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Drug Atlas · A17 Hypnotics / 睡眠薬

レンボレキサント

lemborexant

分類
Hypnotics / 睡眠薬
商品名(日本)
デエビゴ
商品名(EU)
Dayvigo
科目
PharmacologyClinical PharmacologyPsychiatry
トピック
A17: Non-benzodiazepine anxiolytics and non-benzodiazepine hypnotics11: Sedative-hypnotics, anxiety and insomniaB-07: Sleep Disorders: Diagnostic Criteria and Clinical Management
承認適応
不眠障害
禁忌疾患
ナルコレプシー
副作用
傾眠頭痛倦怠感

🧠 全体像:レンボレキサントは、スボレキサントに続くで、日本では2020年に発売された。5 mgを就寝直前に服用し、、とくにOX2受容体への親和性が高い。半減期が約17〜19時間と薬のなかでは長めで、入眠だけでなく夜間の覚醒を減らす効果が試験で示されている。その反面、翌日の傾眠(約1割)が主な副作用になる。代謝は主にCYP3Aで、日本の電子添文は強力な阻害薬をとせず、2.5 mgへ減量して併用の可否を判断する扱いにしている。

薬効群の中での位置づけ

薬 半減期の目安 日本の用量 日本で強いCYP3A阻害薬との併用
スボレキサント OX1・OX2(同程度) 約10〜12時間 成人20 mg・高齢者15 mg
レンボレキサント OX2優位(Ki 0.48、OX1は8.1 nmol/L) 有効半減期17〜19時間 5 mg(最大10 mg) 2.5 mgで可否を判断
OX1・OX2 約8時間 25〜50 mg(目安)

⭐ 同じ「DORA」でも、半減期と、強力なCYP3A阻害薬の扱いが薬ごとに違う。かどうかは、同じ作用機序でも電子添文ごとに確認する。

日本の電子添文の禁忌は、本剤への過敏症と重度のの2つである。睡眠障害のトピックにあるとおり、はの薬物療法の選択肢の一つだが、第一選択はである。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orexin'>オレキシン</span>A・Bが<br>OX1・OX2受容体に結合"] --> B["覚醒の維持"]
    C["レンボレキサント<br>OX1・OX2受容体への結合を可逆的に阻害<br>OX2への親和性が高い"] -.->|"結合を阻害"| A
    C --> D["脳が覚醒状態から睡眠状態へ移行"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sleep onset latency'>入眠潜時</span>の短縮・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='total sleep time'>総睡眠時間</span>の増加<br>レム睡眠の割合は変えない(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rat'>ラット</span>)"]

日本の電子添文は、ヒトOX1・OX2受容体に対するKi値を8.1と0.48 nmol/Lとし、A・Bの結合を可逆的に阻害して脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させると説明している。ヒト血漿中の代謝物M10のは未変化体と同程度だが、への寄与は小さい。では、の短縮との増加が認められ、レム睡眠の割合は変わらなかった1。

💡 はの脱落で起こる。の働きをさらに止める薬は症状を悪化させるおそれがあり、米国の添付文書はを禁忌にしている2。日本の電子添文は、・のある患者を禁忌でなく、症状を悪化させるおそれのある慎重投与に置いている1。副作用の・も、同じ理屈で理解できる。

薬物動態

項目 内容
吸収 最高濃度到達は約1〜3時間。高脂肪・食でCmaxが23%低下し、AUCが18%増え、tmaxが2時間遅れた。食事と同時やの服用は入眠効果の発現が遅れる21
分布 結合率は87〜89%(in vitro、日本の電子添文)。は1,970 L
代謝 主にCYP3A4、わずかにCYP3A5。主な循環代謝物はM10()で、のの13%
排泄 の57.4%が糞中、29.1%が尿中(未変化体は尿中1%未満)
半減期 有効半減期は5 mgで17時間、10 mgで19時間。定常状態の蓄積は1.5〜3倍(米国の添付文書)。最終は外国人ので69.0時間と長い
軽度・中等度でAUCが1.25倍・1.54倍。最終は69.0時間、軽度78.7時間、中等度108時間
重度(eGFR 15〜29)でAUCが50%増加
高齢者 健康高齢者5例でCmax 18%増・AUC 12%増。母集団解析では65歳以上の見かけのクリアランスが26%低い。米国の添付文書は年齢による臨床的に意味のある差はないとする

⭐ CYP3Aの阻害薬・の影響が大きい。 (強い阻害)でAUCが270%、(中等度)で317%増え、リファンピシン(強い誘導)ではCmaxが92%、AUCが97%も下がる。アルコールの併用でも、のな低下とともにCmaxが35%、AUCが70%増えた1。

flowchart TD
    A["CYP3Aを阻害する薬を併用<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluconazole'>フルコナゾール</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythromycin'>エリスロマイシン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='verapamil'>ベラパミル</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='itraconazole'>イトラコナゾール</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clarithromycin'>クラリスロマイシン</span>)"] --> B["レンボレキサントの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma concentration (plasma level)'>血漿中濃度</span>が上昇<br>AUCは約3.7〜4.2倍"]
    B --> C["傾眠などの副作用が増強"]
    C --> D["日本:併用するなら1日2.5 mg<br>米国:併用を避ける"]
    E["CYP3Aを誘導する薬を併用<br>(リファンピシン・フェニトインなど)"] --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma concentration (plasma level)'>血漿中濃度</span>が大きく低下<br>作用が減弱"]

適応

  • (日本)1。
  • 成人の(または)(米国)2。

日本人161例を含む949例の国際共同303試験(6か月の期と6か月の期)では、によるなの最初の7夜の変化量(中央値)は、−3.00分、5 mg群−11.00分、10 mg群−12.21分だった1。

55歳以上の1,006例を対象にした1か月の試験(SUNRISE 1)では、ポリソムノグラフィで、持続が5 mg・10 mgともより有意に短く、入眠後の覚醒時間はより24.0分・25.4分短かった。夜の後半の入眠後の覚醒時間は、剤(6.25 mg)より6.7分・8.0分短かった3。夜間の覚醒が多い高齢者の選択肢になりうるが、差は数分〜数十分であり、効果は劇的ではない。

用法・用量

日本1 米国2
通常量 成人1日1回5 mgを就寝直前。効果不十分なら10 mgまで 5 mgを就寝直前(起床まで7時間以上残す)。10 mgへ増量可、最大10 mg
食事 食事と同時・は避ける 食事と同時・は入眠が遅れうる
CYP3A阻害薬 中等度または強力な阻害薬(・・・・など)は投与の可否を慎重に判断し、併用する場合は2.5 mg 強い・は併用を避ける。では最大5 mg
中等度は5 mgを超えない。重度は禁忌 中等度は初回量・最大量とも5 mg。重度は推奨されない
他の治療薬との併用 有効性・安全性は確立されていない CNS抑制薬との併用で作用が増す

禁忌・注意

日本の禁忌は2つである1。

禁忌(日本) 理由
本剤の成分に対する過敏症の既往
重度の レンボレキサントのが上がるおそれ
  • :日本は慎重投与(悪化のおそれ)、米国は禁忌。
  • 脳の障害:作用が強く出るおそれがある。
  • 呼吸機能障害:中等度・重度の呼吸機能障害(とを除く)の使用経験はなく、安全性は確立していない。中等度・重度のやの長期投与も使用経験がない。
  • 高齢者・重度の・軽度から中等度の:が上がるおそれがあり、慎重に投与する。
  • 併用注意:、アルコール(精神のな低下。飲酒を避ける)、CYP3A阻害薬(上記)・(作用の減弱)。の血中濃度は、併用でCmaxとAUCが13%上がる程度だった。
  • 妊婦・授乳:妊婦は有益性が危険性を上回る場合に限る。10 mg服用後に母乳中へ移行し、相対的乳児投与量は2%未満である。
  • 運転:翌朝以後にも眠気や注意力の低下が残りうる。米国の添付文書は、10 mgを服用する患者に翌日の運転を控えるよう求め、が中止後も数日続く患者がいると述べている2。
  • 米国の:・・様症状、睡眠中の複雑な行動(起きたら直ちに中止)、呼吸機能への影響、うつ病やの悪化(処方する錠数を最小にする)、不眠が7〜10日で改善しなければ他の疾患の再評価。

副作用

日本の電子添文の頻度は次のとおりである1。

頻度 内容
3%以上 傾眠(10.7%)、頭痛(4.2%)、倦怠感(3.1%)
1〜3%未満 、睡眠時麻痺、、、悪心、体重増加
1%未満 注意力障害、、、、、腹痛、ALT上昇、回転性めまい、、、、血中トリグリセリド上昇、異常感、転倒、筋肉痛
頻度不明 、AST上昇、眼痛

国際共同303試験では、レンボレキサントを服用した884例のうち249例(28.2%)に副作用があり、傾眠10.7%、頭痛4.2%、倦怠感3.1%が主だった。

  • 過量:に75 mgまで投与した海外試験で、傾眠がに増えた。10 mgを超えると、、、、初期、などが認められた。特異的な解毒剤はない。
  • 依存:習医薬品である。症状が改善したら投与継続の要否を検討し、漫然と続けない。

まとめ

  • OX1・OX2受容体を可逆的に遮断する。OX2への親和性が高く、有効半減期は17〜19時間。
  • 日本は成人5 mg(最大10 mg)を就寝直前に、食事と同時は避ける。強力なCYP3A阻害薬はでなく、2.5 mgで可否を判断する。米国は併用を避ける。
  • 高齢者の試験で、剤より夜の後半の覚醒が少なかった。ただし効果の差は数分〜数十分である。
  • は米国で禁忌、日本は慎重投与。傾眠(約1割)、、、複雑な睡眠行動に注意する。重度のは禁忌。
  • 特異的な解毒剤はなく、翌朝の眠気と運転への影響に注意する。

出典

  1. 1.デエビゴ錠2.5mg/デエビゴ錠5mg/デエビゴ錠10mg 電子添文(エーザイ/医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2025)2025年12月改訂(第4版)の電子添文で、効能が不眠症、用法が成人1日1回5 mgを就寝直前(10 mgを超えない)であること、禁忌が過敏症と重度の肝機能障害であること、CYP3Aを中等度または強力に阻害する薬剤の併用は投与の可否を判断し、併用する場合は2.5 mgとされていること、ナルコレプシー・カタプレキシーが禁忌でなく悪化のおそれのある慎重投与であること、オレキシン受容体のKi値がOX1で8.1・OX2で0.48 nmol/Lであること、イトラコナゾール併用でAUC 270%増・フルコナゾール併用で317%増・リファンピシン併用で97%減、国際共同303試験の副作用(傾眠10.7%・頭痛4.2%・倦怠感3.1%)を確認した。閲覧 2026-11-06
  2. 2.DAYVIGO (lemborexant) tablets, for oral use — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/Eisai Inc.・2025)2025年2月24日有効の米国添付文書で、適応が入眠困難または睡眠維持困難を伴う成人の不眠症であること、推奨量が5 mg・最大10 mgで強いまたは中等度のCYP3A阻害薬との併用を避けること、禁忌がナルコレプシーであること、有効半減期が5 mgで17時間・10 mgで19時間であること、中枢抑制作用が中止後数日続く患者がいること、傾眠が最も多い副作用であることを確認した。閲覧 2026-11-06
  3. 3.Comparison of Lemborexant With Placebo and Zolpidem Tartrate Extended Release for the Treatment of Older Adults With Insomnia Disorder: A Phase 3 Randomized Clinical Trial(JAMA Network Open(Rosenberg R ら。SUNRISE 1)・2019)オープンアクセスの全文を読んで確認した。55歳以上の不眠障害患者1,006例を対象に、レンボレキサント5 mg・10 mg、ゾルピデム徐放剤6.25 mg、プラセボを1か月比較した第3相試験で、ポリソムノグラフィの持続睡眠潜時が両用量でプラセボより短縮し(幾何平均比0.77・0.72)、入眠後の覚醒時間がプラセボより24.0分・25.4分短縮し、夜の後半の入眠後覚醒時間はゾルピデム徐放剤より6.7分・8.0分短かったことを確認した。閲覧 2026-11-06