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Drug Atlas · A16 Hypnotics / 睡眠薬

フルニトラゼパム

flunitrazepam

分類
Hypnotics / 睡眠薬
商品名(日本)
サイレース
商品名(EU)
Rohypnol
科目
PharmacologyClinical Pharmacology
トピック
A16: Benzodiazepines11: Sedative-hypnotics, anxiety and insomnia
承認適応
不眠障害・ナルコレプシー
禁忌疾患
緑内障重症筋無力症
副作用
傾眠めまい錯乱呼吸抑制前向性健忘
解毒薬
フルマゼニル

🧠 全体像:フルは、をもつ強力なである。1回0.5〜2 mgを就寝前に飲み、半減期は約21時間のにあたる。効きが速く、鎮静・・筋弛緩よりもが際立ち、麻酔にも用いる。日本では他のより厳しい(第二種)に指定されている。強いと健忘作用のため、乱用や飲み物に混入する犯罪が問題になり、多くの国で流通がされている。米国では販売されたことがないとされる。

薬効群の中での位置づけ

薬 の目安 位置づけ の区分(日本)
約3時間 型 第三種
ブロチゾラム 約7時間 〜 第三種
フル 約21時間1 。強い睡眠作用で入眠も維持も助ける 第二種1
フルラゼパム が数十時間 第三種

⭐ 日本の電子添文では、・ブロチゾラム・フルラゼパムが第三種、フルは第二種と区分されている。いずれも習医薬品である。強力さと乱用の問題を背景に、同じのなかで取り扱いが重い。

機序と睡眠への作用

flowchart TD
    A["フル<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nitrazepam'>ニトラゼパム</span>がGABAニューロンの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='postsynaptic membrane'>シナプス後膜</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='benzodiazepine receptors'>ベンゾジアゼピン受容体</span>に結合"] --> B["GABA親和性が高まる"]
    B --> C["GABAニューロンの作用を特異的に増強"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypnosis'>催眠</span>が主、鎮静・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anxiolysis'>抗不安</span>・筋弛緩・抗けいれんが従"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sleep onset latency'>入眠潜時</span>の短縮<br>全睡眠時間の延長"]

日本の電子添文は、抑制性のGABAニューロンのにあるにとして高い親和性で結合し、GABA親和性を増してその作用を増強すると説明している。動物では他のベンゾジアゼピンと同様の作用の幅を示す一方、ネコのを著明に抑える強力な睡眠作用が目立つ。に1 mgまたは2 mgを投与した終夜では、の短縮と全睡眠時間の延長が認められた1。

1980年の総説も、が鎮静・・筋弛緩・抗けいれん作用より優位な薬で、では効果発現が非常に速く、中断の少ない静かな睡眠が得られるとしている。翌朝の精神の低下は、やフルラゼパムの通常量と同程度で、臨床的に明らかな持ち越し(宿酔)はまれである。日中の鎮静薬としては適さない2。

薬物動態

項目 内容
単回投与(2 mg、男子48例、絶食下) Cmax 21.7±6.73 ng/mL、最高濃度到達時間は中央値0.75時間(0.5〜6.0)、AUC0-72h 203±34.0 ng・hr/mL、21.2±4.90時間1
(2 mg、1日1回、7日間) 投与3〜5日で定常状態に達し、は単回投与時の約1.3倍1
排泄 4 mg単回投与後72時間の尿中に、還元体として投与量の8.6%、体・として4.7%(承認用量を超える量での試験)1
flowchart TD
    A["就寝前に2 mgを服用"] --> B["約0.75時間で血中濃度が最高に"]
    B --> C["半減期約21時間で緩やかに低下"]
    C --> D["翌朝にも一部が血中に残る"]
    D --> E["連日の服用で3〜5日で定常状態<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='peak plasma concentration (Cmax)'>最高血中濃度</span>は単回の約1.3倍"]
    E --> F["高齢者・連用では持ち越しと蓄積に注意"]

💡 半減期が約21時間と1日に近いため、毎晩服用すると数日で血中濃度の底上げが起こり、定常状態のは単回の約1.3倍になる。連用すると、初日より翌朝の持ち越しと副作用が強まりうることを意味する。

適応

  • 麻酔(手術前の投与)

いずれも日本の承認である1。麻酔領域では、前夜の、経口・筋注・静注の、導入、他の麻酔薬の補助、での鎮静と健忘を目的にも使われてきた。ただし回復が遅れうる2。

用法・用量

通常成人は、1回0.5〜2 mgを就寝前または手術前にする。年齢・症状により増減し、高齢者には1回1 mgまでとする1。

  • には、就寝の直前に服用させる。服用して就寝したあと、夜中に一時的に起きて仕事などをする可能性があるときは服用させない。
  • 本剤の影響が翌朝以後に残って、眠気・注意力・集中力・反射運動能力の低下が起こりうる。自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させない。
  • 連用でを生じうるので、漫然とした継続を避ける。続けるなら治療上の必要性を十分に検討する。
  • 投与は1回30日分が限度である。

禁忌・注意

日本の電子添文の禁忌は3項目である1。

禁忌 理由
本剤の成分に対する過敏症の既往
急性閉塞隅角緑内障 でが上がり、悪化するおそれ
重症筋無力症 症状を悪化させるおそれ
  • 呼吸機能が高度に低下している患者(・肺気腫・・の急性期など):やむを得ない場合を除き投与しない。投与するなら少量から始め、炭酸ガスナルコーシスに注意する。
  • 衰弱患者、心障害(呼吸抑制が出やすい)、脳の障害(作用が強く出やすい)、腎・:少量から始める。
  • 高齢者:少量から始める。や意識障害などの症状が出やすい。
  • 妊婦:有益性が危険性を上回る場合に限る。の50 mg/kgで催奇形作用が認められ、他のベンゾジアゼピンではが対照より多いとのがある。新生児の・・呼吸抑制・も報告されている。授乳は避ける。
  • 併用注意:アルコールや(系、、、麻酔薬など)はを強める。とは、でが出たとの報告がある(機序不明)。はCYP3A4を阻害して本剤の血中濃度を上げる。

副作用

頻度 内容
1%以上 、眠気、倦怠感
0.1〜1%未満 頭痛、めまい、頭がボーッとする、、頭重、AST・ALTの上昇、口渇、脱力感、尿失禁
0.1%未満 、不快感、焦躁感、不安感、、記憶力の低下、・血小板減少・貧血、・血圧低下、発疹 など

重大な副作用は次のとおりである1。

副作用 要点
依存性・ 急な減量・中止で・せん妄・振戦・不眠・不安・・。徐々に減らす
刺激興奮・ 奇異な反応として現れる
呼吸抑制(0.1%未満)・炭酸ガスナルコーシス 呼吸機能が低下した患者で起こる。気道確保と換気
・黄疸 AST・ALT・γ-GTPの上昇
筋肉痛・脱力感・CK上昇・血中および上昇。にも注意
他の抗精神病薬などとの併用で報告。高熱・意識障害・・発汗・頻脈。中止・冷却・補液・呼吸管理
意識障害 うとうと状態から昏睡まで。特に高齢者に出やすい
一過性・ 十分に覚醒しないまま車の運転や食事をして、その出来事を覚えていないことがある
  • 過量:うとうと状態から昏睡に至る。で拮抗できるが、使う前にその添付文書を読む。

乱用と規制

フルは、日本の電子添文では(第二種)に区分されている1。海外では、次の経緯と見方が知られている。

  • 多くの国で最もよく処方されるの一つだが、米国では販売されたことがない。米国へは密輸入され、乱用や、「デートレイプ」に使われたとされる報告が問題になった3。
  • 強力なと健忘作用のため、乱用や飲み物に混入する悪用が問題になり、多くの国で流通が厳しくされている。注射剤が路上薬物として出回り、正規に登録された医薬品から抜き取られて使われることも指摘されている(鎮静薬のトピック)。
  • 一方、1997年の総説は、フルが他のベンゾジアゼピンと薬理学的に似ていて、薬物探索行動・・離脱の特徴に明らかな差はなく、過量時の毒性が高いという指標もないと整理している(研究の数と範囲は限られる)。ただしオピオイド乱用者の間では、他のベンゾジアゼピンより好まれる傾向がある3。

⚠️ 「この薬だけが特別に危険」と覚えると誤る。 高力価・効果発現が速い・健忘作用が強い・アルコールとの併用で悪用されやすい、という性質が重なって問題になった。使う側は、依存・健忘・アルコール併用・他のとの併用という、ベンゾジアゼピン全般の注意をとくに徹底する。

まとめ

  • をもつの。が主で、効果発現が速く、中断の少ない睡眠が得られる。半減期は約21時間。
  • 用量は1回0.5〜2 mgを就寝前または手術前。高齢者は1 mgまで。日本ではと麻酔に承認されている。
  • 日本の禁忌は過敏症・・重症筋無力症の3つ。の第二種に区分される。
  • 重大な副作用は依存、・、呼吸抑制、意識障害、、など。
  • 米国では販売されたことがなく、密輸と乱用が問題になった。ただし薬理学的に他のベンゾジアゼピンと大きく違うとは示されていない。
  • 拮抗薬は。

出典

  1. 1.サイレース錠1mg/サイレース錠2mg 電子添文(エーザイ/医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2023)2023年4月改訂(第1版)の電子添文で、規制区分が向精神薬(第二種)・習慣性医薬品であること、効能が不眠症と麻酔前投薬、用法が成人1回0.5〜2 mgを就寝前または手術前(高齢者は1 mgまで)であること、禁忌が過敏症・急性閉塞隅角緑内障・重症筋無力症であること、2 mg単回投与の最高血中濃度到達時間(中央値)0.75時間・消失半減期21.2時間、反復投与で3〜5日で定常状態に達すること、重大な副作用に依存性・呼吸抑制・横紋筋融解症・悪性症候群・意識障害・一過性前向性健忘が挙がることを確認した。閲覧 2026-11-06
  2. 2.Flunitrazepam: a review of its pharmacological properties and therapeutic use(Drugs(Mattila MA, Larni HM)・1980)抄録(PMID 6108205)で、催眠作用が鎮静・抗不安・筋弛緩・抗けいれん作用より優位な薬であること、不眠症では効果発現が非常に速く中断の少ない静かな睡眠が得られること、翌朝の精神運動機能の低下はニトラゼパムやフルラゼパムの通常量と同程度で臨床的に明らかな持ち越しはまれなこと、日中の鎮静薬には適さず麻酔領域でも用いられることを確認した。全文は読んでいない。閲覧 2026-11-06
  3. 3.Abuse liability of flunitrazepam(Journal of Clinical Psychopharmacology(Woods JH, Winger G)・1997)抄録(PMID 9169981)で、多くの国で最もよく処方される睡眠薬の一つであること、米国では販売されたことがなく密輸入されて乱用や「デートレイプ」への使用が問題になったこと、動物とヒトの実験では他のベンゾジアゼピンと薬理学的に似ており、薬物探索行動・身体依存・離脱の特徴に明らかな差はなく、過量時の毒性が高いという指標もないとされること、オピオイド乱用者の間で他のベンゾジアゼピンより好まれる傾向があることを確認した。全文は読んでいない。閲覧 2026-11-06