Pulmonology

Pulmonology · 01

肺解剖・呼吸生理の臨床的要点

Practical clinical aspects of lung anatomy and respiratory physiology

前提:正常
胸膜と肺肺気量・死腔・肺胞換気ガス交換・肺循環・換気血流比

🧠 全体像は、空気を肺胞へ運ぶ換気、肺胞と血液の間のガス交換、血液を肺胞へ届ける灌流からなる。換気と灌流の不均衡は低酸素血症の重要な機序だが、、低い吸入でも低酸素血症は起こる。1

呼吸器の区分と機能

区分 構造 主な機能
上気道 鼻腔、咽頭、喉頭 加温、加湿、異物除去
下気道 気管、気管支、、肺 空気の伝導とガス交換
鼻からまで 空気を運ぶ。は成人で約150 mL
、肺胞 O₂の取り込みとCO₂の排出

肺は換気・ガス交換に加え、の粘液、によって防御を担う。は全身の代謝需要に合わせて換気を調節する。

flowchart TD
  A["鼻腔"] --> B["咽頭"]
  B --> C["喉頭"]
  C --> D["気管"]
  D --> E["気管支"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchiole'>細気管支</span>"]
  F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='terminal bronchiole'>終末細気管支</span>"]
  G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory bronchiole'>呼吸細気管支</span>"]
  H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar duct'>肺胞管</span>"]
  I --> J["肺胞:ガス交換"]

肺葉・気管支肺区域

右肺 左肺
上葉・中葉・下葉の3葉 上葉・下葉の2葉
通常10(上3、中2、下5) 8〜10。S1+2が癒合し、S7を欠くことが多い
短く太く、気管の延長線に近い。異物・誤嚥物が入りやすい 長く、気管からより鋭角に分岐
3本 2本

⭐ 右へ入りやすいところまでは有名だが、どの区域へ落ちるかは誤嚥したときの体位で決まる。仰臥位では上葉後区域と下葉上区域、・立位では下葉底区域が依存部位となる。意識障害や嚥下障害と依存部位の浸潤影がそろえば誤嚥を疑うが、厳密な単一はなく画像だけでは確定しない。2

肺循環と気管支循環

肺循環

  • (RV)から出て左右肺動脈へ分岐し、を肺へ運ぶ。
  • 左肺動脈は左の上を通り、と連なる。
  • 右肺動脈はの後方、右の前方を通る。
  • 各肺から通常2本、計4本の(LA)へ戻す。

気管支循環

  • は気管支、肺実質の支持組織、を供給する。左は通常2本が胸部大動脈から、右は通常1本が胸部大動脈・左上・右などから分岐する。
  • から還流し、右は、左はなどへ流入する。

胸膜

胸膜は肺と胸壁を覆う二重の漿膜で、胸壁側から、少量の胸水、の順に位置する。胸水は時の摩擦を減らすと同時に、2枚の胸膜を液体で結合させる。

肺を胸壁に追従させているのは、この液体結合との陰圧である。陰圧は、内向きに縮もうとする肺のと、外向きに広がろうとする胸郭の弾性が釣り合うことで生じる。したがってに空気が入ると(気胸)結合が失われ、肺は自らの弾性で虚脱し、胸郭は逆に広がる。

基本肺気量

換気指標 正常の目安 低下 増加
呼吸数 12〜20/分 頻呼吸
(TV) 約0.5 L/回
約7.5 L/分 低換気
指標 意味 教科書的目安
1回の出入り 500 mL
安静吸気後にさらに吸える量 3,100 mL
安静呼気後にさらに吐ける量 1,200 mL
最大呼気後も残る量 1,200 mL
TV + IRV 3,600 mL
ERV + RV 2,400 mL
IRV + TV + ERV 4,800 mL
VC + RV 6,000 mL

された成人の教科書的比較では、男性/女性の順にRV 1,200/1,000 mL、ERV 1,200/800 mL、FRC 2,400/1,800 mL、IRV 3,100/1,900 mL、VC 4,800/3,200 mL、TLC 6,000/4,200 mL、TVはいずれも約500 mLである。これらは固定正常値ではなく、体格・性別・年齢で変化する。は流速の影響を受け、は流速に依存しない。

死腔と肺胞換気量

ガス交換の量を決めるのはではなく、実際に肺胞へ届くである。

V˙A=(VTVD)×f\dot V_A=(V_T-V_D)\times f
  • VDV_Dの容積で、成人ではおよそ体重1 kgあたり2 mL、約150 mLにあたる。
  • 肺胞は、換気されているのに灌流が乏しい肺胞の容積である。健常者ではごくわずかだが、肺塞栓症のようにが途絶えると増える。
  • 生理学的+肺胞。後述の「真の」は肺胞が極端になった状態である。

💡 500 mL・呼吸数15/分ならは7.5 L/分だが、は(500−150)×15=5.25 L/分にとどまる。ここで同じ7.5 L/分を、250 mLを30回で稼ぐとは(250−150)×30=3.0 L/分まで落ちる——の占める割合が増えるためである。速く浅い呼吸をしている患者が、は保たれているのにPaCO₂が下がらない理由がこれである。

換気血流比

は低抵抗・である。立位ではにより換気・血流とも部ほど多いが、血流の増加がより大きいためV/Q比はで高く、部で低い。全肺で平均すると約0.8、では3前後、部では0.6前後になる。仰臥位では上下の高低差が小さくなるため分布差も小さくなる。

状態 生理 代表例
高V/Q 換気されるが灌流が少ない 肺塞栓症ショック
低V/Q 灌流されるが換気が少ない 肺炎肺水腫嚢胞性線維症
真の 換気あり・灌流なし 完全に閉塞した肺血管領域
真のシャント 灌流あり・換気なし 完全に虚脱・液体充満した肺胞

高V/Q・低V/Qは連続的な不均衡であり、灌流がなくなる真の、換気がなくなる真のシャントとは区別する。1

肺胞低酸素ではが起こり、血流を換気のよい領域へ振り分ける。体循環の血管が低酸素で拡張するのと逆向きの反応であり、肺では換気されていない肺胞への灌流を減らすほうが全体の酸素化に有利なためである。

💡 局所の低酸素に対しては有益な調節だが、低酸素が肺全体に及ぶと肺血管が一斉に収縮してが上がる。COPDや高地滞在、睡眠時無呼吸のように慢性化すれば肺高血圧となり、右室のが持続的に増してに至る。

flowchart TD
  A["換気と灌流の不均衡"] --> B{"主に低下したのは?"}
  B -->|"灌流"| C["高V/Q・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dead space'>死腔</span>効果"]
  C --> D["肺塞栓症・ショック"]
  B -->|"換気"| E["低V/Q・シャント効果"]
  E --> F["気道閉塞・肺炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atelectasis'>無気肺</span>・肺水腫"]
  F --> G["肺胞低酸素"]
  G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary hypoxic vasoconstriction'>低酸素性肺血管収縮</span>"]
  H --> I["換気良好部へ血流再分配"]

まとめ

  • は誤嚥・異物の進入が多い解剖学的理由をもち、落ちる区域は誤嚥時の体位で決まる。
  • ガス交換はで行われ、を形成する。ガス交換量を決めるのはではなくである。
  • 肺を胸壁に追従させているのはの陰圧と胸水による液体結合で、空気が入ると肺は虚脱する。
  • 肺胞換気との対応が酸素化を決め、低V/Qと真のシャント、高V/Qと真のを区別して考える。
  • は局所では有益だが、全肺に及んで慢性化すると肺高血圧・の原因になる。

出典

  1. 1.Imaging of Aspiration: When to Suspect Based on Imaging of Bacterial Aspiration, Chemical Aspiration, and Foreign Body Aspiration(Seminars in Respiratory and Critical Care Medicine・2024)誤嚥性肺炎は誤嚥時の体位に応じた依存部位に生じやすく、画像所見だけで確定しないことを確認した。閲覧 2026-08-09
  2. 2.Gas exchange and ventilation-perfusion relationships in the lung(European Respiratory Journal・2014)換気血流不均衡が低酸素血症の重要な機序であること、および低・高V/Qと真のシャント・死腔を区別することを確認した。閲覧 2026-08-09