外科学

外科学 · A/11

急性虫垂炎の診断と治療

Appendicitis acuta. Diagnosis and treatment

前提:病態
虫垂・腹膜の病理
前提:正常
消化器系:中腸
疾患
急性虫垂炎
スコア
Alvaradoスコア

ポッドキャスト

🧠 一直線の物語: 虫垂内腔閉塞 → 分泌物うっ滞・ → 圧上昇で静脈が先に潰れ浮腫 → 動脈まで潰れて虚血 → 壊疽・穿孔 → 膿瘍か。症状も「臍周囲のぼんやりした痛み → への限局」という同じ一直線をたどる。診断は臨床スコアと画像を組み合わせ、治療はを基本としつつ、選択された非複雑例では抗菌薬単独治療も選択肢となる。1

1. 概論と病型

  • は緊急腹部手術の最も多い原因。
  • 虫垂のであり、初期炎症 → 限局性虚血 → 穿孔 → 膿瘍またはという経過をたどる。
  • 好発年齢は10代前半〜20代前半(授業資料の逐語は early teens to early twenties)。あらゆる年齢で起こりうる。

3つの病型

病型 特徴
Mucosal() 軽症で、多くは無症状
Phlegmonous() 緩徐な発症・進行
Necrotic() 急性細菌感染によるを伴うことが多い

💡 この3型は病理学的な見かけの分類で、実際には充血・浮腫 → 蜂窩織炎 → 壊疽 → 穿孔という連続的な進行の断面である。臨床的により重要なのは「非か(=穿孔・膿瘍・)か」の区別で、術後抗菌薬を続けるかどうかもを選べるかどうかもこの線で決まる。そのため 2020 は、臨床・画像・術中所見を組み合わせた術中( 2015 グレードやAAST EGS グレード)をルーチンに用いることを提案している(弱い推奨・2B)。⚠️ 早期のグレードについてはの肉眼判断のばらつきが大きく、それが術後抗菌薬の要否の判断をぶれさせることも同時に指摘されている。なお、切除検体は全例で病理組織検査に出す(強い推奨・1B)1。

2. 病因と病態生理

主因は虫垂内腔の閉塞(原因が特定できないことも多い)。

  • ・うっ滞
  • 腫瘍
  • (例:Enterobius vermicularis、Ascaris lumbricoides、Schistosoma)
flowchart TD
  OB["虫垂近位内腔の閉塞<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='closed loop obstruction'>閉鎖係蹄</span>型の閉塞)"] --> ST["粘膜分泌物のうっ滞"]
  ST --> BAC["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacterial growth'>細菌増殖</span>・局所炎症"]
  BAC --> TR["炎症の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transmural'>全層性</span>進展"]
  TR --> SYM["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute appendicitis'>急性虫垂炎</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical manifestation'>臨床症状</span>"]
  OB --> PR["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased intraluminal pressure'>管腔内圧上昇</span>"]
  PR --> VE["静脈の閉塞 → 虫垂壁浮腫"]
  VE --> CA["毛細血管の閉塞 → 虚血"]
  CA --> GA["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Gangrenous'>壊疽性</span>虫垂炎<br>(穿孔の有無を問わず)"]

3. 臨床像

症状

  • 腹痛は臍周囲(中心部)から始まり、の McBurney 点へ限局していく。
  • 倦怠感、、発熱
  • 下痢・嘔吐もよくみられる — 急性(胃)腸炎とされやすい
  • 咳・体動で腹痛が増悪

身体所見(診察サイン)

内容
圧痛 〜臍を結ぶ線の外側1/3の
() 腹壁を圧迫後、急に離すと痛みが増強する
を圧迫すると右腸骨窩の痛みが増強する
圧痛 両側を結ぶ線(棘間線)を右から3分の1の点の圧痛。すなわち右1/3・左2/3に分ける点2
Psoas徴候 右下肢を伸展したまま右股関節を抵抗下で屈曲、またはで右股関節を的に伸展すると痛が誘発される
Obturator徴候 股関節・を屈曲した状態で右股関節を的にすると痛が誘発される
Sherren三角の皮膚 下辺を(Poupart)、上辺を臍から外側へ引いた線、内側を正中のすぐ右を通る垂線で囲み、頂点をに置く三角形。この範囲の皮膚のが虫垂炎を疑わせる、と1903年に James Sherren が記載した2

⭐ Psoas徴候・Obturator徴候は共に「炎症を起こした虫垂に近接する筋(・閉鎖筋)を伸展・刺激することで痛みを誘発する」という発想は共通。虫垂の位置(後腹膜側 vs 骨盤側)によってどちらが陽性になりやすいかが変わる。

虫垂の位置(時計の文字盤で覚える)

診察所見が教科書どおりに出るかどうかは、虫垂がどちらを向いているかで決まる。授業資料は盲腸を時計の文字盤に見立てて5つの位置を示している。

位置 文字盤
11時
1〜2時
1〜2時
6時
5時

💡 上の⭐とつなげて読む。後盲腸型はに接するので Psoas徴候が、骨盤内型は閉鎖筋に接するので Obturator徴候が誘発されやすい、という対応になる。⚠️ ただしこの位置別の所見の出方そのものは授業資料の図には書かれていない(図が与えるのは位置と文字盤だけ)。 2020 ガイドラインの全文にも retrocecal・pelvic appendix・position of the appendix は0件で、位置による症候の違いは扱われていない。

⚠️ は右寄りである。 授業資料の本文は Lanz 点を at the junction of the right and left 2/3 of a line connecting both anterior iliac spines と書いており、「右2/3」とも「左2/3」とも読める自己矛盾した表現になっている。同じ授業資料の図では、は棘間線上で右の寄り(およそ右から3分の1)に打たれており、Lanz 自身の1908年の記載(at the right extremity of the first third of the bisiliac line)とも一致する。「右2/3・左1/3に分ける点」と覚えると正中を越えて左寄りになり、別の場所を押すことになる2。

間接所見(画像上の間接徴候)

  • 虫垂周囲の遊離液体
  • 腹膜の肥厚
  • 局所の腫大
  • 局所膿瘍形成
  • 二次性の徴候

4. 合併症

  • 穿孔: 虫垂破裂による限局性/腹膜炎
  • 膿瘍: 炎症を起こした虫垂周囲に膿と壊死組織が限局して形成される、典型的には未治療のの後に生じる
  • : 境界不明瞭な炎症性の虫垂周囲組織塊

5. 診断

検査値

  • 、の上昇
  • の女性では血清妊娠検査

画像診断

画像は「全例に撮る/高齢者にだけ撮る」ではなく、スコアでリスクを層別化したあとに使う。 2020 の組み立ては次のとおりである1。

段階 推奨 強さ
初期評価 とスコアでリスクを層別化し、その後に画像を用いる。と超音波を組み合わせることで感度・特異度が上がり、の必要性が減る 強い推奨(1B)
一次画像 画像検査の適応があるなら、成人・小児ともその場で行う超音波()を最も適切な一次検査とする 強い推奨(1B)
時機を逃さず系統的に画像検査へ進む 弱い推奨(2B)
超音波が陰性・不確定のとき 条件付きでへ進む。では造影・を標準線量より優先する(診断精度はでを大きく減らせる) 強い推奨(1A)
高リスクかつ40歳未満 AIRスコア9〜12点、9〜10点、AASスコア16点以上なら、診断的・腹腔鏡へ進む前にを省略してよい 弱い推奨(2B)
妊娠 まず段階的圧迫法による。不確定なら 弱い推奨(2C / 2B)
小児 一次画像は超音波。を小児の右腸骨窩痛の一次画像にルーチンで用いない 弱い推奨(2B)
  • CT: 成人ので高い診断能をもつ主要な画像検査。特に診断が不明瞭な場合や合併症評価に有用。超音波を先に行う条件付き戦略にすると、即時戦略と同数の虫垂炎を拾いながら件数を半減できる
  • US(超音波): 虫垂炎の初期画像として用いうる。特に若年者、妊娠、の鑑別が必要な場合に有用で、必要に応じてへ進む1

💡 授業資料は、がとくに有用な場面として虫垂腫瘤・膿瘍が疑われる場合と、65歳以上を挙げている。理由づけは「この年齢層ではがはるかに広く、虫垂炎そのものの可能性が低い」というもので、高齢者ほどが起こりやすいという点は今も有効な注意である。ただし現在の推奨は「高齢者にだけ」ではなく、年齢によらずスコア→超音波→条件付きという順序である。

⚠️ 所見が正常でも右腸骨窩痛が続く場合は、手術の前に断面画像を撮る。画像が陰性なら非経過観察でよいが、痛みが進行または持続する例ではを行う(強い推奨・1A)1。

鑑別診断(年齢別)

小児 成人 高齢者
非特異的腹痛 Crohn病 盲腸、盲腸腫瘍
S状結腸
卵巣嚢胞・月経随伴症状 後腹膜病変(膵炎、) 卵巣病変
— 卵巣病変(、嚢胞、感染、月経痛) —

スコアリングシステム

スコアは「確定診断の」ではなく、低リスク群を高い感度で除外し、画像検査が本当に必要な群を選び出すためのである。(World Society of Emergency Surgery、世界救急外科学会)2020年版 Jerusalem ガイドラインは、臨床スコアによるを先に行い、その結果に応じて画像検査を使うという順序を強い推奨(1B)として示している1。

Alvaradoスコア

は8項目・10点満点。

・所見・検査 点数
痛みの移動 1
1
悪心・嘔吐 1
右腸骨窩の圧痛 2
1
体温上昇 ≥37.5℃ 1
(≥10×10⁹/L) 2
≥70% 1
合計 10
  • スコア <5点: 虫垂炎除外に十分な感度(約99%)→ 他の診断を追求
  • スコア 5〜6点: → 画像検査で確認する(この群を拾うことがスコアの主目的の一つ)
  • スコア ≥7点: 高リスク → 外科的評価へ進む

⚠️ 除外には強い推奨、確定診断には反対の推奨という非対称がある。 2020 は、臨床スコアを「虫垂炎の除外と患者の同定に用いる」ことを強い推奨(1A)としつつ、成人で「を虫垂炎の臨床的疑いを積極的に裏づける目的で用いる」ことには反対の弱い推奨(2B)を出している。小児でもスコア単独で診断することに反対の弱い推奨(2C)である。の向きによって推奨の強さが逆転する点を潰さない1。

💡 授業資料は同じ表に対して 0〜3点=虫垂炎らしくない/4点以上=精査へという2区分の読み方を添えている。 2020 が採るのは「5点未満=除外」という線なので、4点は資料によって除外側にも精査側にも入りうる。境界域では点数で切らず、経過観察と再評価に回すのが安全である。

AIRスコア

AIR は Appendicitis Inflammatory Response(虫垂炎炎症反応)の略。はを含まないが、AIRスコアはを取り込み、・・を段階評価する点が違う。合計12点。

項目 基準と配点
嘔吐 あり:1点
右腸骨窩の疼痛 あり:1点
または 軽度:1点/中等度:2点/高度:3点
体温 38.5℃以上:1点
10〜14×10⁹/L:1点/15×10⁹/L以上:2点
70〜84%:1点/85%以上:2点
10〜49 mg/L:1点/50 mg/L以上:2点
合計 12点
  • 低リスク: 提唱当初のは4点以下だったが、近年は3点以下に置き換えられている
  • 高リスク: 8点超(=9〜12点)
  • 26研究・15,699例ので、3点超をにしたときの感度は0.95(進行した虫垂炎では0.99)、4点超では感度0.91(進行例で0.95)、8点超では特異度0.98(進行例で0.99)。はAIRスコア0.86に対し0.79で、進行した虫垂炎では0.93対0.88と、いずれもAIRスコアが上回る3

AASスコア

AAS は Adult Appendicitis Score()の略。

  • 16点以上で高確率群(特異度93%)、11点未満で低確率群。829例の前向き研究では、低確率群に入った虫垂炎患者は全体の4%にとどまり、そのなかに虫垂炎は1例も含まれなかった
  • 英国154施設・右腸骨窩痛5,345例で15のモデルを比べた研究では、女性ではAASスコア(8点以下を、特異度63.1%、見逃し率3.7%)、男性ではAIRスコア(2点以下を、特異度24.7%、見逃し率2.4%)が最良だった1

⚠️ 成人ではAIRスコアとAASスコアの使用が強い推奨(1A)で、より識別能が高いと位置づけられている。妊婦ではがと悪心・嘔吐の頻度のために高く出やすく、精度が落ちる(7点をで感度78.9%・特異度80.0%)1。

6. 治療

早期治療

  • 蘇生
  • 診断の確定
  • 周術期抗菌薬: を受ける患者には、皮膚切開の0〜60分前にを単回投与する(強い推奨・1A)。切除した虫垂の炎症の程度によらず、創感染と術後を減らすことが示されている1

⚠️ 「虫垂炎を疑ったら全例にすぐ抗菌薬」ではない。 2020 が強い推奨として置いているのはを行う患者への術前単回投与であって、診断が固まらない段階での経験的投与ではない。授業資料が早期治療の3項目めに置く「診断が明確になるまでを投与しない」は、この点では現在の推奨と同じ向きを向いている。逆に、(下記)を選ぶ場合は抗菌薬そのものが治療になる。

確定治療

手術のタイミング

  • 非虫垂炎では、入院から24時間以内の手術枠でを計画する(強い推奨・1B)。24時間以内の短い院内は合併症も穿孔率も増やさない
  • 逆に、入院から24時間を超えて手術を遅らせることには反対(強い推奨・1B)。24時間を超えたは有害事象の増加と関連する
  • 小児では非複雑例でも24時間を超えて遅らせない。虫垂炎では8時間以内のを行う(弱い推奨・2C)1

急性虫垂炎

  • — 感染率の低さとの良さからアプローチが推奨される。 2020 は、腹腔鏡の機器と技量があるなら非複雑例・複雑例のいずれでも開腹より腹腔鏡を優先することを強い推奨(1A)としている(疼痛が軽い、が少ない、が短い、が早い、費用と生活の質が良い)
  • 抗菌薬単独の: を伴わない非複雑例では、手術に代わる安全な選択肢として患者と話し合うことが強い推奨(1A)である。ただし①治療が失敗しうること②虫垂炎を見逃している可能性があること③5年で最大39%が再発することを説明したうえで選ぶ。ではで開始し、臨床状態に応じて経口へ切り替える(強い推奨・1B)
  • ⚠️ 妊娠中はを行わないことが提案されている(弱い推奨・2C)。小児でもがなければ選択肢だが、があると失敗率が上がるため手術を選ぶ
  • 術後抗菌薬: 非虫垂炎では術後抗菌薬を投与しない(強い推奨・1A、小児では2C)。虫垂炎では術後投与を行うが(とくに感染源の完全な制御ができていない場合)、感染源の制御が十分なら3〜5日を超えて続けない(強い推奨・1A)。成人で術後投与を要すると判断した例でも、24時間で中止して安全とされ、と費用が減る。小児では48時間で経口へ切り替え、総投与期間を7日未満にする(強い推奨・1B)1
  • 💡 授業資料の「術後のは穿孔の所見があるときだけ」は、この「のときだけ」に対応する覚え方である。ガイドラインでいうには穿孔のほか膿瘍・も含まれるので、穿孔だけを目印にすると取りこぼす

虫垂腫瘤・膿瘍

  • 腹腔鏡の技量がある施設では、低い閾値で開腹への移行を用意したうえでを第一選択とする(弱い推奨・2B)。が短く、と追加処置が少ない
  • 腹腔鏡の技量がない施設では、抗菌薬によると、可能ならを行う(弱い推奨・2B)
  • をルーチンに行わない。後の再発は12〜24%で、と再発時の再度のは合併症が同等であり、8人に1人の再発を防ぐために全員を手術する費用は見合わない。は症状が再発した患者に行う(強い推奨・1B)
  • ⚠️ この「ルーチンでは行わない」という強い推奨は、40歳未満の成人と小児に限定して書かれている。 40歳以上では虫垂炎に虫垂腫瘍が隠れている頻度が3〜17%と高く、を受けた患者にはによる大腸検索と、期間中の造影CT(フルドーズ)の両方が提案されている(弱い推奨・2C)1

💡 授業資料は「軽快すれば6週後に、軽快しなければ緊急」という単純なを示す。6週後のを全員に行う運用はもう推奨されないが、「軽快しなければ手術」という向き自体は今も正しい。変わったのは、軽快した後に何もしないでよい群(40歳未満・小児)と、腫瘍の検索が要る群(40歳以上)を分けた点である。

7. 開腹虫垂切除術の手順

  1. 上にまたは開を加える
  2. 腹壁の各層を分離する
  3. 盲腸を同定し、創外へする
  4. を切離し、血管をする
  5. 近くの盲腸にをかける
  6. をし切離する
  7. 断端粘膜をし、細菌の漏出と形成を防止する → 断端を埋没させ、を確実に締める
  8. 盲腸を元の位置に戻し、創を洗浄して層状にする(穿孔があればドレーンを留置することもある)

⚠️ この手順の5・7・8は、現在のガイドラインが推奨していない操作を含む。 授業資料の手順として覚えたうえで、次の3点を別に知っておく1。

  • 断端の埋没より単純を優先する(強い推奨・1A)。開腹・腹腔鏡のいずれでも、重篤な合併症との頻度は同等で、単純のほうが手術時間が短く、が少なく、回復が早い
  • 虫垂炎の成人で、後のドレーン留置に反対(強い推奨・1B)。を予防せず、を延ばし、30日死亡・合併症を増やす可能性が示されている。小児でも予防的ドレナージに反対(弱い推奨・2C)
  • 腹腔内に貯留のある複雑例を腹腔鏡で扱うときは、洗浄せず吸引のみとする(強い推奨・1B)

開腹を行う場合には、保護リングでを減らし(強い推奨・1B)、はによる真皮内縫合の一次とする。

まとめ

  • 病態は「虫垂内腔閉塞 → うっ滞・ → 静脈圧迫による浮腫 → 動脈圧迫で虚血 → 壊疽・穿孔」の一直線。
  • 症状は臍周囲痛から()への限局が特徴的。悪心・嘔吐・下痢は胃腸炎とされやすい点に注意。
  • Blumberg・Rovsing・Psoas・Obturator徴候など診察が豊富で、スコアと組み合わせて診断確度を上げる。は5点未満なら除外(感度約99%)、5〜6点は画像へ、7点以上は高リスク。成人ではを含むAIRスコア(12点満点、3点以下で低リスク・8点超で高リスク)とAASスコアのほうが識別能が高く、強い推奨(1A)になっている。
  • スコアは除外との同定には強く推奨されるが、スコア単独で虫垂炎を確定診断することには反対の推奨が出ている。この非対称を覚える。
  • 画像はスコアで層別化した後に使う。一次検査はその場で行う超音波で、陰性・不確定なら条件付きで(では造影)へ進む。高リスクかつ40歳未満ならを省いて腹腔鏡へ進んでよい。
  • 治療は(が第一選択、1A)が基本で、入院から24時間以内に行う。を伴わない非複雑例では、5年で最大39%の再発を説明したうえで抗菌薬単独治療も選択肢となる。
  • 術後抗菌薬は非複雑例では不要(1A)、複雑例でもが十分なら3〜5日を超えない(1A)。術前は切開前60分以内の単回投与。
  • 虫垂腫瘤・膿瘍は、腹腔鏡の技量があれば、なければ抗菌薬±。をルーチンに行わないという強い推奨は40歳未満と小児に限られ、40歳以上では虫垂腫瘍(3〜17%)の検索としてと造影CTを行う。

出典

  1. 1.Diagnosis and treatment of acute appendicitis: 2020 update of the WSES Jerusalem guidelines(World Society of Emergency Surgery・2020)Europe PMC の全文(PMC7386163)で推奨文と根拠本文を確認した。①臨床スコアを除外と中間リスクの同定に用いることは強い推奨1A、成人でAlvaradoスコアを確定診断の裏づけに使うことには反対の弱い推奨2B、AIRスコアとAASスコアの使用は強い推奨1A②Alvaradoスコアはカットオフ5点未満で虫垂炎の除外に十分な感度(感度99%)③高リスクかつ40歳未満(AIR 9〜12点、Alvarado 9〜10点、AAS 16点以上)ではCTを省略してよい(弱い推奨2B)④POCUSを成人・小児の一次画像とする(強い推奨1B)、超音波陰性の思春期・若年成人には造影低線量CTを標準線量CTより優先(強い推奨1A)⑤非複雑例で糞石が無ければ抗菌薬単独治療を選択肢として説明する(強い推奨1A)、5年で最大39%が再発、静注から経口への切り替え(強い推奨1B)、妊娠中は非手術治療に反対(弱い推奨2C)⑥非複雑例の手術は入院から24時間以内に計画し24時間超の遅延に反対(いずれも強い推奨1B)、小児の複雑例は8時間以内(弱い推奨2C)⑦切開前0〜60分の広域抗菌薬単回投与、非複雑例の術後抗菌薬に反対(強い推奨1A)、複雑例でも感染源制御が十分なら3〜5日を超えない(強い推奨1A)、小児は48時間で経口化し総期間7日未満(強い推奨1B)⑧虫垂膿瘍・phlegmonは腹腔鏡の技量があれば腹腔鏡を第一選択(弱い推奨2B)、無ければ抗菌薬±経皮ドレナージ(弱い推奨2B)、非手術治療後の再発は12〜24%、40歳未満の成人と小児ではルーチンの待機的虫垂切除に反対し再発例に限る(強い推奨1B)、40歳以上では虫垂腫瘍が3〜17%と高く大腸内視鏡と待機期間中の造影CTを提案(弱い推奨2C)⑨開腹・腹腔鏡とも断端の埋没より単純結紮(強い推奨1A)、成人の複雑例で虫垂切除後のドレーンに反対(強い推奨1B)、腹腔内貯留のある複雑例では洗浄せず吸引のみ(強い推奨1B)、創縁保護リングでSSIを減らす(強い推奨1B)⑩術中グレード分類のルーチン採用を提案(弱い推奨2B)、切除検体の病理組織検査はルーチンに行う(強い推奨1B)閲覧 2026-09-21
  2. 2.Acute appendicitis and its treatment: a historical overview(International Journal of Colorectal Disease・2025)Europe PMC の全文(PMC11779765)で確認した。1908年に Otto Lanz が記載した Lanz 点の位置を逐語で "at the right extremity of the first third of the bisiliac line"(棘間線の最初の3分の1の右端=右の上前腸骨棘から3分の1の点)と述べ、原著として Lanz O, Der McBurney'sche Punkt, Zentralbl Chir 1908;7:185-190 を引いている。同じ段落で Lanz が McBurney 切開の変法として筋鈍性分離による斜切開を提唱し、整容性の良さを根拠にしたこと、この切開が Lanz 切開または Rockey-Davis 切開と呼ばれることも述べている。あわせて、James Sherren が1903年に記載した Sherren 三角を逐語で "bounded below by Poupart's ligament, above by a line drawn out from the umbilicus, and to the inner side by a vertical line just to the right of the midline, its apex is at the anterior superior spine" とし、この範囲の皮膚の知覚過敏が急性虫垂炎を疑わせる所見であるとしていること(原著は Sherren J, Lancet 1903;162:816-821)も確認した閲覧 2026-09-21
  3. 3.Diagnostic value of the appendicitis inflammatory response (AIR) score. A systematic review and meta-analysis(World Journal of Emergency Surgery(World Society of Emergency Surgery)・2025)Europe PMC の全文(PMC11806527)で確認した。AIRスコアの提唱者を著者に含む系統的レビュー・メタ解析(26研究・15,699例)。Table 1 が配点を逐語で示しており、嘔吐1点、右腸骨窩の疼痛1点、反跳痛または筋性防御は軽度1点・中等度2点・高度3点、体温38.5℃以上1点、白血球10〜14×10⁹/Lで1点・15×10⁹/L以上で2点、好中球比率70〜84%で1点・85%以上で2点、C反応性蛋白10〜49 mg/Lで1点・50 mg/L以上で2点、合計12点である。表の注に「低リスクの当初のカットオフ4点以下は近年3点以下に置き換えられた。8点超は高リスクを示す」とある。3点超で感度0.95(進行例0.99)、4点超で感度0.91(進行例0.95)、8点超で特異度0.98(進行例0.99)。ROC曲線下面積はAIRスコア0.86に対しAlvaradoスコア0.79、進行した虫垂炎では0.93対0.88閲覧 2026-09-21