内科学

内科学 · S-06

原発性・続発性肺高血圧症

Primary and Secondary Pulmonary Hypertension

前提:病態
肺性心
前提:正常
呼吸器系におけるガス交換と肺循環
疾患
肺高血圧症門脈肺高血圧症
症状
労作時呼吸困難
画像所見
換気血流シンチグラフィ

🧠 全体像:はで(mPAP)>20 mmHgと定義する。(PAH)だけでなく、左心疾患、肺疾患・低酸素、慢性血栓塞栓、複合機序を5群に分類し、原因群に合わないPAH治療薬を安易に使わない。

血行動態定義

型 mPAP PAWP PVR
PH >20 mmHg 問わない 問わない
>20 mmHg ≤15 mmHg >2 WU
孤立性 >20 mmHg >15 mmHg ≤2 WU
前・後毛細血管PH >20 mmHg >15 mmHg >2 WU

PVR = (mPAP − PAWP) / 心拍出量 で求める。mPAP ≥25 mmHgという閾値は旧定義で、/ 2022 が >20 mmHg に引き下げた。同時にPVRの閾値も >3 から >2 へ下がっている1。⚠️ 旧基準は試験で問われることがあるので、mPAP ≥25 mmHg・PVR >3 WU が「以前の定義」であることまで含めて覚える。

💡 運動誘発性肺高血圧が定義に戻った。 安静時のmPAPが20 mmHg以下でも、運動負荷で安静時から運動時にかけてのmPAP/心拍出量スロープが3 mmHg/L/min超なら運動誘発性PHとする。かつて用いられた「運動時mPAP >30 mmHg」という基準は根拠不十分として一度定義から外されており、2022年に指標を変えて再導入された枠組みである1。

WHO臨床分類

群 病態 代表例
1 PAH 特発性、遺伝性、薬剤性、、門脈圧亢進、、関連
2 左心疾患に伴うPH /、弁膜症
3 肺疾患・低酸素に伴うPH 、ILD、低換気症候群
4 肺動脈閉塞 慢性血栓塞栓性PH(CTEPH)
5 不明・ 、、代謝疾患など

病態と症状

PAHでは小肺動脈の中膜肥厚、内膜増殖、によりPVRが上昇する。右室は初め肥大で代償するが、やがて拡大、、右心不全へ進む。

初期は、、胸痛、失神で、進行すると、右室性III音、、腹水、を認める。

診断経路

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='effort dyspnea'>労作時呼吸困難</span>・失神・右心不全"] --> B["ECG・胸部画像・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='B-type natriuretic peptide'>BNP</span>・肺機能・心エコー"]
    B --> C{"PHの可能性"}
    C -->|"低い"| D["他原因を検索"]
    C -->|"中〜高"| E["左心・肺疾患を評価+V/Q スキャン"]
    E --> F["専門施設で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='right heart catheterization'>右心カテーテル検査</span>"]
    F --> G["mPAP・PAWP・PVRで分類"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='World Health Organization'>WHO</span>群とリスクに応じ治療"]

心エコーはPHの確率推定と右心評価に使うが、確定・血行動態分類はで行う。CTEPHのスクリーニングには(ventilation/perfusion scan:V/Q scan)が重要で、正常ならCTEPHをほぼ除外できる。

群別治療

1群:PAH

  • 専門施設で、運動能、、右室機能、血行動態から死亡リスクを反復評価する。
  • 多くの低〜例は(ERA)+阻害薬などのを用いる1。根拠はAMBITION試験で、未治療のII〜III度のPAHにおいて+の初期併用は臨床的失敗を18%に抑え、単剤統合群の31%に対し0.50(95%CI 0.35〜0.72)だった2。
  • 高リスク例ではを含む非経口治療を組み込む。
  • Ca拮抗薬は、特発性・遺伝性・薬剤誘発性PAHのうち、でが陽性の少数例だけに使う1。⚠️ 急性そのものが1群の一部にしか適応がない。 関連・関連などその他のPAH、まして2〜5群では、反応性が陽性に見えてもCa拮抗薬の適応判定には用いない。
PAH治療経路 代表薬 要点
経路 、、 (ERA)
NO–cGMP経路 、、 阻害薬とを併用しない
、、、 高リスク例では静注薬を含む治療を検討。と中断リスクが異なる

持続静注では、ポンプ、混注管理が必要である。急な中断はPH、右心不全、死亡を招くため、やポンプ故障を緊急事態として扱う。

2〜5群

群 治療原則
2群 心不全・弁膜症を最適治療する。PAH薬はルーチンに用いない
3群 肺疾患、低酸素、を治療する。PH-ILDでは選択例でを検討(16週でを比31.12 m改善)3
4群CTEPH 生涯抗凝固。全例をCTEPHチームで評価し、手術可能なら、不能/残存例はや1
5群 原因疾患と個を治療する

[!] と 「にを使用する」という旧来の記述は現在の実践と逆である。はで悪化・入院増加が示され、使用しない。ARTEMIS-試験は疾患進行のリスクがより高くで早期中止された4。

まとめ

  • 現在のPH定義はでmPAP >20 mmHgである(旧定義は ≥25 mmHg)1。
  • PAWPとPVRを用いて/を分ける。PVRの閾値も >3 WU から >2 WU へ下がった1。
  • 心エコーは推定、は確定、V/Q スキャンはCTEPH検索に重要である。
  • PAH薬は1群を中心に専門施設で使い、2・3群へ一律転用しない。
  • CTEPHは抗凝固だけで終わらず、内膜摘除術・BPA・の適応を評価する。

出典

  1. 1.2022 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension(European Society of Cardiology / European Respiratory Society・2022)肺高血圧症を安静時平均肺動脈圧(mPAP)20 mmHg超と血行動態的に定義し直したこと(従来の25 mmHg以上から引き下げ)、前毛細血管性PHにはさらに肺動脈楔入圧15 mmHg以下かつ肺血管抵抗2 Wood単位超を要すること(従来は3 Wood単位超)、運動誘発性肺高血圧を安静時から運動時にかけてのmPAP/心拍出量スロープ3 mmHg/L/min超として再導入したこと、CTEPHを全例CTEPHチームで評価しバルーン肺動脈形成術の位置づけを引き上げたこと、PAHでは病型とリスクに応じて初期併用療法と段階的強化を行うことを確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Initial Use of Ambrisentan plus Tadalafil in Pulmonary Arterial Hypertension(New England Journal of Medicine(AMBITION試験)・2015)未治療のWHO機能分類II〜III度のPAH 500例で、アンブリセンタン10 mg+タダラフィル40 mgの初期併用療法は臨床的失敗の複合エンドポイントを18%に抑え、単剤群を統合した31%に対しハザード比0.50(95%CI 0.35〜0.72、P<0.001)だったこと、24週時点の6分間歩行距離の中央値変化が48.98対23.80 m(P<0.001)だったこと、末梢浮腫・頭痛・鼻閉・貧血が併用群で多かったことを確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Inhaled Treprostinil in Pulmonary Hypertension Due to Interstitial Lung Disease(New England Journal of Medicine(INCREASE試験)・2021)右心カテーテルで確認したPH-ILD 326例の無作為化試験で、吸入トレプロスチニル(1回最大72 µg・1日4回)は16週時点の6分間歩行距離をプラセボ比31.12 m(95%CI 16.85〜45.39、P<0.001)改善し、NT-proBNPは15%低下(プラセボは46%上昇)、臨床的悪化は22.7%対33.1%(ハザード比0.61)だったことを確認した。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Treatment of Idiopathic Pulmonary Fibrosis With Ambrisentan: A Parallel, Randomized Trial (ARTEMIS-IPF)(Raghu G, et al.; Annals of Internal Medicine・2013)特発性肺線維症(IPF)患者にアンブリセンタンを投与した無作為化プラセボ対照試験で、疾患進行(死亡・呼吸器入院・肺機能悪化)のリスクがプラセボ群より高く、中間解析で早期中止となったことを確認した。閲覧 2026-08-25