病理学

病理学 · A/20

萎縮と肥大

Pathomechanism of atrophy and hypertrophy, examples

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Mechanism / 機序High-yield / ポイント
疾患
悪液質眼球癆

🧠 全体像:肥大は「分裂できない細胞(心筋・骨格筋)が大きくなる」適応、萎縮は「細胞が小さく・少なくなる」適応で、方向は逆でも共に細胞外シグナルへの再プログラミングという点で同じ土俵にある。心臓では刺激の種類(かか)が筋節の並び方を決め、それが求心性・遠心性という壁の形の違いに直結する。

肥大

  • 細胞のサイズ増大 → 臓器の増大。新しい細胞は生じない(過形成=数の増加とは異なる)。両者は併存しうる。
  • に乏しい細胞(心筋、骨格筋)が対象。
  • 誘因:機械的(需要増加)、栄養的・、 → タンパク質合成、遺伝子発現、のリモデリングの増加。
  • 生理的: 運動、、の乳房。病的: 高血圧・弁膜症による。

心臓のパターン

パターン 刺激 筋節 原因
求心性左室 並列に付加(壁厚増、内腔は狭い) 高血圧、、
遠心性左室 に付加(内腔拡大) ・
右室 の増加 — (肺気腫、、線維症、肺塞栓、)

萎縮

  • 細胞サイズの縮小(オートファジー+ユビキチン–プロテアソーム)と細胞数の減少(アポトーシス)→ 縮小+機能低下。細胞は小さいまま生存するよう「再プログラム」される。

原因

  • 機能的需要の低下(): 固定された骨折肢。
  • O₂・栄養の不足: 部分的虚血 → 脳の萎縮、の肝()。
  • : (Cushing症候群 → 、骨粗鬆症)、乳癌治療でのエストロゲン除去。
  • 性: 支配神経の切断・障害により骨格筋線維が萎縮する(など)。
  • 圧迫性: 周囲組織からの持続的な圧迫(腫瘤による実質圧迫など)。
  • 加齢: 永久細胞からなる臓器(脳、心、筋)。・筋力の加齢性低下はと呼ばれ、欧州の(2019年)は「筋量の減少」ではなく「低筋力」を中核的特徴とする形へ定義を改め、高齢者に限らず生じうるとし、症例発見・診断・重症度判定のための具体的なを示した1。⚠️ 定義は団体によって異なり、2024年には国際的な合意(GLIS)が筋量・筋力・筋特異的筋力(筋の大きさで補正した筋力)を構成要素とし、身体機能の低下は構成要素ではなく帰結と位置づける概念定義を示した。臨床で使うはこれをもとに作成するとされている2。

メカニズム

  • タンパク質合成の低下、の亢進(ユビキチン–プロテアソームによる標識)、遺伝子発現の低下、オートファジーの亢進(オートファジーがリソソームと融合)。

例

はなどの酸化とオートファジー後に残る消化困難なである。培養した新生仔では、量が(内膜電位の低下)やの産生量と正に相関し、不完全なオートファジーとそれに続くリソソーム分解が両者に共通する機序である可能性が高いと推論されている3。

💡 ポイント: 肥大 = 細胞が大きくなる(求心性=圧・並列、遠心性=容量・)。萎縮 = オートファジー+ユビキチン–プロテアソームを介して細胞が小さく・少なくなる。・虚血・ホルモン・・圧迫・加齢が主な萎縮の誘因。

まとめ

  • 肥大はに乏しい細胞(心筋・骨格筋)で細胞サイズが増大すること、萎縮は細胞サイズの縮小と数の減少による臓器の縮小・機能低下。
  • 心臓のは(筋節が並列に付加、壁厚増)、は(筋節がに付加、内腔拡大)で生じる。
  • は拡張不全、(終末期拡張)、による後方うっ血などの結果を招きうる。原因となる高血圧は同時に脳卒中・腎不全も起こす。
  • 萎縮の原因は(機能的需要の低下)、虚血・栄養不足、ホルモン異常(Cushing症候群など)、、圧迫、加齢に大別される。
  • 萎縮の機序はタンパク質合成低下、ユビキチン–による分解亢進、オートファジーの亢進。

出典

  1. 1.Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis(European Working Group on Sarcopenia in Older People 2 (EWGSOP2) / Age and Ageing・2019)2010年のEWGSOP初版を2018年に改訂した合意文書。サルコペニアを筋疾患(muscle failure)と位置づけ直し、筋量減少ではなく低筋力を中核的特徴とし、低筋量・低筋質は診断確定に、身体機能低下は重症度判定に用いるとした。高齢者に多いが若年でも生じうるとし、症例発見・診断・重症度判定のための具体的なカットオフ値を提示した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.The Conceptual Definition of Sarcopenia: Delphi Consensus from the Global Leadership Initiative in Sarcopenia (GLIS)(Age and Ageing / Global Leadership Initiative in Sarcopenia (GLIS)・2024)全文(PMC10960072)で確認した。主要なサルコペニア関連学会の専門家によるデルファイ合意で初の国際的な概念定義を作成し、筋量・筋力・筋特異的筋力の3つを「構成要素」、身体機能の低下を構成要素ではなく「帰結」として受け入れた。臨床・研究用の操作的定義はこの概念定義をもとに今後作成するとしている。閲覧 2026-09-23
  3. 3.Aging of cardiac myocytes in culture: oxidative stress, lipofuscin accumulation, and mitochondrial turnover(Annals of the New York Academy of Sciences・2004)抄録で確認した。培養した新生仔ラット心筋細胞では、リポフスチン量は細胞ごとに大きくばらつき、ミトコンドリア障害(内膜電位の低下)および活性酸素産生量と正に相関した。著者らはこの結果から、リポフスチン蓄積とミトコンドリア障害には、酸化傷害を受けたミトコンドリアなどの不完全なオートファジーとそれに続くリソソーム分解という共通の機序がある可能性が高いと推論している(ミトコンドリア-リソソーム軸の老化説)。閲覧 2026-08-27