Traumatology

Traumatology · 24

関節包内大腿骨頸部骨折の診断・治療・予後

Intracapsular femoral neck fractures: diagnosis, treatment and prognosis

前提:正常
下肢:大腿下肢:殿部と股関節
疾患
偽関節大腿骨頸部・転子部骨折
スコア
Garden分類

🧠 全体像は、骨折治癒と血流の双方が危険にさらされる。若年者では骨頭温存のため整復の質を最優先し、高齢者の転位骨折ではを減らし早期荷重を可能にする人工関節を選ぶ。年齢だけでなく、転位、後方傾斜、骨質、受傷前機能、、余命を統合する。

なぜ治りにくいか

の主血流はから供給される。転位骨折ではこの血流が損なわれ、の危険が高まる。内はが乏しくにさらされ、による癒合を得にくいため偽関節も起こりやすい。

診断

臨床所見

  • 高齢者の、若年者の
  • ・前股関節痛、回旋・軸圧痛
  • 転位例では短縮・
  • では歩行可能で、変形を欠くことがある

神経血管所見、皮膚、同側・膝、リスクを確認する。高齢者では認知、受傷前歩行、生活場所、抗凝固薬、心肺疾患も術式と周術期計画に必要である。

画像

を行う。疑いが強いのにX線陰性ならMRIを第一選択とし、24時間以内に利用できないまたは禁忌ならCTを考慮する。骨折が否定できないまま荷重させない。

Garden分類

定義 臨床上の大別
I 不完全な骨折 非転位
II だが転位なし 非転位
III 、骨片間接触あり 転位
IV 完全転位、骨片間接触なし 転位

だけでは固定失敗リスクを十分に表さない。、後方傾斜、、骨質、整復の質も見る。

治療選択

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intracapsular femoral neck fracture'>関節包内大腿骨頸部骨折</span>"] --> B["転位・後方傾斜・骨質・生理年齢を評価"]
    B --> C["若年/骨頭温存利益が大きい"]
    C --> D["緊急に良好な整復"]
    D --> E["スクリューまたはsliding hip screwで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal fixation'>内固定</span>"]
    B --> F["高齢・非転位"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal fixation'>内固定</span>が一般的<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='revision surgery'>再手術</span>リスクが高ければ人工関節も個別に検討"]
    B --> H["高齢・転位"]
    H --> I["人工関節置換"]
    I --> J["高い受傷前機能+適切な全身状態"]
    J --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='total hip arthroplasty'>THA</span>を検討"]
    I --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoactive'>低活動</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='total hip arthroplasty'>THA</span>不適"]
    L --> M["人工骨頭置換"]

内固定

非転位骨折と、骨頭温存を優先する若年者が主な対象である。高齢者の非転位・軽度転位骨折ではが一般的だが、人工関節はよりを減らし得るため、後方傾斜、骨質、認知・移動能力、リスクを踏まえて個別化する。1 平行スクリュー、sliding hip screwなどをに応じて選ぶ。転位した若年者では開放または閉鎖整復で解剖学的整復を得ることが重要で、固定時刻だけを追うより整復の質と全身安全を両立する。

若年者でも「12~24時間以内に固定すれば予後が改善する」という単一時間閾値は確立していない。緊急性は高いが、蘇生・合併損傷の安定化を行いつつ不必要な遅延を避ける。

人工関節置換

高齢者の転位骨折ではまたはを行う。NICEの選択軸では、受傷前に杖1本以内で屋外独歩し、を不適切にするがなく、2年を超えてADL自立が見込まれる場合にを考慮する。は機能面の利益が期待できる一方、リスクが増える。

人工関節はを基本とし、手術後直ちに全荷重できることを目標にする。終末期疾患でも、疼痛緩和とケアを容易にする目的で手術が妥当なことがある。

手術時期と周術期管理

手術は入院当日または翌日を目標とする。是正すべき問題には、著しい貧血、容量不足、電解質異常、制御不良の心不全・不整脈、急性胸部感染などがあるが、不要な検査待ちで遅らせない。

周術期はを含む予防、せん妄予防、栄養、予防、・転倒評価を組み合わせ、全身状態が許せばを図る。は死亡・合併症の減少と関連するが、最適な時点は患者ごとに判断する。2

合併症と予後

合併症 リスク・対応
転位・血流障害に関連し、数か月~年単位で発症。症候性なら救済を検討
偽関節 転位、垂直骨折、整復不良、固定不良、骨質低下で増える
固定破綻 cut-out、短縮、再転位。再固定・骨切り・人工関節を個別化
感染
特に。アプローチ、軟部組織、認知・動作に影響される
全身合併症 VTE、肺炎、せん妄、、死亡

良好な予後因子は非転位、良好な整復、受傷前機能、早期の適切な手術と離床である。不良因子は転位、高度症、認知症、手術・離床の遅延である。高齢者の1年死亡率としてしばしば示される20~30%は集団の概数であり、個人の予後を決めつける値ではない。

まとめ

  • X線陰性でも疑いが続けばMRIを行い、潜在骨折を除外する。
  • 若年者では骨頭温存と整復の質、高齢者の転位骨折では早期荷重と回避を重視する。
  • 65歳という単一閾値ではなく、生理年齢、受傷前機能、余命、で術式を選ぶ。
  • 手術は医学的にな問題を速やかに整えたうえで入院当日または翌日を目標とし、術後は全身状態に応じてを図る。2

出典

  1. 1.Internal Fixation Versus Arthroplasty for the Treatment of Nondisplaced Femoral Neck Fractures in the Elderly: A Systematic Review and Meta-Analysis(Journal of Orthopaedic Trauma・2020)高齢者の非転位・軽度転位大腿骨頸部骨折では人工骨頭置換が内固定より再手術を減らし得ること閲覧 2026-08-09
  2. 2.Early mobilisation after hip fracture surgery is associated with improved patient outcomes: A systematic review and meta-analysis(Musculoskeletal Care・2024)股関節骨折手術後の早期離床は死亡・合併症の減少と関連するが因果関係は未確立であること閲覧 2026-08-09