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Disease Atlas · 耳鼻咽喉科 · 疾患

喉頭蓋嚢胞

Epiglottic cyst

別名
喉頭蓋谷嚢胞
臓器系
耳鼻咽喉科小児
科目
OtorhinolaryngologyPediatrics
トピック
耳鼻咽喉科 55:喉頭の急性・慢性炎症性疾患小児科 2-39:急性喉頭蓋炎・細菌性気管炎・クループ
鑑別疾患
喉頭軟化症舌性甲状腺先天性頸部嚢胞(甲状舌管嚢胞・鰓裂嚢胞)
症状
吸気性喘鳴嚥下障害嗄声
画像所見
母指徴候オメガ型喉頭蓋

🧠 全体像:は、とその前方の陥凹()にできるで、多くは小さく無症状のまま見つかる。臨床で問題になるのは二つの顔である。⚠️ ひとつは感染したときで、と見分けのつかない像で発症すること。もうひとつは⭐ 新生児・乳児では気道が小さいため、それ自体が気道閉塞・の原因になることである。

名前と場所——喉頭蓋嚢胞と喉頭蓋谷嚢胞

はの前方にあるで、主にリンパ組織と腺組織を含む。ここに生じる良性のが最も多い病変であり、通常は小さく、偶発的に見つかって無症状にとどまる1。⭐ の最も多い発生部位はの舌面とであり、両者は連続した病態として扱われる。良性喉頭病変のおよそ5%を占めるとされ、成人例のおよそ3分の2は無症状である2。

💡 そのものにできるか、その手前のにできるかは解剖学的な位置の違いにすぎず、成り立ち(粘液の貯留)も、発症の仕方も、治療も同じである。本ノートは両者を1つの主題として扱う。

二つの顔

場面 像
成人・偶発 無症状。別の目的の画像で見つかる。あっても声の変化程度
感染したとき ()と同じ発熱・喘鳴・嚥下障害・の腫脹
新生児・乳児 喘鳴・呼吸窮迫・・体重増加不良

感染すると急性喉頭蓋炎の顔になる

50歳男性の症例では、次の経過をたどった2。

  1. 喘鳴・・嚥下障害・嘔吐に、38℃の発熱と心拍122/分を伴って受診。
  2. 頸部で周囲の腫脹、での著明な腫脹。として静注・・メトロニダゾールで治療され、改善。
  3. 炎症が引くにつれてが見えてきた。で診断が確定。
  4. 嚢胞を開窓して生検。組織学的に20×10×5 mmの、扁平上皮とリンパ組織からなる良性嚢胞。

⚠️ 「が治った」で終わらせない。 炎症が消退したあとに喉頭を見直さなければ、背景の嚢胞は見つからずする。⚠️ 感染した嚢胞は生命を脅かす気道閉塞を起こしうる2。

新生児・乳児では気道閉塞の原因になる

先天性のは、新生児・乳児の喘鳴のまれだが危険な原因である。⭐ 成人では無症状か声の変化程度にとどまるのに対し、新生児・乳児では気道が小さいために喘鳴と呼吸窮迫を来す。さらにを誘発して・嘔吐を招き、と体重増加不良につながる——いずれも症例集積の導入で先行文献を引く形で述べられている3。

で治療した4例では3、

  • 4例とも喘鳴で発症し、も懸念された。
  • 2か月女児の1例は当初重症がとされ、でのがを閉塞しをしていると判明した。
  • 別の1例は体重増加不良・雑音を伴う呼吸・反復する嘔吐で紹介され、と逆流症として治療されていた。
  • 4例とも術後経過は平穏で、早期に退院した。

⚠️ 乳児の喘鳴を「」で片付けない。 上の4例のうち2例は、別の診断名で治療されたのちに本症と判明している3。

⚠️ 挿管が難しくなる位置にある。 舌根の嚢胞はでの視野を奪い、を後方へ押してを塞ぐ。気道確保の準備を整えてからする。

⭐ ()・を除外する。 の腫瘤という点で(・)と重なるため、上の症例集積では3例でとを行って除外している3。唯一の機能甲状腺組織を切除してしまう事故を避けるための手順である。

画像と鑑別

とが主要な画像で、軟部組織の性状評価ではが有意に感度・正確性が高い1。

⚠️ の腫瘤=嚢胞ではない。 大きな腫瘤はまれで、大型の粘液(導管)嚢胞のほか、・由来の悪性腫瘍、由来のごくまれな低悪性度、良性の発生性、、・が含まれる1。

⚠️ 画像で良性に見えても組織診断が要る。 掲載5例のうち1例では、嗄声とを呈した45×30 mmの腫瘤がで「良性の可能性あり」と判断されたが、組織学的にはの低悪性度であった1。

💡 一方で、無症状で偶発的に見つかる小さな嚢胞は、閉塞症状を欠いたまま経過することが多い。別目的ので左20 mm・右10 mmのが見つかった症例は、無症状で閉塞症状を欠いていた1。

治療

  • 症状のあるものは開窓または摘出。 による開窓2、内視鏡下のによる摘出3などが用いられる。
  • 切除した組織は病理へ回す。 画像で「良性の可能性あり」と判断された腫瘤が、組織では低悪性度だった例がある1。
  • 感染例ではまず炎症を鎮める。 上の50歳男性例では、抗菌薬とステロイドでの腫脹が落ち着き、視野が得られてから嚢胞を処理している2。
  • 無症状で小さいものは、閉塞症状を欠いたまま経過することが多い1。

まとめ

  • およびので、病変としては最も多く、通常は小さく無症状のまま偶発的に見つかる。
  • 良性喉頭病変のおよそ5%を占める。
  • 感染すると()と同じ像で発症する。炎症が引いたあとに喉頭を見直さないと背景の嚢胞を見落とす。
  • 新生児・乳児では気道が小さいため喘鳴・呼吸窮迫を来し、を介して・体重増加不良にもつながる。とされやすい。
  • の腫瘤として()・を除外する。
  • の腫瘤は嚢胞とは限らない。・の悪性腫瘍が含まれ、画像で良性に見えても組織診断が要る。
  • 治療は開窓または摘出。無症状で小さいものは閉塞症状を欠いたまま経過することが多い。

出典

  1. 1.Large Vallecular Masses; Differential Diagnosis and Imaging Features(Journal of Clinical Imaging Science・2018)喉頭蓋谷が喉頭蓋の前方にある潜在腔で主にリンパ組織と腺組織を含むこと、良性の粘液貯留嚢胞が最も多い喉頭蓋谷病変であり通常は小さく偶発的に見つかって無症状にとどまること、大きな喉頭蓋谷腫瘤はまれで大型の粘液(導管)嚢胞のほか舌根部・声門上部由来の悪性腫瘍を含むこと、その他の原因として小唾液腺由来のごくまれな低悪性度悪性病変・良性の発生性血管奇形・脂肪腫・類皮嚢胞・類表皮嚢胞があること、これらの患者は無症状のこともあればまれに重篤な急性気道閉塞を呈することもあること、CTとMRIが主要な画像モダリティでMRIが軟部組織の性状評価において有意に感度・正確性が高いことを確認した。掲載5例のうち症例1では嗄声と嚥下困難を呈した喉頭蓋を圧排する45×30 mmの喉頭蓋谷腫瘤がMRIで良性の可能性ありと判断されたが、組織学的には舌根部の低悪性度篩状腺癌であった。症例3では別目的のMRIで左20 mm・右10 mmの喉頭蓋谷嚢胞が偶発的に見つかり、患者は無症状で閉塞症状を欠いていた。閲覧 2026-09-03
  2. 2.An unusual presentation of an infected vallecular cyst presenting as supraglottitis(BMJ Case Reports・2013)50歳男性が喘鳴・発声障害・嚥下障害・嘔吐に38℃の発熱と心拍122/分を伴って受診し、頸部側面X線で喉頭蓋周囲の腫脹(明らかな異物なし)、軟性内視鏡で声門上の著明な腫脹を認めて急性声門上炎が疑われ、静注デキサメタゾン・セフロキシム・メトロニダゾールによる保存的治療で改善したこと、炎症の消退に伴って喉頭蓋谷嚢胞が視認できるようになり顕微鏡下喉頭手術で診断が確定したこと、嚢胞を開窓(deroofing)して生検し組織学的に20×10×5 mmの扁平上皮とリンパ組織からなる良性嚢胞であったことを確認した。考察では、喉頭蓋谷嚢胞が通常は無症状であるが感染して急性声門上炎を惹起しうること、喉頭蓋嚢胞とも呼ばれ良性喉頭病変のおよそ5%を占めること、生命を脅かす気道閉塞の危険があることが述べられている。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Vallecular Cyst in Neonates: Case Series—A Clinicosurgical Insight(Case Reports in Otolaryngology・2014)喉頭蓋谷嚢胞に対しコブレーションを用いた新生児・乳児4例の症例集積で、4例とも喘鳴で発症し挿管困難も懸念されたこと、4例とも術後経過は平穏で早期に退院したこと、症例1が2か月女児で重症喉頭軟化症が暫定診断とされたのち軟性気管支鏡で舌根部の嚢胞性腫瘤が喉頭入口部を閉塞し喉頭蓋を圧排していると判明したこと、症例1〜3ではTc-99mパーテクネテート甲状腺シンチグラフィと甲状腺機能検査を行って異所性甲状腺を除外したこと、症例4が体重増加不良・雑音を伴う呼吸・反復する嘔吐で紹介され喉頭軟化症と逆流症として治療されていたことを確認した。導入部では、先天性喉頭蓋谷嚢胞が新生児・乳児の喘鳴のまれだが危険な原因であり認識と適切な治療を欠けば気道閉塞が重篤な合併症と死亡につながりうること、成人では無症状か声の変化程度にとどまる一方で新生児・乳児では気道が小さいため喘鳴と呼吸窮迫を来しうること、嘔吐反射を誘発して嘔気・嘔吐を招き哺乳障害と体重増加不良につながりうることが、いずれも先行文献の引用として述べられている。閲覧 2026-09-03