小児科学

小児科学 · 1-10

小児の血尿

Haematuria in Children

前提:正常
腎臓の組織(ネフロン)糸球体濾過

🧠 全体像: 赤い尿やの陽性だけでは血尿とは限らない。まず尿沈渣で赤血球を確認し、蛋白尿・・・高血圧・腎機能低下の有無からか非かを分ける。

定義と最初の分岐

  • :肉眼で赤色〜褐色に見える尿。
  • :尿沈渣で赤血球を認めるが、外観は通常色である。
  • は赤血球ではなくヘムを検出する。陽性でも赤血球がなければ・を考える。
  • 発熱、激しい運動、外傷、採尿時の月経混入による一過性所見を除き、無症候性なら別日に再検して持続性を確認する。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='red discoloration of urine'>赤色尿</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urine occult blood'>尿潜血</span>陽性"] --> B["尿沈渣で赤血球を確認"]
    B -->|"赤血球なし・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='occult blood'>潜血</span>陰性"| C["食物色素・薬剤・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='porphyrin'>ポルフィリン</span>など"]
    B -->|"赤血球なし・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='occult blood'>潜血</span>陽性"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemoglobinuria'>ヘモグロビン尿</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myoglobinuria'>ミオグロビン尿</span>"]
    B -->|"赤血球あり"| E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glomerular'>糸球体性</span>所見があるか"}
    E -->|"蛋白尿・円柱・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dysmorphic RBCs'>変形赤血球</span>あり"| F["糸球体腎炎を評価"]
    E -->|"なし"| G["尿路感染・結石・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypercalciuria'>高Ca尿</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural aberration'>構造異常</span>を評価"]

原因

分類 主な疾患 手がかり
、IgA腎症、IgA血管炎腎炎、、SLE腎炎、 、蛋白尿、浮腫、高血圧、
非 尿路感染症、、、外傷、、Nutcracker症候群 、、、側腹部痛
全身性 凝固異常、鎌状赤血球症、血管炎 、貧血、発疹、状
腫瘍 Wilms腫瘍、膀胱・尿路 腹部腫瘤、体重減少、持続する

IgA腎症ではと同時期〜数日以内の反復性が特徴的である。は感染から一定期間後に血尿、浮腫、高血圧を呈する。では家族歴、感音難聴、眼所見が手がかりとなる。

💡 小児の無症候性の多くは良性の経過をたどる。1092例を対象とした系統的レビューでは、分離性で同定された原因の多くが・IgA腎症・のないで、持続や蛋白尿出現の有無を経過観察する方針が支持された1。持続性の分離性は小児のおよそ0.25%にみられ、大多数は進行性腎疾患ではないが、まれな進行例を見逃さない評価の枠組みが必要である2。は小児の孤立性血尿の原因として頻度が高い。

評価

  1. 血圧、体重変化、尿量、浮腫、発疹、関節所見、腹部腫瘤を確認する。
  2. ・沈渣、尿蛋白/Cr比、必要時尿Ca/Cr比、尿培養を行う。
  3. 蛋白尿や全身所見があれば血算、Cr・電解質、補体、感染後抗体、自己抗体などを仮説に沿って追加する。血清IgA値だけでIgA腎症は診断できない。
  4. 、結石、腫瘤が疑わしければを第一選択とする。、、腎生検は適応を絞る。

💡 の集団スクリーニングは国で対応が大きく異なる。日本は1974年から学校検尿を実施しIgA腎症などの早期治療を通じてへの進行を減らしてきたが、は2007年にとしての尿検査スクリーニング中止を推奨しており、米国の検尿陽性率・は日本より高い3。日本の6歳児を対象にした生涯モデルの分析では、学校検尿によるIgA腎症の早期発見はICER 418万6642円/QALYでに優れると推計された一方、過剰診断・偽陽性による負担は各国の実施判断に影響する4。

⚠️ 血尿に中等度以上の蛋白尿、高血圧、乏尿、腎機能低下、浮腫、補体低下、家族性腎不全、腫瘤を伴う場合は早期に小児腎臓科へ紹介する。

治療

原因疾患を治療する。尿路感染症は培養に基づく抗菌薬、結石・は十分な水分と原因別介入、は・血圧・腎機能の管理が中心である。蛋白尿を伴うでは阻害薬/などを専門科で検討し、免疫抑制療法は病型と重症度を確定して選ぶ。

まとめ

  • 陽性は血尿の確定ではなく、尿沈渣が必須である。
  • 蛋白尿・円柱・はを示唆する。
  • 持続性血尿や腎炎所見を見逃さず、検査は病歴と尿所見に合わせて段階的に行う。

出典

  1. 1.Etiologies of asymptomatic microscopic hematuria in children - systematic review of 1092 subjects(Diagnosis (Berlin)・2015)7研究1092例(分離性顕微鏡的血尿857例、血尿・蛋白尿合併235例)の系統的レビュー。分離性顕微鏡的血尿では菲薄基底膜腎症15.2%、IgA腎症10.4%、尿路結石を伴わない高カルシウム尿症7.7%が同定された原因の上位(原因同定率42.4%)で、血尿・蛋白尿合併ではIgA腎症44.3%、菲薄基底膜病12.8%、メサンギウム増殖性糸球体硬化症8.9%が上位(同81.3%)だった。著者は分離性顕微鏡的血尿の小児は血尿の持続や蛋白尿出現の有無を経過観察すべきと結論した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Approach to Persistent Microscopic Hematuria in Children(Kidney360・2020)持続性の分離性顕微鏡的血尿は小児のおよそ0.25%にみられ、原因は良性から進行性腎疾患まで幅広いため、費用と負担を抑えつつまれな進行性腎疾患を見分ける初期評価・経過観察の枠組みを示したレビュー。閲覧 2026-08-27
  3. 3.School urinary screening program in Japan: history, outcomes, perspectives(Kidney Research and Clinical Practice・2024)日本の学校検尿(1974年開始)は無症候性血尿・蛋白尿による腎疾患の早期発見に有効で、IgA腎症などの早期治療を通じ末期腎不全への進行を減らしてきた。一方、米国小児科学会は2007年に公衆衛生としての尿検査スクリーニング中止を推奨しており、米国の検尿陽性率・偽陽性率は日本より有意に高いという日米の違いを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Cost-Effectiveness of School Urinary Screening for Early Detection of IgA Nephropathy in Japan(JAMA Network Open・2024)日本の小学1年生(6歳)100万人を対象とした生涯Markovモデルによる費用対効果分析。学校検尿によるIgA腎症早期発見はICER 418万6642円/QALYで、一般的な閾値750万円/QALY未満と推計され、末期腎不全患者数は非スクリーニング群100万人あたり60.3人に対しスクリーニング群31.7人だったことを確認した。閲覧 2026-08-27