薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · C3 Antiparasitics / 抗寄生虫薬 · 必修

トリクラベンダゾール

triclabendazole

分類
Antiparasitics / 抗寄生虫薬
商品名(EU)
Egaten
科目
Pharmacology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugs
標的微生物
Fasciola hepatica
副作用
腹痛頭痛

🧠 全体像は分類上と同じ骨格)に属しながら、同じクラスの中でただ一剤だけに効くという際立った例外である。の標的は他のではなく、のβ-tubulin重合バランスに干渉してを破壊しタンパク質合成を阻害するというのが主流の説明で、阻害など複数の標的が関与する可能性も指摘されており機序は完全には確立していない12。押さえるべきは「機序が別物だから効く」という単純な図式ではなく、同じ骨格の薬でもに届くのはこの一剤だけという選択性の事実そのもの——・メトロニダゾールを含む大半のにほとんど効かない2の第一選択として世界的にほぼこの薬一択という、選択肢の少なさも特徴的である1

薬効群の中での位置づけ

分類 薬剤 標的・機序 への有効性
(線虫の微小管阻害) 線虫のβ-tubulinに結合し微小管形成を阻害 ほとんど効かない2
破壊) のβ-tubulin重合バランスに干渉しを破壊、蛋白合成を阻害 第一選択1
吸虫症の標準治療薬 虫体膜のCa²⁺透過性を変化させ痙攣性麻痺 には無効(他の吸虫症には有効)1
代替薬 虫体の(ロド依存)を阻害しを止める 代替(現在は商業流通なし・治療期間の長さ・の課題)2

「吸虫症=」という一般則の唯一の例外がであり、その例外を埋めるのがという構図が試験で狙われやすい。 マンソンをはじめとする他の吸虫症ではが標準治療になる一方、に対してはほぼ無効であるため、に置き換わる。⚠️ このとき等の他ので代用はできない——「なら効く」ではなく「だけが効く」が正しい2

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='triclabendazole'>トリクラベンダゾール</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active metabolite'>活性代謝物</span>含む)が<br>虫体組織に取り込まれる"]
    A --> B["活性本体はスルホキシド代謝物<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fasciola hepatica'>肝蛭</span>のβ-tubulin重合バランスに干渉"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tegument'>外皮</span>の構造が崩壊し<br>表面の分泌・吸収機能が破綻"]
    C --> D["虫体内の蛋白合成も阻害される"]
    D --> E["虫体が運動不能・死滅し<br>胆管から排出される"]
    B -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adenylyl cyclase, AC'>アデニル酸シクラーゼ</span>阻害など<br>複数標的の関与も指摘され機序は未確立"| C

💡 「機序がまったく別物だからに効く」と単純化しない。 もβ-tubulinを介した微小管過程への干渉という、他のと地続きのを持つ——実際、機序は複数標的が関与しうるとされ確立していない2。試験で問われるのは機序の対比ではなく結果の方で、線虫に強いにはほとんど効かず、逆には線虫には使われないという選択性の事実である——「同じクラス=同じ効き方」ではない好例。

適応

領域 使いどころ
感染症科・消化器 Fasciola hepaticaによる(急性期・慢性期いずれも第一選択)1

用法・用量

10mg/kgを12時間あけて2回、食後に服用する(米国添付文書上の標準投与。対象は6歳以上)3。WHOはこれとほぼ同等に、1回10mg/kgを12〜24時間あけて1〜2回投与するレジメンを推奨している1食事とともに服用するとが2〜3倍に上がるため、空腹時投与にしない1

禁忌・注意

  • および他のへの過敏症の既往
  • ⚠️ のリスクの既往、電解質異常(など)、を来す薬剤の併用、CYP1A2阻害薬の併用、がある患者ではECGモニタリングが推奨される3
  • は無い(QT延長は通常の・使用上の注意の範囲にとどまる)3

副作用

頻度 内容
よくみられる 腹痛(虫体の死滅・胆管からの排出に伴う一過性の症状を含む)、頭痛、発汗
注意

まとめ

  • で、β-tubulin重合バランスへの干渉を介した虫体の破壊が主流の説明だが、複数標的の関与も指摘され機序は確立していない2
  • は吸虫症の中で唯一が無効な例外であり、その第一選択がになる1・メトロニダゾールを含む大半のにはほとんど効かない2
  • 用法は10mg/kgを12時間あけて2回、食後投与。WHO推奨もほぼ同様31
  • のリスクがあり該当患者ではECGモニタリングを行うが、は無い3
  • 代替薬としてがあるが、現在は商業的に流通しておらず、治療期間の長さ・治癒率のばらつき・の課題もあってが優先される2

出典

  1. 1.EGATEN (triclabendazole) tablets, for oral use(DailyMed(NLM)掲載のFDA添付文書・2019)Egaten(トリクラベンダゾール)の用法用量が10mg/kgを12時間あけて2回、食後に服用するものであること、枠組み警告が無いこと、QTc延長のためECGモニタリングが推奨される患者群(QTc延長の既往・低カリウム血症・CYP1A2阻害薬併用・肝機能障害)が記載されていること、2019年の米国承認を確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Human Fascioliasis: Current Epidemiological Status and Strategies for Diagnosis, Treatment, and Control(PMC・2020)トリクラベンダゾールがヒト肝蛭症の急性期・慢性期いずれにも推奨される唯一の薬剤であり、虫体のβ-tubulin重合バランスに干渉して外皮を著明に破壊しタンパク質合成を阻害する機序を持つこと、WHOがその用法を1回10mg/kgを12〜24時間あけて1〜2回投与としていること、食事とともに服用すると血漿中濃度が2〜3倍に上昇すること、プラジカンテルなど他の吸虫治療薬がFasciola属には無効であることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Triclabendazole in the treatment of human fascioliasis: a review(Transactions of the Royal Society of Tropical Medicine and Hygiene(Gandhi P, et al.)・2019)トリクラベンダゾールの作用機序が単一ではなく、微小管を介した過程の阻害やアデニル酸シクラーゼ活性の阻害による外皮破壊など複数の標的が関与しうるとされ確立していないこと、活性本体はスルホキシド代謝物とみられること、プラジカンテル・アルベンダゾール・メトロニダゾールなど大半の駆虫薬が肝蛭症にはほとんど有効性を示さないこと、トリクラベンダゾール登場以前はビチオノールが広く用いられていたが治療期間が長く治癒率にばらつきがあり忍容性の課題を抱えていたこと、ビチオノールが現在は商業的に流通していないことを確認した閲覧 2026-08-10