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Drug Atlas · A17 Hypnotics / 睡眠薬

スボレキサント

suvorexant

分類
Hypnotics / 睡眠薬
商品名(日本)
ベルソムラ
商品名(EU)
Belsomra
科目
PharmacologyClinical PharmacologyPsychiatry
トピック
A17: Non-benzodiazepine anxiolytics and non-benzodiazepine hypnotics11: Sedative-hypnotics, anxiety and insomniaB-07: Sleep Disorders: Diagnostic Criteria and Clinical Management
承認適応
不眠障害
禁忌疾患
ナルコレプシー
副作用
傾眠頭痛めまい
相互作用
エンシトレルビル

🧠 全体像:スボレキサントは、世界で初めて実用化されたで、覚醒を保つ信号であるの働きを遮断して眠りやすくする。ベンゾジアゼピンやのようにGABA系で脳全体を抑えるのではなく、「覚醒を止める」方向から睡眠を作る。そのため睡眠構造を大きく変えにくいが、とは相性が悪く(の脱落が原因だから)、代謝は主にCYP3Aなのでがになる。用量・禁忌は国で異なり、日本は成人20 mg(高齢者15 mg)、米国は10 mg(最大20 mg)が基本である。

薬効群の中での位置づけ

系統 代表薬 特徴
・ GABA-A受容体 睡眠構造を変え、依存・・健忘・転倒が問題
GABA-A受容体のα1サブユニット 入眠に強い。複雑な睡眠行動
MT1・MT2 に作用。乱用性がほぼない
スボレキサント・レンボレキサント・ OX1・OX2受容体 覚醒信号を遮断。翌日の眠気、、など

睡眠障害のトピックにあるとおり、米国睡眠医学会の2017年の指針はスボレキサントをに対して弱い推奨で挙げている。ただしの第一選択はであり、薬はその補助である。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lateral hypothalamic area'>視床下部外側野</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orexin neuron'>オレキシン神経</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='orexin'>オレキシン</span>A・Bを放出"] --> B["OX1・OX2受容体に結合"]
    B --> C["覚醒の維持"]
    D["スボレキサント<br>OX1・OX2受容体を可逆的に遮断"] -.->|"結合を阻害"| B
    D --> E["覚醒状態から睡眠状態へ移行しやすくなる"]

日本の電子添文は、スボレキサントがに選択性が高い可逆的な拮抗薬で、ヒトのOX1・OX2受容体に対する親和性(Ki値)がそれぞれ0.55 nMと0.35 nMであり、A・Bの結合を阻害して脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させると説明している1。

💡 は、を作る神経が失われる病気である。 の働きをさらに止める薬は症状を悪化させるおそれがあるため、米国の添付文書はを禁忌にしている2。日本の電子添文は、またはのある患者を禁忌にはせず、症状を悪化させるおそれがあるとして慎重投与に置いている1。同じ薬でも国で扱いが違う。副作用の・・様症状も、の症状に似る。

薬物動態

項目 内容
吸収 日本人に40 mgを単回投与すると、1.5時間(1.0〜3.0)で最高に達する。20 mgの平均は62%(日本の電子添文)。米国の添付文書では10 mgで82%、Tmaxの中央値は2時間12
食事の影響 食事と同時やの服用は入眠効果の発現が遅れるおそれがある。日本人データではでTmaxが1時間延び、Cmaxが23%増えた(AUCは不変)
分布 は約49 L。結合率は99%超
代謝・排泄 主にCYP3A、わずかにCYP2C19。血漿中の主な成分はスボレキサントと水酸化代謝物で、後者はを持たないと考えられる。糞便中に約66%、尿中に23%が排泄される
半減期 日本人40 mg単回で10.0時間。のでは約9.4時間、健康高齢者では18.4時間と延び、AUCとCmaxも高い
蓄積 3日目までに定常状態に達し、係数は1.21〜1.60(外国人データ)

米国の添付文書は、スボレキサントの曝露が肥満の患者で非肥満より、女性で男性より高いことを挙げ、とくに肥満の女性では用量を増やす前に副作用の危険を考えるよう求めている2。

⭐ CYP3Aの阻害薬との影響は大きい。 (強い阻害)でスボレキサントのAUCが179%、(中等度)で105%増え、リファンピシン(強い誘導)では逆にCmaxが64%、AUCが88%減る1。

flowchart TD
    A["強いCYP3A阻害薬を併用<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='itraconazole'>イトラコナゾール</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clarithromycin'>クラリスロマイシン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ritonavir'>リトナビル</span>など)"] --> B["スボレキサントの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma concentration (plasma level)'>血漿中濃度</span>が顕著に上昇"]
    B --> C["作用の著しい増強<br>日本では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contraindicated combination'>併用禁忌</span>"]
    D["中等度のCYP3A阻害薬を併用<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diltiazem'>ジルチアゼム</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='verapamil'>ベラパミル</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluconazole'>フルコナゾール</span>など)"] --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma concentration (plasma level)'>血漿中濃度</span>が上昇<br>傾眠・疲労・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sleep paralysis'>睡眠麻痺</span>などが増強"]
    E --> F["減量を考える<br>日本は1日10 mg、米国は5 mg"]
    G["強いCYP3A<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inducers'>誘導薬</span>を併用<br>(リファンピシン・カルバマゼピン・フェニトイン)"] --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma concentration (plasma level)'>血漿中濃度</span>が低下し作用が弱まる"]

適応

  • :日本の効能。二次性に対する有効性と安全性は確立されていない1。
  • 米国:またはを伴う2。

日本人155例を含むの患者638例(成人370例、高齢者268例)に3か月間投与した国際共同第Ⅲ相試験では、との差(な指標)は、持続で3か月まで約8〜10分の短縮、入眠後の覚醒時間で第1夜に約33分、1か月で約26分、3か月で約17分の短縮だった1。的なでも差は5分前後にとどまり、効果は劇的ではないという理解が実情に近い。2件の3か月試験の整理でも、40/30 mgは大半の評価項目でより優れ、20/15 mgも的なと入眠後の覚醒時間で優れた3。

用法・用量

日本1 米国2
通常量 成人1日1回20 mg、高齢者1日1回15 mgを就寝直前 1日1回10 mg。10 mgでが良いが効果が不十分なら増量できるが、最大20 mg
服用のタイミング 就寝の直前。食事と同時・は避ける 就寝30分以内。起床まで7時間以上残す。食事と同時・は効果発現が遅れる
中等度のCYP3A阻害薬 1日10 mgへの減量を考慮 5 mg(通常10 mgを超えない)
強いCYP3A阻害薬 併用は推奨されない
他の治療薬との併用 有効性・安全性は確立されていない CNS抑制薬との併用では減量が必要なことがある

禁忌・注意

日本の禁忌は2つで、本剤への過敏症の既往と、次の薬剤の投与中である1。

禁忌(日本) 理由
、、、(これを含む除菌の配合剤)、、・、、、、 CYP3Aを強く阻害し、スボレキサントのを顕著に上げて、作用を著しく強める
  • 日本で慎重投与:・(症状を悪化させるおそれ)、脳の障害(作用が強く出るおそれ)、重度の(が上がるおそれ)。重度の呼吸機能障害の患者を対象にしたは行われていない。軽度〜中等度のCOPDやの患者にしても、明らかな呼吸抑制はみられなかった(重度は未検討)。
  • 高齢者:非高齢者よりが高くなる傾向があり、観察しながら投与する。
  • 運転:翌朝にも影響が残りうる。の試験では、就寝前の20 mgや40 mgの服用後9時間の運転検査で、一部のに運転能力への影響がみられた。危険を伴う機械の操作をさせない。
  • 併用注意:アルコール(精神のな低下)、、強いCYP3A(作用の減弱)、ジゴキシン(P糖蛋白阻害で濃度が上がる。AUCが27%増加)。
  • 妊婦・授乳:妊婦は有益性が危険性を上回る場合に限る。乳汁にも移行するが、20 mg投与時の相対的乳児投与量は母体投与量の1%未満である。
  • 米国の:による日中の機能低下、睡眠中の複雑な行動(・など。起きたら直ちに中止)、・・様症状(用量が増すほど危険が上がる)、不眠が7〜10日で改善しなければ他の疾患の再評価2。

副作用

頻度(日本) 内容
1〜5%未満 傾眠、頭痛、、疲労、
1%未満 睡眠時麻痺、、
頻度不明 、悪心・嘔吐、・夢遊症・傾眠時・不安・(海外試験の高用量群でみられたもの)、そう痒症

日本の6か月の試験では、副作用が20.9%(53/254例)にみられ、傾眠4.7%、頭痛3.9%、疲労2.4%だった1。米国の3か月試験(20 mgまたは高齢者15 mg)では、傾眠が7%での3%より多く、頭痛7%(6%)、めまい3%(2%)、2%(1%)が続いた。傾眠は女性(8%)が男性(3%)より多かった2。

  • 過量:外国人に120〜240 mgを朝に投与した試験では、傾眠の頻度と持続が用量に応じて増えた。240 mgでは胸痛と呼吸抑制の報告があった。は除去に有用でないと考えられる1。
  • 依存:日本の電子添文は習医薬品としている。重大な副作用の欄にはベンゾジアゼピンのような依存・の記載はない。ただし症状が改善したら投与継続の要否を検討し、漫然と続けない。

まとめ

  • 世界初の。OX1・OX2受容体を可逆的に遮断し、覚醒信号を止めて眠りやすくする。
  • 日本は成人20 mg・高齢者15 mgを就寝直前に、米国は10 mg(最大20 mg)から。食事と同時は避ける。効果は入眠・睡眠維持ともに数分〜数十分の改善で、劇的ではない。
  • 代謝は主にCYP3A。日本はが、は10 mgへ減量、では効きが落ちる。
  • は米国で禁忌、日本は慎重投与。・・はこの薬らしい副作用。
  • 翌朝の眠気と運転への影響、肥満・女性・高齢者での曝露増加に注意する。

出典

  1. 1.ベルソムラ錠10mg/ベルソムラ錠15mg/ベルソムラ錠20mg 電子添文(MSD/医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2026)2026年8月改訂(第6版)の電子添文で、効能が不眠症で二次性不眠症の有効性・安全性は確立されていないこと、用法が成人20 mg・高齢者15 mgを1日1回就寝直前であること、禁忌が過敏症と強いCYP3A阻害薬(イトラコナゾール・クラリスロマイシン・リトナビル・エンシトレルビルなど)の投与中であること、ナルコレプシー・カタプレキシーが禁忌でなく慎重投与(悪化のおそれ)であること、日本人40 mg単回で最高血漿中濃度到達1.5時間・半減期10.0時間、高齢者の半減期18.4時間、ケトコナゾール併用でAUC 179%増・ジルチアゼム併用で105%増・リファンピシン併用で88%減、国際共同第Ⅲ相試験の結果、副作用の頻度を確認した。閲覧 2026-11-06
  2. 2.BELSOMRA (suvorexant) tablets, for oral use — full prescribing information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/Merck Sharp & Dohme LLC・2025)2025年3月10日有効の米国添付文書で、適応が入眠困難または睡眠維持困難を伴う不眠症であること、推奨量が10 mg・最大20 mgで就寝30分以内かつ起床まで7時間以上残して服用すること、禁忌がナルコレプシーであること、中等度のCYP3A阻害薬との併用は5 mg(通常10 mgを超えない)で強いCYP3A阻害薬は推奨されないこと、肥満と女性で曝露が増えること、傾眠7%(プラセボ3%)が最も多い副作用であること、睡眠麻痺・入眠時幻覚・カタプレキシー様症状と複雑な睡眠行動の警告があることを確認した。閲覧 2026-11-06
  3. 3.Suvorexant in Patients With Insomnia: Results From Two 3-Month Randomized Controlled Clinical Trials(Biological Psychiatry(Herring WJ ら)・2016)抄録(PMID 25526970)で、非高齢者(18〜64歳)と高齢者(65歳以上)の2件の3か月第3相プラセボ対照試験(それぞれ1,021例・1,019例)で、スボレキサント40/30 mgが自覚的・睡眠ポリグラフィの主要評価項目で3か月まで概ねプラセボより優れ、20/15 mgも自覚的総睡眠時間と入眠後の覚醒時間でプラセボより優れたこと、全体として忍容性が良好だったことを確認した。全文は読んでいない。閲覧 2026-11-06