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Microbe Atlas · 真菌

Blastomyces dermatitidis

分類
二形性真菌 / Dimorphic fungiBlastomyces
科目
Medical Microbiology
トピック
4/8: Blastomyces dermatitidis, Paracoccidioides brasiliensis5/22: Pathogens of viral and fungal meningitis and encephalitis (list)5/23: Pathogens of fungal and parasitic lung infections (list)

🧠 全体像:Blastomyces dermatitidisは米国中・五大湖周辺の腐敗有機物・林地に由来する二形性真菌で、全身性4菌種に共通する温度依存的二形性(詳細はHistoplasma capsulatumを参照)の中で、組織内酵母が——出芽部のくびれが細くならず、母細胞と芽が幅の広い基部でつながる——という顕微鏡像で覚える菌である。Histoplasma capsulatumやCoccidioides immitisが主に免疫不全患者で重症化するのに対し、本菌はでも肺炎から皮膚・骨への播種を起こしうるという点で一線を画す。

微生物学的な特徴

  • 環境中形態(25℃):非特徴的な・様構造を持つ菌糸——他の3菌種と比べても培養形態だけでは同定しにくい。
  • 組織内形態(37℃):(8〜15 μm)。の厚い細胞壁を持つが、Histoplasma capsulatumと同様に真の莢膜は持たない。
  • ⭐ サイズ比較:酵母は赤血球とほぼ同大——4菌種の組織内サイズ比較はHistoplasma capsulatumの表を参照。

⚠️ Blastomyces dermatitidis は単一種ではない。 7遺伝子座を用いたで種内に大きく分岐した2系統群が見出され、一方が近縁種*Blastomyces gilchristii*として記載された1。臨床像・はおおむね共通するため実務では区別せず扱うが、の報告を読むときに種名が2つ出てくる理由になる(属内の他の新種も含めた整理は4/8にある)。

病原性の仕組み

  • 吸入された分生子は肺胞上皮に付着し、によりへ変わる。
  • 組織内酵母はHistoplasma capsulatumのようにマクロファージ内へ隠れず細胞外に留まるため、好中球とが混在するを誘発する——この混合パターンが病理組織像・画像所見の非特異性につながる。
  • 皮膚病変は表皮のを伴う・潰瘍性の外観を呈し、扁平上皮癌に酷似することがある。皮膚病変を生検で確定する理由の一つ。

⚠️ でも重症化しうる点が他の全身性と異なる。 Histoplasma capsulatum・Coccidioides immitisの重症例は主に免疫不全患者に偏るが、は基礎疾患のない患者でも肺炎からにまで進行することがある。びまん性を伴うは頻度としてはまれだが、死亡率が非常に高い2。

感染経路と疫学

  • 米国中・五大湖周辺(ミシシッピ・オハイオ・セントローレンス川流域)の水辺の腐敗有機物・林地土壌に分布する。
  • 分生子の吸入により感染する。建設・野外活動などで撹拌された土壌への曝露がリスクを高める。
  • Histoplasma capsulatumほど明確な(鳥・コウモリの糞)は同定されていないが、イヌもヒトと同様に感染する(家庭犬の発症がヒト曝露のになりうる)。

起こす疾患

病型 頻度・宿主 特記事項
無症候感染 点発生源のでは感染者の少なくとも50% 症候性疾患は30〜45日の潜伏期を経て発症する。症候性の急性感染が自然治癒した記録もあるが、その頻度は明確でない2
急性肺 でも発症しうる に似た像をとる。を伴うはまれだが死亡率が高い
慢性肺 — 結核・他の真菌症・悪性腫瘍と区別できない像をとる。の浸潤影、に似た腫瘤、線維結節性間質性陰影が多い2
播種性(肺外) 患者の25〜40%(慢性例では最大3分の2に及ぶ報告もある) 頻度の高い部位は皮膚(・、扁平上皮癌に酷似)・骨・泌尿生殖器(前立腺炎・)。肺病変が臨床的に活動していないまま皮膚病変で受診することも少なくない2
中枢神経 免疫正常者では5%未満。ただし患者のでは最大40% 腫瘤性病変または髄膜炎として現れる2

診断

  • :
  • 検体:喀痰、、皮膚生検——扁平上皮癌との鑑別のため皮膚病変は生検で確定することが多い
  • 尿・血清の抗原検査:迅速だがHistoplasma capsulatumとするため地理的背景・臨床像との統合が必要
  • 胸部X線:斑状の「」浸潤影

治療と予防

病型・重症度 推奨レジメン(推奨度)
軽症〜中等症の肺病変 200 mgを1日3回3日間、その後1日1〜2回で6〜12か月(A-II)
中等症〜重症の肺病変 脂質製剤3〜5 mg/kg/日(または0.7〜1 mg/kg/日)を1〜2週間もしくは改善するまで→200 mg 1日2回で合計6〜12か月(A-III)
播種性(肺外)病変 重症度に応じて上と同じ導入を行い、を合計12か月以上。も12か月以上(A-III)
中枢神経病変 脂質製剤5 mg/kg/日を4〜6週間→経口(800 mg/日、200 mg 1日2〜3回、200〜400 mg 1日2回のいずれか)を12か月以上かつ髄液所見が正常化するまで(B-III)
免疫不全患者 脂質製剤3〜5 mg/kg/日または0.7〜1 mg/kg/日を1〜2週間もしくは改善するまで(A-III)→200 mgを1日3回3日間、その後1日2回で合計12か月以上(B-III)。免疫抑制が解除できない場合は200 mg/日の生涯を要することがある(A-III)2

⚠️ は投与2週間以上たった時点で血中濃度を測る(A-III)。吸収のばらつきが大きく、濃度不足のまま長期投与になりやすい。カプセル剤は食後に飲み、胃酸を下げる薬を避ける。内用液は逆に空腹時に飲む2。

⚠️ 中枢神経病変ではを一次治療に使わない。 ガイドラインは、はへの初期反応が得られたあとの後続療法として用いるものだと明記している2。導入をで済ませる選択肢はない。

💡 後続の3剤は「」と「菌への活性」がそれぞれ逆を向いている。 ガイドライン自身がどのが最適かは明らかでないとしており、3剤の性質は次のように整理される2。

薬剤 B. dermatitidis への活性
800 mg/日 優れる 他のより弱い
200 mgを1日2〜3回 髄液中濃度はごくわずか より強い
200〜400 mgを1日2回 良好 で優れる

はと活性の両方を満たすため中枢神経病変の魅力的な代替薬と位置づけられている。一方でも選択肢から除外されてはいないので、「は中枢神経病変に使えない」と覚えるのも「髄液にもよく入る」と覚えるのも、どちらも誤りである。

  • ワクチンは実用化されていない。予防はでの土壌曝露を避けることが中心。

まとめ

  • 米国中・五大湖周辺の腐敗有機物・林地に由来し、組織内では(赤血球とほぼ同大)を形成する——真の莢膜は持たない。
  • を起こし、皮膚病変は扁平上皮癌に酷似しうるため生検による確定が重要。
  • Histoplasma capsulatum・Coccidioides immitisと異なりでも重症化しうる。感染者の半数以上は無症候だが、は患者の25〜40%に及ぶ。
  • 治療は軽症〜中等症で6〜12か月、中等症〜重症・播種性では導入後にへ移行する。中枢神経病変は脂質製剤5 mg/kg/日を4〜6週間投与したのち経口(・・のいずれか)を12か月以上、髄液所見の正常化まで続ける。

出典

  1. 1.Phylogenetic Analysis Reveals a Cryptic Species Blastomyces gilchristii, sp. nov. within the Human Pathogenic Fungus Blastomyces dermatitidis(PLOS ONE・2013)7遺伝子座を用いた78株の系統解析により、Blastomyces dermatitidis 種内に遺伝的に大きく分岐した2系統群が見出され、一方が新種 Blastomyces gilchristii として記載されたことを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Clinical Practice Guidelines for the Management of Blastomycosis: 2008 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America・2008)発行元と DOI 先がいずれも自動取得を拒否したため、IDSA が置いていた誌面PDF(Wayback Machine の2018年2月19日保存版)で推奨本文を確認した。軽症〜中等症の肺ブラストミセス症はイトラコナゾール200 mgを1日3回3日間、その後1日1〜2回で6〜12か月(A-II)、中等症〜重症では脂質製剤アンフォテリシンB 3〜5 mg/kg/日またはアンフォテリシンBデオキシコール酸塩0.7〜1 mg/kg/日を1〜2週間もしくは改善まで投与し、続いてイトラコナゾール200 mg 1日2回で合計6〜12か月(A-III)。播種性肺外病変は同じ導入に続きイトラコナゾールを合計12か月以上、骨関節病変は12か月以上(A-III)。中枢神経病変は脂質製剤アンフォテリシンB 5 mg/kg/日を4〜6週間投与したのち経口アゾールへ移行し、選択肢はフルコナゾール800 mg/日、イトラコナゾール200 mgを1日2〜3回、ボリコナゾール200〜400 mgを1日2回のいずれかで、12か月以上かつ髄液所見が正常化するまで(B-III)——イトラコナゾールは中枢神経病変で除外されていない。アゾールは中枢神経病変の一次治療に用いず、アンフォテリシンBへの初期反応が得られたあとの後続療法として用いるべきであり、どのアゾールが最適かは明らかでないと本文が述べる。フルコナゾールは髄液移行に優れるが *B. dermatitidis* への活性は他のアゾールより弱く、イトラコナゾールは髄液中濃度がごくわずかしか得られないがフルコナゾールより固有活性が強く、ボリコナゾールは髄液移行が良好で試験管内活性も優れるため中枢神経病変の魅力的な代替薬とされる。中枢神経病変の頻度は免疫正常者では5%未満である。免疫不全患者(AIDS を含む)は脂質製剤アンフォテリシンB 3〜5 mg/kg/日またはデオキシコール酸塩0.7〜1 mg/kg/日を1〜2週間もしくは改善まで導入し(A-III)、イトラコナゾール200 mgを1日3回3日間その後1日2回へ移行して合計12か月以上(B-III)、免疫抑制が解除できない場合や適切な治療後に再発した場合は経口イトラコナゾール200 mg/日の生涯抑制療法を要することがある(A-III/再発例はC-III)。イトラコナゾールは投与2週間以上たった時点で血中濃度を測る(A-III)。点発生源のアウトブレイク調査では感染者の少なくとも50%が無症候であり、症候性疾患は30〜45日の潜伏期を経て発症すること、肺外病変は25〜40%(慢性例では最大3分の2)に見られ皮膚・骨・泌尿生殖器が多いこと、中枢神経病変は免疫不全者を除けばまれだがAIDS患者のブラストミセス症では最大40%に及ぶこと、びまん性肺浸潤影を伴うARDSはまれだが死亡率が非常に高いことも確認した。閲覧 2026-09-27