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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 症候群

自己免疫性多内分泌腺症候群

Autoimmune polyendocrine syndrome

別名
APS多腺性自己免疫症候群polyglandular autoimmune syndromePASSchmidt症候群
臓器系
内分泌・代謝免疫・膠原病
科目
Medical Genetics and Immunology (Immunology)Translational Medicine and Pathophysiology
トピック
免疫学 8.2:自然自己免疫と病的自己免疫病態生理学 1-31:全身性自己免疫疾患の一般的発症機序
続発疾患
原発性副腎不全バセドウ病甲状腺機能低下症1型糖尿病
関連疾患
緩徐進行1型糖尿病
治療薬
ヒドロコルチゾンフルドロコルチゾンレボチロキシン
検査値
GAD65抗体抗TPO抗体
下位分類
自己免疫性多内分泌腺症候群1型

🧠 全体像:は、複数のが同時多発的に自己免疫の標的になるという一つの現象を指す概念で、原因も遺伝形式もまったく異なる1型(APECED)と2型()という2つの症候群を束ねている。1型はAIRE遺伝子1つの異常によるの小児疾患で、・・の三徴が中核になる(詳細は1型(APECED)のノートに譲る)。2型は関連の複雑な遺伝形式をとる成人発症の疾患で、に・1型糖尿病が組み合わさる。臨床で出会う頻度は2型の方が圧倒的に高く、「を1つ見つけたら他のの自己免疫を探す」という姿勢がこの概念全体の実務的な価値になる。

1型と2型の対比

「」は単一の疾患ではなく、も遺伝形式も発症年齢も異なる2つの症候群の総称である1。

項目 1型(APECED、APS-1) 2型(、APS-2)
原因 AIRE遺伝子(単一遺伝子)の DQ/DR領域を含む複数因子
遺伝形式 複雑な
発症年齢 多くは5歳までの小児期 若年成人期
中核となる構成要素 ・・()の三徴 ()+・1型糖尿病
頻度 まれ 1型より頻度が高い
診断マーカー (91〜95%で陽性)2 各構成疾患に対応する自己抗体(、など)

⭐ 1型の機序・三徴・合併症の詳細は1型(APECED)のノートに委ねる。 ここでは1型を繰り返さず、2型を中心に両者の位置づけを整理する。

2型(Schmidt症候群)の病態

1型が単一遺伝子(AIRE)の機能喪失という単純な機序で説明できるのに対し、2型は DQ/DR領域を含む複数の遺伝要因が関与する複雑なの遺伝形式をとり、家族内での発症パターンも1型ほど明確でない1。中核となるのは()で、これに(による甲状腺機能低下症、まれに)・1型糖尿病のいずれかまたは両方が組み合わさる1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human leukocyte antigen'>HLA</span> DQ/DR領域を含む複数の遺伝要因<br>(複雑な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multifactorial (polygenic)'>多因子性</span>)"] --> B["複数の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endocrine glands'>内分泌腺</span>を標的とする<br>自己免疫の感受性が高まる"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary adrenal insufficiency'>原発性副腎不全</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Addison disease'>Addison病</span>)"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoimmune thyroid disease'>自己免疫性甲状腺疾患</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hashimoto thyroiditis'>橋本病</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Graves disease'>バセドウ病</span>)"]
    B --> E["1型糖尿病"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Addison disease'>Addison病</span>を確認したら<br>他の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endocrine glands'>内分泌腺</span>の自己免疫を探す"]
    D --> F
    E --> F

⭐ を有する患者174例を含むでは、にを合併した割合が65%、1型糖尿病を合併した割合が18%、両方を合併した割合が10%であった3。この検討は・・1型糖尿病の組み合わせが2型の中で最も頻度が高いことを根拠に、患者ではと1型糖尿病のスクリーニングが妥当だとしている3。

⚠️ を1つ診断したら、単独疾患として終わらせず他のの自己免疫を必ず探す。 具体的にはでを、を含むで1型糖尿病の感受性を評価する。逆にや1型糖尿病が先に診断された患者でも、倦怠感・体重減少・低血圧・などを示唆する所見があれば副腎機能を確認する。

GAD65抗体が2型と結びつく理由

は低〜中等度のであれば1型糖尿病・(SPIDDM/)のとして扱われるが、この文脈は2型の1型糖尿病成分そのものである。陽性の患者でやの既往・所見があれば、単なる1型糖尿病としてではなく2型の枠組みで評価する——1つの臓器の自己免疫マーカーが陽性になった時点で、他のの自己免疫を系統的に探す入口として扱う。

1型との鑑別で迷ったら

年齢と遺伝形式がもっとも実用的な手がかりになる。小児期発症・の家族歴・を伴うなら1型(APECED)を、若年成人期発症・カンジダ症を伴わない・にや1型糖尿病が組み合わさるなら2型を疑う。カンジダ症の有無が最も判別しやすい所見で、2型ではカンジダ症はに含まれない。

分類の全体像:3型・4型にも触れる

臨床で頻用されるのは1型・2型だが、分類体系はそこで終わらない。3型はに・1型糖尿病などの他の自己免疫疾患(・非を問わない)が合併するが、を伴わない点で2型と区別される3。4型は1〜3型のいずれの組み合わせにも当てはまらない症例を受け止める残余分類である3。このノートが1型・2型に絞るのは、を軸にした自己免疫性内分泌疾患としての臨床的な結びつきが最も強いためであり、3型・4型をしてよいという意味ではない——に他の自己免疫疾患が合併し、かつを欠く症例を見たら3型を、どの型にも当てはまらない多臓器自己免疫を見たら4型をする。

診断・治療の考え方

診断は各構成疾患の確定(の・自己抗体、と、糖尿病のとなど)を積み重ねて行い、単一の確定的な遺伝学的検査は2型には存在しない(1型のAIREとは対照的である)。治療は根治的なものではなく、構成疾患ごとの補充療法が中心になる——副腎不全には・、甲状腺機能低下症には、1型糖尿病にはを組み合わせ、生涯にわたる複数臓器の機能監視を続ける。

まとめ

  • は1型(APECED、AIRE遺伝子、、小児期発症、カンジダ症++の三徴)と2型(、関連の複雑な遺伝形式、若年成人期発症、++1型糖尿病)を束ねる概念であり、1型の詳細は専用のノートに委ねる。
  • 2型はを中核とし、を65%、1型糖尿病を18%、両方を10%の割合で合併する。
  • を確認したら、他のの自己免疫(、など)を必ず探すという姿勢が臨床上の核心になる。
  • の低〜中等度陽性は1型糖尿病のであると同時に、2型の1型糖尿病成分の指標でもある。やの合併を意識して評価する。
  • カンジダ症の有無が1型・2型の鑑別で最も判別しやすい所見で、治療はいずれも根治的ではなく構成疾患ごとの補充療法が中心になる。

出典

  1. 1.Autoimmune Polyglandular Syndromes(Endotext (MDText.com, South Dartmouth, MA)・2024)APS-1の古典的遺伝形式が常染色体潜性であり大多数が5歳までに発症するのに対し、APS-2(Schmidt症候群)はHLA DQ/DR領域が関与する複雑な多因子性の遺伝形式で典型的には若年成人期に発症すること、APS-2では1型糖尿病・Addison病・自己免疫性甲状腺疾患が主要構成要素であることを確認した閲覧 2026-08-19
  2. 2.Polyglandular Autoimmune Syndrome Type I(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)APS-1(APECED)の三徴が慢性皮膚粘膜カンジダ症・副甲状腺機能低下症・Addison病であること、APS-1が常染色体潜性遺伝であるのに対しAPS-2が複雑な多因子性の遺伝形式をとる点で両者が異なること、インターフェロン-ω自己抗体がAPS-1患者の91〜95%に存在すること閲覧 2026-08-19
  3. 3.Prevalence of other autoimmune diseases in polyglandular autoimmune syndromes type II and III(Journal of Endocrinological Investigation・2020)APS-2をAddison病に自己免疫性甲状腺疾患・1型糖尿病またはその両方が合併する病態と定義していること、842例のPAS症例中PAS IIが177例(21.1%)を占めたこと、PAS II(Addison病を有する174例)の内訳がAddison病+自己免疫性甲状腺疾患65%・Addison病+1型糖尿病18%・両方合併10%であったこと、これら3疾患の組み合わせが最も頻度が高いためAddison病患者では自己免疫性甲状腺疾患・1型糖尿病のスクリーニングが妥当であるとしていること、PAS IIIが自己免疫性甲状腺疾患に早発卵巣不全・1型糖尿病などの他の自己免疫疾患が合併するがAddison病を伴わない点でPAS IIと区別されること、PAS I〜IIIのいずれにも当てはまらない症例をPAS IVに分類することを確認した閲覧 2026-08-19