薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B18 Antidiabetics / 糖尿病薬

プラムリンチド

pramlintide

分類
Antidiabetics / 糖尿病薬
商品名(EU)
SymlinPen
科目
PharmacologyClinical Pharmacology
トピック
B18: Pancreatic hormones and parenterally applied antidiabetic drugs17: Diabetes mellitus
承認適応
1型糖尿病2型糖尿病(食事時のインスリンを使う患者)
副作用
悪心
影響検査値
HbA1c血糖

🧠 全体像:プラムリンチドは、の類似体で、食事の直前に皮下注射するインスリンの補助薬である。はがインスリンと一緒に分泌するホルモンで、1型・2型糖尿病ではインスリンと同様に分泌が減っている。プラムリンチドはを遅らせ、食後のグルカゴンを抑え、を高めることで、の上昇を和らげる。HbA1cの改善は大きくなく(0.3〜0.7%前後)、体重が減る方向に働くのが特徴である。最大の注意は、インスリンとの併用で重い低血糖が起こること()で、開始時に食事時のインスリンを50%減らす。悪心が非常に多い。日本のPMDAの電子添文検索では、この成分の品目を確認できなかった(2026年11月6日時点)。米国の添付文書などで学ぶ薬である。

薬効群の中での位置づけ

薬 作用 位置づけ
インスリン ・インスリン 食事時のインスリン補充 糖尿病治療の中心。血糖を直接下げる
・エキセナチド GLP-1受容体作動薬。の遅延・・グルカゴン抑制 皮下注射の補助薬。体重が減る
プラムリンチド 。の遅延・グルカゴン抑制・ 食事時のインスリンを使っても管理が不十分な1型・2型糖尿病(米国)

糖尿病の薬物療法のトピックのインスリン以外の補助薬の節も参照する。

機序

flowchart TD
    A["健常者:食事で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancreatic beta cell'>膵β細胞</span>が<br>インスリンと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='islet amyloid polypeptide'>アミリン</span>を同時に分泌"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='islet amyloid polypeptide'>アミリン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postprandial blood glucose'>食後血糖</span>の上昇を和らげる"]
    C["糖尿病:インスリンと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='islet amyloid polypeptide'>アミリン</span>の分泌が減る"] --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postprandial blood glucose'>食後血糖</span>が上がりやすい"]
    E["プラムリンチド(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amylin analogs'>アミリン類似体</span>)<br>食事の直前に皮下注射"] --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gastric emptying'>胃排出</span>を遅らせる"]
    E --> G["食後のグルカゴン分泌を抑える<br>肝臓の糖放出が減る"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='satiety'>満腹感</span>を高め<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='energy intake'>摂取エネルギー</span>が減る"]
    F --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postprandial blood glucose'>食後血糖</span>の上昇が緩やかになる"]
    G --> I
    H --> J["体重が減る方向"]

米国の添付文書は、プラムリンチドがヒトのの類似体であると説明している。は、のでインスリンと同じ場所に存在し、食事への反応でインスリンと一緒に分泌される。1型・2型糖尿病では、食事に対するインスリンとの分泌がどちらも少ない。は、を遅らせ(栄養の吸収は変えない)、インスリンだけでは正常化しないグルカゴン分泌を抑えて肝臓からの糖の放出を抑え、中枢で食欲を調節して食事量を減らす。ヒトの試験では、の平均値を下げ、血糖の変動を減らし、食事量を減らした1。

薬物動態

項目 内容
吸収 皮下注射のは約30〜40%1。腹部または大腿への注射で、用量に比例して最高濃度と曝露が増える。肥満の患者の腕への注射は曝露が20〜36%高く、ばらつきが大きいので、腹部か大腿に注射する
最高濃度・半減期 30〜120 mcgの注射で、最高濃度到達は約19〜21分、は約48〜55分

⭐ 半減期が短く、食事ごとに打つ。 1型は15 mcgから始めて15 mcgずつ、2型は60 mcgから始めて120 mcgへ増やし、1回ごとに食事の直前に皮下注射する。

適応

  • 食事時のインスリンを使っている1型または2型糖尿病で、最適なインスリン治療でも目標のに達しない患者の(米国)1。
  • 日本のPMDAの電子添文は確認できない。

1型糖尿病651例を対象にした52週間の試験では、60 µgを1日3回または4回加えると、HbA1cが0.29%・0.34%低下した(プラセボ群は0.04%の低下)。体重は0.4 kg減り、プラセボ群は0.8 kg増えた2。インスリンを使う2型糖尿病656例の52週間の試験では、120 µgを1日2回加えた群で、HbA1cが26週と52週で0.68%・0.62%低下し、体重は1.4 kg減った(プラセボ群は0.7 kg増加)。重症低血糖のは全体として増えなかった3。HbA1cの低下は約0.3〜0.7%と控えめで、体重の減少が特徴である。

用法・用量

1型糖尿病 インスリンを使う2型糖尿病
開始 食事時のインスリンを50%減らし、15 mcgを主な食事の直前に皮下注射する1 食事時のインスリン(混合型を含む)を50%減らし、60 mcgを主な食事の直前に皮下注射する
増量 悪心が臨床的に問題とならない状態が3日以上続けば、30・45・60 mcgへ増やす 悪心が3日以上なければ、60 mcgから120 mcgへ増やす
減量 45または60 mcgで悪心が続くなら30 mcgへ減らす。30 mcgで耐えられなければ中止を考える 120 mcgで悪心が続くなら60 mcgへ減らす

インスリンと混ぜて注射してはならず、必ず別々に注射する(混ぜると両方のが変わり、の不良や低血糖につながる)。ペンは患者ごとに専用で、共用しない。

禁忌・注意

米国の禁忌は3つである1。

禁忌(米国) 理由
本剤または成分への重い過敏症
低血糖へのが働かず、重い低血糖につながる
確定した 本剤はを遅らせる

⚠️ は重い低血糖である。 本剤単独では低血糖を起こさないが、食事時のインスリンとの併用で、とくに1型糖尿病で重い低血糖のリスクが増える。重い低血糖は、注射後2〜3時間以内に起こることが多い。運転や機械の操作中に起こると、重大な外傷や死亡につながりうる。対策は、開始時にインスリンを50%減らし、食前食後の血糖を頻繁に測ることである。

  • 患者選択:HbA1c・最近の血糖測定の記録・インスリン誘発の低血糖の既往・インスリンの種類・体重を確認する。次の患者は対象にしない。インスリンやの遵守が悪い患者、HbA1cが9%を超える患者、過去6か月に介助が必要な重症低血糖を繰り返した患者、、確定した、が必要な患者、小児。
  • の吸収が遅れる:・抗菌薬・経口避妊薬のように、速い効き始めや閾値濃度が大切な薬は、注射の1時間前または注射の2時間後に服用する。
  • に影響する薬(などの)や栄養のを遅らせる薬()がある患者は、本剤の対象にしない(で検討されていない)。低血糖を起こしやすくする薬(・ACE阻害薬・・薬・・・・薬・・)との併用には注意する。
  • アレルギー:注射部位の局所のアレルギーなどがある。

副作用

区分 内容
1型糖尿病(インスリンとの併用、5%以上でより多い) 悪心48%(17%)、17%(2%)、による外傷14%(10%)、嘔吐11%(7%)、関節痛7%(5%)、疲労7%(4%)、アレルギー反応6%(5%)、めまい5%(4%)
2型糖尿病(インスリンとの併用、120 mcgを1日2回) 悪心28%(12%)、頭痛13%(7%)、9%(2%)、嘔吐8%(4%)、腹痛8%(7%)、疲労7%(4%)、めまい6%(4%)、咳6%(4%)、咽頭炎5%(2%)
重い低血糖 食事時のインスリンとの併用で増える。とくに1型

悪心は、一過性で軽度〜中等度であることが多く、開始時や増量時に目立つ。ゆっくり増量することが対策になる12。

まとめ

  • の類似体。の遅延・食後グルカゴンの抑制・でを和らげ、体重が減る方向に働く。皮下注射のは約30〜40%、半減期は約50分で、食事の直前に打つ。
  • 米国では、食事時のインスリンを使ってもが不十分な1型・2型糖尿病の。HbA1cの低下は0.3〜0.7%前後。
  • は重い低血糖。開始時に食事時のインスリンを50%減らす。・確定したは禁忌で、HbA1c 9%超は対象外。
  • 悪心が非常に多い(1型で48%)。は注射の1時間前か2時間後に服用する。
  • 日本では電子添文を確認できない。

出典

  1. 1.SYMLINPEN (pramlintide acetate) injection — prescribing information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed)/AstraZeneca Pharmaceuticals LP・2015)文書の改訂年が2015年2月の米国添付文書(DailyMedの掲載版)で、枠組み警告が重い低血糖であること、適応が食事時のインスリンを使い、最適なインスリン治療でも目標の血糖管理に達しない1型・2型糖尿病の補助療法であること、食事時のインスリンを50%減らして開始すること、1型は15 mcgから、2型は60 mcgから食事の直前に皮下注射すること、禁忌が重い過敏症・無自覚性低血糖・確定した胃不全麻痺であること、アミリンの類似体で胃排出を遅らせ食後のグルカゴンを抑え満腹感を高めること、皮下注射のバイオアベイラビリティが約30〜40%・消失半減期が約50分であること、悪心が1型の48%(プラセボ17%)で最も多いこと、経口薬は注射の1時間前または2時間後に服用することを確認した。閲覧 2026-11-06
  2. 2.Amylin replacement with pramlintide as an adjunct to insulin therapy improves long-term glycaemic and weight control in Type 1 diabetes mellitus: a 1-year, randomized controlled trial(Diabetic Medicine(Ratner RE ら)・2004)抄録(PMID 15498087)で、1型糖尿病の651例に食事時のプラムリンチドを52週間加える二重盲検プラセボ対照試験で、60 µg 1日3回・4回の群でHbA1cがそれぞれ0.29%・0.34%低下したのに対しプラセボ群は0.04%の低下で、体重は0.4 kg減少(プラセボ群は0.8 kg増加)したこと、最も多い有害事象が一過性の軽度〜中等度の悪心であったことを確認した。全文は読んでいない。閲覧 2026-11-06
  3. 3.Pramlintide as an adjunct to insulin therapy improves long-term glycemic and weight control in patients with type 2 diabetes: a 1-year randomized controlled trial(Diabetes Care(Hollander PA ら)・2003)抄録(PMID 12610038)で、インスリンを使う2型糖尿病の656例に、プラムリンチドを食事の前に皮下注射する52週間の二重盲検プラセボ対照試験で、120 µg 1日2回の群でHbA1cが26週と52週で0.68%・0.62%低下してプラセボより有意に大きく、体重が1.4 kg減少(プラセボ群は0.7 kg増加)し、重症低血糖の発生率が全体として増えなかったこと、最も多い有害事象が一過性の軽度〜中等度の悪心であったことを確認した。全文は読んでいない。閲覧 2026-11-06