生理学

生理学 · 1.1

体液区画とその測定。細胞外液と血管内液。

Body fluid compartments and their determination. The extracellular and intravascular fluid.

応用トピック
ホメオスタシスとその障害体液恒常性と静脈輸液小児の体液平衡異常、重度脱水と輸液療法薬物の分布分布容積特殊集団-薬物相互作用:小児イレウス(腸閉塞)の診断と治療

🧠 体重70kgの成人男性を基準に「60-40-20」で覚える。 は体重の60%、そのうちが体重の40%(TBWの2/3)、が体重の20%(TBWの1/3)。各区画はで測定し、「そのがどこまで到達するか」で区画が決まる、という論理構造を押さえる。

体液区画の基本構成

70kg男性を基準にした値。

区画 体重に対する割合 容量 隔てる膜
TBW(total body water) 60% 42 L —
ICF(intracellular fluid) 40%(TBWの2/3) 28 L 細胞膜
ECF(extracellular fluid) 20%(TBWの1/3) 14 L —
 ├ ECFの3/4 10.5 L
 └ 血漿 ECFの1/4 3.5 L

下図では42 Lを100%としている。10.5 Lと血漿3.5 Lを合わせた14 Lがに相当する。

pie
  title 総体水分量42 Lの内訳(70 kg成人男性の代表値)
  "細胞内液(28 L)" : 28
  "間質液(10.5 L)" : 10.5
  "血漿(3.5 L)" : 3.5

区画の測定:希釈法

💡 原理は「Volume(容積) = Mass(量) / 濃度」。 既知量のを投与し、平衡後の濃度を測ることで、そのが分布した区画の容積をする。

はそれが到達できる区画にしか分布しないという性質を利用する。大きな分子(など)は細胞膜を通過できないためECFにしか分布しない。ICFは直接測定できないが、「全体量−ECF」で間接的に算出する。

測定対象
濃度/蛋白結合色素

⭐ ICFは「TBW − ECF」の引き算でしか求められない点が頻出。直接測るは存在しない。

⚠️ 「体重の60%」は成人男性の代表値であり、万人に一定の比率ではない。 ヒトの希釈試験データ(成人男性458例・女性265例)から身長・体重・年齢を用いてTBWを予測するが導かれており、女性は男性より、肥満者は同じ体重の非肥満者より、高齢者は若年者より、体重に対するTBW比率が低い方向にずれる——体脂肪は水分をほとんど含まないため、の割合が下がるほどTBW比率も下がる1。臨床でよく使われる(BIA)も、体液・電解質に明らかな異常がない対象でFFM・TBWを推定できるにとどまり、とを分けて求めることは、なお研究段階に位置づけられている2。

細胞外液の内訳

ECFはさらに、上皮に囲まれたを含む。

区画 内容 容量(目安)
血球・蛋白・イオンの混合物(血漿がEC成分) 3 L
細胞を外側から取り囲む 8-10.5 L
CSF(cerebrospinal fluid、脳脊髄液)、、、胸水・腹水など、上皮で囲まれた腔の液 約1 L

💡 この表と冒頭の表は、ECFの分け方が違う。 冒頭の表はECF 14 Lを10.5 Lと血漿3.5 Lの2つに分けているが、この表は(約1 L)を独立させた3分割なので、その分だけの値が幅(8〜10.5 L)で示される。3 Lと血漿3.5 Lの差も、血液から血球を除いた血漿だけを数えるか否かと、教科書ごとの丸めの違いによる。合計がECF 14 L前後になるという関係を押さえればよく、小数点以下の一致を求める必要はない。

  • と・を隔てるのは。
  • は上皮細胞に囲まれた特殊な区画で、・・・・などが含まれる。

細胞内外液のイオン組成

イオン ECF ICF
Na⁺(sodium) 135–147 mM 10–15 mM
K⁺(potassium) 3.5–5.0 mM 120–150 mM
Ca²⁺(calcium) 2.1–2.8 mM(総血漿値)/1.1–1.4 mM(遊離型 free form) 約100 nM(遊離型)
Cl⁻(chloride) 95–105 mM 20–30 mM
HCO₃⁻(bicarbonate) 22–28 mM 12–16 mM
浸透圧 290 mOsm 290 mOsm
pH 7.4 7.2

💡 Na⁺は細胞外に多く、K⁺は細胞内に多い。 この非対称な分布はが能動的に作り出し維持しており、やの電気現象の基盤になる(1-05-the-development-of-the-resting-membrane-potential-the-development-and-properties参照)。浸透圧はICF・ECFで等しい(290 mOsm)ため、両区画間の水の移動は主にこのを介して起こる。

まとめ

  • TBW(体重の60%)=ICF(40%)+ECF(20%)。ECFはさらに(3/4)と血漿(1/4)に分かれる。
  • 各区画はで測定:TBW=、ECF=、血漿=/Evans blue。ICFは直接測れず引き算で求める。
  • ECFには上皮で囲まれた(transcellular fluid、・・など、約1L)も含まれる。
  • とはで隔てられる。
  • ECFはNa⁺・Cl⁻優位、ICFはK⁺優位。浸透圧は両区画で290 mOsmと等しい。

出典

  1. 1.Total body water volumes for adult males and females estimated from simple anthropometric measurements(The American Journal of Clinical Nutrition・1980)ヒトの希釈試験データ(成人男性458例・女性265例、文献より収集)を用いて総体水分量を身長・体重・年齢から予測する回帰式を導出した報告。体重に対するTBWの割合は年齢・性別・体格によって系統的に変わり、単一の予測式ではなく男女別・年齢別の式が必要であることを示した閲覧 2026-08-26
  2. 2.Bioelectrical impedance analysis--part I: review of principles and methods(ESPEN・2004)生体電気インピーダンス分析(BIA)で妥当に推定できるのは除脂肪量(FFM)と総体水分量(TBW)に限られ、それも体液・電解質に明らかな異常がない対象に限られる。体細胞量・細胞外液・細胞内液を分けて求めることや、体液分布が変化した状態での多周波数BIA・バイオインピーダンス分光法の使用は、なお研究を要すると位置づけている閲覧 2026-08-26