病理学

病理学 · A/22

過形成

Pathomechanism of hyperplasia, examples

タグ
Mechanism / 機序High-yield / ポイント
疾患
子宮内膜増殖症

🧠 全体像:過形成は「をもつ組織で細胞数が増える」制御された増殖で、肥大(細胞サイズの増大)とは軸が違う。(制御されない)と本質的に異なるが、のように持続すればの温床になりうる点が試験で問われやすい。

定義

  • 過形成 = 細胞数の増加。をもつ組織でのみ起こる(細胞が G0 → G1 へ移行)。
  • 肥大と併存しうる。制御された増殖であり、(制御されない)とは対照的。病的な過形成はの温床となりうる(例:子宮内膜)。

原因と例

ホルモン刺激

  • : プロゲステロンで拮抗されない過剰なエストロゲン → 過剰な増殖 → 腺癌のリスク。国際婦人科病理学会が承認した 2014分類は、旧来の腺構築(/複合型)×細胞異型(異型なし/異型あり)による4分類を、異型なし増殖症と/(EIN)の2群へ整理した1。この2群制は現行の2020年版分類(第5版)でも維持されている2。子宮摘出を受けなかった増殖症170例を平均13.4年追跡した研究では、癌への進展は異型なし群122例中2例(1.6%)に対し異型あり群では23%(P=0.001)で、細胞異型の有無が癌化を予測する最も有用な指標であった。構築の複雑さによる4亜群(1%・複合型3%・異型8%・複合型異型29%)の差は傾向にとどまり統計学的に有意ではなかったが、著者は異型に構築異常が加わる群を特に高リスクの亜群とみなしている3。
  • (BPH=良性前立腺過形成): 50歳以上の男性。相対的なエストロゲン増加・アンドロゲン→ 腺筋性の過形成 → 尿路閉塞。名称に反し組織学的には過形成であって肥大ではなく、過形成の主座であるは前立腺癌の主座(辺縁帯)とは異なる部位である(104例の帯別解析で発生帯を同定できた88癌のうち68%が辺縁帯、24%が、8%がからの発生)4。前立腺内の()作用が関与するが、濃度自体は過形成で上昇しておらず、加齢に伴う血漿テストステロン低下下でも前立腺内では正常値に保たれる5。

機能的需要の増加

  • 骨髄の過形成: 赤血球の需要が増すと骨髄のが過形成になる。需要増の原因は2系統ある——①(高地、)→ 増加 → そのものが増える、②出血・溶血による赤血球の喪失 → 貧血を代償する。②では過形成が起きてもは正常以下にとどまりうる。長期に続くと(例:重症の性貧血)が拡大し皮質が菲薄化する。
  • リンパ節過形成: (B細胞)または(T細胞)の反応性増殖。

慢性炎症

  • 慢性膀胱炎(反復性尿路感染)→ 膀胱上皮の過形成(保護的)。

💡 ポイント: 過形成 = 細胞数の増加(のある組織が必要)、肥大 = 細胞が大きくなる。と異なり、制御され可逆的。古典的な例:(拮抗されないエストロゲン、)、(BPH)、代償性の肝再生(部分切除後に残った肝細胞が分裂して肝重量を回復する)。ただし「刺激が除かれれば止まる」という定義は常に明確に線を引けるわけではなく、では細胞異型の有無だけで癌化リスクが1.6%から23%へ跳ね上がるように、過形成と腫瘍の境界は連続的である3。

まとめ

  • 過形成はをもつ組織における細胞数の増加で、肥大(細胞サイズの増大)と対比される。両者は併存しうる。
  • (拮抗されないエストロゲンによる、相対的なエストロゲン増加による)が代表的な原因。
  • 機能的需要の増加(低酸素・出血・溶血→骨髄の過形成)や慢性炎症(慢性膀胱炎による膀胱上皮過形成)でも生じる。
  • 制御された可逆的な増殖でありとは異なるが、のように(腺癌のリスク)となりうる点は例外的に重要。

出典

  1. 1.New classification system of endometrial hyperplasia WHO 2014 and its clinical implications(Przegląd Menopauzalny (Menopause Review)・2017)WHO94分類は腺の構築の複雑さと核異型により、異型なし増殖症(単純型・複合型)と異型増殖症(単純型・複合型)の4群に分けていた。国際婦人科病理学会が承認したWHO 2014分類はこれを良性増殖症と異型増殖症/子宮内膜上皮内腫瘍(EIN)の2群へ整理し、前癌病変の同定においてWHO94より優れる。異型増殖症から子宮内膜癌への進展リスクは8〜29%と見積もられている。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Atypical Endometrial Hyperplasia and Concurrent Cancer: A Comprehensive Overview on a Challenging Clinical Condition(Cancers (Basel)・2024)全文(Europe PMC、PMC10930610)の組織学的分類の節で、WHO 2014分類が子宮内膜増殖症を異型なし増殖症と異型子宮内膜増殖症/EINの2群に分けたこと、この分類の予後予測能・再現性・治療選択との整合を理由に、2群制が2020年版WHO分類でも維持されたと述べていることを確認した閲覧 2026-09-23
  3. 3.The behavior of endometrial hyperplasia. A long-term study of "untreated" hyperplasia in 170 patients(Cancer・1985)抄録で確認した。子宮摘出を1年以上受けなかった子宮内膜増殖症170例を平均13.4年(1〜26.7年)追跡した研究で、癌へ進展したのは異型なし増殖症122例中2例(1.6%)に対し、異型増殖症では23%であった(P=0.001)。細胞異型の有無が判別因子であり癌化の予測に最も有用な基準であること、単純型1%・複合型3%・単純型異型8%・複合型異型29%という4亜群間の差は傾向を示すにとどまり統計学的に有意ではなかったこと、ただし異型に構築異常が加わる群は特に高リスクの亜群とみられると著者が述べていることを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Zonal distribution of prostatic adenocarcinoma. Correlation with histologic pattern and direction of spread(The American Journal of Surgical Pathology・1988)根治的前立腺摘除標本104例のうち発生帯を同定できた88癌では、68%が辺縁帯、24%が移行帯、8%が中心帯から発生していた。移行帯癌の大半は経尿道的切除で診断され、しばしば前立腺過形成結節内から発生したようにみえた(非移行帯癌67例中で経尿道的切除により診断されたのは2例のみ)。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Dihydrotestosterone and the concept of 5alpha-reductase inhibition in human benign prostatic hyperplasia(World Journal of Urology・2002)前立腺の主たるアンドロゲンはジヒドロテストステロンだが、その濃度は良性前立腺過形成で上昇しておらず、血漿テストステロンが加齢とともに低下しても前立腺内では正常値に保たれる。前立腺で優位な5α還元酵素はtype 2で、フィナステリドは血清DHTを約70%、前立腺内DHTを85〜90%抑制する。閲覧 2026-08-27