Cardiology

Cardiology · A-28

肺塞栓症

Pulmonary embolism

前提:病態
血栓症:原因と種類肺塞栓・肺梗塞の病理
前提:正常
肺循環と換気血流比
疾患
肺血栓塞栓症
症状
喀血
スコア
PERC基準Wellsスコア

🧠 全体像:肺塞栓症(PE)は多くが下肢DVTから生じ、による低酸素血症と右室による循環不全を引き起こす。

病因と病態機序

DVTのリスク因子は長期、手術、・熱傷・骨折、、経口避妊薬、である。

flowchart TD
  A["Virchow三徴:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endothelial injury'>内皮障害</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous stasis'>静脈うっ滞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypercoagulability'>過凝固</span>"] --> B["下肢・骨盤DVT"]
  B --> C["IVC経由で肺動脈へ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='embolization'>塞栓化</span>"]
  C --> D["肺動脈閉塞"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='V/Q mismatch'>換気血流不均衡</span>・動脈血低酸素血症(arterial hypoxemia)"]
  D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary artery pressure'>肺動脈圧</span>上昇"]
  F --> G["RV<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pressure overload'>圧負荷</span>"]
  G --> H["CO低下・低血圧・頻脈"]

肺は二重血流を持つため小塞栓は無症候で自然消失しやすい。は心肺が低い患者で中~大血管が閉塞した場合に起こり、PEの約10%である。梗塞・症は、喀血、サーファクタント障害、を生じる。

症候と診断

呼吸困難、頻呼吸、、咳嗽、喀血を認め、重症例では低血圧、チアノーゼ、失神、心停止となる。

評価 基準・検査
循環・呼吸評価 持続低血圧だけでなく、一過性低血圧、乳酸上昇・乏尿・意識変容など正常血圧下の低灌流、を評価
2026年AHA/ACC分類 A〜Eで症状、臨床重症度、右室、、切迫・顕在化した心肺不全を統合。D〜EはPE対応チームと高度治療を早期検討 1
Wells:<2 低、2–6 中間、>6 高;modified Wellsでは≤4 い、>4
D-dimer 低リスク/い例で除外に用いる。標準または適切な患者でを用い、陽性なら画像へ進むがPE確定ではない
画像検査 CTPA、V/Qスキャン、下肢静脈エコー(US)。末梢を示唆

ECGで最も多いのはで、典型的SⅠQⅢTⅢは20%未満である。

Wellsスコアと診断前確率

は、へ変換してD-dimerまたは画像へ進むためのものである。

Wells項目 点数
DVTの臨床徴候 3
PEが他の診断より疑わしい 3
HR >100/min 1.5
3日以上の不動または4週以内の手術 1.5
DVT / PE既往 1.5
喀血 1
1

3段階モデルは<2 低、2–6 中間、>6 高、2段階モデルは≤4 PEい、>4 PEいと読む。低リスク/い例ではPERCを適用できる状況か、D-dimerが必要かを判断し、D-dimer陽性または高リスク/い例では原則としてCTPAなどへ進む。50歳を超える適切な患者では(年齢×10 ng/mL FEU)を用いるアルゴリズムもある。D-dimerは高齢、炎症、妊娠、悪性腫瘍でも上昇しうるため、陽性だけでPEを確定しない

診断後の重症度

Wellsは「PEがある確率」、simplified PESI(sPESI)は「診断後の早期予後」をみる別のスコアである。sPESIは年齢>80歳、悪性腫瘍、慢性心肺疾患、HR ≥110/min、SBP <100 mmHg、SpO₂ <90%を各1点とし、0点は臨床的・画像的評価も含めて低リスク候補、1点以上は低リスクとは判定できないことを示す。はスコアより優先して高リスクPEとして扱う。

治療と予防

  • 基本はで、薬剤は血行動態、腎機能、妊娠、悪性腫瘍、出血リスクなどから選ぶ。初期治療相は3〜6か月とし、大きな可逆性危険因子がない初回PE、持続危険因子、再発例では再発・出血リスクを反復評価しながら延長する。1
  • 酸素は低酸素血症、輸液・はショック時に右室負荷を見ながら使用する。
  • 2026年AHA/ACCカテゴリーE1では全身血栓溶解、、機械的・外科的血栓除去が合理的な選択肢となり、D1〜D2でも選択例で高度治療を検討する。E2では全身血栓溶解とVA-ECMOを含む蘇生・循環補助を検討するが、ECMO導入後に別の高度治療を一律に追加する有用性は確立していない。未分画ヘパリンの開始・中断時期は用いると凝固値に合わせ、「必ず同時併用」とはしない。
  • ヘパリンを用いる場合は固定用量ではなく、製剤に応じて体重・aPTT/などから調整する。
  • は抗凝固のまたは適切な抗凝固中の再発などに限定して検討する。

⚠️ 合併症には、胸水、不整脈、PEAによる突然死がある。

まとめ

  • PEはDVTから生じることが多く、低酸素と右心不全を同時に起こす。
  • 血行動態とで診断経路を決める。
  • 基本治療は抗凝固で、重症例では血栓除去を検討する。

出典

  1. 1.2026 AHA/ACC/ACCP/ACEP/CHEST/SCAI/SHM/SIR/SVM/SVN Guideline for the Evaluation and Management of Acute Pulmonary Embolism in Adults(American Heart Association / American College of Cardiology・2026)急性PEをA〜Eに分類し、抗凝固の初期3〜6か月治療相とその後の延長を区別すること閲覧 2026-08-09