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Drug Atlas · A16 Hypnotics / 睡眠薬

フルラゼパム

flurazepam

分類
Hypnotics / 睡眠薬
商品名(日本)
ダルメート
商品名(EU)
Dalmane
科目
PharmacologyClinical Pharmacology
トピック
A16: Benzodiazepines11: Sedative-hypnotics, anxiety and insomnia
承認適応
不眠障害・ナルコレプシー
禁忌疾患
緑内障重症筋無力症
副作用
傾眠めまい転倒錯乱
解毒薬
フルマゼニル

🧠 全体像:フルラゼパムは、は短命でも、が数日にわたって体内に残るである。未変化体の半減期は数時間だが、肝臓でできるN1-デスアルキル体の半減期が数十時間(外国のデータでは47〜100時間)に及ぶ。そのため連日の服用で徐々に蓄積し、2〜3晩目のほうがよく効き、中止後も1〜2晩は効果が残る。これは夜間の覚醒やに有利だが、日中の眠気・・転倒、とくに高齢者での持ち越しという代償を伴う。長時間作用型の古典的な例として押さえる。

薬効群の中での位置づけ

薬 の目安 位置づけ
約3時間 型
ブロチゾラム 約7時間 〜
フル 約21時間
フルラゼパム 未変化体は平均5.9時間だが、は平均23.6時間(日本人)〜47〜100時間(米国の添付文書)12
約16〜48時間

💡 「半減期」はとを分けて考える。 フルラゼパムの未変化体はに近いが、効き目と持ち越しを決めるのは長く残るである2。臨床のトピックも、フルラゼパムはとされることがあるが、の半減期が非常に長く、一般的な分類ではにあたると整理している。

機序

flowchart TD
    A["フルラゼパムが<br>GABAニューロンの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='benzodiazepine receptors'>ベンゾジアゼピン受容体</span>に結合"] --> B["GABAの作用を特異的に増強"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypnosis'>催眠</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sedative effect'>鎮静作用</span><br>(動物では抗けいれん・筋弛緩作用も)"]
    C --> D["入眠までの時間の短縮<br>全睡眠時間の増加"]

日本の電子添文は、抑制性のGABAニューロンのにあるにとして高い親和性で結合し、GABA親和性を増してその作用を特異的に増強すると説明している。動物では、静穏・・睡眠誘起・睡眠増強・抗けいれん・筋弛緩といった他のベンゾジアゼピンと同様の作用を示した。健常成人に15 mgまたは30 mgを投与した終夜では、睡眠導入時間の短縮と全睡眠時間の増加が認められ、レム睡眠に及ぼす影響は少なかった1。

薬物動態:蓄積と持ち越しの理由

項目 日本の電子添文(30 mg単回、健常成人男子6例)1 米国の添付文書2
未変化体の最高濃度 約1時間後に0.82〜1.7 ng/mL 30〜60分後に0.5〜4.0 ng/mL
未変化体の半減期 平均5.9時間(2.3〜12時間) 見かけの半減期()2.3時間
(デスアルキル体)の最高濃度 投与後1〜8時間に11〜25 ng/mL で定常状態に7〜10日。1日目の24時間後の濃度の約5〜6倍
の半減期 平均23.6時間(14.5〜42.0時間)。外国人10例では平均72時間(40〜103時間) 47〜100時間
ヒドロキシエチル体 尿中の主代謝物で、総排泄量の86%を占める 投与後数時間しか測れず、24時間後には検出されない。尿中に投与量の22〜55%が抱合体として出る
排泄 48時間までに投与量の32〜59%が、大部分は代謝物として尿中に出る 主に尿中
flowchart TD
    A["フルラゼパムを服用"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parent compound'>親化合物</span>は速やかに吸収・代謝<br>半減期は数時間"]
    B --> C["N1-ヒドロキシエチル体<br>(短時間で消える)"]
    B --> D["N1-デスアルキル体<br>半減期47〜100時間"]
    D --> E["連日の服用で7〜10日かけて蓄積"]
    E --> F["2〜3晩目に効果が強まる<br>中止後も1〜2晩は効果が残る"]
    E --> G["日中の鎮静・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lightheadedness'>ふらつき</span>・転倒<br>高齢者では蓄積が強い"]

米国の添付文書は、このを、フルラゼパムが連続使用の2〜3晩目に効果が強まり、中止後も1〜2晩はと総覚醒時間が短縮したままになるという臨床観察の理由と考えられると説明している。また、高齢男性ではデスアルキル体の半減期が若年男性(74時間)より長く160時間になる(高齢女性では120時間、若年女性では90時間)。クリアランスは女性のほうが低い2。

適応

  • :日本ではと麻酔に承認されている1。
  • 米国:、頻回の夜間覚醒、のいずれかを伴う。不眠は一過性・間欠的なことが多いので、短期の使用で足りるのが普通であり、長く使うなら患者の評価を併せて行う2。
  • 室の試験で、連続28夜の投与まで有効性が確かめられている2。日本の国内の有効率は、で一般が53.3%(245/460例)、との比較が62.4%(63/101例、副作用26.7%)であった1。

用法・用量

日本1 米国2
成人 1回1〜2カプセル(10〜30 mg、15 mgカプセル)を就寝前または手術前に。年齢・症状により増減 初回量は女性15 mg、男性15 mgまたは30 mg。必要なら15 mgから30 mgへ
高齢者・衰弱者 少量から投与を開始する 15 mgまでに制限。・めまい・・失調のリスクが大きい量で急に増える
注意点 就寝の直前に服用する。夜中に一時的に起きて仕事をする可能性があるときは服用させない 有効な最小量を使う。性差は女性のクリアランスが低いため

日本では投薬は1回30日分が限度である。

禁忌・注意

日本の電子添文の禁忌は4項目である1。

禁忌 理由・補足
本剤の成分またはへの過敏症の既往
急性閉塞隅角緑内障 でが上がり、悪化するおそれ
重症筋無力症 症状を悪化させるおそれ
の投与中 のチトクロームP450に対するで本剤の血中濃度が大幅に上がり、過度の鎮静や呼吸抑制を起こすおそれ

⚠️ 米国の添付文書の禁忌欄は、フルラゼパムまたは他のベンゾジアゼピンへの過敏症だけである(やアナフィラキシー様症状の報告があり、再投与しない)2。緑内障・重症筋無力症・の扱いは、国によって異なる。

  • 呼吸機能が高度に低下している患者(・肺気腫・・の急性期など):やむを得ない場合を除き投与しない。少量から始める。
  • 心障害、脳の障害、衰弱患者、腎・:少量から始める。
  • 小児等:少量から投与を開始する。小児等を対象としたは実施していない。
  • 妊婦・授乳:で奇形児の報告が多いとのがある。新生児の・黄疸の増強も報告されている。授乳は避ける。
  • 併用注意:アルコール(作用が増強・持続し、飲んだ翌日の飲酒でも現れうる)、、、(本剤の代謝を阻害する)。
  • 米国の:オピオイドとの併用による鎮静・呼吸抑制・昏睡・死亡、乱用・誤用・、継続使用後の急な中止による生命に関わる2。

副作用

区分 内容
よくみられる(日本、0.5%以上) 昼間の眠気2.1%、1.8%、倦怠感1.1%、頭重、口渇
0.1〜0.5%未満 眩暈、頭痛、不安感、悪心
0.1%未満 焦躁感、、発疹、発汗、下痢・腹痛・・口の苦み・嘔吐・
頻度不明 肝障害(ビリルビン・AST・ALTの上昇)
重大な副作用(日本) 依存性・(・せん妄・振戦・不眠・不安・・)、呼吸抑制・炭酸ガスナルコーシス、一過性・
米国で強調される副作用 めまい、傾眠、感、よろめき、失調、転倒。とくに高齢者・衰弱者

日本の頻度は電子添文の表による1。米国の添付文書は、フルラゼパムが適切に使っても日中の機能を損ないうること、また症状がなくても障害は起こり、通常の診察では確実に見つからないことをしている。運転や、完全な注意力を要する作業をさせない。耐性ができて副作用が和らぐ場合もある。睡眠中の複雑な行動(など)も報告されている2。

  • 過量:傾眠から昏睡、呼吸抑制に至りうる。アルコールやオピオイドとの併用過量は致死的となりうる。は特異的拮抗薬だが、長期服用によるのある患者やなどが混じる過量では、離脱や痙攣を誘発しうる。など生命に関わる状態の治療にベンゾジアゼピンを使った患者には禁忌である2。

まとめ

  • が長く残るため、が短くてもとして働く。連日の服用で7〜10日かけて蓄積し、2〜3晩目に効果が強まる。中止後も1〜2晩は効果が残る。
  • 日本では10〜30 mgを就寝前または手術前に使う。米国は女性15 mg、男性15または30 mgから始め、高齢者・衰弱者は15 mgまで。
  • 日本の禁忌は過敏症、、重症筋無力症、投与中の4つ。米国の禁忌欄は過敏症のみ。
  • 日中の眠気・・転倒、とくに高齢者での持ち越しと蓄積が最大の問題。高齢者では避ける薬に挙げられる()。
  • 依存・・に注意し、漫然と続けない。拮抗薬は。

出典

  1. 1.ダルメートカプセル15 電子添文(共和薬品工業/医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2022)2022年12月改訂(第1版)の電子添文で、効能が不眠症と麻酔前投薬、用法が成人1回1〜2カプセル(フルラゼパム塩酸塩として10〜30 mg)を就寝前または手術前、禁忌がベンゾジアゼピン系薬剤を含む過敏症・急性閉塞隅角緑内障・重症筋無力症・リトナビル投与中であること、未変化体の半減期が平均5.9時間・活性代謝物デスアルキルフルラゼパムの半減期が平均23.6時間(日本人6例)、外国人10例では活性代謝物の半減期が平均72時間であること、国内の有効率が不眠症で53.3%(245/460)であることを確認した。閲覧 2026-11-06
  2. 2.Flurazepam hydrochloride capsules — full prescribing information (Chartwell RX, LLC)(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/Chartwell RX, LLC・2024)2024年10月28日有効の米国添付文書で、適応が入眠困難・頻回の夜間覚醒・早朝覚醒を伴う不眠症であること、初回量が女性15 mg・男性15 mgまたは30 mg(女性はクリアランスが低いため)で高齢者・衰弱者は15 mgまでであること、未変化体の見かけの半減期が2.3時間・主代謝物N1-デスアルキルフルラゼパムの半減期が47〜100時間で定常状態に7〜10日かかること、禁忌が過敏症のみであること、睡眠検査室の試験で28夜連続で有効なことを確認した。閲覧 2026-11-06