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Drug Atlas · B1 Hemostatics / 止血薬 · 必修

硝酸銀

silver nitrate

分類
Hemostatics / 止血薬
科目
PharmacologyENT
トピック
B1: Drugs influencing blood coagulation I: Antiplatelet agents. Fibrinolytic drugs. Drugs inhibiting bleeding28: Blood supply of the nasal cavity. Causes and management of nasal bleeding
承認適応
鼻出血
副作用
灼熱痛化学眼外傷

🧠 全体像にも系にも作用しない、タンパク質を化学的に変性させて局所に痂皮()を作る化学である。の初期対応では、出血点を直接視認できた前方出血に限って使う「点で狙う」薬剤であり、出血点を見ずに広範囲・盲目的に使うことは想定されていない。同じ「」でも、血管を物理的に塞ぐや、α作用で血管収縮させるエピネフリンとは作用原理がまったく異なる。

薬効群の中での位置づけ

のアプローチは「化学的に変性させる」「物理的に塞ぐ」「血管を収縮させる」の3系統に分かれる。

薬剤・処置 機序 位置づけ
Ag⁺イオンによる組織タンパク質の化学的変性・凝固 出血点が視認できる前方と並ぶ選択肢
フィブリンマトリックスを局所供給 物理的なへの直接留置のみ
エピネフリン α作用による血管収縮 ⚠️本質は。止血はとしての血管収縮が主目的

は「出血点そのものを化学的に焼く」薬であり、視認できない・広範囲の出血には向かない。 出血点が同定できなければ適応にならず、など別の手段へ切り替える1

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='AgNO3'>硝酸銀</span>が<br>湿った粘膜表面に接触"] --> B["解離したAg⁺イオンが<br>組織タンパク質・塩化物イオンと反応"]
    B --> C["タンパク質変性+<br>塩化銀(不溶性)の沈着"]
    C --> D["表層組織が凝固し<br>白色〜灰色の痂皮(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eschar'>エスカー</span>)を形成"]
    D --> E["痂皮が出血点を物理的に閉塞し止血"]

💡 」という言葉から電気のような熱損傷を連想しやすいが、の本体は熱ではなくである。 Ag⁺イオンがタンパク質を変性させて凝固させる作用が痂皮を作り、その痂皮が血管の開口部を塞ぐことで止血する。は接触時間と圧の強さに比例するため、短時間・軽い圧での使用が原則になる。

適応

領域 使いどころ
(前方出血) 出血点を視認できたからの出血。と並ぶ第一選択の1

以外にも、・創部の収斂など・小児科領域で化学薬として使われる場面があるが、いずれも「出血点・病変を直接視認して点で当てる」という使い方の原則は共通する。

用法・用量

  • など)で出血点周囲を麻酔した後、スティックの先端を出血点に当て、末梢から中心へ向けて転がすように4〜5秒間塗布する2
  • 深くしすぎないよう、強く押し付けず軽い圧で行う2
  • 2回試みても止血しなければ、など他の手技に切り替える2

禁忌・注意

  • 出血点を視認できない場合は適応にならない。 盲目的なは行わない1
  • ⚠️ の両側を同時にしない。 同一部位・両側を同時に広範囲すると、粘膜血流が両側から絶たれてのリスクが上がる2
  • 広範囲・長時間の接触はを深くするため避ける
  • 眼・健常皮膚への飛散・付着に注意する(のリスク)

副作用

頻度 内容
高頻度 塗布部位の・刺激感
注意 周囲皮膚・粘膜の一過性の黒色〜灰色(タンパク質変性による着色)
重篤・まれ 過度のによる、誤って眼に付着した場合の

まとめ

  • Ag⁺イオンが組織タンパク質を化学的に変性させて痂皮を作り、それが出血点を物理的に閉塞させる化学性のにも系にも作用しない。
  • では、出血点を視認できた前方出血(由来)に限って使う「点で狙う」薬剤であり、盲目的な広範囲使用は想定されていない。
  • 出血点へ4〜5秒、軽い圧で塗布するのが基本手技。強い圧・長時間接触はを増しを大きくする。
  • ⚠️ の両側を同時にすると粘膜血流が絶たれてのリスクが上がるため避ける。
  • 2回ので止血しなければ、など別の止血手段へ切り替える。

出典

  1. 1.Clinical Practice Guideline: Nosebleed (Epistaxis) Executive Summary(American Academy of Otolaryngology–Head and Neck Surgery Foundation (AAO-HNSF)・2020)出血点を確認できる前方出血には化学焼灼または電気凝固を選択し、出血点を見ずに盲目的な焼灼は行わないことを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.How To Treat Anterior Epistaxis With Cautery(Merck Manual Professional Edition・2025)硝酸銀スティックの先端を出血点に当てて4〜5秒間転がすように塗布すること、深く焼灼しすぎないよう強く押し付けないこと、両側中隔の同時焼灼は避けること、出血点が見えない場合は本手技の適応にならないことを確認した閲覧 2026-08-10