目的は咳を止めることではなくを助けることであり、原因治療(の、基礎疾患の最適化、気道感染治療)と併用する。中国22施設のCOPD患者709例を対象としたPEACE試験では、1500mg/日を1年間投与した群でプラセボ群に比べ年間増悪回数が有意に減少した(1.01回対1.35回、0.75)3。

用法・用量

対象 用量
成人 カルボシステインとして1回500mgを1日3回。年齢・症状により適宜増減
小児 カルボシステインとして体重kg当たり1回10mgを1日3回。年齢・症状により適宜増減

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  • 心障害のある患者:類薬(メチルシステインの吸入製剤)で心不全患者に悪影響を及ぼしたとの海外報告があり、注意する
  • 患者:肝機能が悪化することがある
  • 妊婦:妊娠または妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい(でを確認)
  • :治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討する
  • 高齢者:生理機能の低下を踏まえ、減量など注意する
  • ・併用注意はいずれも設定されていない

副作用

頻度 内容
高頻度(0.1〜5%未満) 、下痢、腹痛、発疹
低頻度(0.1%未満) 悪心、嘔吐、、口渇、湿疹、紅斑
重篤・まれ(いずれも頻度不明) (TEN)、()、・黄疸、ショック・アナフィラキシー

⚠️ 副作用発現率は全体で0.91%と低いが、重篤な皮膚粘膜症候群の報告がある。 服薬数週間後に紅斑・水疱が拡大し全身に皮疹が及んだ症例が報告されており、他の併用薬との切り分けが難しいことがある。長期投与中に状が出現したら早期に受診を促す。

まとめ

  • 痰粘液そのものを化学的に切ると異なり、の抑制と粘液構成成分(/フコース比)の正常化によって痰を出しやすくする。
  • 気道だけでなく副鼻腔・中耳の粘膜にも同じ機序が働くため、の排膿と(小児限定で)のにも適応を持つ。
  • COPDでは1500mg/日の1年投与でに対し年間増悪回数を有意に減らした(PEACE試験)。
  • では鎮咳目的ではなく支援として使う。
  • 禁忌は成分過敏症の既往のみとシンプルだが、TEN・などの重篤な皮膚粘膜症候群、、ショック・アナフィラキシーが頻度不明ながら報告されている。

出典

  1. 1.ムコダイン錠250mg・ムコダイン錠500mg 添付文書(杏林製薬(PMDA掲載)・2025)効能又は効果(上気道炎(咽頭炎・喉頭炎)、急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核の去痰、慢性副鼻腔炎の排膿。小児のみ滲出性中耳炎の排液も追加)、用法及び用量(成人は1回500mgを1日3回、小児は体重kgあたり1回10mgを1日3回、いずれも経口)、禁忌(本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者のみ)、特定の背景を有する患者への注意(心障害のある患者・肝機能障害患者・妊婦・授乳婦・高齢者)、重大な副作用(中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、肝機能障害・黄疸、ショック・アナフィラキシー、いずれも頻度不明)、その他の副作用(発現率0.91%、食欲不振0.24%・下痢0.17%・発疹0.10%・そう痒0.05%など)を確認した。併用禁忌・併用注意はいずれも設定されていない。閲覧 2026-09-29
  2. 2.British Thoracic Society Clinical Statement on chronic cough in adults(British Thoracic Society・2023)慢性湿性咳嗽の気道クリアランス支援の一環として、カルボシステイン750mgを1日3回投与する選択肢を挙げている。閲覧 2026-09-29
  3. 3.Effect of carbocisteine on acute exacerbation of chronic obstructive pulmonary disease (PEACE Study): a randomised placebo-controlled study(The Lancet・2008)中国22施設のCOPD患者709例(FEV1/FVC比 <0.7、FEV1 予測値の25〜79%、過去2年に増悪2回以上)を対象に、カルボシステイン1500mg/日または プラセボを1年間投与した二重盲検RCT。年間増悪回数がプラセボ群1.35回に対しカルボシステイン群1.01回に有意に減少し(リスク比0.75、95%CI 0.62-0.92、p=0.004)、忍容性は良好であった。閲覧 2026-09-29