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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 先天性疾患

シスチン尿症

Cystinuria

臓器系
腎・泌尿器
科目
Internal MedicinePathologyPediatricsUrology
トピック
内科学 L-38:腎結石病理学 C/67:尿路結石・尿路閉塞小児科 3-30:小児尿路結石症泌尿器科学 U-17:尿路結石症の成因・分類・予防
続発疾患
尿路結石症
治療薬
チオプロニンペニシラミン
症状
腎仙痛血尿
検査値
尿沈渣
適応薬
チオプロニン

🧠 全体像は、(および小腸)で二・オルニチン・リジン・=COLA)を再吸収する輸送体(rBAT/b0,+AT)のにより、この4つのアミノ酸が尿中へ漏れ続ける疾患である。問題を起こすのは実質的にだけ——他の3つは水溶性が高く結石を作らないが、だけは生理的な尿pHでの溶解度が低く、繰り返すの原因になる。症」とは全く別の疾患であり、混同すると病態も治療もまったく噛み合わなくなる点に注意する。

病態:輸送体の異常とシスチン症との違い

には、rBAT(SLC3A1)とb0,+AT(軽鎖、SLC7A9)がを作り、糸球体で濾過された・オルニチン・リジン・を再吸収する輸送体として働く。この遺伝子にが生じると、4つのアミノ酸すべてが尿中に多量に排泄されるが、臨床的に問題になるのはのみである。オルニチン・リジン・は水への溶解度が高く尿中に留まってもしないのに対し、は生理的な尿pH(5〜7)での溶解度がおよそ250 mg/Lと低く、この濃度を超えると・結石形成が始まる。

SLC3A1(症例の50〜70%を占め、の主要な原因)とSLC7A9(症例の25〜45%、のことも優性のこともある)のいずれでも同じ臨床像を来し、遺伝形式は複雑(両アレル性・両遺伝子にまたがる=digenicも含む)だが、臨床的な対応はによらず共通である1

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal tubule'>近位尿細管</span>の輸送体異常<br>(rBAT/b0,+AT、SLC3A1またはSLC7A9)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cystine'>シスチン</span>・オルニチン・リジン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginine (Arg)'>アルギニン</span>(COLA)<br>の再<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malabsorption'>吸収障害</span>"]
    B --> C["オルニチン・リジン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arginine (Arg)'>アルギニン</span>は<br>溶解度が高く無症状のまま排泄"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cystine'>シスチン</span>は尿中溶解度が低い<br>(生理的pHで約250 mg/L)"]
    D --> E["尿中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cystine'>シスチン</span>濃度が溶解度を超える"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crystallization'>結晶化</span>・結石形成<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hexagonal crystals'>六角形結晶</span>が特徴的)"]
    F --> G["再発性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urolithiasis'>尿路結石</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal colic'>腎仙痛</span><br>閉塞・感染・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal impairment'>腎機能障害</span>のリスク"]

⚠️ 」と「症」は名前が似ているだけの別疾患。 症はCTNS遺伝子異常によるリソソーム膜の輸送障害で、全身の細胞内にが蓄積し・角膜結晶・腎不全・を来す全身性のである。一方の管腔側(尿への排泄経路)だけの輸送異常で、細胞内への蓄積は起こらず、腎機能自体は障害されない。症状も治療もまったく異なり症の治療薬(システアミン)はには無効である。

疫学

世界的なはおよそ出生7,000人に1人と報告されており、地域差が大きい(ユダヤ人・メノナイト集団など特定集団でSLC3A1のによる集積がみられる)。全体に占める割合は成人で1〜2%、小児で6〜8%とされ、小児・若年成人の再発性結石の原因として比率が高い1の性質上、未治療のまま放置すると生涯にわたり結石を繰り返すため、と生涯にわたる予防管理が要になる。

臨床像

臨床像の中心は再発性のそのものであり、に特異的な全身症状はない。小児期から若年成人期に初発することが多く、両側性・多発性・を来しやすい点が他の結石種と異なる。血尿、閉塞に伴う水腎症、繰り返す結石による腎への進行がありうる。

診断

  • 尿沈渣でのに特徴的(およそ70%の症例で検出される)が、検出されない場合も否定はできない1
  • 結石成分分析:回収した結石の分析で結石と確定する。
  • 24時間尿中定量:診断・治療モニタリングの中心となる検査で、治療中は尿中濃度250 mg/L未満を目標に薬剤を調整する2
  • 遺伝学的検査SLC3A1SLC7A9同定で確定診断できるが、臨床的には結石の存在と尿中排泄増加があれば診断に十分であり、必須ではない。
  • 単純X線ではわずかに不透過(他の結石種より淡い陰影)で見逃されやすく、が診断の中心になる(の診断アプローチを参照)。

治療

保存療法(全例の土台)

  1. 大量飲水:尿中濃度を溶解度未満に保つことが治療の本質であり、24時間尿量3L超を目標に、成人では3.5〜4L/日以上の飲水を1日を通して分割摂取し、夜間のを防ぐため就寝前にも十分量を飲む2
  2. 尿の:クエン酸カリウムなどで尿pHを7.5超(目安7.5〜8.0)へ上げると溶解度が上昇する。⚠️ 7.5は上限ではなく下限である。 中途半端なを溶解しきれない。
  3. :Na摂取を2 g/日未満に制限し(Na利尿は排泄も増やす)、動物性タンパクの過剰摂取を控える(含硫アミノ酸であるの摂取が産生の基質になる)2

薬物療法:チオール系薬剤

保存療法を3か月程度試みても結石形成を抑制できない場合、または尿中排泄が3.0 mmol/日(720 mg/日)以上と高値の場合に、を持つを追加する2

薬剤 位置づけ
遊離を起こし水溶性複合体に変える。より副作用が少なくに優れ、特に小児では第一選択とされることが多い3
同じ機序の薬だが、皮疹・血球減少・腎障害などの毒性がより高頻度。不良・効果不十分の場合の代替

いずれも保存療法を置き換えるものではなく、大量飲水・を継続した上での追加治療である。

外科的治療

結石が大きい・症候性・保存的が期待できない場合は、他の結石種と同様に・ESWL・などを選択する。ただし結石はESWLへの反応性が悪く(結石が硬い)、やPCNLが優先されやすい点は他の結石種と異なる(を参照)。

まとめ

  • の輸送体(rBAT/b0,+AT、SLC3A1またはSLC7A9)異常によりCOLA(・オルニチン・リジン・)の再吸収が障害される疾患で、臨床的に問題になるのは溶解度の低いだけである。
  • である症とは全く別の疾患であり、機序・症状・治療のいずれも異なる。
  • はおよそ出生7,000人に1人で、成人結石の1〜2%・小児結石の6〜8%を占める。
  • 治療の土台は大量飲水(尿量3L超/日)・(pH 7.0〜7.5、7.5超は避ける)・Na制限で、これで抑制できない場合に(第一選択)またはを追加する。

出典

  1. 1.EAU Guidelines on Urolithiasis — Metabolic Evaluation and Recurrence Prevention (Cystine Stones)(European Association of Urology・2025)シスチン結石の再発予防として、24時間尿量3L超(成人では飲水量3.5〜4L/日以上を分割摂取、就寝前にも十分量を摂る)を目標とすること、尿pHをクエン酸カリウムまたは重炭酸カリウムで7.0〜7.5へ上げること(pH 7.5超はリン酸カルシウム結石を誘発しうるため過度なアルカリ化は避ける)、Na摂取を2,500mg/日未満に制限し動物性タンパクを控えること、尿中シスチン排泄が3.0mmol/日(720mg/日)以上、または保存療法下でも結石再発を繰り返す場合にチオプロニンなどのチオール系薬剤を追加すること、治療中は24時間尿でモニタリングし尿中シスチン濃度250mg/L未満を目指して用量調整することを確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Cystinuria(GeneReviews(University of Washington, Seattle)・2025)シスチン尿症の世界的な有病率がおよそ出生7,000人に1人であること、成人の尿路結石の1〜2%・小児の尿路結石の6〜8%を占めること、原因遺伝子はSLC3A1(症例の50〜70%、常染色体劣性でI型/AA型)とSLC7A9(症例の25〜45%、常染色体劣性のBB型または優性のB0型があり得る)に分かれること、六角形結晶がおよそ70%の症例で検出される特徴的所見であること、治療目標として飲水量成人3L/日以上・小児2L/日超、尿pH 7.5〜8.0、保存療法を3か月試みても無効または忍容性不良の場合にチオール系薬剤の導入を検討することを確認した。閲覧 2026-08-11
  3. 3.Outcomes of Tiopronin and D-Penicillamine Therapy in Pediatric Cystinuria: A Clinical Comparison of Two Cases(Reports (MDPI)・2025)小児シスチン尿症例の比較で、チオプロニンはペニシラミンよりネフローゼ症候群・骨髄抑制・重度皮膚有害反応などの重篤な副作用の頻度が低くアドヒアランスに優れることを確認した。閲覧 2026-08-10