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Drug Atlas · B25 Other / その他 · 必修

チオプロニン

tiopronin

分類
Other / その他
商品名(日本)
チオラ
商品名(EU)
Thiola
科目
Urology
トピック
泌尿器科学 U-17:尿路結石症の成因・分類・予防
承認適応
尿路結石症シスチン尿症
副作用
悪心下痢皮疹発熱関節痛味覚障害咽頭痛
監視検査値
アルブミン尿アミノトランスフェラーゼ白血球数
影響検査値
アルブミン尿

🧠 全体像と同じ「遊離を起こし、水溶性の複合体に変えて尿中へ捨てる」という薬の機序をそのまま受け継ぎながら、毒性だけを下げた「改良版」という位置づけの薬である。両者は化学的な作用機序で見分けがつかないほど似ているが、臨床的な意味は大きく違う——や骨髄抑制などの重篤な副作用がよりまれで、患者の継続率が高いため、による結石予防で保存療法(大量飲水・)がしない場合の第一選択のとしての地位を確立している。日本では肝機能改善薬・治療薬としての適応も持つ、やや異色の多面的な薬でもある。

薬効群の中での位置づけ

結石の予防は「尿を薄める・する」保存療法が土台で、それでも不十分な場合に薬)を追加するという段階構造を取る。はこの段階のうち同じ位置を争う「同格だが毒性が違う」薬である。

薬剤 機序 ・継続率 位置づけ
遊離とジスルフィド交換→水溶性複合体 良好(継続率が高く小児にも使いやすい) 保存療法無効時の第一選択の
同一機序(によるジスルフィド交換) 不良(皮疹・・血小板減少・などによる減量・中止が多い) 不耐・無効時の代替、または歴史的選択肢

同じを起こす薬なのに、なぜ毒性の差が生まれるのかは完全には解明されていないが、臨床的な帰結は明確である。 小児例の比較では、は重篤な副作用(特に・骨髄抑制・重度皮膚)の頻度が低く、に優れることが報告されている1。そのため現行の実務では、の良いをまず試み、効果不十分・不耐の場合にへ切り替えるという順序が一般的になっている。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tiopronin'>チオプロニン</span><br>(遊離<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfhydryl group'>SH基</span>を持つN-アシルシステイン誘導体)"] --> B["尿中の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cystine'>シスチン</span>(2分子のシステインが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disulfide bond'>ジスルフィド結合</span>したもの)と接触"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thiol'>チオール</span>-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disulfide exchange reaction'>ジスルフィド交換反応</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tiopronin'>チオプロニン</span>-システイン<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mixed disulfide'>混合ジスルフィド</span>が形成される"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monomer'>単量体</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cystine'>シスチン</span>より溶解度が高い"]
    E --> F["尿中に溶けたまま留まり、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crystallization'>結晶化</span>・結石形成が抑制される"]

💡 「難溶性の物質を、で水溶性の複合体に変えて捨てる」という発想はと完全に共通している。 での(および二)再という遺伝性疾患で、尿中濃度そのものを下げることはできない。だから治療の主眼は「濃度を下げる」のではなく「同じ濃度でも溶けたままにする」ことに置かれ、飲水量を増やして希釈する保存療法と、で溶解度を上げる薬が組み合わされる。

適応

領域 使いどころ
泌尿器 による結石の再発予防。大量飲水(3〜4 L/日)・(目標pH 7.5前後)・タンパク制限などの保存療法で尿中排泄・結石再発を十分に抑制できない場合に追加する

日本ではこのほかに、における肝機能改善、初期老人性皮質中毒時の排泄促進という適応も持つ多面的な薬だが、これらはとは機序・文脈の異なる別適応であり、本稿ではの文脈に絞って扱う2。米国の添付文書上の適応は、保存療法に反応しない重症による結石予防のみに限定されている3

用法・用量

日本に対しては、成人は1回100 mgから開始し1日4回投与、最大量は1回500 mg(1日2,000 mg)。小児は1日100 mgから開始し、最大1日40 mg/kgとする2米国:成人の初期用量は800 mg/日(での平均用量は約1,000 mg/日)、体重20 kg以上の小児は15 mg/kg/日から開始し50 mg/kg/日を超えない3

いずれの国でも、尿中濃度250 mg/L未満を目標に、投与開始1か月後・その後は3か月ごとに尿中排泄量を測定して用量を調整する3。低用量から開始し、を見ながら漸増するのが原則。実際の用量は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤の成分に対する過敏症の既往2
  • ⚠️ 黄疸を伴う重篤な肝障害が起こりうるため、投与中は定期的な肝(特に投与開始後2・4・6週)を行う2
  • ⚠️ のリスクがあるため、発熱など感染徴候に注意する2
  • ⚠️ が報告されているため、定期的な尿蛋白()検査でモニタリングする。 小児で50 mg/kg/日を超える高用量では蛋白尿のリスクが上がる3
  • より良いとされるが無害ではなく、様症状)や、重症筋無力症・といった重篤な副作用も報告されている2

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心下痢・軟便、口内潰瘍、皮疹感、発熱関節痛、蛋白尿、嘔吐(いずれも米国試験で10%以上)3
特徴的 (微量金属のによると考えられ、多くは自然軽快する)
重篤・まれ 様症状、黄疸、、重症筋無力症・2

まとめ

  • と同じ-を水溶性複合体に変えるで、結石の再発予防に用いる。
  • 機序はと共通だが、・継続率で明確に優れ、保存療法(大量飲水・)が無効な場合の第一選択のとして位置づけられる。
  • 尿中濃度250 mg/L未満を目標に、投与開始1か月後・以降3か月ごとにモニタリングしながら用量を調整する。
  • 定期的な肝・尿蛋白検査が必須で、黄疸・などの重篤な副作用に注意する。
  • 日本では・初期老人性皮質中毒という追加適応を持つが、これらはとは別文脈の適応である。

出典

  1. 1.チオラ錠100 添付文書(ヴィアトリス製薬合同会社(PMDA掲載の添付文書)・2024)日本での効能・効果が慢性肝疾患における肝機能改善・初期老人性皮質白内障・水銀中毒時の水銀排泄増加・シスチン尿症の4つであること、シスチン尿症での用法・用量が成人で1回100mgから開始し1日4回投与・最大1回500mg(1日2,000mg)、小児は1日100mgから開始し最大1日40mg/kgであること、禁忌が本剤成分への過敏症の既往に限られること、重大な副作用に中毒性表皮壊死融解症・天疱瘡様症状・黄疸・無顆粒球症・間質性肺炎・ネフローゼ症候群・重症筋無力症/多発性筋炎が含まれ、投与中は定期的な肝機能検査(特に投与後2・4・6週)と尿蛋白検査が必要とされることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.THIOLA EC (tiopronin) delayed-release tablets — full prescribing information(Mission Pharmacal Company(DailyMedに掲載の添付文書)・2021)米国での適応が高飲水・尿アルカリ化・食事療法に反応しない重症ホモ接合性シスチン尿症(成人・体重20kg以上の小児)でのシスチン結石形成予防に限定されること、成人の初期用量が800mg/日(試験での平均用量は約1,000mg/日)、小児の初期用量が15mg/kg/日で50mg/kg/日を超えないこと、尿中シスチン濃度250mg/L未満を目標に投与開始1か月後・以降3か月ごとにモニタリングすること、10%以上に報告される副作用が悪心・下痢/軟便・口内潰瘍・皮疹・倦怠感・発熱・関節痛・蛋白尿・嘔吐であること、蛋白尿・ネフローゼ症候群・膜性腎症が報告されていることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Outcomes of Tiopronin and D-Penicillamine Therapy in Pediatric Cystinuria: A Clinical Comparison of Two Cases(Reports (MDPI)・2025)チオプロニンはD-ペニシラミンと比べて重篤な副作用(特にネフローゼ症候群・骨髄抑制・重度皮膚有害反応)の頻度が低く小児患者でのアドヒアランスに優れる一方、D-ペニシラミンは数十年使われてきたが皮疹・白血球減少・血小板減少・ネフローゼ症候群・ピリドキシン欠乏などのリスクが高いこと、両薬の機序はいずれもシスチンのジスルフィド結合を切断しシステインより溶解度の高い複合体を形成する点で共通すること、治療効果判定には24時間尿中シスチン排泄量・尿飽和度・シスチン容量の定期モニタリングが重要であることを確認した閲覧 2026-08-10