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Drug Atlas · B30 Other / その他 · 必修

狂犬病ワクチン

rabies vaccine

分類
Vaccines / ワクチン
商品名(日本)
ラビピュール
商品名(EU)
RabAvertImovax RabiesVerorab
科目
Medical MicrobiologyPharmacologyImmunology
トピック
1/31: Active immunization. Obligatory vaccinesCore36: Advanced therapy medicinal products. Vaccines11.3: Immunization and vaccination I
承認適応
狂犬病
標的微生物
Rabies virus
副作用
注射部位反応頭痛
相互作用
抗狂犬病免疫グロブリン

🧠 全体像は、の「」の柱である——という「受動免疫」の柱と必ず対で運用される。ワクチンだけではが立ち上がるまでに1週間前後を要し、その間の空白をRIGが埋める構図であり、逆にRIGだけでは長期免疫が残らないため、ワクチンの複数回接種が長期防御を引き継ぐ。WHOは2018年の見解表明で、より少量を複数部位へ皮内(ID)接種する短縮レジメンを費用・受診回数を抑える選択肢として正式に加え、2022年には米国ACIPもの標準を3回接種から2回接種へ短縮した1——「接種回数を減らしても免疫は成立する」という知見の蓄積が、この10年のワクチン運用を一貫して動かしている。

薬効群の中での位置づけ

分類 代表 免疫応答の性質 免疫不全者への適否
強く少ない接種回数で成立するが、病原性がゼロではない 者には禁忌
不活化全粒子ワクチン 病原体を含まないぶん免疫応答は弱く複数回接種を要するが、増殖して病気を起こすリスクがない 可(曝露後は免疫状態を問わず必須)
受動免疫(抗体そのもの) だが記憶を残さず数週間で消える 免疫状態を問わず使用可

が「不活化」である一点が、との最大の違いを説明する。 弱毒生であるは妊娠中・者に禁忌だが、であるは病原体そのものを含まないためが増殖して病気を起こすリスクがなく、免疫不全者にも接種できる——というより、発症後はほぼ100%致死的なの曝露後は、免疫状態を問わずワクチンを差し控えてはならない。

機序

flowchart TD
    A["不活化<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rabies virus'>狂犬病ウイルス</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surface glycoprotein'>表面糖蛋白</span>を保持)を接種"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antigen-presenting cell (APC)'>抗原提示細胞</span>が取り込み提示"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='humoral immunity'>液性免疫</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutralizing antibodies'>中和抗体</span>(抗糖蛋白抗体)を産生"]
    B --> D["細胞性免疫:記憶T細胞を誘導"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutralizing antibodies'>中和抗体</span>の産生には数日〜1週間以上を要する"]
    D --> E
    E --> F["この空白期間、ワクチン単独では<br>未結合ウイルスを防げない"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='RIG'>受動免疫</span>が空白期間を埋め、<br>ワクチンが長期の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active immunization'>能動免疫</span>を引き継ぐ"]

💡 「なぜワクチンとRIGを同時に始めるのか」の答えは、両者の防御が立ち上がる速さの違いにある。 ワクチンによる産生には最短でも1週間前後を要し、その間は無防備になる。RIGは接種直後から創部周囲の未結合ウイルスを中和できるが記憶を残さないため数週間で消失する——だからこそ日0にワクチンとRIGを同時に開始し、時間軸の異なる2つの防御を重ねる。

適応

状況 使いどころ
WHO曝露カテゴリII・IIIのすべて2
流行地への渡航者、動物取扱者・獣・洞窟探検者など高リスク職業者2

何を使うかはWHO曝露カテゴリで決まる2

カテゴリ 内容 ワクチン RIG
I 動物に触れる・餌をやる、無傷の皮膚を舐められる(曝露に当たらない) 不要(曝露皮膚の洗浄のみ) 不要
II 露出した皮膚を軽く噛まれる、出血を伴わない軽度の 必要 不要
III 単発・多発の経皮的咬傷/掻傷、粘膜・損傷皮膚の唾液汚染、コウモリとの直接接触 必要 必要

用法・用量

・未接種者:WHOは皮内(ID)・(IM)いずれの経路も推奨する。ID接種は少量で済むため費用・受診回数を抑えられる(1回のID用量は0.1mL、IM用量はバイアル1本全量)2。代表的なレジメンは以下のとおりで、いずれも同等の効果をもつ2

レジメン 内容 総所要日数
ID短縮法(IPCレジメン) 2部位へ日0・3・7に接種 7日
IM Essenレジメン(4回法) 1部位へ日0・3・7と、日14〜28の間に1回接種 14〜28日
IM Zagrebレジメン 日0に2部位、日7・21に1部位ずつ接種 21日

曝露後予防・既接種者(PrEP完了済み、または3か月以内に完全なPEPを完了済み):RIGは不要で、1部位へ日0・3にID接種、4部位へ日0のみID接種、または1部位へ日0・3にIM接種のいずれかでよい2完了から3か月以内の再曝露では、創部洗浄のみでワクチンもRIGも不要2

:WHOは2部位ID法または1部位IM法を日0・7の2回のみで完了するレジメンを推奨する2。米国ACIPも2022年にPrEPの標準を、従来の3回接種(日0・7・21/28)から日0・7の2回接種へ改訂し、WHOの方針と足並みを揃えた1。継続する高リスク曝露がある場合に限り、曝露リスクカテゴリー別にの定期チェック(力価0.5 IU/mL未満で)または一回のが推奨される1。免疫不全が判明している場合はPrEPに日21〜28の3回目を追加し、実際に曝露した際はRIGを含む完全なPEPを行う2

日本国内では2019年時点で、皮下注射・6回法(組織培養不活化、KMバイオロジクス製)と、・複数回法(ラビピュール、GSK製)の2系統が承認されており、WHOのID短縮レジメンとは・回数が異なる3

禁忌・注意

  • ⚠️ 発症後はほぼ100%致死的なため、PEPとしてのワクチンは免疫状態・妊娠を含め差し控えてはならない。 RIGが入手できない状況でも、創部洗浄と完全なワクチン接種のみで高い予防効果があり、ワクチンを保留しない2
  • への筋注は避ける——脂肪組織が厚くが低下するため、成人・2歳以上の小児は部、2歳未満は大腿前に接種する2
  • PEPの経過中にワクチン製品や(ID⇔IM)を変更することは、やむを得ない場合にはPEPをさせるために許容される。接種が遅れた場合も最初からやり直さず、その時点から再開する2
  • 免疫不全が判明している者は、PEPをID・IMいずれの経路でも省略せず、RIGを含めた完全な接種を個別に判断する2

副作用

頻度 内容
高頻度 注射部位反応(疼痛・紅斑・腫脹)
一般的 頭痛、筋肉痛、感、軽度の発熱
重篤・まれ アナフィラキシー

まとめ

  • は不活化全粒子ワクチンで、という受動免疫と対になり、の柱を担う。
  • WHO曝露カテゴリII・IIIでは必ず接種する。RIGはカテゴリIIIのみに追加され、既往ワクチン接種者にはRIGは不要。
  • WHOはID短縮レジメン(IPC法:2部位・日0/3/7・計7日)とIM法(Essen・Zagreb)のいずれも推奨し、いずれも同等の効果をもつ。
  • はWHO・ACIPともに日0・7の2回接種に短縮されており、PEPよりはるかに少ない回数で完了する——継続曝露があるときのみチェック・を検討する。
  • 発症後はほぼ100%致死的であるため、免疫状態を問わずPEPとしてのワクチン接種を差し控えてはならない。

出典

  1. 1.Rabies vaccines and immunoglobulins: WHO position, April 2018(World Health Organization・2018)曝露後予防(PEP)のID短縮レジメン(IPCレジメン:2部位・日0/3/7・計7日)とIM法(Essen・Zagreb)、既往ワクチン接種者向けの簡略化レジメン、曝露前予防(PrEP)が2部位ID法または1部位IM法を日0・7の2回で完了すること、殿部接種を避けるべきこと、ワクチン製品・投与経路の変更や接種遅延時の対応、免疫状態を問わずワクチンを差し控えないという原則を確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Use of a Modified Preexposure Prophylaxis Vaccination Schedule to Prevent Human Rabies: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, 2022(CDC Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) / MMWR・2022)曝露前予防(PrEP)の標準スケジュールが2008年の3回接種(日0・7・21/28)から2022年に日0・7の2回接種へ短縮されたこと、曝露リスクカテゴリー別に抗体価の定期チェックまたは一回のブースター接種の要否が異なることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.狂犬病の予防について(国立国際医療研究センター(現・国立健康危機管理研究機構)国際感染症センター・2019)2019年時点で日本国内承認の狂犬病ワクチンには皮下注射(組織培養不活化狂犬病ワクチン、KMバイオロジクス製)と筋肉内注射(ラビピュール、GSK製)の2系統があり、投与経路がWHO推奨と異なること、狂犬病免疫グロブリンは国内未承認であることを確認した閲覧 2026-08-10