Internal Medicine

Internal Medicine · H-14

播種性血管内凝固

Disseminated intravascular coagulation

前提:病態
凝固系の低下と亢進が併存する病態(TTP・HIT・DIC)
前提:正常
後天性血栓性素因の分子的背景
疾患
播種性血管内凝固
検査値
フィブリノゲン

🧠 全体像は、基礎疾患による全身性凝固活性化が制御不能となり、微小血管血栓による臓器障害と、血小板・凝固因子消費および線溶による出血を同時に生じる後天性症候群である。単一検査で診断せず、原因疾患、臨床像、血小板・PT・フィブリノゲン・フィブリン関連マーカーの推移を統合する。最重要治療は原因の迅速な制御である。

原因

分類 代表例
感染 細菌・真菌・ウイルスなどによる敗血症
産科 、重症関連
悪性腫瘍 急性白血病、進行固形がん
、熱傷、大手術、膵炎
血管・免疫 、重症、CAPS

感染関連DICはグラム陰性菌に限られない。どの重症感染でも起こり得る。

病態

flowchart TD
    A["敗血症・産科異常・悪性腫瘍・外傷"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue factor'>組織因子</span>発現と凝固活性化"]
    B --> C["過剰な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombin generation'>トロンビン産生</span>"]
    C --> D["微小・大血管血栓"]
    D --> E["虚血と多臓器障害"]
    C --> F["血小板・凝固因子の消費"]
    C --> G["線溶活性化とフィブリン分解"]
    F --> H["出血"]
    G --> H
    H --> I["低血圧・ショック・組織障害"]
    E --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endothelial injury'>内皮障害</span>が凝固をさらに促進"]
    I --> J
    J --> B

敗血症ではが強く臓器障害優位、や一部産科DICではが強く出血優位になりやすいが、病型は重なり、に変化する。

臨床像

出血

  • ・創部からの持続出血
  • 点状出血、紫斑、粘膜出血
  • 消化管、肺、頭蓋内、産科出血

血栓・臓器障害

  • 腎障害、意識障害、呼吸不全、肝障害
  • 静脈・動脈血栓
  • ショックと

診断

検査 典型的変化 注意点
血小板 低下、または減少 初期は正常範囲でも急減が重要
PT 延長 初期・慢性DICでは正常のことがある
APTT 延長または正常 第VIII因子上昇などで延長しないことがある
フィブリノゲン 低下 で正常〜高値でもDICを除外できない
・FDP 上昇 非特異的だが凝固・線溶活性化を反映
塗抹 TTP/HUSほど目立たない場合もある

スコアなどは、基礎疾患がある患者で血小板、フィブリン関連マーカー、PT、フィブリノゲンを点数化する。スコアは診断補助であり、臨床判断やを置き換えない。2025年に定義・スコアの更新が提案されているため、施設が採用する最新版を確認する。

は目的で使い分ける。JAAM基準はSIRS・血小板・・FDPを組み合わせ、敗血症・外傷などの急性期をより早期・高感度に捉える基準で4点以上を陽性とする12017年版基準は、型・感染型・基本型という基礎疾患別の3型に分けて(4/5/6点)を変えており、日本の臨床現場で広く用いられる2。単一の基準に依存せず、な変化と基礎疾患の文脈を合わせて判断する。

flowchart TD
    A["DICを起こし得る基礎疾患"] --> B["出血・血栓・臓器障害を評価"]
    B --> C["血小板・PT・フィブリノゲン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='D-dimer'>Dダイマー</span>"]
    C --> D["スコアと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='evolution'>経時変化</span>を確認"]
    D --> E["DICを支持"]
    E --> F["原因治療を直ちに開始"]
    E --> G["出血優位か血栓優位か判断"]
    G --> H["必要な成分補充または限定的抗凝固"]

鑑別

疾患 鑑別点
TTP/HUS が強く、通常PT/APTTは正常
重症肝疾患 凝固因子産生低下。病歴、因子パターン、を統合
HIT ヘパリン曝露、血小板50%以上低下、血栓優位
大量輸血・希釈 出血・輸液との時間関係
より線溶優位、専門検査が必要

治療

原因治療

  • 敗血症:迅速な抗菌薬、、臓器支持
  • 産科DIC:分娩・胎盤娩出、止血、産科的原因の制御
  • :疑った時点で専門医と連携し、を遅らせない
  • 外傷・手術:出血源制御と蘇生

血液製剤

検査異常だけを理由に予防的補充しない。

製剤 考慮する状況
血小板 活動性出血または高リスク手技で、血小板が概ね< 50 × 10^9/L
出血・があり、PT/APTT延長や因子消費を伴う
・フィブリノゲン 出血があり、重度が持続する場合
赤血球 、出血、症状、Hbに応じる

抗凝固・抗線溶

ヘパリンは全DICへ一律投与しない。静脈血栓、、慢性DICなど血栓優位で出血リスクが許容される場合に検討する。造血器腫瘍関連DIC(APLを含む)では、ヘパリンなど他の抗凝固薬はむしろ弱く非推奨とされる点が、敗血症関連DICでの位置づけと異なる3

を悪化させ得るため通常避け、一次性が明確で生命危機出血を伴う例に限り専門医管理で考慮する。APLに対し投与中のは推奨されない3

敗血症関連DICでは、これらとは別に、によるDIC自体を標的としたが、2024年のJSTH(日本血栓止血学会)診療ガイドラインでいずれもGrade 1B(強い推奨)とされている。造血器腫瘍関連DICではは弱い推奨(Grade 2B)にとどまり、基礎疾患ごとに推奨の強さが異なる点に注意する3

まとめ

  • DICは全身性凝固活性化により、血栓と出血を同時に起こす。
  • 血小板、PT、フィブリノゲン、の単独値でなく推移を見る。
  • 最重要治療は敗血症、産科異常、悪性腫瘍など原因の制御である。
  • は出血・手技リスクと検査を組み合わせて使用する。
  • ヘパリンとを全例へ一律に投与しない。

出典

  1. 1.A multicenter, prospective validation of disseminated intravascular coagulation diagnostic criteria for critically ill patients: comparing current criteria(Japanese Association for Acute Medicine (JAAM) DIC Study Group / Critical Care Medicine・2006)JAAM基準がSIRS・血小板・PT-INR・FDPを組み合わせ、敗血症・外傷などの急性期をより早期・高感度に捉える目的で4点以上を陽性とする基準であることを確認した閲覧 2026-08-02
  2. 2.The approval of revised diagnostic criteria for DIC from the Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis(日本血栓止血学会(JSTH)・2017)JSTH2017年版基準が基礎疾患別(造血障害型・感染型・基本型)に3分類され、型ごとにカットオフ(4/5/6点)が異なることを確認した閲覧 2026-08-02
  3. 3.Clinical practice guidelines for management of disseminated intravascular coagulation in Japan 2024. Part 1: sepsis(日本血栓止血学会(JSTH)・2025)敗血症関連DICでアンチトロンビン濃縮製剤・遺伝子組換えトロンボモジュリンがいずれもGrade 1Bで推奨される一方、造血器腫瘍関連DIC(APL含む)ではヘパリンなど他の抗凝固薬が弱く非推奨(Grade 2C)、ATRA投与中のトラネキサム酸も推奨されないことを確認した閲覧 2026-08-02