小児科学

小児科学 · 2-07

健常児・早産児の栄養、エネルギー必要量と栄養療法

Nutrition of the Healthy Infant and Child, Preterm Infant Nutrition, Caloric Needs, and Nutrition Therapy

前提:正常
栄養素の分解と吸収身体のエネルギー平衡

🧠 全体像:小児栄養は「母乳を軸に生後6か月頃から」「腸が使えれば」「早産児はに見合う高い栄養密度」が基本である。

健常乳児の栄養

時期 栄養の要点
0〜約6か月 母乳を第一選択とし、母乳のみでの栄養を推奨する。困難・希望しない場合は鉄強化を用いる
約6か月以降 発達準備性を確認して鉄を多く含むを開始し、母乳は2歳以降まで継続可能
1歳以降 家族の食事へ移行し、食品の多様性、自己摂食、規則的な家族食を育てる
  • は蛋白・Na・免疫グロブリンに富み、乳糖が少ない。産後30〜40時間頃から乳量と乳糖が増える。
  • 母乳は抗体・リンパ球、形成、母子の愛着を支え、母体の子宮復古にも寄与する。
  • は少量から開始し、食感・量・回数・種類を段階的に増やす。砂糖、過剰な塩分、飲料を控える。
  • 1歳未満には蜂蜜を与えない。加熱の有無では乳児の安全性を保証できない。丸いブドウ、ナッツなど窒息危険食品にも注意する。
  • ビタミンDは通常400 IU/日を出生後早期から補うが、地域指針、摂取量、基礎疾患で調整する。ビタミンKは国・施設の新生児予防投与法に従う。

⚠️ 旧来の「は4〜6か月」「ビタミンK 2 mgを毎週」というな扱いは普遍的ではない。はを約6か月からとし、ビタミンKは国別プロトコルに従う12。

⭐⭐ 予防の助言は無作為化試験で反転した。 かつては乳児期のピーナッツ・卵の摂取開始を遅らせる、あるいは除去することが助言されていたが、重症湿疹・またはその両方を有する生後4〜11か月の高リスク乳児640人を対象としたLEAP試験(2015年)は、60か月まで回避する群と摂取を継続する群を比較し、陰性コホートでのピーナッツアレルギーが回避群13.7%に対し摂取群1.9%と、早期導入群で大きく低下することを示した3。この結果を受け、2017年の米国NIAID追補ガイドラインは湿疹・の重症度に応じたリスク層別の推奨に改め、重症湿疹やのある高リスク乳児には生後4〜6か月からのピーナッツ含有食品導入を検討するとした4。卵についても、湿疹のある生後4〜5か月の日本人乳児147人を対象としたPETIT試験(2017年)で、加熱卵粉末を生後6か月から段階的に導入した群は12か月時点の発症がプラセボ群より有意に少なかった(0.221、95%CI 0.090-0.543)5。これらはいずれも湿疹などの高リスク乳児を対象とした試験であり、対象を限定せず全乳児に早期導入を一律に推奨する根拠ではない点に注意する。

年長児の食事

早産児の栄養

早産児はエネルギー、蛋白、Ca、P、鉄、ビタミンの必要量がより大きい。母親自身の母乳を第一選択とし、不足時はドナーミルクや早産児用を検討する6。母乳強化は在胎週数、体重増加、に応じて行う。

⚠️ ドナー母乳とのどちらを補うかにはがある。 早産・1,879人を統合したでは、群はドナー母乳群より入院中の体重・身長・の増加が速かった一方、のリスクが有意に高く(1.87、NNTH33)、長期の成長・神経発達に有意差は示されなかった7。体重増加の速さだけを理由にドナー母乳よりを優先すべきではなく、追いつき成長を急がせること自体も目標にしない8。

flowchart TD
    A["早産・重症で経口摂取困難"] --> B["必要に応じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parenteral nutrition, PN'>静脈栄養</span>を開始"]
    B --> C["少量の母乳による栄養性刺激"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tube feeding (enteral feeding)'>経管栄養</span>を段階的に増量"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sucking (sucking reflex)'>吸啜</span>・嚥下・呼吸の協調を確認"]
    E --> F["経口栄養へ移行"]
対象 学習上の概算エネルギー量
乳児 100〜120 kcal/kg/日
早産児 120〜150 kcal/kg/日
1〜3歳 80〜100 kcal/kg/日
4〜6歳 70〜90 kcal/kg/日
7〜10歳 60〜80 kcal/kg/日
思春期 約40〜60 kcal/kg/日

これらは学習上の概算であり、実際は、活動量、疾患、、で個別化する。早産児の蛋白量も3.5〜4.5 g/kg/日を固定投与せず、在胎週数・出生体重・栄養製剤で調整する。

栄養療法

  1. 体重、身長・体長、、、食事歴、疾患活動性を評価する。
  2. 消化管が機能するなら経口・経管を含むを優先する。
  3. 消化管が使えない、または必要量を満たせない場合にを補う。
  4. には高栄養密度化、には医学的根拠のある除去、嚢胞性線維症・腎疾患・糖尿病には疾患別処方を行う。

まとめ

  • 母乳のみは約6か月、後も母乳継続が基本である。
  • 早産児は母乳を中心に、強化・経管・を段階的に組み合わせる。
  • 固定量ではなく、成長のと臨床状態で栄養処方を更新する。

出典

  1. 1.Complementary Feeding: A Position Paper by the European Society for Paediatric Gastroenterology, Hepatology, and Nutrition (ESPGHAN) Committee on Nutrition(Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition・2017)ESPGHANは補完食を生後4か月未満に開始せず6か月を超えて遅らせないことを推奨しており、生後6か月からの完全母乳栄養を原則とするWHOの推奨と開始しうる時期の幅で異なりうることを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Vitamin K and the Newborn Infant(Pediatrics・2022)新生児ビタミンK欠乏性出血の予防には出生後早期の筋肉内投与が標準で、経口レジメンは国・製剤で用法が異なるため筋注が第一に推奨されることを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy(The New England Journal of Medicine・2015)重症湿疹・卵アレルギーまたは両方を有する生後4〜11か月の高リスク乳児640人を対象としたLEAP試験で、皮膚プリック試験陰性コホート(530人)の60か月時点ピーナッツアレルギー有病率が回避群13.7%に対し摂取継続群1.9%であり、早期導入が発症を大きく減らしたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Addendum guidelines for the prevention of peanut allergy in the United States: Report of the National Institute of Allergy and Infectious Diseases-sponsored expert panel(The Journal of Allergy and Clinical Immunology・2017)LEAP試験を受け、重症湿疹・卵アレルギーの有無によるリスク階層別に、高リスク乳児では生後4〜6か月からのピーナッツ含有食品導入を検討するなど3段階の推奨を定めたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Two-step egg introduction for prevention of egg allergy in high-risk infants with eczema (PETIT): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial(The Lancet・2017)湿疹のある生後4〜5か月の日本人乳児147人を対象に、湿疹の積極的治療と併せ加熱卵粉末を生後6か月から段階的に導入した群とプラセボ群を比較したPETIT試験で、12か月時点の卵アレルギー発症が介入群8%・プラセボ群38%(リスク比0.221、95%CI 0.090-0.543)であったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Enteral Nutrition in Preterm Infants (2022): A Position Paper From the ESPGHAN Committee on Nutrition and Invited Experts(Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition・2023)早産児の経腸栄養では母親自身の母乳を第一選択とし、利用できない場合にドナー母乳または早産児用調製乳を選ぶべきであるという2022年ESPGHAN専門家見解を確認した。閲覧 2026-08-27
  7. 7.Formula versus donor breast milk for feeding preterm or low birth weight infants(Cochrane Database of Systematic Reviews・2019)早産・低出生体重児1,879人(12試験)を統合したコクランレビューで、調製乳群はドナー母乳群より入院中の体重・身長・頭囲の増加速度が速かった一方、壊死性腸炎のリスクが有意に高く(リスク比1.87、95%CI 1.23-2.85、NNTH33)、長期の成長・神経発達アウトカムには有意差を認めなかったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  8. 8.Catch-Up Growth in Infants and Young Children With Faltering Growth: Expert Opinion to Guide General Clinicians(Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition・2023)早産児を含む成長不良の乳幼児全般について、急速すぎる追いつき成長(catch-up growth)を避けるべきであるという国際専門家パネルの合意を確認した。閲覧 2026-08-27