病理学

病理学 · A/25

うっ血(受動性充血)と臓器所見

Congestion and its organ manifestation

タグ
Mechanism / 機序High-yield / ポイント
応用トピック
慢性心不全―病因、症状、診断心不全

🧠 全体像:うっ血は「静脈からの血液の出口が塞がれる」ことで生じる受動的な血液貯留(青みがかる)で、が増える(赤い)と対照的。慢性化すると低酸素とが組織を作り変え、肝では、肺ではを伴うという特徴的な像を残す。

定義

  • うっ血 = : の障害 → 静脈に血液が貯留 → の上昇 → 浮腫+低酸素。侵された臓器は青みがかって(チアノーゼ様)見える。
  • (血管拡張によるの増加。赤・)— 炎症、運動、赤面、再灌流 — と対照的。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous outflow'>静脈流出</span>の障害"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous'>静脈内</span>圧の上昇"]
    B --> C["毛細血管の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased hydrostatic pressure'>静水圧上昇</span>"]
    C --> D["浮腫+低酸素"]
    D --> E["慢性化<br>→臓器の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brown induration of lung'>褐色硬化</span>・線維化・壊死"]

原因

局所(静脈閉塞)

全身

  • 右心不全・(CHF) → 全身性の。では側(肺)がうっ血する。

臓器別の所見

  • 肝 — : 小葉内の血液はからへ流れ、からへ出る。うっ血の圧は出口にあたるの周囲に最初に強く及び、しかもそこは酸素を運ぶ血液の流れの最下流でもある。そのため小葉中心部(zone 3)でが拡張して血液がたまり、低酸素で肝細胞が萎縮・脱落する(高度なら出血・壊死)。では赤褐色に陥凹した小葉中心部と、比較的保たれた淡い黄褐色の(を伴うことがある)とが状にに並び、ナツメグの断面に似る。慢性右心不全のの検討でも、拡張との線維化がの指標で、小葉中心部のを伴っていた。線維化がまで及ぶ例ほどが高く、右心機能の障害が重かった1。慢性化 → 線維化が進み、数十年の経過で心臓性肝硬変に至りうる2。
  • 肺 — : 慢性肺うっ血(・)→ からへの → 赤血球を貪食したマクロファージがヘモグロビンをに変える= → (褐色)+の線維化(硬化)で「」。
    • は心不全に特有の細胞ではない。103例の検討では、中のの比率(平均38.2%)がの・と正の相関を示し、とはでも独立に相関した3。見つけたら「心不全」と決めつけず、を上げる病態や肺胞出血を広く考える。
  • 脾: うっ血性脾腫±線維化。
  • 腎: 被膜下の静脈の拡張、の髄質錐体。
  • :胸水、、腹水、、。

長期うっ血の結果

  • 臓器の腫大(肝脾腫)、(線維化+)、、壊死(:による腸管、による精巣)、浮腫、(による)。
  • 術後のでもな上昇により同様の肝障害(Fontan関連肝疾患、FALD)が生じ、術後長期の経過で線維化・肝硬変様変化に至りうる4。

💡 ポイント: うっ血 = 受動性(、青みがかる)と(、赤い)。古典的な2つの慢性像:(右心不全)と、を伴う肺の(・)。

まとめ

  • うっ血は障害によるで、→浮腫+低酸素を来す。(、赤い)と対照的。
  • の原因は静脈血栓・圧迫・(、閉塞を含む)、全身性の原因は右心不全・。
  • 慢性は(赤褐色の小葉中心部のうっ血・と、淡いの模様)を呈し、進行するとに至りうる。
  • 慢性肺うっ血(・)は()を伴うを来す。
  • 長期うっ血は、、萎縮、壊死(腸管・精巣)、浮腫、などの結果を招く。

出典

  1. 1.Congestive hepatic fibrosis score: a novel histologic assessment of clinical severity(Modern Pathology・2014)抄録で、慢性心不全42例(20%超の脂肪化を伴う例は除外)の肝生検の検討において、類洞拡張と小葉中心性線維化がうっ血肝の指標で小葉中心性の肝細胞萎縮を伴うこと、うっ血性肝線維化スコアが右房圧と相関したこと(傾向のP<0.001)、門脈域の線維化を伴う例は線維化の無い例・小葉中心性線維化のみの例より右房圧が高かったことを確認した閲覧 2026-09-23
  2. 2.Congestive Hepatopathy(International Journal of Molecular Sciences・2020)心不全に伴う肝障害は一般に「心臓性肝症(cardiac hepatopathy)」と呼ばれ用語はまだ統一されていないこと、慢性右心不全による受動性うっ血(congestive hepatopathy)が小葉中心性線維化を経て数十年の経過で「心臓性肝硬変(cardiac cirrhosis)」に至りうることを確認した総説である閲覧 2026-08-27
  3. 3.Hemosiderin-laden macrophages are an independent factor correlated with pulmonary vascular resistance in idiopathic pulmonary fibrosis: a case control study(BMC Pulmonary Medicine・2017)抄録で、外科的肺生検を受けた特発性肺線維症103例の後ろ向き検討において、気管支肺胞洗浄液のヘモジデリン貪食マクロファージ比率(平均38.2%)が右心カテーテル法による平均肺動脈圧(ρ=0.204)・肺血管抵抗(ρ=0.349)と正の相関を示し、多変量解析で肺血管抵抗と独立に相関したことを確認した。全文(PMC5294720)に心不全・僧帽弁への言及は無く、心不全細胞との関係は本論文の主張ではない閲覧 2026-09-23
  4. 4.Long-term survival and complications of Fontan patients: where do we stand?(American Journal of Cardiovascular Disease・2026)Fontan循環患者の遠隔期合併症として、Fontan関連肝疾患(Fontan-associated liver disease, FALD)が術後35年で半数を超える患者に及びうることを確認した総説である閲覧 2026-08-27