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Drug Atlas · A16 Hypnotics / 睡眠薬

トリアゾラム

triazolam

分類
Hypnotics / 睡眠薬
商品名(日本)
ハルシオン
商品名(EU)
Halcion
科目
PharmacologyClinical PharmacologyPsychiatry
トピック
A16: Benzodiazepines11: Sedative-hypnotics, anxiety and insomniaB-07: Sleep Disorders: Diagnostic Criteria and Clinical Management
承認適応
不眠障害・ナルコレプシー
禁忌疾患
緑内障重症筋無力症
副作用
傾眠めまい錯乱前向性健忘夢遊症
相互作用
アタザナビルインジナビルエンシトレルビルリトナビル
解毒薬
フルマゼニル

🧠 全体像:は、のなかで作用がもっとも短い部類に入る薬である。半減期は3時間前後で、活性の強い代謝物もほとんど残らないため、翌朝への持ち越しが少なく、寝つきの悪さ()に向く。その代わりに、効きが速くて強いぶん、・・夢遊などの、使用をやめたときの、依存が問題になりやすい。さらに代謝を主にCYP3A4に頼るため、やHIVなどの阻害薬と重なると血中濃度が跳ね上がる。そのための薬が非常に多い。

薬効群の中での位置づけ

として使うベンゾジアゼピンは、半減期の長さで「どの時間帯の不眠に効くか」と「翌日に何が残るか」が決まる。はこの表の一番上、つまり最も短い側にある。

薬 の目安 臨床での位置づけ
約3時間(日本人)1 型。に。持ち越しは少ないが、健忘・が出やすい
ブロチゾラム 約7時間 または。とに
フル 約21時間 。強い睡眠作用で、乱用でも問題になる
フルラゼパム 未変化体は短いが、が数十時間 。連用で蓄積し、日中に持ち越す
約16〜48時間

💡 この臨床薬理の分類は資料によって揺れる。臨床のトピックではをに置いている。半減期が数時間以内の薬を型と呼ぶ分け方もある。どの呼び方でも、「短いほど持ち越しは少なく、と健忘は出やすい」という関係は共通である。

米国睡眠医学会の2017年の指針は、のうちに対する選択肢の一つとしてを挙げている(弱い推奨。詳細は睡眠障害のトピックを参照)。ただしの第一選択はに対するであり、薬は補助として、短期間に限って使うのが前提である。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='triazolam'>トリアゾラム</span>がGABA-A受容体の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='benzodiazepine binding site'>ベンゾジアゼピン結合部位</span>に結合"] --> B["GABAによる抑制性の神経伝達が増強"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypnosis'>催眠</span>・鎮静・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anxiolysis'>抗不安</span>・筋弛緩・抗けいれん作用"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sleep latency'>睡眠潜時</span>の短縮<br>睡眠率の増加"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flumazenil'>フルマゼニル</span><br>(同じ部位を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='competitive'>競合的</span>に占める拮抗薬)"] -.-> A

米国の添付文書は、が脳のGABA-A受容体のに結合して、GABAによるシナプス抑制を強めると説明している2。日本の電子添文には、動物でに近い作用の幅を持ちながら、強さはの約4〜5倍、特に睡眠はマウスで約45倍とある。のィでは、が短くなり睡眠率が上がる1。1回量が0.125〜0.25 mgと少ないのは、この力価の高さによる。

薬物動態

項目 内容
吸収 速やか。0.5 mgを1回した日本人で、最高到達まで平均1.2時間。経口でのは少なくとも85%(外国人データ)1
代謝 主にCYP3A4。最初の段階は水酸化で、α-ヒドロキシ体(未変化体より弱い活性を持つがは低い)と4-ヒドロキシ体(活性なし)ができる。その後を受ける12
排泄 総排泄率は尿中82%・糞便中8%。尿中の内訳は未変化体2%、α-ヒドロキシ体70%、4-ヒドロキシ体10%(外国人データ)1
日本の電子添文では平均2.9時間。米国の添付文書では1.5〜5.5時間12
高齢者 同じ用量でもが高く、鎮静と精神の低下が強く出る2

⭐ 半減期が短くても、代謝経路が一本だと相互作用の影響は大きい。 は大部分がCYP3A4による水酸化で消えるので、この酵素が阻害されると血中濃度とがともに大きく伸びる。逆に強いCYP3A(カルバマゼピン、、リファンピシンなど)では代謝が促進されて効きが落ちる1。

flowchart TD
    A["CYP3A4を阻害する薬を併用<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='azole antifungals'>アゾール系抗真菌薬</span>・HIV<span class='jp-term jp-term-diagram' title='protease inhibitors'>プロテアーゼ阻害薬</span>など)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='triazolam'>トリアゾラム</span>の代謝が阻害される"]
    B --> C["血中濃度の上昇・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='duration'>作用時間</span>の延長"]
    C --> D["過度の鎮静・呼吸抑制<br>健忘・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='twilight state'>もうろう状態</span>の増強"]
    E["強いCYP3A<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inducers'>誘導薬</span>を併用<br>(リファンピシン・カルバマゼピンなど)"] --> F["代謝が促進される"]
    F --> G["作用の低下"]

適応

  • :就寝前に1回服用する。日本で承認されている1。
  • 麻酔:手術前夜の就寝前に投与する(日本)1。
  • 米国の適応は、成人のの短期治療(通常7〜10日)である2。日本の添付文書にこの期間の目安は書かれていないが、「漫然とした継続投与による長期使用を避ける」ことは求めている。

用法・用量

日本 米国
成人の通常量 1回0.25 mgを就寝前。高度のには0.5 mgまで1 0.25 mgを1日1回就寝前。体重が少ないなどで0.125 mgで足りることもある。0.5 mgは低用量が効かない場合のみ2
高齢者 1回0.125〜0.25 mgまで 0.125 mgから開始。上限0.25 mg
上限 0.5 mgを超えない 0.5 mg(1日1回)
期間・処方量 1回30日分を限度とする 短期(7〜10日)が前提で、1か月分を超えて処方しない。3週間を超えて使うなら、背景にある精神疾患・身体疾患を評価する
  • 日本の電子添文は、反応にがあり、眠気・めまい・・健忘がに出るため、0.125 mg以下の少量から始めるよう求めている1。
  • 就寝の直前に服用し、薬効が消える前に活動を始める可能性がある日は服用しない。 睡眠が足りないまま起床したときや、夜中に一時的に起きて仕事をしたときに健忘が起こった報告がある1。

禁忌・注意

日本では次の患者が禁忌である1。

禁忌 理由・補足
本剤への過敏症の既往
急性閉塞隅角緑内障 でが上がり、悪化するおそれ
重症筋無力症 筋弛緩作用で悪化するおそれ
としてを起こしたことがある 重篤な・他傷行為や事故に至るおそれ
次のCYP3A阻害薬などの投与中 ・・・ホス・・、HIV(・・・・)、・、、含有製剤、、、、。血中濃度が上がり、作用が強まり長引く

⚠️ 米国の添付文書の禁忌は、過敏症(他のベンゾジアゼピンを含む)と、強いCYP3A阻害薬(、、ネファゾドン、、など)の併用の2点である2。緑内障や重症筋無力症は、日本では禁忌だが米国の禁忌欄にはない。国や資料で禁忌の範囲が異なるので、使う国の添付文書で確かめる。

  • (日本):服用後に、や(など)が現れることがある。眠りに入るまで、あるいは時の出来事を覚えていないことがある1。
  • 呼吸機能が高度に低下している患者(・肺気腫・・の急性期など):呼吸抑制で炭酸ガスナルコーシスを起こしやすいため、投与しない。やむを得ない場合は少量から始めて呼吸状態を見る1。
  • 米国の:オピオイドとの併用による鎮静・呼吸抑制・昏睡・死亡、乱用・誤用・、継続使用後の急な中止による生命に関わる。減量はで行う2。
  • 併用注意:アルコールや(の増強)、・・ジョサマイシン・・・などのCYP3A4阻害薬(日本では禁忌でなく併用注意の扱い)、(が上がり作用が強まる)。米国の試験では、で最高が46%上昇しクリアランスが53%低下、で51%上昇・55%低下、でAUCが48%増加した2。
  • 妊娠・授乳:妊娠中のベンゾジアゼピン投与で奇形児の報告が対照より多いとのがあり、新生児には・・呼吸抑制・などが起こりうる。授乳は避ける1。
  • 高齢者:少量から始める。などの副作用が出やすい。もベンゾジアゼピン全般を高齢者で避けるべき薬としている。

副作用

日本の電子添文の記載をもとに整理し、米国の試験成績を最後の行に添える1。

区分 内容
よくみられる(日本、1%以上) 眠気14.3%、倦怠感11.1%、9.0%、頭重5.1%、頭痛4.2%、めまい2.9%、協調運動失調1.1%
・ 一過性0.12%、0.05%、(など)は頻度不明。十分に覚醒しないまま車の運転や食事をして覚えていない例がある
依存・離脱 連用でを生じうる。急な減量・中止で・せん妄・振戦・不眠・不安・・が出ることがあり、痙攣の既往があれば特に慎重にする
精神症状 刺激興奮・・攻撃性・・・
呼吸抑制 呼吸機能が低下した患者で炭酸ガスナルコーシス
その他の重大なもの 肝炎・・黄疸、ショック・アナフィラキシー
米国の対試験(1%以上かつより多い) 傾眠14.0%(6.4%)、頭痛9.7%、めまい7.8%(3.1%)、5.2%、感4.9%(0.9%)、・失調4.6%(0.8%)、悪心・嘔吐4.6%2
  • 日中の不安:米国の添付文書は、わずか10日の連続使用でも日中の不安の増加が報告されており、投与と投与の間に起こる離脱()の現れである場合があると述べている。この傾向が出たら中止を考える2。
  • 睡眠中の複雑な行動:完全に目覚めていない状態での運転()や調理・摂食などが報告されている。アルコールや他のの併用、最大量を超える使用でリスクが上がる。起きたら中止を強く考える2。
  • 過量:傾眠・・・不明瞭言語から昏睡に至り、呼吸抑制や痙攣も起こりうる。アルコールとの併用過量で死亡例がある。解毒にはがあるが、使う前にその添付文書を読むこと1。

まとめ

  • の。半減期は約3時間(資料により1.5〜5.5時間)で、に向く。持ち越しは少ない。
  • 代謝は主にCYP3A4。・HIVなど多くの阻害薬がで、では効きが落ちる。
  • 短い薬ほど・・・・日中の不安が目立つ。就寝直前に服用し、十分な睡眠時間を確保できない日は使わない。
  • 日本では緑内障・重症筋無力症が禁忌、米国の禁忌欄は過敏症とCYP3A阻害薬のみ。国による違いを意識する。
  • 米国では短期使用(通常7〜10日、1か月分まで)が原則。日本でも漫然と続けないことが求められている。
  • 拮抗薬はだが、長期服用者では離脱や痙攣を誘発しうる。

出典

  1. 1.ハルシオン0.125mg錠/ハルシオン0.25mg錠 電子添文(ファイザー/医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2026)2026年7月改訂(第7版)の電子添文で、効能が不眠症と麻酔前投薬、成人の通常量が0.25 mg就寝前(高度の不眠症は0.5 mgまで、高齢者は0.125〜0.25 mgまで)、禁忌が過敏症・急性閉塞隅角緑内障・重症筋無力症・アゾール系抗真菌薬やHIVプロテアーゼ阻害薬など特定のCYP3A阻害薬の投与中・睡眠随伴症状として異常行動を起こしたことがある患者であること、消失半減期が平均2.9時間(0.5 mg単回、32例)であること、主代謝物がα-ヒドロキシ体(弱い活性)と4-ヒドロキシ体(活性なし)であること、副作用が眠気14.3%・ふらつき9.0%・倦怠感11.1%、一過性前向性健忘0.12%・もうろう状態0.05%であることを確認した。閲覧 2026-11-06
  2. 2.Triazolam tablets — full prescribing information (Mylan Pharmaceuticals Inc.)(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/Mylan Pharmaceuticals Inc.・2026)2026年7月10日有効の米国添付文書で、適応が成人の不眠症の短期治療(通常7〜10日)であること、成人0.25 mg・最大0.5 mg、高齢者は0.125 mgから開始して上限0.25 mgであること、枠組み警告がオピオイド併用・乱用と嗜癖・依存と離脱反応の3点であること、禁忌が過敏症と強いCYP3A阻害薬の併用であること、消失半減期が1.5〜5.5時間であること、エリスロマイシン・シメチジン・グレープフルーツジュースの併用で曝露が増えることを確認した。閲覧 2026-11-06