Obstetrics

Obstetrics · 07

妊娠と心血管疾患

Pregnancy and cardiovascular diseases

前提:病態
心不全の原因と症状
前提:正常
心周期・圧と容積の変化・心音心臓のポンプ機能・心拍出量とその調節

🧠 全体像:心疾患合併妊娠では、妊娠による血液量・心拍出量増加と分娩直後の急な前負荷増加に心臓が耐えられるかを評価する。症状の強さだけでなくmWHO 2.0で病変別リスクを層別化し、高リスクでは妊娠前から妊娠心臓チームが管理する。

なぜ妊娠で悪化するか

flowchart TD
    A["妊娠:血液量・心拍数・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stroke volume'>一回拍出量</span>増加"] --> B["心拍出量が約30〜50%増加"]
    B --> C["狭窄性弁膜症では通過障害が顕在化"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventricular performance'>心室機能</span>低下ではうっ血・肺水腫"]
    E["分娩:疼痛・子宮収縮・自己輸血"] --> F["前負荷が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sudden deterioration (acute decompensation)'>急変</span>"]
    F --> D
    G["産後:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uteroplacental circulation'>子宮胎盤循環</span>消失・体液移動"] --> H["産後早期も心不全リスク"]

の成人が増え、妊娠合併心疾患の主要部分を占める。修復済み単純病変でも残存短絡、弁病変、肺高血圧不整脈を再評価する。

リスク評価

改訂WHO妊娠心血管リスク分類

分類 母体リスク 代表例
I 死亡リスク増加を認めず、罹患リスクは軽度 小さな/軽度、修復済み単純病変、孤立性
II 死亡リスクは小さく、罹患リスクは中等度 未修復ASD/VSD、修復済み、多くの
II–III 軽度、一部弁膜症、など
III 死亡・重篤が有意 、Fontan循環、体心室が右室、一部重症弁膜症・大動脈疾患
IV 極めて高リスクで妊娠回避を強く助言 、重度低下、重度、症候性重度、重度大動脈拡張

病変、、大動脈径などで分類が変わるため、正確なカテゴリーは2025 ESC基準で個別判定する。

ニューヨーク心臓協会機能分類

Class 症状と
I 心疾患はあるがなし
II 安静時無症状、通常の活動で症状。軽度制限
III 安静時無症状、通常以下の活動で症状。著明な制限
IV 安静時にも症状があり、活動で増悪

III〜IV、チアノーゼ、肺高血圧、低下、、大動脈疾患はである。

妊娠前評価

  • 心エコー、ECG、SpO2、、必要時に心肺運動負荷・MRIを行う。
  • 薬剤の、抗凝固計画、遺伝性心疾患、避妊、妊娠代替案を相談する。
  • mWHO II–III以上では、循環器、母体胎児医学、麻酔、必要時心臓外科・新生児科による妊娠心臓チームを構成する。
  • 妊娠中に必要な画像・を、放射線への恐れだけで遅らせない。適応と防護を最適化する。

代表疾患

先天性心疾患

  • ASD・VSDなどの非チアノーゼ性病変は、肺高血圧・・短絡量でリスクが決まる。
  • は修復後でも右室拡大、、不整脈を評価する。
  • チアノーゼが強いほど母体血栓・心不全と流産、発育不全、早産リスクが高い。

肺動脈性肺高血圧・Eisenmenger症候群

が固定しているため、低下や出血でが増え、低酸素・右心不全・突然死に至りうる。mWHO IVであり妊娠回避を強く助言する。妊娠継続時は専門施設で厳重管理する。

僧帽弁狭窄

  • 心拍数・血液量増加で拡張期間が短くなり、左房圧・が上昇する。
  • 頻脈、心房細動、感染、貧血で肺水腫が誘発される。
  • 症候性では、慎重な利尿、抗凝固適応評価を行い、難治例では弁介入を検討する。

不整脈

  • は多くが良性だが、失神・持続性頻拍・を評価する。
  • 安定した発作性、次いでアデノシンを検討する。
  • な頻拍ではを行い、妊娠を理由に遅らせない。

虚血性心疾患

糖尿病、肥満、喫煙に加え、を考える。胸痛ではECG・・心エコーを行い、必要なを遅らせない。

周産期心筋症

  • 他の原因がなく、妊娠末期から産後数か月にLVEF 45%未満の収縮不全を生じる。
  • 高血圧性疾患、、アフリカ系、既往PPCMなどがリスクとなる。
  • 、夜間呼吸困難、浮腫を正常妊娠と誤認しない。
  • 妊娠中と産後で使用可能な心不全薬が異なる。残存では次回妊娠リスクが高い。

妊娠中の管理

  • 健診頻度、心エコー、BNP/、胎児発育評価を病変別に計画する。
  • 運動を一律禁止せず、mWHO・症状・病変に応じて安全な活動量を決める。
  • 浮腫・心不全には塩分・体液管理と必要最小限の利尿薬を用いる。
  • 仰臥位では子宮が下大静脈を圧迫するため、症状時や処置中は左傾斜を用いる。
  • 抗凝固は病変・弁種・妊娠時期・分娩計画に応じ、LMWH、UFH、ワルファリンの利益と胎児リスクを専門的に調整する。

分娩計画

  • 多くの心疾患では腟分娩が第一選択で、帝王切開は産科適応または特定心疾患に限る。
  • を含む麻酔、体位、輸液、抗凝固中断、モニタリング、産後観察を事前に文書化する。
  • で第2期を短縮する方法は一部の高リスク病変で有用だが、一律にを禁止しない。
  • 産後24〜72時間は自己輸血・体液移動で心不全が悪化しうるため、高リスクでは監視を継続する。

まとめ

  • 心疾患合併妊娠はmWHO 2.0で病変別に層別化し、は症状の補助評価に使う。
  • 、重度低下、重症狭窄・大動脈疾患は極めて高リスクである。
  • 心疾患をもつ妊娠では循環器・産科・麻酔を含む妊娠心臓チームが有用である。
  • 腟分娩が多くで可能であり、帝王切開・・運動制限を一律化しない。
  • 分娩直後の前負荷変化まで含めて管理計画を立てる。